結果: 17 件

働くなら、中心
主要項目ヒット ヒット: 4 開く 保存
状況
働くなら、中心
行動
結果
このエピソード全体の関連ルール: E-6: 中心 A-20: 働く
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【状況】
働くなら、中心
【行動】
【結果】
----------------------------------------
【本文】
【状況】
働くなら、中心
【行動】
【結果】

役を頼まれた
主要項目ヒット ヒット: 3 開く 保存
状況
事務所
行動
働くなら中心、頼みは受けよ、自分が頼むこともある。役柄は回ってくる。
結果
人間関係に信用が生まれ、自分の依頼もし易くなる
このエピソード全体の関連ルール: E-6: 中心 A-20: 働く
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【状況】
事務所
【行動】
働くなら中心、頼みは受けよ、自分が頼むこともある。役柄は回ってくる。
【結果】
人間関係に信用が生まれ、自分の依頼もし易くなる
【ポイント】
自分も依頼することがある
【詳細事例】
学部長を依頼された時に心良くうけた。ただし、条件を付けた、例えば懇親会の費用を依頼した。
----------------------------------------
【本文】
【状況】
事務所
【行動】
働くなら中心、頼みは受けよ、自分が頼むこともある。役柄は回ってくる。
【結果】
人間関係に信用が生まれ、自分の依頼もし易くなる
【ポイント】
自分も依頼することがある
【詳細事例】
学部長を依頼された時に心良くうけた。ただし、条件を付けた、例えば懇親会の費用を依頼した。
リーン生産方式と改善に関する工場長への回答
ヒット: 4 開く 保存
状況
2016年夏、チェコの精密機械製造工場を見学した際、工場長から「リーン生産方式と改善は同じか」と質問された。
行動
当時は両者を別物と理解していたため、明確に答えられず窮した。
関連ルール: E-1: 明
結果
欧米の「KAIZEN(コストダウン手法)」と日本古来の「改善(理想製品を目指す挑戦)」の違いを再定義し、本稿の執筆に至った。
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【分析:状況】
2016年夏、チェコの精密機械製造工場を見学した際、工場長から「リーン生産方式と改善は同じか」と質問された。
【分析:行動】
当時は両者を別物と理解していたため、明確に答えられず窮した。
【分析:結果】
欧米の「KAIZEN(コストダウン手法)」と日本古来の「改善(理想製品を目指す挑戦)」の違いを再定義し、本稿の執筆に至った。
----------------------------------------
【本文】
整理、整頓、清掃と改善の起源といざ鎌倉
The origins of the Sort, Tidy, Cleaning, Kaizen and Kamakura
持田 信治*
Shinji Mochida
「整理、整頓、清掃」は「改善」と共に日本の製造業の基本姿勢である。しかし、最近の製造業の「5S」と「改善」は単なるコストダウンの手法として理解されている。そこで、本書は「整理、整頓、清掃、改善」の起源が「いざ鎌倉と職人気質」にあることを述べた後、古来の「整理、整頓、清掃、改善」と近年の「5Sと改善」とを比較する。そして、「いざ鎌倉と職人気質」から今後のイノベーション推進のヒントを得たので報告する。
キーワード:5S、改善、リーン生産システム、イノベーション
Ⅰ.はじめに
概要
 筆者は2016年の夏にチェコのビンペルクにある精密機械製造工場を見学する機会があり、見学の最後に工場長から「リーン生産方式と改善は同じか」との質問を受けた。筆者は当時、「リーン生産方式」と「改善」は別ものであると理解しており、答えに窮した。「リーン生産方法」は代表的な生産方法の一つで、仕様を満たす範囲でコストダウンを計り利益を得る生産方法である。製造方法には漢字の「物つくり」とひらがなの「ものつくり」があり、漢字の「物つくり」は仕様が決まった「有体物」を作る方法であり、仕様を満たす範囲で安く作ることが求められる。欧米での生産方法の基本的な考え方は「リーン生産方法」に代表される「物つくり」である。「リーン生産方法」は仕様を満たす範囲で安く作る仕様第一主義である。欧米では「リーン生産方法」と「KAIZEN」は同じであり、「KAIZEN」はコストダウンの手法として理解されている。一方、ひらがなの「ものつくり」は辞書には「物」以外のものを作ることとある1)。「ものつくり」は仕様が決まっていない理想製品を作る、挑戦的な「ものつくり」である。「ものつくり」は理想製品作りを目指す終わりのない挑戦的な創作活動であり、最高の「改善」とアイデアが必要である。従って、日本古来の「改善」や「ものつくり」は、仕様第一主義の欧米の「物つくり」とは対局に位置する。「物つくり」は安い部品で、なるべく簡単に組み立てられる安い製造方法を目指している。日本古来の「改善」は職人言葉「細工は流々仕上げを御覧じろ」に代表される行動様式であり、アイデアを生かすためには、アイデアが浮かべば直ぐに試行錯誤を行うことが必要であり、直ぐに作業に取りかかるためには「整理、整頓、清掃」による整えられた作業環境と常に作業に取りかかれる姿勢が必要である。常に作業に取りかかれる姿勢は「いざ鎌倉」である。「いざ鎌倉」は謡曲「鉢の木」に出てくる言葉で室町時代から戦国時代を経て現代まで伝わっている言葉である。「整理、整頓、清掃」と「改善」は戦国時代から平和な江戸時代に入ると職人の精神となった。そこで、本書は「整理、整頓、清掃」と「いざ鎌倉」の起源を探りつつ、欧米に広がる有体物を作る「KAIZEN」と日本の理想目標を目指す「改善」の違いを述べる。そして、今後のイノベーション推進に向けた「整理、整頓、清掃」と「改善」に沿ったアプローチ方法を考察する。「整理、整頓、清掃」の略称は「3S」であり、「整理、整頓、清掃、清潔、躾」の略称は「5S」である。一般的には「5S」は「3S」を拡張したものと理解されている。しかし本書では日本古来の何時でも行動を起こす準備をしておく姿勢を「改善」と「整理、整頓、清掃」として記述する。一方、欧米の製造業に於ける効率化を目指す姿勢を「KAIZEN」と「5S」と記述する。
Ⅱ.整理、整頓、清掃と武士道そして改善へ
1.武士道と整理、整頓、清掃
筆者の記憶では小学校の教室の正面に「整理、整頓、清掃」と書かれた額があり、先生から「整理、整頓、清掃」とは何時でも勉強が出来る様に環境を整えておくことだとの説明があった。つまり「整理、整頓、清掃」とは自分の作業道具を常に「整理、整頓」しておき、「清掃」によりワークスペースを確保しておき、何時でも勉強が出来るようにしておくとのことであった。何時でも作業に取りかかれる様に準備をしておく「整理、整頓、清掃」の考えは「いざ、鎌倉」の精神に始まる。「整理、整頓、清掃」は昼夜いつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかるという精神で、日本の創意・工夫とアイデアを重視する考えの基礎となっている。また、「源義経の鵯越の逆落し」に由来する「夜討ち、朝駆け」もビジネス好機を逃さない精神であり「いざ、鎌倉」と共に日本のビジネス精神の基礎をなしている。「整理、整頓、清掃」の精神は侍が各自の得物を常に手入れと鍛錬を怠らず「いざ」に備える姿勢で、安土桃山時代から戦国時代、江戸を経て、武士から職人の精神に反映されて、現在に至っている。常に「いざ」に備える姿勢が「いざ鎌倉」であり、「いざ鎌倉」は鎌倉時代の謡曲「鉢木」に出てくる言葉である。大正時代の尋常小學國語讀本にも「鉢木」は登場しており2)、明治から大正時代にかけても常に「いざ」に備えることの必要性は語られていたことが解る。いつでも一大事への準備ができていることは近代の「出船の精神」にも受け継がれている。武士は奈良時代の743年(天平15年)に「墾田永年私財法」が制定されたことにより始まった。私有地が認められたことにより、有力な荘園主や貴族は荘園を守るために武装集団が必要となり、荘園を守るための専門武装集団が発生した。そして、「貴人の傍らにさぶらふ人」から、「侍」つまり「武士」ができた3)。平安時代に入り、源氏や平家の武将と武士団が出来た。更に鎌倉時代に至って、武家政権が誕生することとなり、鎌倉幕府は禅宗に傾倒して、武道、礼儀を重んじる「武士道」が確立された。武士道の中心的精神は以下の3点である。まず、いつでも一大事への準備ができていること。次ぎに自分を改善するために鍛錬を欠かさないこと。そしてコンディションをきちんと保つ「摂生」「 節制」「 礼節」を守ることである。そして、「武士道」では常に一大事に備える準備と得物の手入れが求められた。例えば、得物の手入れについては北条重時(1198-1261)が作成した『六波羅殿御家訓』に「腰刀の錆びたる持つべからず、~不断に心用心あるべしとある」4)。得物の手入れと鍛錬を怠らず、一大事に備えることは武士道の中心的精神であった。武士が武道を重んじて、武器の手入れと鍛錬に余念がなかった理由として、武士は戦闘集団であったことと、武士には警備の役目があったことがある。具体的には、貞永元年(1232年)に北条泰時が「御成敗式目」(ごせいばいしきもく)を制定して武家の基本法典が定まり、守護の職務が「大犯三箇条」(だいぼんさんかじょう)として定められたことによる。大犯三箇条では、守護の職務は、まず鎌倉・京都での大番役(おおばんやく:警固のこと)の招集と指揮監督を行うこと、そして謀反人の捜索と逮捕、殺害人の捜索することであった。つまり守護の職務には警備の役割があり、日頃の鍛錬と武器の手入れが必要であった。また、天文年間(1532年から1555年)に吾川郡弘岡城主であった吉良宣経(1514-1550頃)の定目(ていもく)にも武士のたしなみとして武具を整備し、武芸の修練に心がけて軍役に精励することと記載されている4)。そして、守護大名が戦国大名に代わるにつれ、武士道に於ける武勇の必要性が高まって行った。武勇の高まりに合わせて、日頃の得物の手入れと鍛錬を怠らず、常にいざに備える「整理、整頓、清掃」の武士道の姿勢が確立された。
2. 「ものつくり」と「物つくり」に於ける利益の考え方
武士道は自分を高め、精進することが基本であり、「整理、整頓、清掃」は武士道に由来している。時代が平和な江戸時代になり、自分を高め、精進する「整理、整頓、清掃」の精神は職人に広がって行った。職人の利益は各自の技術とアイデアに基づいていた。例えば、一般的な製品の価格は製品に要求される基本機能(図1のG)に顧客からの高度な要求(図1のH)を加えた製品の妥当な仕様(図1のD)に応じて設定される。そこで、製造者はコストダウン手法、例えばLean production system手法等を使用して得た製品コスト(図1のE)と製品の妥当な価格(図1のG)との差を得て利益(図1のH)を確保する。つまり、妥当な製品仕様(図1のD)を維持する範囲で製作時間(図1のJ)が進むに沿ってコストダウンを図ることが「KAIZEN」であり、「KAIZEN」はより安く製品を作る方法を追求する。具体的には「KAIZEN」は作業の単純化と作業の一律化を進め、製作マニュアルを作成して、人件費の安い作業者を使用できるようにしたり、製品をより簡単な作りにしたりして、コストダウンを追求する。一方、古来の職人は顧客の視界にある製品は顧客が価格を決めてしまうので、類似品との価格競争となり、利益が得にくいこと、そして自分の持つ技術を発揮し難いことを知っており、より自分の技術が生かせる創造的な仕事を目指した。例えば、職人言葉にある「簡単な仕事はしない」が職人の利益に対する考え方を物語っている。また「細工は流々、仕上げをご覧じろ」は、作品の製作技術は職人別であり、仕上げで勝負することを示している。職人は製品ではなく、職人は自らの技術とアイデアを用いて、顧客の視界を超えた作品を製作して、顧客の所有欲を満足させることにより高い利益を得ていた(図1のF)。図2にM・ロジャースのイノベータ理論を示す。図2は顧客全体を100%として、客層別の割合を模式的に示している。職人は、図2に示すイノベータを相手にすると利益が得られることを知っていた。画期的な製品、つまりイノベーティブな製品はまず、新しい物好きなイノベータが購入する。イノベータは価格を気にしないので、売り手は自由に価格設定ができ、利益を得る。いわゆる先駆者利益である。そして製品が成熟して一般化すると客層は最終的には図2の4層目にあるレイトマジョリティに変化する。レイトマジョリティは高度な機能には感心がなく、基本機能がありさえすれば、より安いものを購入する。
図1 職人の利益の考え方
図2 エベレト・M・ロジャースのイノベータ理論 (理論に基づき筆者作成)
3.「整理、整頓、清掃」と「改善」の広がり
日本古来の「整理、整頓、清掃」と「改善」は理想目標を目指す。例えば、「整理、整頓、清掃」の「整」は古典に「整は正なり」とあり、ゆがんだ形を真っ直ぐにすることが「整」であり「正」である。更に「整」は真っ直ぐにする、不純物を取り除くという語源から5)、「整理」は乱れたものを整える、または不必要なものを取り除くとの意味である6)。一方、「改」の語源は誤りを改めて正しくすることであり、「改善」は「改良」などと同様にreformやimproveの訳語として明治時代に作られた和製漢語である3)。つまり、「整理、整頓、清掃」や「改善」はよい方向へ改めることであり、終わりのない活動である1)。ただし、「改善」は先に述べた様に明治時代に作られた言葉であるため、武士道では精進などと呼ばれたと思われる。精進は大乗仏教の六波羅蜜修行の4番目の修行であり、悟りを目指す終わりのない活動である3)。一方、海外で使われている「5S」と「KAIZEN」は利益創出のためのコスト最適化手法であり、バリュー(金銭的価値)を高めることを求めており、明確に目標利益の創出を目指す活動である。筆者は図3に示すチェコの計測機械メーカの工場を見学する機会があり、工場長の話から海外では「改善」はコスト最適化手法として知られていることが理解できた。また、チェコのプラハ経済大学(Prague University of Economics and Business)にて5Sゲームという講義を見学した(図4参照)。講義では「改善」と「無駄」どちらも生産性向上の手法として説明されており、目標は明確であった。具体的には5Sゲームではレゴの飛行機模型を教材にして、数人でチームを組み効果的な組み立て方法を考え、どのチームがある制限時間内に多く組み立てるかを競う講義であった。
図3 チェコのビンペルクにあるローデ・シュワルツの工場(筆者撮影)
図45Sゲーム講義の様子 その1(筆者撮影)   5Sゲーム講義の様子 その2(筆者撮影)
海外では「5S」も広く知られており、「5S」の最後の2つの「S」は「躾」と「清潔」である。筆者がHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)に係わる食品関係の業務に従事している時には、「躾」とは作業着、エプロン、マスク、帽子を付けてほこりを落としてから食品工場に入ることであり、白線を踏まないなどの職場のルールを守る習慣を身に付けることが「躾」であった。そして、食品工場の「清潔」とは手を石けんで洗い、更にアルコールで消毒を行う、いわゆる化学的な清掃であった。「清潔」を改善活動の本で調べると「5S」を維持することとある。また、「清掃」と「清潔」の英語訳は同じ「Cleaning」であり区別がない。日本の「整理、整頓、清掃」はいつでも作業に取りかかるための心構えであるのに対して、海外で広がる「5S」は製造現場のルールとなっている。心構えは個人の行動指針であるのに対して、ルールは業務の規則である。例えば、チェコのある工場で「5S」を実践するとのことで、始業前に出社して作業準備するよう要請した所、作業準備は業務の一部であり、対価が支払らわれない作業はできないと作業者に断られたそうである。理想を求める「改善」と「整理、整頓、清掃」の自主的心構えは、明確な額の利益を追求する「KAIZEN」と対価が必要な「5S」とは全く別である。
4.整理、整頓、清掃」といざ鎌倉
「整理、整頓、清掃」とはいつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかる心構えであり、「いざ鎌倉」の精神に由来する。「いざ鎌倉」は室町時代に成立した謡曲「鉢木」に出てくる言葉で、鎌倉に何かあればすぐに鎌倉に駆け付けるというものである。当時、すべての武士が鎌倉に住んでいたわけではないため、常に鎌倉での争いへの準備が必要であったことが「いざ鎌倉」であった。ただ、鎌倉に駆けつけるのは恩賞、つまり利益を得るためであり、「いざ鎌倉」は利益のためであった。謡曲「鉢木」の主人公の佐野源左衛門常世が、宿を貸した旅僧(諸国行脚中の執権北条時頼(最明寺入道))に対して語った言葉に「今にても鎌倉に一大事あらば、千切れたりとも具足を着け、錆びたりとも長刀を持ち、痩せたりとも馬に乗り、一番に馳せ参じ、合戦始らば一番に敵と討合ひて死なん覚悟なれど」がある。この有名な言葉は当時の御家人は、鎌倉で何か騒動が起こったときには、すぐに鎌倉にはせ参じる体勢であったことを現している6)7)8)。「いざ鎌倉」の言葉が登場する「鉢木」は室町時代の観阿弥(1334~1384)作又は世阿弥の作と言われており、2度の元寇の後の作品である。元軍侵攻の頃、武士は一大事に備えて、得物の手入れと鍛錬に余念の無い状況であった。当時、鎌倉幕府は刀鍛冶を鎌倉に集める等、日本刀の製造を支援した。そして、太刀と槍は2度の元寇の後、めざましい性能向上があり、名刀「正宗」が登場するのもこの時代である。
5.「鉢木」成立の時代背景
「鉢木」からわかるのは、まず鎌倉では騒動が頻発したことと、次ぎに鎌倉に一大事ありと聞けば、諸国の御家人は先を争って馳せ参じ、幕府の着到状(出席簿)に姓名を記録して恩賞を期待していたことである。このようなことは鎌倉時代特有のことで、他の時代にはあまりみられないため、一大事に備える言葉として、「いざ鎌倉」という言葉は現在まで残ったとも考えられる。一大事ありと聞いて、御家人たちが鎌倉に駆けつけたという記述は、鎌倉幕府の歴史書である『吾妻鏡』4)に散見される。例えば吾妻鏡の元久2年(1205)にある「畠山重忠、討たれるの」項には「軍勢が由比ヶ浜の辺りを先を争って走った」とあり、先駆けの様子が表現されている。しかし、争いが最も多いのは、源頼朝の時代ではなく、鎌倉中期の北条時頼(1227-1263)の時代であった。北条時頼は摂家将軍を追放した上、三浦氏を滅ぼし、北条氏専制政治への道を開いた。「時頼」の時代は、いつ何が起こるかわからない不安定な社会状況であった。謡曲「鉢の木」には北条時頼が登場することから「いざ鎌倉」は、当時の不安定な史実を反映している。「鎌倉幕府の歴史を記載した「吾妻鏡」には、源頼朝が挙兵した治承4年(1180)から六代将軍宗尊親王が鎌倉から京都に送還された文永3年(1266)までの歴史を記載している。一方、「鉢木」は観阿弥(1334~1384)の作と言われており、「鉢の木」は「吾妻鏡」の後の作であるため、鎌倉武士の精神の全体像を反映していると言える。また、北条幕府に起きた2度に渡る元寇の役も、常に戦闘に備える精神である「いざ鎌倉」が維持された理由と考えられる。2度に渡る元寇とは文永の役(1274)と弘安の役(1281)であり、当時、北条時宗(1251-1284)は2度の元の軍を退けた。元寇の役に於ける勝利は北条武士の大きな働きと神風によるものとされている4) 。福岡市の東公園には元寇を退けたとされる日蓮聖人の像(図5参照)があり、日蓮聖人の神風は現在まで語り継がれている。日蓮聖人は「立正安国論(1260)」を北条時頼(1227-1263)に宛てに送り、外的の襲来を警告したとされており、「立正安国論」も当時が不安定な情勢であったことを示している。2度の元寇は日本の武士の装備にも変化をもたらした。元軍の鎧は真綿を何層も重ねた構造であり、当時の軟鉄で作られた武士の太刀では切ることが出来なかった。そこで、鎌倉幕府は各地から刀匠を集めて太刀作りを奨励した。そして刀匠、五郎入道正宗がついに日本刀の製造方法を完成させた。日本刀の製造方法は軟鉄の鉄に鋼鉄を巻いて、鍛えた後、焼き入れをする工程を繰り返す方法であり、良く切れるが、折れない日本刀が完成した。名刀正宗の完成である(元寇記念館資料より)。鎌倉幕府後の武士にも一大事に備える心意気があったことは土佐の「一領具足」にも見られる。「一領具足」は半農の武士であり、長宗我部元親(1539-1599)が安芸国虎攻めにあたり、兵力増強のために思いついた武士の身分である。「一領具足」は耕作時に槍の柄に草鞋(わらじ)と兵糧をくくりつけて田の畦(あぜ)に立てておき、有事の時には武装して直ぐさま、駆け付けるという生活であり、土佐物語には「一領具足と申すは、僅かの田地を領して、常には守護へ動仕(きんし)もなく役もなく、己が領地に引き籠り、自らたがやし、くさぎり、諸士の交はりもせされば、礼儀もなく作法もなく、明け暮れ武勇のみを事として、田に出づるにも、鎗の柄に草桂・兵糧を括り付け、田の畔に立て置き、すはと言へば鎌鍬を投げ捨て走り行く。鎧一領にて着替への領もなく、馬一疋にて乗り替へもなく、自身走り廻りければ一領具足と名付けたり。弓・鉄胞・太刀打ちに調練して、死生知らずの野武士なり」とある9)。「一領具足」は有事の際には戦場に馳せ向い、弓、鉄砲、大刀打に鍛錬をして、勇猛かつ命知らずの野武士であった。「いざ鎌倉」の「いざ」と「一領具足」の「すは」は一大事に備える鎌倉幕府から戦国時代の武士の共通の心意気であった。
6.鎌倉幕府の「いざ鎌倉」はどこに
鎌倉幕府に始まる武家政治は、源頼朝が1192年(建久3年)に朝廷から「征夷大将軍」に任命され、鎌倉幕府を開いたことから始まる(*所説あり)。源頼朝は治承4年(1180年)、伊豆で反平氏の軍を挙げた頼朝を討つため京からやってきた平家軍を富士川の戦いで破った。そして源頼朝は図6にある鎌倉の大蔵(雪ノ下)の屋敷に入り、鎌倉が武家政権の政治の中心地となった。更に源頼朝は図7に示す元八幡を現在の鶴岡八幡宮の地に移して町づくりの中心とした。最初の幕府は大倉幕府(1180-1225)であり、次に幕府は宇都宮辻子幕府(1225-1236)となり、更に幕府は若宮大路幕府(1236-1333)へと変わった。また頼朝は図8の永福寺(ようふくじ)を建立して、合戦で亡くなった将兵の鎮魂のために建立した。鎌倉幕府では禅宗が奨励され、「武士道」の精進の精神が成立した。そして、「武士道」は「鉢木」に描かれている様に常に得物を手入れと鍛錬を怠らず、一大事に備えることが基本姿勢となった。  
図6幕府跡(左から大倉幕府、宇都宮辻子幕府、若宮大路幕府)(筆者撮影)
図7元八幡 (筆者撮影)         図8永福寺跡 (筆者撮影)
7.職人気質
「整理、整頓、清掃」はアイデアが浮かんだ時に直ぐに作業に取りかかる精神であり、「改善」と共に、唯一の作品を求める日本古来の職人の精神である。一方、イノベーティブな商品も顧客の視界にない、唯一の製品である。21世紀最大のイノベーティブな製品の一つにスマートフォンがある。現在のスマートフォンの原型は2007年にスティーブ・ジョブズ氏が発表したiPhoneである。iPhoneはタッチパネルとグラフィカルインターフェースを備えていた。初期のスマートフォンは図9に示す様に下や横に小さなキーボードを備えた物で、使い勝手は良くなかった。また当時の多くの携帯電話は折りたたみ型の電話であり、iPhoneは多くのユーザにとって見たことのない電話であった。しかし、iPhoneのグラフィカルインターフェースは1984年にAppleが発表したマッキントッシュで採用されており、更にマッキントッシュはパーソナルコンピュータでは初めて、ポインティングデバイスとしてマウスを採用していた。そして、スティーブ・ジョブズ氏はグラフィカルインターフェース技術を電話に転用することによりiPhoneを完成させた。iPhone発表時にスティーブ・ジョブズ氏は「電話を再発明した」と語った様に当時の電話のイメージは一変してスマートフォンとなった。イノベーティブな製品とはiPhoneの様に各自の固有技術と他の何かを組み合わせることにより生まれる。従ってイノベーティブな製品開発には各自の固有技術を基礎にして、理想目標を実現することが求められる。例えば、続江戸職人綺譚10)に登場する江戸時代の職人の道具自慢話では、「腕のいい大工が道具に凝って稼ぎのほとんどを道具につぎこみ年がら年中素寒貧で・・」や、「荒仕工鉋(かんな)・・こちとら大工の肝玉をふるい立たせてくれなくちゃいけね」にある通り、職人は理想の作品を製作するために、己の技能の修練と技術を発揮するための道具の手入れに余念がなかった。また職人は、「自分の仕事に自分で値段をつけて、それが売れるようになりまして」11)とある通り、稼げる製品には技術とアイデアが必要であり、お客が求めるものだけを作っていたのでは稼げないことを知っていた。つまり、古来の職人はイノベーティブな製品を目指していた。イノベーションやイノベーティブな製品の創造には古来の職人気質と「整理、整頓、清掃」と「いざ鎌倉」の精神が必要である。
図9 キー付スマートフォン (筆者撮影)
8.製品の魅力の変化とイノベーション
ドラッカー氏やシュンペーター氏によるイノベーションの定義では、画期的な製品やサービスの導入により経済に新たな好況局面を創り出すこととある。つまり、イノベーションとは必ずしも製品を生み出すことではなく、販売方法やサービスも含まれる。しかしイノベーティブな製品に限ると、イノベーティブな製品の定義は次の2つである。一つは開発者が価格を設定できること、そして2つめは顧客の視界に無い製品であり、顧客は自分の財布からお金をやりくりしても捻出するほど、魅力ある製品であること。例えば顧客が食費を節約してでも欲しくなるくらい魅力ある製品がイノベーティブな製品である。本カテゴリに入る例は、初期のiPhoneである。しかし、製品は次第に一般化して、差別化することが難しくなる。製品の差別化が難しくなると価格競争になり、利益を得づらくなっていく。つまり製品の一般化(コモディティ化)が進む。一方、製品の成熟度が進むに従い、客層も変化する。図2のレイトマジョリティが製品を購入する状況になると、製品の差別化は難しく、価格競争となる。するとメーカは大量生産による薄利多売となり、大規模な生産設備の投資が必要となる。しかし、設備投資の時期を見誤ると経営的な大打撃を受ける。例えば液晶ディスプレイが成熟段階の製品であり、画面が精細度であったり、高品質なスピーカを搭載したりしていても、レイトマジョリティには製品の魅力が届かず、差別化にはならない。最近では、車が成熟段階に入っている。ビジネスとは、物やサービスの流れと対価がループを形成することである。対価は金額で評価されバリューとも呼ばれる。しかし、バリューは物の機能や性能だけで決まるものではなく、感覚的な要素にも左右される。バリューを左右する要因として、例えば、ネームバリューや希少性やコラボレーションがある。製品のバリューには顧客の主観が大きく影響する。筆者が商品に対する価値観の調査から、顧客の主観とは客の評価軸のことで製品が持つ評価軸が多いほど、バリューは高まることが解った11)。例えば、図10に元の製品と野球チーム名を冠したコラボ製品と他社の製品のバリューを示す。野球チーム名を冠したコラボ製品は価格が上がる分、価格の評価は下がる。しかしコラボ製品は満足性や楽しさ・記念度が上がるため、価値の大きさを示すグラフの大きさは元の製品を上回り、結果的に販売増が期待できる。最近の製造業で主流となっているリーン生産方式は無駄を省いてコストダウンを図る。また製造業で採用されているシックスシグマは作業を平準化して、むりとむらのないマニュアル主義による製造を実現して、コストダウンと歩留まりの向上を図る。リーン生産方式では仕様に対するオーバースペックも無駄となる。しかし、オーバースペックはイノベータに対する製品の魅力の1つであり、イノベーティブな製品に必要なものである。仕様第一主義、コスト第一主義ではイノベーティブな製品は生まれない。理由は仕様第一主義、コスト第一主義では顧客の主観に響かないからである。顧客の主観を刺激するイノベーティブな製品は理想目標を掲げることによりイメージが浮かぶ、そして、アイデアが浮かんだ時に直ぐに試作に取りかかるためには「整理、整頓、清掃」が必要である。イノベーティブな製品を生みだす姿勢を表現したものが日本の「整理、整頓、清掃」と「改善」である。
図10 製品の評価軸と評価の様子 (筆者作成)
謝辞
本書の作成あたり、助言と貴重な情報を頂いた鎌倉市鎌倉歴史文化交流館殿とオーテピア高知図書館の横山 有弐氏に感謝申し上げる。
引用文献
1) 岩波国語辞典、岩波書店、2019
2)尋常小學國語讀本1918(大正7年)卷1,文部省、国立国会図書館デジタルコレクション
3) 小松寿雄,新明解語源辞典,三省堂,2011
4) 西田友広,吾妻鏡,角川文庫,2021
5) 加納喜光,漢字語源語義辞典,1940
6) 平泉澄,明治の源流,時事通信社、国立国会図書館 デジタルコレクション,1970
7) 鉢木,国立国会図書館デジタルコレクション
8) 森延哉,駒とめて袖うちはらう-謡曲「鉢木」考,(株)文芸社,2010
9) 山本大(やまもと たけし),長宗我部元親 その謎と生涯,新人物往来社,2010
10) 佐江衆,続江戸職人綺譚,新潮文庫,2003
11) 永六輔,職人,岩波書店,1996
12) 持田信治,心理的価値評価によるパッケージデザイン,第67回 日本経営システム学会 全国研究発表大会予稿集,pp148-149,2021
チェコでの「5Sゲーム」講義見学
ヒット: 4 開く 保存
状況
チェコのプラハ経済大学にて、レゴの飛行機模型を用いた「5Sゲーム」の講義を見学した。
行動
制限時間内にどれだけ多く組み立てられるかを競う生産性向上の手法として、明確な目標設定がなされている様子を観察した。
関連ルール: A-34: 生産 E-1: 明
結果
海外における「5S」や「KAIZEN」が、対価を伴う業務規則やコスト最適化手法として定着していることを確認した。
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【分析:状況】
チェコのプラハ経済大学にて、レゴの飛行機模型を用いた「5Sゲーム」の講義を見学した。
【分析:行動】
制限時間内にどれだけ多く組み立てられるかを競う生産性向上の手法として、明確な目標設定がなされている様子を観察した。
【分析:結果】
海外における「5S」や「KAIZEN」が、対価を伴う業務規則やコスト最適化手法として定着していることを確認した。
----------------------------------------
【本文】
整理、整頓、清掃と改善の起源といざ鎌倉
The origins of the Sort, Tidy, Cleaning, Kaizen and Kamakura
持田 信治*
Shinji Mochida
「整理、整頓、清掃」は「改善」と共に日本の製造業の基本姿勢である。しかし、最近の製造業の「5S」と「改善」は単なるコストダウンの手法として理解されている。そこで、本書は「整理、整頓、清掃、改善」の起源が「いざ鎌倉と職人気質」にあることを述べた後、古来の「整理、整頓、清掃、改善」と近年の「5Sと改善」とを比較する。そして、「いざ鎌倉と職人気質」から今後のイノベーション推進のヒントを得たので報告する。
キーワード:5S、改善、リーン生産システム、イノベーション
Ⅰ.はじめに
概要
 筆者は2016年の夏にチェコのビンペルクにある精密機械製造工場を見学する機会があり、見学の最後に工場長から「リーン生産方式と改善は同じか」との質問を受けた。筆者は当時、「リーン生産方式」と「改善」は別ものであると理解しており、答えに窮した。「リーン生産方法」は代表的な生産方法の一つで、仕様を満たす範囲でコストダウンを計り利益を得る生産方法である。製造方法には漢字の「物つくり」とひらがなの「ものつくり」があり、漢字の「物つくり」は仕様が決まった「有体物」を作る方法であり、仕様を満たす範囲で安く作ることが求められる。欧米での生産方法の基本的な考え方は「リーン生産方法」に代表される「物つくり」である。「リーン生産方法」は仕様を満たす範囲で安く作る仕様第一主義である。欧米では「リーン生産方法」と「KAIZEN」は同じであり、「KAIZEN」はコストダウンの手法として理解されている。一方、ひらがなの「ものつくり」は辞書には「物」以外のものを作ることとある1)。「ものつくり」は仕様が決まっていない理想製品を作る、挑戦的な「ものつくり」である。「ものつくり」は理想製品作りを目指す終わりのない挑戦的な創作活動であり、最高の「改善」とアイデアが必要である。従って、日本古来の「改善」や「ものつくり」は、仕様第一主義の欧米の「物つくり」とは対局に位置する。「物つくり」は安い部品で、なるべく簡単に組み立てられる安い製造方法を目指している。日本古来の「改善」は職人言葉「細工は流々仕上げを御覧じろ」に代表される行動様式であり、アイデアを生かすためには、アイデアが浮かべば直ぐに試行錯誤を行うことが必要であり、直ぐに作業に取りかかるためには「整理、整頓、清掃」による整えられた作業環境と常に作業に取りかかれる姿勢が必要である。常に作業に取りかかれる姿勢は「いざ鎌倉」である。「いざ鎌倉」は謡曲「鉢の木」に出てくる言葉で室町時代から戦国時代を経て現代まで伝わっている言葉である。「整理、整頓、清掃」と「改善」は戦国時代から平和な江戸時代に入ると職人の精神となった。そこで、本書は「整理、整頓、清掃」と「いざ鎌倉」の起源を探りつつ、欧米に広がる有体物を作る「KAIZEN」と日本の理想目標を目指す「改善」の違いを述べる。そして、今後のイノベーション推進に向けた「整理、整頓、清掃」と「改善」に沿ったアプローチ方法を考察する。「整理、整頓、清掃」の略称は「3S」であり、「整理、整頓、清掃、清潔、躾」の略称は「5S」である。一般的には「5S」は「3S」を拡張したものと理解されている。しかし本書では日本古来の何時でも行動を起こす準備をしておく姿勢を「改善」と「整理、整頓、清掃」として記述する。一方、欧米の製造業に於ける効率化を目指す姿勢を「KAIZEN」と「5S」と記述する。
Ⅱ.整理、整頓、清掃と武士道そして改善へ
1.武士道と整理、整頓、清掃
筆者の記憶では小学校の教室の正面に「整理、整頓、清掃」と書かれた額があり、先生から「整理、整頓、清掃」とは何時でも勉強が出来る様に環境を整えておくことだとの説明があった。つまり「整理、整頓、清掃」とは自分の作業道具を常に「整理、整頓」しておき、「清掃」によりワークスペースを確保しておき、何時でも勉強が出来るようにしておくとのことであった。何時でも作業に取りかかれる様に準備をしておく「整理、整頓、清掃」の考えは「いざ、鎌倉」の精神に始まる。「整理、整頓、清掃」は昼夜いつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかるという精神で、日本の創意・工夫とアイデアを重視する考えの基礎となっている。また、「源義経の鵯越の逆落し」に由来する「夜討ち、朝駆け」もビジネス好機を逃さない精神であり「いざ、鎌倉」と共に日本のビジネス精神の基礎をなしている。「整理、整頓、清掃」の精神は侍が各自の得物を常に手入れと鍛錬を怠らず「いざ」に備える姿勢で、安土桃山時代から戦国時代、江戸を経て、武士から職人の精神に反映されて、現在に至っている。常に「いざ」に備える姿勢が「いざ鎌倉」であり、「いざ鎌倉」は鎌倉時代の謡曲「鉢木」に出てくる言葉である。大正時代の尋常小學國語讀本にも「鉢木」は登場しており2)、明治から大正時代にかけても常に「いざ」に備えることの必要性は語られていたことが解る。いつでも一大事への準備ができていることは近代の「出船の精神」にも受け継がれている。武士は奈良時代の743年(天平15年)に「墾田永年私財法」が制定されたことにより始まった。私有地が認められたことにより、有力な荘園主や貴族は荘園を守るために武装集団が必要となり、荘園を守るための専門武装集団が発生した。そして、「貴人の傍らにさぶらふ人」から、「侍」つまり「武士」ができた3)。平安時代に入り、源氏や平家の武将と武士団が出来た。更に鎌倉時代に至って、武家政権が誕生することとなり、鎌倉幕府は禅宗に傾倒して、武道、礼儀を重んじる「武士道」が確立された。武士道の中心的精神は以下の3点である。まず、いつでも一大事への準備ができていること。次ぎに自分を改善するために鍛錬を欠かさないこと。そしてコンディションをきちんと保つ「摂生」「 節制」「 礼節」を守ることである。そして、「武士道」では常に一大事に備える準備と得物の手入れが求められた。例えば、得物の手入れについては北条重時(1198-1261)が作成した『六波羅殿御家訓』に「腰刀の錆びたる持つべからず、~不断に心用心あるべしとある」4)。得物の手入れと鍛錬を怠らず、一大事に備えることは武士道の中心的精神であった。武士が武道を重んじて、武器の手入れと鍛錬に余念がなかった理由として、武士は戦闘集団であったことと、武士には警備の役目があったことがある。具体的には、貞永元年(1232年)に北条泰時が「御成敗式目」(ごせいばいしきもく)を制定して武家の基本法典が定まり、守護の職務が「大犯三箇条」(だいぼんさんかじょう)として定められたことによる。大犯三箇条では、守護の職務は、まず鎌倉・京都での大番役(おおばんやく:警固のこと)の招集と指揮監督を行うこと、そして謀反人の捜索と逮捕、殺害人の捜索することであった。つまり守護の職務には警備の役割があり、日頃の鍛錬と武器の手入れが必要であった。また、天文年間(1532年から1555年)に吾川郡弘岡城主であった吉良宣経(1514-1550頃)の定目(ていもく)にも武士のたしなみとして武具を整備し、武芸の修練に心がけて軍役に精励することと記載されている4)。そして、守護大名が戦国大名に代わるにつれ、武士道に於ける武勇の必要性が高まって行った。武勇の高まりに合わせて、日頃の得物の手入れと鍛錬を怠らず、常にいざに備える「整理、整頓、清掃」の武士道の姿勢が確立された。
2. 「ものつくり」と「物つくり」に於ける利益の考え方
武士道は自分を高め、精進することが基本であり、「整理、整頓、清掃」は武士道に由来している。時代が平和な江戸時代になり、自分を高め、精進する「整理、整頓、清掃」の精神は職人に広がって行った。職人の利益は各自の技術とアイデアに基づいていた。例えば、一般的な製品の価格は製品に要求される基本機能(図1のG)に顧客からの高度な要求(図1のH)を加えた製品の妥当な仕様(図1のD)に応じて設定される。そこで、製造者はコストダウン手法、例えばLean production system手法等を使用して得た製品コスト(図1のE)と製品の妥当な価格(図1のG)との差を得て利益(図1のH)を確保する。つまり、妥当な製品仕様(図1のD)を維持する範囲で製作時間(図1のJ)が進むに沿ってコストダウンを図ることが「KAIZEN」であり、「KAIZEN」はより安く製品を作る方法を追求する。具体的には「KAIZEN」は作業の単純化と作業の一律化を進め、製作マニュアルを作成して、人件費の安い作業者を使用できるようにしたり、製品をより簡単な作りにしたりして、コストダウンを追求する。一方、古来の職人は顧客の視界にある製品は顧客が価格を決めてしまうので、類似品との価格競争となり、利益が得にくいこと、そして自分の持つ技術を発揮し難いことを知っており、より自分の技術が生かせる創造的な仕事を目指した。例えば、職人言葉にある「簡単な仕事はしない」が職人の利益に対する考え方を物語っている。また「細工は流々、仕上げをご覧じろ」は、作品の製作技術は職人別であり、仕上げで勝負することを示している。職人は製品ではなく、職人は自らの技術とアイデアを用いて、顧客の視界を超えた作品を製作して、顧客の所有欲を満足させることにより高い利益を得ていた(図1のF)。図2にM・ロジャースのイノベータ理論を示す。図2は顧客全体を100%として、客層別の割合を模式的に示している。職人は、図2に示すイノベータを相手にすると利益が得られることを知っていた。画期的な製品、つまりイノベーティブな製品はまず、新しい物好きなイノベータが購入する。イノベータは価格を気にしないので、売り手は自由に価格設定ができ、利益を得る。いわゆる先駆者利益である。そして製品が成熟して一般化すると客層は最終的には図2の4層目にあるレイトマジョリティに変化する。レイトマジョリティは高度な機能には感心がなく、基本機能がありさえすれば、より安いものを購入する。
図1 職人の利益の考え方
図2 エベレト・M・ロジャースのイノベータ理論 (理論に基づき筆者作成)
3.「整理、整頓、清掃」と「改善」の広がり
日本古来の「整理、整頓、清掃」と「改善」は理想目標を目指す。例えば、「整理、整頓、清掃」の「整」は古典に「整は正なり」とあり、ゆがんだ形を真っ直ぐにすることが「整」であり「正」である。更に「整」は真っ直ぐにする、不純物を取り除くという語源から5)、「整理」は乱れたものを整える、または不必要なものを取り除くとの意味である6)。一方、「改」の語源は誤りを改めて正しくすることであり、「改善」は「改良」などと同様にreformやimproveの訳語として明治時代に作られた和製漢語である3)。つまり、「整理、整頓、清掃」や「改善」はよい方向へ改めることであり、終わりのない活動である1)。ただし、「改善」は先に述べた様に明治時代に作られた言葉であるため、武士道では精進などと呼ばれたと思われる。精進は大乗仏教の六波羅蜜修行の4番目の修行であり、悟りを目指す終わりのない活動である3)。一方、海外で使われている「5S」と「KAIZEN」は利益創出のためのコスト最適化手法であり、バリュー(金銭的価値)を高めることを求めており、明確に目標利益の創出を目指す活動である。筆者は図3に示すチェコの計測機械メーカの工場を見学する機会があり、工場長の話から海外では「改善」はコスト最適化手法として知られていることが理解できた。また、チェコのプラハ経済大学(Prague University of Economics and Business)にて5Sゲームという講義を見学した(図4参照)。講義では「改善」と「無駄」どちらも生産性向上の手法として説明されており、目標は明確であった。具体的には5Sゲームではレゴの飛行機模型を教材にして、数人でチームを組み効果的な組み立て方法を考え、どのチームがある制限時間内に多く組み立てるかを競う講義であった。
図3 チェコのビンペルクにあるローデ・シュワルツの工場(筆者撮影)
図45Sゲーム講義の様子 その1(筆者撮影)   5Sゲーム講義の様子 その2(筆者撮影)
海外では「5S」も広く知られており、「5S」の最後の2つの「S」は「躾」と「清潔」である。筆者がHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)に係わる食品関係の業務に従事している時には、「躾」とは作業着、エプロン、マスク、帽子を付けてほこりを落としてから食品工場に入ることであり、白線を踏まないなどの職場のルールを守る習慣を身に付けることが「躾」であった。そして、食品工場の「清潔」とは手を石けんで洗い、更にアルコールで消毒を行う、いわゆる化学的な清掃であった。「清潔」を改善活動の本で調べると「5S」を維持することとある。また、「清掃」と「清潔」の英語訳は同じ「Cleaning」であり区別がない。日本の「整理、整頓、清掃」はいつでも作業に取りかかるための心構えであるのに対して、海外で広がる「5S」は製造現場のルールとなっている。心構えは個人の行動指針であるのに対して、ルールは業務の規則である。例えば、チェコのある工場で「5S」を実践するとのことで、始業前に出社して作業準備するよう要請した所、作業準備は業務の一部であり、対価が支払らわれない作業はできないと作業者に断られたそうである。理想を求める「改善」と「整理、整頓、清掃」の自主的心構えは、明確な額の利益を追求する「KAIZEN」と対価が必要な「5S」とは全く別である。
4.整理、整頓、清掃」といざ鎌倉
「整理、整頓、清掃」とはいつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかる心構えであり、「いざ鎌倉」の精神に由来する。「いざ鎌倉」は室町時代に成立した謡曲「鉢木」に出てくる言葉で、鎌倉に何かあればすぐに鎌倉に駆け付けるというものである。当時、すべての武士が鎌倉に住んでいたわけではないため、常に鎌倉での争いへの準備が必要であったことが「いざ鎌倉」であった。ただ、鎌倉に駆けつけるのは恩賞、つまり利益を得るためであり、「いざ鎌倉」は利益のためであった。謡曲「鉢木」の主人公の佐野源左衛門常世が、宿を貸した旅僧(諸国行脚中の執権北条時頼(最明寺入道))に対して語った言葉に「今にても鎌倉に一大事あらば、千切れたりとも具足を着け、錆びたりとも長刀を持ち、痩せたりとも馬に乗り、一番に馳せ参じ、合戦始らば一番に敵と討合ひて死なん覚悟なれど」がある。この有名な言葉は当時の御家人は、鎌倉で何か騒動が起こったときには、すぐに鎌倉にはせ参じる体勢であったことを現している6)7)8)。「いざ鎌倉」の言葉が登場する「鉢木」は室町時代の観阿弥(1334~1384)作又は世阿弥の作と言われており、2度の元寇の後の作品である。元軍侵攻の頃、武士は一大事に備えて、得物の手入れと鍛錬に余念の無い状況であった。当時、鎌倉幕府は刀鍛冶を鎌倉に集める等、日本刀の製造を支援した。そして、太刀と槍は2度の元寇の後、めざましい性能向上があり、名刀「正宗」が登場するのもこの時代である。
5.「鉢木」成立の時代背景
「鉢木」からわかるのは、まず鎌倉では騒動が頻発したことと、次ぎに鎌倉に一大事ありと聞けば、諸国の御家人は先を争って馳せ参じ、幕府の着到状(出席簿)に姓名を記録して恩賞を期待していたことである。このようなことは鎌倉時代特有のことで、他の時代にはあまりみられないため、一大事に備える言葉として、「いざ鎌倉」という言葉は現在まで残ったとも考えられる。一大事ありと聞いて、御家人たちが鎌倉に駆けつけたという記述は、鎌倉幕府の歴史書である『吾妻鏡』4)に散見される。例えば吾妻鏡の元久2年(1205)にある「畠山重忠、討たれるの」項には「軍勢が由比ヶ浜の辺りを先を争って走った」とあり、先駆けの様子が表現されている。しかし、争いが最も多いのは、源頼朝の時代ではなく、鎌倉中期の北条時頼(1227-1263)の時代であった。北条時頼は摂家将軍を追放した上、三浦氏を滅ぼし、北条氏専制政治への道を開いた。「時頼」の時代は、いつ何が起こるかわからない不安定な社会状況であった。謡曲「鉢の木」には北条時頼が登場することから「いざ鎌倉」は、当時の不安定な史実を反映している。「鎌倉幕府の歴史を記載した「吾妻鏡」には、源頼朝が挙兵した治承4年(1180)から六代将軍宗尊親王が鎌倉から京都に送還された文永3年(1266)までの歴史を記載している。一方、「鉢木」は観阿弥(1334~1384)の作と言われており、「鉢の木」は「吾妻鏡」の後の作であるため、鎌倉武士の精神の全体像を反映していると言える。また、北条幕府に起きた2度に渡る元寇の役も、常に戦闘に備える精神である「いざ鎌倉」が維持された理由と考えられる。2度に渡る元寇とは文永の役(1274)と弘安の役(1281)であり、当時、北条時宗(1251-1284)は2度の元の軍を退けた。元寇の役に於ける勝利は北条武士の大きな働きと神風によるものとされている4) 。福岡市の東公園には元寇を退けたとされる日蓮聖人の像(図5参照)があり、日蓮聖人の神風は現在まで語り継がれている。日蓮聖人は「立正安国論(1260)」を北条時頼(1227-1263)に宛てに送り、外的の襲来を警告したとされており、「立正安国論」も当時が不安定な情勢であったことを示している。2度の元寇は日本の武士の装備にも変化をもたらした。元軍の鎧は真綿を何層も重ねた構造であり、当時の軟鉄で作られた武士の太刀では切ることが出来なかった。そこで、鎌倉幕府は各地から刀匠を集めて太刀作りを奨励した。そして刀匠、五郎入道正宗がついに日本刀の製造方法を完成させた。日本刀の製造方法は軟鉄の鉄に鋼鉄を巻いて、鍛えた後、焼き入れをする工程を繰り返す方法であり、良く切れるが、折れない日本刀が完成した。名刀正宗の完成である(元寇記念館資料より)。鎌倉幕府後の武士にも一大事に備える心意気があったことは土佐の「一領具足」にも見られる。「一領具足」は半農の武士であり、長宗我部元親(1539-1599)が安芸国虎攻めにあたり、兵力増強のために思いついた武士の身分である。「一領具足」は耕作時に槍の柄に草鞋(わらじ)と兵糧をくくりつけて田の畦(あぜ)に立てておき、有事の時には武装して直ぐさま、駆け付けるという生活であり、土佐物語には「一領具足と申すは、僅かの田地を領して、常には守護へ動仕(きんし)もなく役もなく、己が領地に引き籠り、自らたがやし、くさぎり、諸士の交はりもせされば、礼儀もなく作法もなく、明け暮れ武勇のみを事として、田に出づるにも、鎗の柄に草桂・兵糧を括り付け、田の畔に立て置き、すはと言へば鎌鍬を投げ捨て走り行く。鎧一領にて着替への領もなく、馬一疋にて乗り替へもなく、自身走り廻りければ一領具足と名付けたり。弓・鉄胞・太刀打ちに調練して、死生知らずの野武士なり」とある9)。「一領具足」は有事の際には戦場に馳せ向い、弓、鉄砲、大刀打に鍛錬をして、勇猛かつ命知らずの野武士であった。「いざ鎌倉」の「いざ」と「一領具足」の「すは」は一大事に備える鎌倉幕府から戦国時代の武士の共通の心意気であった。
6.鎌倉幕府の「いざ鎌倉」はどこに
鎌倉幕府に始まる武家政治は、源頼朝が1192年(建久3年)に朝廷から「征夷大将軍」に任命され、鎌倉幕府を開いたことから始まる(*所説あり)。源頼朝は治承4年(1180年)、伊豆で反平氏の軍を挙げた頼朝を討つため京からやってきた平家軍を富士川の戦いで破った。そして源頼朝は図6にある鎌倉の大蔵(雪ノ下)の屋敷に入り、鎌倉が武家政権の政治の中心地となった。更に源頼朝は図7に示す元八幡を現在の鶴岡八幡宮の地に移して町づくりの中心とした。最初の幕府は大倉幕府(1180-1225)であり、次に幕府は宇都宮辻子幕府(1225-1236)となり、更に幕府は若宮大路幕府(1236-1333)へと変わった。また頼朝は図8の永福寺(ようふくじ)を建立して、合戦で亡くなった将兵の鎮魂のために建立した。鎌倉幕府では禅宗が奨励され、「武士道」の精進の精神が成立した。そして、「武士道」は「鉢木」に描かれている様に常に得物を手入れと鍛錬を怠らず、一大事に備えることが基本姿勢となった。  
図6幕府跡(左から大倉幕府、宇都宮辻子幕府、若宮大路幕府)(筆者撮影)
図7元八幡 (筆者撮影)         図8永福寺跡 (筆者撮影)
7.職人気質
「整理、整頓、清掃」はアイデアが浮かんだ時に直ぐに作業に取りかかる精神であり、「改善」と共に、唯一の作品を求める日本古来の職人の精神である。一方、イノベーティブな商品も顧客の視界にない、唯一の製品である。21世紀最大のイノベーティブな製品の一つにスマートフォンがある。現在のスマートフォンの原型は2007年にスティーブ・ジョブズ氏が発表したiPhoneである。iPhoneはタッチパネルとグラフィカルインターフェースを備えていた。初期のスマートフォンは図9に示す様に下や横に小さなキーボードを備えた物で、使い勝手は良くなかった。また当時の多くの携帯電話は折りたたみ型の電話であり、iPhoneは多くのユーザにとって見たことのない電話であった。しかし、iPhoneのグラフィカルインターフェースは1984年にAppleが発表したマッキントッシュで採用されており、更にマッキントッシュはパーソナルコンピュータでは初めて、ポインティングデバイスとしてマウスを採用していた。そして、スティーブ・ジョブズ氏はグラフィカルインターフェース技術を電話に転用することによりiPhoneを完成させた。iPhone発表時にスティーブ・ジョブズ氏は「電話を再発明した」と語った様に当時の電話のイメージは一変してスマートフォンとなった。イノベーティブな製品とはiPhoneの様に各自の固有技術と他の何かを組み合わせることにより生まれる。従ってイノベーティブな製品開発には各自の固有技術を基礎にして、理想目標を実現することが求められる。例えば、続江戸職人綺譚10)に登場する江戸時代の職人の道具自慢話では、「腕のいい大工が道具に凝って稼ぎのほとんどを道具につぎこみ年がら年中素寒貧で・・」や、「荒仕工鉋(かんな)・・こちとら大工の肝玉をふるい立たせてくれなくちゃいけね」にある通り、職人は理想の作品を製作するために、己の技能の修練と技術を発揮するための道具の手入れに余念がなかった。また職人は、「自分の仕事に自分で値段をつけて、それが売れるようになりまして」11)とある通り、稼げる製品には技術とアイデアが必要であり、お客が求めるものだけを作っていたのでは稼げないことを知っていた。つまり、古来の職人はイノベーティブな製品を目指していた。イノベーションやイノベーティブな製品の創造には古来の職人気質と「整理、整頓、清掃」と「いざ鎌倉」の精神が必要である。
図9 キー付スマートフォン (筆者撮影)
8.製品の魅力の変化とイノベーション
ドラッカー氏やシュンペーター氏によるイノベーションの定義では、画期的な製品やサービスの導入により経済に新たな好況局面を創り出すこととある。つまり、イノベーションとは必ずしも製品を生み出すことではなく、販売方法やサービスも含まれる。しかしイノベーティブな製品に限ると、イノベーティブな製品の定義は次の2つである。一つは開発者が価格を設定できること、そして2つめは顧客の視界に無い製品であり、顧客は自分の財布からお金をやりくりしても捻出するほど、魅力ある製品であること。例えば顧客が食費を節約してでも欲しくなるくらい魅力ある製品がイノベーティブな製品である。本カテゴリに入る例は、初期のiPhoneである。しかし、製品は次第に一般化して、差別化することが難しくなる。製品の差別化が難しくなると価格競争になり、利益を得づらくなっていく。つまり製品の一般化(コモディティ化)が進む。一方、製品の成熟度が進むに従い、客層も変化する。図2のレイトマジョリティが製品を購入する状況になると、製品の差別化は難しく、価格競争となる。するとメーカは大量生産による薄利多売となり、大規模な生産設備の投資が必要となる。しかし、設備投資の時期を見誤ると経営的な大打撃を受ける。例えば液晶ディスプレイが成熟段階の製品であり、画面が精細度であったり、高品質なスピーカを搭載したりしていても、レイトマジョリティには製品の魅力が届かず、差別化にはならない。最近では、車が成熟段階に入っている。ビジネスとは、物やサービスの流れと対価がループを形成することである。対価は金額で評価されバリューとも呼ばれる。しかし、バリューは物の機能や性能だけで決まるものではなく、感覚的な要素にも左右される。バリューを左右する要因として、例えば、ネームバリューや希少性やコラボレーションがある。製品のバリューには顧客の主観が大きく影響する。筆者が商品に対する価値観の調査から、顧客の主観とは客の評価軸のことで製品が持つ評価軸が多いほど、バリューは高まることが解った11)。例えば、図10に元の製品と野球チーム名を冠したコラボ製品と他社の製品のバリューを示す。野球チーム名を冠したコラボ製品は価格が上がる分、価格の評価は下がる。しかしコラボ製品は満足性や楽しさ・記念度が上がるため、価値の大きさを示すグラフの大きさは元の製品を上回り、結果的に販売増が期待できる。最近の製造業で主流となっているリーン生産方式は無駄を省いてコストダウンを図る。また製造業で採用されているシックスシグマは作業を平準化して、むりとむらのないマニュアル主義による製造を実現して、コストダウンと歩留まりの向上を図る。リーン生産方式では仕様に対するオーバースペックも無駄となる。しかし、オーバースペックはイノベータに対する製品の魅力の1つであり、イノベーティブな製品に必要なものである。仕様第一主義、コスト第一主義ではイノベーティブな製品は生まれない。理由は仕様第一主義、コスト第一主義では顧客の主観に響かないからである。顧客の主観を刺激するイノベーティブな製品は理想目標を掲げることによりイメージが浮かぶ、そして、アイデアが浮かんだ時に直ぐに試作に取りかかるためには「整理、整頓、清掃」が必要である。イノベーティブな製品を生みだす姿勢を表現したものが日本の「整理、整頓、清掃」と「改善」である。
図10 製品の評価軸と評価の様子 (筆者作成)
謝辞
本書の作成あたり、助言と貴重な情報を頂いた鎌倉市鎌倉歴史文化交流館殿とオーテピア高知図書館の横山 有弐氏に感謝申し上げる。
引用文献
1) 岩波国語辞典、岩波書店、2019
2)尋常小學國語讀本1918(大正7年)卷1,文部省、国立国会図書館デジタルコレクション
3) 小松寿雄,新明解語源辞典,三省堂,2011
4) 西田友広,吾妻鏡,角川文庫,2021
5) 加納喜光,漢字語源語義辞典,1940
6) 平泉澄,明治の源流,時事通信社、国立国会図書館 デジタルコレクション,1970
7) 鉢木,国立国会図書館デジタルコレクション
8) 森延哉,駒とめて袖うちはらう-謡曲「鉢木」考,(株)文芸社,2010
9) 山本大(やまもと たけし),長宗我部元親 その謎と生涯,新人物往来社,2010
10) 佐江衆,続江戸職人綺譚,新潮文庫,2003
11) 永六輔,職人,岩波書店,1996
12) 持田信治,心理的価値評価によるパッケージデザイン,第67回 日本経営システム学会 全国研究発表大会予稿集,pp148-149,2021
海外工場での5S実践と対価の認識
ヒット: 4 開く 保存
状況
チェコの工場で「5S」を実践する際、始業前の作業準備を要請した。
関連ルール: N-1: 工場
行動
作業者に対し、始業前の準備を求めた。
結果
「作業準備は業務の一部であり、対価が支払われない作業はできない」と断られ、自主的な心構えとしての日本の「整理・整頓・清掃」との違いを痛感した。
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【分析:状況】
チェコの工場で「5S」を実践する際、始業前の作業準備を要請した。
【分析:行動】
作業者に対し、始業前の準備を求めた。
【分析:結果】
「作業準備は業務の一部であり、対価が支払われない作業はできない」と断られ、自主的な心構えとしての日本の「整理・整頓・清掃」との違いを痛感した。
----------------------------------------
【本文】
整理、整頓、清掃と改善の起源といざ鎌倉
The origins of the Sort, Tidy, Cleaning, Kaizen and Kamakura
持田 信治*
Shinji Mochida
「整理、整頓、清掃」は「改善」と共に日本の製造業の基本姿勢である。しかし、最近の製造業の「5S」と「改善」は単なるコストダウンの手法として理解されている。そこで、本書は「整理、整頓、清掃、改善」の起源が「いざ鎌倉と職人気質」にあることを述べた後、古来の「整理、整頓、清掃、改善」と近年の「5Sと改善」とを比較する。そして、「いざ鎌倉と職人気質」から今後のイノベーション推進のヒントを得たので報告する。
キーワード:5S、改善、リーン生産システム、イノベーション
Ⅰ.はじめに
概要
 筆者は2016年の夏にチェコのビンペルクにある精密機械製造工場を見学する機会があり、見学の最後に工場長から「リーン生産方式と改善は同じか」との質問を受けた。筆者は当時、「リーン生産方式」と「改善」は別ものであると理解しており、答えに窮した。「リーン生産方法」は代表的な生産方法の一つで、仕様を満たす範囲でコストダウンを計り利益を得る生産方法である。製造方法には漢字の「物つくり」とひらがなの「ものつくり」があり、漢字の「物つくり」は仕様が決まった「有体物」を作る方法であり、仕様を満たす範囲で安く作ることが求められる。欧米での生産方法の基本的な考え方は「リーン生産方法」に代表される「物つくり」である。「リーン生産方法」は仕様を満たす範囲で安く作る仕様第一主義である。欧米では「リーン生産方法」と「KAIZEN」は同じであり、「KAIZEN」はコストダウンの手法として理解されている。一方、ひらがなの「ものつくり」は辞書には「物」以外のものを作ることとある1)。「ものつくり」は仕様が決まっていない理想製品を作る、挑戦的な「ものつくり」である。「ものつくり」は理想製品作りを目指す終わりのない挑戦的な創作活動であり、最高の「改善」とアイデアが必要である。従って、日本古来の「改善」や「ものつくり」は、仕様第一主義の欧米の「物つくり」とは対局に位置する。「物つくり」は安い部品で、なるべく簡単に組み立てられる安い製造方法を目指している。日本古来の「改善」は職人言葉「細工は流々仕上げを御覧じろ」に代表される行動様式であり、アイデアを生かすためには、アイデアが浮かべば直ぐに試行錯誤を行うことが必要であり、直ぐに作業に取りかかるためには「整理、整頓、清掃」による整えられた作業環境と常に作業に取りかかれる姿勢が必要である。常に作業に取りかかれる姿勢は「いざ鎌倉」である。「いざ鎌倉」は謡曲「鉢の木」に出てくる言葉で室町時代から戦国時代を経て現代まで伝わっている言葉である。「整理、整頓、清掃」と「改善」は戦国時代から平和な江戸時代に入ると職人の精神となった。そこで、本書は「整理、整頓、清掃」と「いざ鎌倉」の起源を探りつつ、欧米に広がる有体物を作る「KAIZEN」と日本の理想目標を目指す「改善」の違いを述べる。そして、今後のイノベーション推進に向けた「整理、整頓、清掃」と「改善」に沿ったアプローチ方法を考察する。「整理、整頓、清掃」の略称は「3S」であり、「整理、整頓、清掃、清潔、躾」の略称は「5S」である。一般的には「5S」は「3S」を拡張したものと理解されている。しかし本書では日本古来の何時でも行動を起こす準備をしておく姿勢を「改善」と「整理、整頓、清掃」として記述する。一方、欧米の製造業に於ける効率化を目指す姿勢を「KAIZEN」と「5S」と記述する。
Ⅱ.整理、整頓、清掃と武士道そして改善へ
1.武士道と整理、整頓、清掃
筆者の記憶では小学校の教室の正面に「整理、整頓、清掃」と書かれた額があり、先生から「整理、整頓、清掃」とは何時でも勉強が出来る様に環境を整えておくことだとの説明があった。つまり「整理、整頓、清掃」とは自分の作業道具を常に「整理、整頓」しておき、「清掃」によりワークスペースを確保しておき、何時でも勉強が出来るようにしておくとのことであった。何時でも作業に取りかかれる様に準備をしておく「整理、整頓、清掃」の考えは「いざ、鎌倉」の精神に始まる。「整理、整頓、清掃」は昼夜いつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかるという精神で、日本の創意・工夫とアイデアを重視する考えの基礎となっている。また、「源義経の鵯越の逆落し」に由来する「夜討ち、朝駆け」もビジネス好機を逃さない精神であり「いざ、鎌倉」と共に日本のビジネス精神の基礎をなしている。「整理、整頓、清掃」の精神は侍が各自の得物を常に手入れと鍛錬を怠らず「いざ」に備える姿勢で、安土桃山時代から戦国時代、江戸を経て、武士から職人の精神に反映されて、現在に至っている。常に「いざ」に備える姿勢が「いざ鎌倉」であり、「いざ鎌倉」は鎌倉時代の謡曲「鉢木」に出てくる言葉である。大正時代の尋常小學國語讀本にも「鉢木」は登場しており2)、明治から大正時代にかけても常に「いざ」に備えることの必要性は語られていたことが解る。いつでも一大事への準備ができていることは近代の「出船の精神」にも受け継がれている。武士は奈良時代の743年(天平15年)に「墾田永年私財法」が制定されたことにより始まった。私有地が認められたことにより、有力な荘園主や貴族は荘園を守るために武装集団が必要となり、荘園を守るための専門武装集団が発生した。そして、「貴人の傍らにさぶらふ人」から、「侍」つまり「武士」ができた3)。平安時代に入り、源氏や平家の武将と武士団が出来た。更に鎌倉時代に至って、武家政権が誕生することとなり、鎌倉幕府は禅宗に傾倒して、武道、礼儀を重んじる「武士道」が確立された。武士道の中心的精神は以下の3点である。まず、いつでも一大事への準備ができていること。次ぎに自分を改善するために鍛錬を欠かさないこと。そしてコンディションをきちんと保つ「摂生」「 節制」「 礼節」を守ることである。そして、「武士道」では常に一大事に備える準備と得物の手入れが求められた。例えば、得物の手入れについては北条重時(1198-1261)が作成した『六波羅殿御家訓』に「腰刀の錆びたる持つべからず、~不断に心用心あるべしとある」4)。得物の手入れと鍛錬を怠らず、一大事に備えることは武士道の中心的精神であった。武士が武道を重んじて、武器の手入れと鍛錬に余念がなかった理由として、武士は戦闘集団であったことと、武士には警備の役目があったことがある。具体的には、貞永元年(1232年)に北条泰時が「御成敗式目」(ごせいばいしきもく)を制定して武家の基本法典が定まり、守護の職務が「大犯三箇条」(だいぼんさんかじょう)として定められたことによる。大犯三箇条では、守護の職務は、まず鎌倉・京都での大番役(おおばんやく:警固のこと)の招集と指揮監督を行うこと、そして謀反人の捜索と逮捕、殺害人の捜索することであった。つまり守護の職務には警備の役割があり、日頃の鍛錬と武器の手入れが必要であった。また、天文年間(1532年から1555年)に吾川郡弘岡城主であった吉良宣経(1514-1550頃)の定目(ていもく)にも武士のたしなみとして武具を整備し、武芸の修練に心がけて軍役に精励することと記載されている4)。そして、守護大名が戦国大名に代わるにつれ、武士道に於ける武勇の必要性が高まって行った。武勇の高まりに合わせて、日頃の得物の手入れと鍛錬を怠らず、常にいざに備える「整理、整頓、清掃」の武士道の姿勢が確立された。
2. 「ものつくり」と「物つくり」に於ける利益の考え方
武士道は自分を高め、精進することが基本であり、「整理、整頓、清掃」は武士道に由来している。時代が平和な江戸時代になり、自分を高め、精進する「整理、整頓、清掃」の精神は職人に広がって行った。職人の利益は各自の技術とアイデアに基づいていた。例えば、一般的な製品の価格は製品に要求される基本機能(図1のG)に顧客からの高度な要求(図1のH)を加えた製品の妥当な仕様(図1のD)に応じて設定される。そこで、製造者はコストダウン手法、例えばLean production system手法等を使用して得た製品コスト(図1のE)と製品の妥当な価格(図1のG)との差を得て利益(図1のH)を確保する。つまり、妥当な製品仕様(図1のD)を維持する範囲で製作時間(図1のJ)が進むに沿ってコストダウンを図ることが「KAIZEN」であり、「KAIZEN」はより安く製品を作る方法を追求する。具体的には「KAIZEN」は作業の単純化と作業の一律化を進め、製作マニュアルを作成して、人件費の安い作業者を使用できるようにしたり、製品をより簡単な作りにしたりして、コストダウンを追求する。一方、古来の職人は顧客の視界にある製品は顧客が価格を決めてしまうので、類似品との価格競争となり、利益が得にくいこと、そして自分の持つ技術を発揮し難いことを知っており、より自分の技術が生かせる創造的な仕事を目指した。例えば、職人言葉にある「簡単な仕事はしない」が職人の利益に対する考え方を物語っている。また「細工は流々、仕上げをご覧じろ」は、作品の製作技術は職人別であり、仕上げで勝負することを示している。職人は製品ではなく、職人は自らの技術とアイデアを用いて、顧客の視界を超えた作品を製作して、顧客の所有欲を満足させることにより高い利益を得ていた(図1のF)。図2にM・ロジャースのイノベータ理論を示す。図2は顧客全体を100%として、客層別の割合を模式的に示している。職人は、図2に示すイノベータを相手にすると利益が得られることを知っていた。画期的な製品、つまりイノベーティブな製品はまず、新しい物好きなイノベータが購入する。イノベータは価格を気にしないので、売り手は自由に価格設定ができ、利益を得る。いわゆる先駆者利益である。そして製品が成熟して一般化すると客層は最終的には図2の4層目にあるレイトマジョリティに変化する。レイトマジョリティは高度な機能には感心がなく、基本機能がありさえすれば、より安いものを購入する。
図1 職人の利益の考え方
図2 エベレト・M・ロジャースのイノベータ理論 (理論に基づき筆者作成)
3.「整理、整頓、清掃」と「改善」の広がり
日本古来の「整理、整頓、清掃」と「改善」は理想目標を目指す。例えば、「整理、整頓、清掃」の「整」は古典に「整は正なり」とあり、ゆがんだ形を真っ直ぐにすることが「整」であり「正」である。更に「整」は真っ直ぐにする、不純物を取り除くという語源から5)、「整理」は乱れたものを整える、または不必要なものを取り除くとの意味である6)。一方、「改」の語源は誤りを改めて正しくすることであり、「改善」は「改良」などと同様にreformやimproveの訳語として明治時代に作られた和製漢語である3)。つまり、「整理、整頓、清掃」や「改善」はよい方向へ改めることであり、終わりのない活動である1)。ただし、「改善」は先に述べた様に明治時代に作られた言葉であるため、武士道では精進などと呼ばれたと思われる。精進は大乗仏教の六波羅蜜修行の4番目の修行であり、悟りを目指す終わりのない活動である3)。一方、海外で使われている「5S」と「KAIZEN」は利益創出のためのコスト最適化手法であり、バリュー(金銭的価値)を高めることを求めており、明確に目標利益の創出を目指す活動である。筆者は図3に示すチェコの計測機械メーカの工場を見学する機会があり、工場長の話から海外では「改善」はコスト最適化手法として知られていることが理解できた。また、チェコのプラハ経済大学(Prague University of Economics and Business)にて5Sゲームという講義を見学した(図4参照)。講義では「改善」と「無駄」どちらも生産性向上の手法として説明されており、目標は明確であった。具体的には5Sゲームではレゴの飛行機模型を教材にして、数人でチームを組み効果的な組み立て方法を考え、どのチームがある制限時間内に多く組み立てるかを競う講義であった。
図3 チェコのビンペルクにあるローデ・シュワルツの工場(筆者撮影)
図45Sゲーム講義の様子 その1(筆者撮影)   5Sゲーム講義の様子 その2(筆者撮影)
海外では「5S」も広く知られており、「5S」の最後の2つの「S」は「躾」と「清潔」である。筆者がHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)に係わる食品関係の業務に従事している時には、「躾」とは作業着、エプロン、マスク、帽子を付けてほこりを落としてから食品工場に入ることであり、白線を踏まないなどの職場のルールを守る習慣を身に付けることが「躾」であった。そして、食品工場の「清潔」とは手を石けんで洗い、更にアルコールで消毒を行う、いわゆる化学的な清掃であった。「清潔」を改善活動の本で調べると「5S」を維持することとある。また、「清掃」と「清潔」の英語訳は同じ「Cleaning」であり区別がない。日本の「整理、整頓、清掃」はいつでも作業に取りかかるための心構えであるのに対して、海外で広がる「5S」は製造現場のルールとなっている。心構えは個人の行動指針であるのに対して、ルールは業務の規則である。例えば、チェコのある工場で「5S」を実践するとのことで、始業前に出社して作業準備するよう要請した所、作業準備は業務の一部であり、対価が支払らわれない作業はできないと作業者に断られたそうである。理想を求める「改善」と「整理、整頓、清掃」の自主的心構えは、明確な額の利益を追求する「KAIZEN」と対価が必要な「5S」とは全く別である。
4.整理、整頓、清掃」といざ鎌倉
「整理、整頓、清掃」とはいつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかる心構えであり、「いざ鎌倉」の精神に由来する。「いざ鎌倉」は室町時代に成立した謡曲「鉢木」に出てくる言葉で、鎌倉に何かあればすぐに鎌倉に駆け付けるというものである。当時、すべての武士が鎌倉に住んでいたわけではないため、常に鎌倉での争いへの準備が必要であったことが「いざ鎌倉」であった。ただ、鎌倉に駆けつけるのは恩賞、つまり利益を得るためであり、「いざ鎌倉」は利益のためであった。謡曲「鉢木」の主人公の佐野源左衛門常世が、宿を貸した旅僧(諸国行脚中の執権北条時頼(最明寺入道))に対して語った言葉に「今にても鎌倉に一大事あらば、千切れたりとも具足を着け、錆びたりとも長刀を持ち、痩せたりとも馬に乗り、一番に馳せ参じ、合戦始らば一番に敵と討合ひて死なん覚悟なれど」がある。この有名な言葉は当時の御家人は、鎌倉で何か騒動が起こったときには、すぐに鎌倉にはせ参じる体勢であったことを現している6)7)8)。「いざ鎌倉」の言葉が登場する「鉢木」は室町時代の観阿弥(1334~1384)作又は世阿弥の作と言われており、2度の元寇の後の作品である。元軍侵攻の頃、武士は一大事に備えて、得物の手入れと鍛錬に余念の無い状況であった。当時、鎌倉幕府は刀鍛冶を鎌倉に集める等、日本刀の製造を支援した。そして、太刀と槍は2度の元寇の後、めざましい性能向上があり、名刀「正宗」が登場するのもこの時代である。
5.「鉢木」成立の時代背景
「鉢木」からわかるのは、まず鎌倉では騒動が頻発したことと、次ぎに鎌倉に一大事ありと聞けば、諸国の御家人は先を争って馳せ参じ、幕府の着到状(出席簿)に姓名を記録して恩賞を期待していたことである。このようなことは鎌倉時代特有のことで、他の時代にはあまりみられないため、一大事に備える言葉として、「いざ鎌倉」という言葉は現在まで残ったとも考えられる。一大事ありと聞いて、御家人たちが鎌倉に駆けつけたという記述は、鎌倉幕府の歴史書である『吾妻鏡』4)に散見される。例えば吾妻鏡の元久2年(1205)にある「畠山重忠、討たれるの」項には「軍勢が由比ヶ浜の辺りを先を争って走った」とあり、先駆けの様子が表現されている。しかし、争いが最も多いのは、源頼朝の時代ではなく、鎌倉中期の北条時頼(1227-1263)の時代であった。北条時頼は摂家将軍を追放した上、三浦氏を滅ぼし、北条氏専制政治への道を開いた。「時頼」の時代は、いつ何が起こるかわからない不安定な社会状況であった。謡曲「鉢の木」には北条時頼が登場することから「いざ鎌倉」は、当時の不安定な史実を反映している。「鎌倉幕府の歴史を記載した「吾妻鏡」には、源頼朝が挙兵した治承4年(1180)から六代将軍宗尊親王が鎌倉から京都に送還された文永3年(1266)までの歴史を記載している。一方、「鉢木」は観阿弥(1334~1384)の作と言われており、「鉢の木」は「吾妻鏡」の後の作であるため、鎌倉武士の精神の全体像を反映していると言える。また、北条幕府に起きた2度に渡る元寇の役も、常に戦闘に備える精神である「いざ鎌倉」が維持された理由と考えられる。2度に渡る元寇とは文永の役(1274)と弘安の役(1281)であり、当時、北条時宗(1251-1284)は2度の元の軍を退けた。元寇の役に於ける勝利は北条武士の大きな働きと神風によるものとされている4) 。福岡市の東公園には元寇を退けたとされる日蓮聖人の像(図5参照)があり、日蓮聖人の神風は現在まで語り継がれている。日蓮聖人は「立正安国論(1260)」を北条時頼(1227-1263)に宛てに送り、外的の襲来を警告したとされており、「立正安国論」も当時が不安定な情勢であったことを示している。2度の元寇は日本の武士の装備にも変化をもたらした。元軍の鎧は真綿を何層も重ねた構造であり、当時の軟鉄で作られた武士の太刀では切ることが出来なかった。そこで、鎌倉幕府は各地から刀匠を集めて太刀作りを奨励した。そして刀匠、五郎入道正宗がついに日本刀の製造方法を完成させた。日本刀の製造方法は軟鉄の鉄に鋼鉄を巻いて、鍛えた後、焼き入れをする工程を繰り返す方法であり、良く切れるが、折れない日本刀が完成した。名刀正宗の完成である(元寇記念館資料より)。鎌倉幕府後の武士にも一大事に備える心意気があったことは土佐の「一領具足」にも見られる。「一領具足」は半農の武士であり、長宗我部元親(1539-1599)が安芸国虎攻めにあたり、兵力増強のために思いついた武士の身分である。「一領具足」は耕作時に槍の柄に草鞋(わらじ)と兵糧をくくりつけて田の畦(あぜ)に立てておき、有事の時には武装して直ぐさま、駆け付けるという生活であり、土佐物語には「一領具足と申すは、僅かの田地を領して、常には守護へ動仕(きんし)もなく役もなく、己が領地に引き籠り、自らたがやし、くさぎり、諸士の交はりもせされば、礼儀もなく作法もなく、明け暮れ武勇のみを事として、田に出づるにも、鎗の柄に草桂・兵糧を括り付け、田の畔に立て置き、すはと言へば鎌鍬を投げ捨て走り行く。鎧一領にて着替への領もなく、馬一疋にて乗り替へもなく、自身走り廻りければ一領具足と名付けたり。弓・鉄胞・太刀打ちに調練して、死生知らずの野武士なり」とある9)。「一領具足」は有事の際には戦場に馳せ向い、弓、鉄砲、大刀打に鍛錬をして、勇猛かつ命知らずの野武士であった。「いざ鎌倉」の「いざ」と「一領具足」の「すは」は一大事に備える鎌倉幕府から戦国時代の武士の共通の心意気であった。
6.鎌倉幕府の「いざ鎌倉」はどこに
鎌倉幕府に始まる武家政治は、源頼朝が1192年(建久3年)に朝廷から「征夷大将軍」に任命され、鎌倉幕府を開いたことから始まる(*所説あり)。源頼朝は治承4年(1180年)、伊豆で反平氏の軍を挙げた頼朝を討つため京からやってきた平家軍を富士川の戦いで破った。そして源頼朝は図6にある鎌倉の大蔵(雪ノ下)の屋敷に入り、鎌倉が武家政権の政治の中心地となった。更に源頼朝は図7に示す元八幡を現在の鶴岡八幡宮の地に移して町づくりの中心とした。最初の幕府は大倉幕府(1180-1225)であり、次に幕府は宇都宮辻子幕府(1225-1236)となり、更に幕府は若宮大路幕府(1236-1333)へと変わった。また頼朝は図8の永福寺(ようふくじ)を建立して、合戦で亡くなった将兵の鎮魂のために建立した。鎌倉幕府では禅宗が奨励され、「武士道」の精進の精神が成立した。そして、「武士道」は「鉢木」に描かれている様に常に得物を手入れと鍛錬を怠らず、一大事に備えることが基本姿勢となった。  
図6幕府跡(左から大倉幕府、宇都宮辻子幕府、若宮大路幕府)(筆者撮影)
図7元八幡 (筆者撮影)         図8永福寺跡 (筆者撮影)
7.職人気質
「整理、整頓、清掃」はアイデアが浮かんだ時に直ぐに作業に取りかかる精神であり、「改善」と共に、唯一の作品を求める日本古来の職人の精神である。一方、イノベーティブな商品も顧客の視界にない、唯一の製品である。21世紀最大のイノベーティブな製品の一つにスマートフォンがある。現在のスマートフォンの原型は2007年にスティーブ・ジョブズ氏が発表したiPhoneである。iPhoneはタッチパネルとグラフィカルインターフェースを備えていた。初期のスマートフォンは図9に示す様に下や横に小さなキーボードを備えた物で、使い勝手は良くなかった。また当時の多くの携帯電話は折りたたみ型の電話であり、iPhoneは多くのユーザにとって見たことのない電話であった。しかし、iPhoneのグラフィカルインターフェースは1984年にAppleが発表したマッキントッシュで採用されており、更にマッキントッシュはパーソナルコンピュータでは初めて、ポインティングデバイスとしてマウスを採用していた。そして、スティーブ・ジョブズ氏はグラフィカルインターフェース技術を電話に転用することによりiPhoneを完成させた。iPhone発表時にスティーブ・ジョブズ氏は「電話を再発明した」と語った様に当時の電話のイメージは一変してスマートフォンとなった。イノベーティブな製品とはiPhoneの様に各自の固有技術と他の何かを組み合わせることにより生まれる。従ってイノベーティブな製品開発には各自の固有技術を基礎にして、理想目標を実現することが求められる。例えば、続江戸職人綺譚10)に登場する江戸時代の職人の道具自慢話では、「腕のいい大工が道具に凝って稼ぎのほとんどを道具につぎこみ年がら年中素寒貧で・・」や、「荒仕工鉋(かんな)・・こちとら大工の肝玉をふるい立たせてくれなくちゃいけね」にある通り、職人は理想の作品を製作するために、己の技能の修練と技術を発揮するための道具の手入れに余念がなかった。また職人は、「自分の仕事に自分で値段をつけて、それが売れるようになりまして」11)とある通り、稼げる製品には技術とアイデアが必要であり、お客が求めるものだけを作っていたのでは稼げないことを知っていた。つまり、古来の職人はイノベーティブな製品を目指していた。イノベーションやイノベーティブな製品の創造には古来の職人気質と「整理、整頓、清掃」と「いざ鎌倉」の精神が必要である。
図9 キー付スマートフォン (筆者撮影)
8.製品の魅力の変化とイノベーション
ドラッカー氏やシュンペーター氏によるイノベーションの定義では、画期的な製品やサービスの導入により経済に新たな好況局面を創り出すこととある。つまり、イノベーションとは必ずしも製品を生み出すことではなく、販売方法やサービスも含まれる。しかしイノベーティブな製品に限ると、イノベーティブな製品の定義は次の2つである。一つは開発者が価格を設定できること、そして2つめは顧客の視界に無い製品であり、顧客は自分の財布からお金をやりくりしても捻出するほど、魅力ある製品であること。例えば顧客が食費を節約してでも欲しくなるくらい魅力ある製品がイノベーティブな製品である。本カテゴリに入る例は、初期のiPhoneである。しかし、製品は次第に一般化して、差別化することが難しくなる。製品の差別化が難しくなると価格競争になり、利益を得づらくなっていく。つまり製品の一般化(コモディティ化)が進む。一方、製品の成熟度が進むに従い、客層も変化する。図2のレイトマジョリティが製品を購入する状況になると、製品の差別化は難しく、価格競争となる。するとメーカは大量生産による薄利多売となり、大規模な生産設備の投資が必要となる。しかし、設備投資の時期を見誤ると経営的な大打撃を受ける。例えば液晶ディスプレイが成熟段階の製品であり、画面が精細度であったり、高品質なスピーカを搭載したりしていても、レイトマジョリティには製品の魅力が届かず、差別化にはならない。最近では、車が成熟段階に入っている。ビジネスとは、物やサービスの流れと対価がループを形成することである。対価は金額で評価されバリューとも呼ばれる。しかし、バリューは物の機能や性能だけで決まるものではなく、感覚的な要素にも左右される。バリューを左右する要因として、例えば、ネームバリューや希少性やコラボレーションがある。製品のバリューには顧客の主観が大きく影響する。筆者が商品に対する価値観の調査から、顧客の主観とは客の評価軸のことで製品が持つ評価軸が多いほど、バリューは高まることが解った11)。例えば、図10に元の製品と野球チーム名を冠したコラボ製品と他社の製品のバリューを示す。野球チーム名を冠したコラボ製品は価格が上がる分、価格の評価は下がる。しかしコラボ製品は満足性や楽しさ・記念度が上がるため、価値の大きさを示すグラフの大きさは元の製品を上回り、結果的に販売増が期待できる。最近の製造業で主流となっているリーン生産方式は無駄を省いてコストダウンを図る。また製造業で採用されているシックスシグマは作業を平準化して、むりとむらのないマニュアル主義による製造を実現して、コストダウンと歩留まりの向上を図る。リーン生産方式では仕様に対するオーバースペックも無駄となる。しかし、オーバースペックはイノベータに対する製品の魅力の1つであり、イノベーティブな製品に必要なものである。仕様第一主義、コスト第一主義ではイノベーティブな製品は生まれない。理由は仕様第一主義、コスト第一主義では顧客の主観に響かないからである。顧客の主観を刺激するイノベーティブな製品は理想目標を掲げることによりイメージが浮かぶ、そして、アイデアが浮かんだ時に直ぐに試作に取りかかるためには「整理、整頓、清掃」が必要である。イノベーティブな製品を生みだす姿勢を表現したものが日本の「整理、整頓、清掃」と「改善」である。
図10 製品の評価軸と評価の様子 (筆者作成)
謝辞
本書の作成あたり、助言と貴重な情報を頂いた鎌倉市鎌倉歴史文化交流館殿とオーテピア高知図書館の横山 有弐氏に感謝申し上げる。
引用文献
1) 岩波国語辞典、岩波書店、2019
2)尋常小學國語讀本1918(大正7年)卷1,文部省、国立国会図書館デジタルコレクション
3) 小松寿雄,新明解語源辞典,三省堂,2011
4) 西田友広,吾妻鏡,角川文庫,2021
5) 加納喜光,漢字語源語義辞典,1940
6) 平泉澄,明治の源流,時事通信社、国立国会図書館 デジタルコレクション,1970
7) 鉢木,国立国会図書館デジタルコレクション
8) 森延哉,駒とめて袖うちはらう-謡曲「鉢木」考,(株)文芸社,2010
9) 山本大(やまもと たけし),長宗我部元親 その謎と生涯,新人物往来社,2010
10) 佐江衆,続江戸職人綺譚,新潮文庫,2003
11) 永六輔,職人,岩波書店,1996
12) 持田信治,心理的価値評価によるパッケージデザイン,第67回 日本経営システム学会 全国研究発表大会予稿集,pp148-149,2021
人は自らの判断で動くように仕向ける
ヒット: 2 開く 保存
状況
人は自らの判断で動くように仕向ける
行動
結果
このエピソード全体の関連ルール: E-6: 中心
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【状況】
人は自らの判断で動くように仕向ける
【行動】
【結果】
【ポイント】
人は中心人物、特別な人として扱って欲しい
【詳細事例】
温泉に行きたい場合に、食事もできると言って、温泉に行きたい様に行動させる
----------------------------------------
【本文】
【状況】
人は自らの判断で動くように仕向ける
【行動】
【結果】
【ポイント】
人は中心人物、特別な人として扱って欲しい
【詳細事例】
温泉に行きたい場合に、食事もできると言って、温泉に行きたい様に行動させる
あなたの行動は正しいと言う
ヒット: 2 開く 保存
状況
あなたの行動は正しいと言う
行動
結果
このエピソード全体の関連ルール: E-6: 中心
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【状況】
あなたの行動は正しいと言う
【行動】
【結果】
【ポイント】
人は中心人物、重要な人として扱われることを望んでいる
----------------------------------------
【本文】
【状況】
あなたの行動は正しいと言う
【行動】
【結果】
【ポイント】
人は中心人物、重要な人として扱われることを望んでいる
放射線治療現場における患者様子見行動の自動化
ヒット: 2 開く 保存
状況
医療現場において、患者の安全監視や記録業務の増加によりスタッフの負担が増大し、例外的な事象への対応が熟練スタッフの判断に依存している。
行動
「3秒ルールインテリジェンス」を導入し、ベイジアンネットワークを用いて患者リスクを算出し、しきい値を超えた場合に患者への支援行動を決定するシステムを構築した。
結果
医療スタッフの判断に近いプロセスで患者支援の意思決定が可能となり、患者様子見行動の自動化と業務軽減の可能性が示された。
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【分析:状況】
医療現場において、患者の安全監視や記録業務の増加によりスタッフの負担が増大し、例外的な事象への対応が熟練スタッフの判断に依存している。
【分析:行動】
「3秒ルールインテリジェンス」を導入し、ベイジアンネットワークを用いて患者リスクを算出し、しきい値を超えた場合に患者への支援行動を決定するシステムを構築した。
【分析:結果】
医療スタッフの判断に近いプロセスで患者支援の意思決定が可能となり、患者様子見行動の自動化と業務軽減の可能性が示された。
----------------------------------------
【本文】
1. 研究目的
本研究は人を支援できるマルチモーダルAIを提案する。マルチモーダルAIは環境条件と目的に沿って自律的に意思決定のできるAIであり、経験情報に基づく判断を行う。人の経験情報は様々な属性のデータと情報から構成される。特に人の経験は目的と意思決定に伴う結果を持つ。人は過去の経験から意思決定に伴う結果を評価を行い、意思決定を行う。従って意思決定には判断、行動と結果の評価が必要である。マルチモーダルAIの実現に向けてはまず、マルチモーダルデータを扱うデータベースの実現が必要であり、マルチモーダルデータとは音声、画像、テキストと各種環境情報である。現在、多くの場面でのAI(人工知能)利用が進んでいる。しかし、多くの人工知能では意思決定の根拠を明確に示すことができず、信頼できる人工知能となっていない。そこで、意思決定の根拠を明確に示すことができる汎用人工知能(GAI: General Artificial Intelligence)の実現が求められている。しかし、人の意思決定は必ずしも論理的に行われている訳ではなく、人の意思決定は環境の変化と時間の推移に従い、ゆらいでおり、信頼できる人工知能は人の意思決定の揺らぎを理解することが求められる。そこで、本研究は3秒ルールインテリジェンスによる意思決定支援を試みた。3秒ルールインテリジェンスは現在状況を理解して、微小時間後の状況を予測して意思決定を行う人工知能であり、微小時間後の行動候補の出現確率を算出して、行動候補の出現確率を行動選択確率と定義して意思決定を行う。
本研究での微小時間とは3秒である。行動候補の出現確率の算出はベイジアンネットワークにより行う。ベイジアンネットワークは、子ノードの条件付き確率テーブルに確率値を設定することにより、親ノードが示す事象の発現確率を算出する。ベイジアンネットワークは信念ネットワークとも呼ばれ、条件付き確率テーブル上の確率値を主観的に設定することにより、人の主観を確率値として計算に反映可能である。ベイジアンネットワークでは事実が観察される度にエビデンスが設定され、確率計算が再実行されるため、確率値の初期値は曖昧でも構わない。3秒ルールインテリジェンスは環境変化に伴い、事実が観察される度に行動の選択確率の再計算を行う。そして、行動選択確率があるしきい値を越えた場合に、行動選択の意思決定を行う。本研究での意思決定とは患者への支援行動を行うか保留するかである。一方、人の意思決定の揺らぎは人の価値観の揺らぎに起因しているため、3秒ルールインテリジェンスの更なる展開は人の価値観の揺らぎのメカニズム解明につながる。そこで、本研究は3秒ルールインテリジェンスの医療分野への適応を試みた結果、3秒ルールインテリジェンスによる医療スタッフの意思決定の模擬の可能性を示した。具体的には、ベイジアンネットワークにより算出された確率値を患者リスクと見なし、患者リスクがあるしきい値を越えると、3秒ルールインテリジェンスは患者への支援行動選択の意思決定を示し、意思決定は医療スタッフの判断に近いものであった。人工知能が人の意思決定の揺らぎを理解できれば、信頼できる人工知能が実現する。
2. 患者様子見の自動化
現在、医療現場では、患者確認に於けるダブルチェックや手順の標準化が進められている[1]。しかし、例外的な事象が起きた場合の対応は人の判断に頼らざるを得ず、高度な判断できる熟練医療スタッフが求められている。加えて、医療現場では近年、安全監視と記録業務が増加しており、医療スタッフの時間的余裕が減少して、ストレスの高い職場となっている。そこで、本研究は3秒ルールインテリジェンスによる放射線治療現場に於ける患者様子見行動の自動化を目指す[2]。患者への様子見行動とは不安定な患者の事故防止のための、医療スタッフによる患者観察行動であり、様子見行動はスタッフがある一定時間、患者への対応行動を保留して、患者リスクの発現を観察する行動である。患者リスクとは患者に関する事故発現等で、患者治療の障害となる要因である。患者様子見行動は患者が治療室に移動する場合や、治療中に行われる。治療中は患者の動作が限定的であるため、人工知能が患者を観察できれば、スタッフの業務軽減が図れる。更に治療室内での患者観察を自動化できれば、スタッフは次の業務の準備作業等が可能となり業務に余裕が生まれ、安全な医療が実現する。患者様子見行動は患者を含む状況判断とスタッフの経験により行われるため、患者様子見行動の自動化には人工知能への人の経験の反映が必要である。
3. 3秒ルールインテリジェンス
3.1 人の応答速度と行動選択
3秒ルールインテリジェンスは、人と同じプロセスで意思決定を行う人工知能であり、人の脳で行われる意思決定を模擬する。人の大脳内には神経細胞(ニューロン)が約100億個あり、脳全体の神経細胞は1000億個あるとされる[3]。神経細胞は核と樹状突起と信号伝送路に当たる軸索から構成され、樹状突起は信号入力をつかさどる受容体を持つ(図 1参照)。神経細胞間の信号伝達はシナプス間隙において行われており、1つの神経細胞は数千以上のシナプスを持つとされる。シナプスとは神経細胞同士の接続部分のことであり、特定の信号がシナプス前部に積み重なるとシナプスに於いて信号伝達が行われる。シナプス間隙上の信号伝達は科学物資の量と組み合わせで表現されるため、各シナプスは高度な情報処理を行っていると考えられる。シナプスは人では10兆個あるとされ、10兆個のシナプスの結合により経験が記録され、外部刺激により状況判断と行動発現がなされる[4]-[7]。ニューロン内の伝達速度は概ね、1m/秒から100m/秒である。一方、最近のCPU(中央処理演算装置)は約100億程度のトランジスタ(7nm製造プロセスの場合)で構成され、3Ghz(1秒間に30億回の振動数)程度で動作する[8]。人の神経細胞の動作速度はCPUに比べて低速であるにも拘わらず、人が高度な行動選択できる理由は、脳は並列に状況判断を行い、微小時間後に実行可能な行動候補を用意しているからであると考えられる[9][10]。本研究では、微小時間を3秒とする。従って、慣れた行動は3秒以内に行動候補として直ちに用意されるのに対して、不慣れな行動候補は遅れて用意されるため、行動の慣れが発生する。そして優先順位が均衡する複数の行動候補が並列に用意されている状態が迷いであり、遅れて行動候補が準備され、行動選択が混乱する状態が後悔である。
図 1 神経細胞
3.2 人の行動予測と3秒ルールインテリジェンス
人は行動選択に当たって、微小時間周期で次に実行可能な行動候補を選び出して、行動選択を行っており、行動候補は過去の経験と知識から選択される[9][10]。本研究での微小時間は3秒である。そこで、3秒ルールインテリジェンスは3秒後に実行可能な行動候補を人の経験から収集することにより、人と同じプロセスによる行動選択が実現する。3秒ルールインテリジェンスは経験データベース、行動選択トリガデータベース,行動出現確率計算(ベイジアンネットワーク)から構成される(図 2参照)。3秒ルールインテリジェンスは3秒後に実行可能な行動候補の準備を行い、行動選択トリガの観察により行動選択を行う。行動選択トリガとは環境情報を心理的次元で配置したものの中で最優先位置にあるものであり、行動選択を左右する要因である[9]。心理的な重み付けをした行動選択トリガ観察は行動の概念駆動型処理を可能とする[10]。3秒ルールインテリジェンスは経験データベースから現状認識による情報を検索キーにして、3秒後に実行可能な行動候補を準備する。そして、ベイジアンネットワークにより、3秒後に実行可能な行動候補の優先順位を決定する。経験データベースは現在状況と行動実行による3秒後の状態から構成される遷移情報を持つ(図 3参照)。本研究では遷移情報をヒヤリハット報告やインシデントレポートから収集した。遷移情報は初期状況情報と3秒後の遷移情報を持ち、3秒間は人の行動選択の周期である。例えば、車両運行に於いて、人は3秒周期で、現在から3秒後までの遷移空間を構築することにより、運転操作における事故回避を行っている(図 4参照)。
図 2 3秒ルールインテリジェンスの構成
図 3 3秒間の遷移空間
図 4 運転操作における遷移空間
3.3 人の行動予測と3秒ルールインテリジェンス
人が、直ぐに行動判断ができるのは、人は微小時間後に到達可能な遷移空間を事前に構築して状況予測を行いながら、行動選択を行っているからである[11]。微小時間とは3秒である。例えば、車両運転に於いて、先行車との安全な推奨車間距は速度計の示す値から15を減じた距離である、例えば、時速60km/h の場合の推奨車間距は45mである。時速60km/hの車の速度は約17m/秒であるため、45m/17m≒3秒となり、推奨される車間距離を時間的に表すと約3秒となる[12]。一方、車両運転に於ける安全な車間距離を時間で表すと、2秒から3秒と言われており、車間距離が1.8秒を切ると人は不安を感じると言われている[13]。また、報告者のビジネスシステム開発の経験から、エンターキーを押した後のシステム応答時間が3秒以内であればシステム利用者は概ね良好な操作感を得る。しかしシステム応答時間が5秒を超えるとシステム利用者は不満を感じ、システム応答時間が10秒を超えるとシステム利用者はシステムに対する改善を要求するという状況からも、人は現時点から3秒後までの行動予測空間を構築しており、行動予測空間内で状況が進む場合には安心感を得ることができ、3秒後の状況が不確実になると不安やいらつきを感じる。従って、人は現時点から3秒後までの行動遷移空間を持って行動をしていると判断できる。
4.ベイジアンネットワークを用いた事象分析
ベイジアンネットワークとはある事象(親)と事象に関係する要因(子)との因果関係を有効グラフで表現したものであり、ベイジアンネットワークは親ノードと子ノードの因果関係を確率的な関係で表現しており、ベイジアンネットワークの親ノードは親(世界)が取りうる状況が発現する確率を表す。ベイジアンネットワークは信念ネットワークとも呼ばれ、条件付き確率テーブル上の確率値を主観的に設定することにより、人の主観を確率計算に反映できる。従って、条件付き確率テーブルに設定する確率値を主観的に設定することにより、ベイジアンネットワークは不確実な状況を表現することが可能である。そして子ノードの条件が確定することにより、親(世界)が取りうる状況の確率が計算される。子ノードの条件が確定することを、エビデンスをセットすると呼び、事実や状況が判明した場合には、子ノードにエビデンスが設定され、子ノードが親ノードに与える確率が決定する。以下にベイジアンネットワークを用いた計算例を示す。本例はプロジェクトが計画通りに終了する確率計算の例を示す。本例では条件付き確率とベイズ推定の式(1)を使用してプロジクトリスクを推定する。プロジクトリスクとは、プロジェクトが計画通りに終了しない確率、つまりプロジェクトの遅延確率である。以降、プロジェクトリスクとはプロジェクトの遅延確率であるとする。プロジェクトの遅延が発生すると費用超過や契約違反となり、費用的な損害が発生する。
A:親(世界)が取りうる状況に対する確率  
B:子供(世界を説明する条件)を示す確率
本例ではプロジェクトが計画通りに終了する確率とスタッフからのプロジェクトの進捗に関するレポートの信頼性との関係を考える、プロジェクトが​計画通りに終了する確率をA、そしてスタッフからの進捗に関するレポートの信頼性を示す確率をBとする。ここで、A=0.9、B=0.7とすると、プロジェクトが実行される世界の確率状況は図 5となる。ベイジアンネットワークはある事象が取りうる世界の確率的関係を示し、エビデンスが設定されると世界が変化する。
図 5 報告を受ける前の世界確率の図
次に機械学習システムのWeka (Waikato Environment for Knowledge Analysis) [14]を使用してプロジェクトが実行される世界の確率状況を表現した様子を図 6に示す。図 6、図 7と表 1、表 2はWeka上のProjectノードとReportノードに確率を与えている様子を示す。一般的にプロジェクトは10%程度遅延することが知られているため、表 1と図 6に示す様にプロジェクトが計画通り終わる確率は0.9に設定している。ただし、Wekaのベイジアンネットワーク表示では確率0.9は9000、そして確率0.7は6599と表示されている。
表 1 Weka上のProjectノードの条件付き確率
表 2 Weka上のReportノードの条件付き確率
図 6プロジェクトのベイジアンネットワーク表示
図 7 ProjectとReportノードの条件付き確率テーブルに確率値を与えている様子
次に、表 3と図 8はスタッフによりプロジェクトの進捗は計画通りと報告された後のプロジェクトの実行世界を示しており、Aの確率は式(2)に示す通り0.95となる。図 9はWekaで確率を計算した様子を示す。本例でのエビデンスはスタッフによるプロジェクトの進捗は計画通りとの報告である。ベイジアン推定ではエビデンスと呼ばれる状況報告が与えられることにより、確率世界が変化する。
表 3 報告を受けた後の世界確率(抹消線の世界が削除された状態)
図 8報告を受けた後の世界確率の図
(網掛けの部分の世界が消えた)
(2)
図 9 報告を受けた後のベイジアンネットワーク表示
5. 患者様子見行動と患者対応行動の発現
5.1患者リスクの評価
医療現場では、安全のために患者確認に於ける2重チェックや手順の標準化が進められている[15]。しかし、例外的な事象が起きた場合の対応は人の判断に頼らざるを得ず、熟練医療スタッフの経験に基づく対処が求められる。そこで、本研究は熟練医療スタッフに近い状況判断機能の実現を目指して、3秒ルールインテリジェンスを放射線治療現場に応用した。表 4に放射線治療における環境要因と内容を示す。環境要因は医療スタッフからのヒアリングにより取得した。本研究では、ベイジアンネットワークにより算出した患者リスクにより、状況判断を行う。本研究では患者リスクとは患者に拘わる事故発生確率と定義して、患者リスクを患者への支援の必要性とみなす。従って、患者リスクが上昇すると患者への支援必要性が上昇することとなり、患者支援の必要性があるしきい値を越えると患者への支援が必要であるとの意思決定を行う。放射線治療装置は治療を行う機械であり、今後、治療環境に関する情報の取得を機械信号として取得することが可能であり、取得情報の精度向上が期待できる。
表 4 患者を取り巻く環境要因
5.2 患者対応行動の発現
患者への様子見行動とは不安定な患者の事故防止のための、医療スタッフによる患者観察行動のことである。図 10は医療スタッフが患者リスクを観察している状況を示しており、縦軸は患者リスクを示し、横軸は時間軸である。図 10に示す、患者が安全範囲の領域にある場合には、医療スタッフは患者を観察する必要のない状況であることを示し、例えば患者が検査に行っている状態である。次に患者が様子見状態にある場合には医療スタッフが患者を観察する必要がある状況であり、例えば患者が治療室内にいる状況である。そして、患者が支援必要の領域に入った場合には、患者リスクが高い状況であり、患者への支援が必要となる。例えば患者への支援行動として、患者への声掛けや治療中断がある。様子見行動は医療スタッフが患者への対応行動を保留して患者の様子を観察する行動であり、人工知能が患者を観察できれば、医療スタッフの業務軽減が図れる。そこで、本研究は医療スタッフの患者への様子見行動の模擬を目指して、3秒ルールインテリジェンスの放射線治療への適応を試みた。ベイジアンネットワークの親ノードが示す確率値は医療スタッフ経験に基づく患者リスク値を示している。本研究では、ベイジアンネットワークにより算出された患者リスク値は3秒後の患者支援行動の必要度合いを示しており、環境要因の変化に従い、ベイジアンネットワークの再計算を実行する。ベイジアンネットワークが示す患者リスクは患者支援行動の必要度合いを示し、患者支援行動の必要度合いがあるしきい値を越えた場合には患者への支援行動が必要となる。図 11に本研究で設定したベイジアンネットワークを示す。図 11中の略称は表 4の通りであり、表 5から表 9はベイジアンネットワークの各ノードに設定した条件付き確率テーブルの値を示している。本研究において、3秒ルールインテリジェンスに与えたベイジアンネットワークの条件付き確率テーブルの設定は医療スタッフへのヒアリングに基づいていており、医療スタッフの経験値を反映している。図 11に示す通り、患者の支援が必要と支援不要の初期値は共に0.5である。そして、図 11が示す確率値の計算要領を図 12に示す。例えば、図 11のSKILのHigh値は0.4であり、計算要領は以下の通りである。
0.5(TREAT)×0.1(支援必要 High)=0.05
0.5(WATCH)×0.7(支援不要 High)=0.35
0.05+0.35=0.4 SKIL(High)
但し、図 11の同値は0.399と表示されている。
図 10 状況判断
図 11 患者リスク(RISK)算出ベイジアンネットワーク
表 5 患者支援モデルのテーブル例
親テーブル(RISK)
表 6 条件付き確率テーブル(SKIL)
表 7 条件付き確率テーブル(PAT)
表 8 条件付き確率テーブル(METH)
表 9 条件付き確率テーブル(ENV)
図 12 ベイジアンネットワークの計算例
5.3環境評価試験
 3秒ルールインテリジェンスの経験データベースは経験ルールを持ち、経験ルールはヒヤリハット情報から収集した。経験ルールは3秒間の時間的状態遷移に伴う初期状態と3秒後の後状態と発現した発生事象を持つ(図 13参照)。更に経験ルールには行動選択トリガが記述されている(表 10参照)。行動選択トリガとは環境変化を検知するための情報である。環境監視下で、行動選択トリガが検知されると該当する経験ルールが選択され、ベイジアンネットワーク中の指定された要素にエビデンスが設定される。
図 13 ヒヤリハットデータ(一部)
例えば患者の蛇行(ふらつき)が検知された場合には、患者状態が悪いことを示すエビデンスがベイジアンネットワークに設定される(図 14、図 15参照)。具体的には、患者リスク値(RISK)の初期値は図 14の通り、0.5であり、患者への支援必要性は不明であることを示している。そして患者の蛇行(ふらつき)が検知されると、患者の状態が悪いことを示すエビデンスがベイジアンネットワークに設定され、患者リスク値が0.83となり、患者への支援が必要なしきい値が0.7であるとすると、患者への支援が必要との意思決定がなされる(図 15参照)。
表 10 エビデンス設定時のトリガ情報
図 14 初期状態のRISK算出ベイジアンネットワーク
図 15 患者(PAT)が悪い(LOW)エビデンスの設定後
5.3.環境の評価の自動化
 3秒ルールインテリジェンスを用いた患者様子見行動の自動化のためにはエビデンスの自動設定が必要である。そこで本研究では図 11に示す各要素の確率値を更に計算するための表 11に示す様にベイジアンネットワークを設定した。表 11に示す様に確率算出のための要素を細分化することにより、自動的にエビデンスを設定することが可能となる。例えば、患者状態(PAT)を算出する1つの要素の患者搬送状態(Trsus)が取る、歩行か、車椅子かストレッチャーかは自動的に設定できる。
表 11 各要素に確率値を与えるベイジアンネットワークのテーブル構造
例えば、表 11中の患者の状態算出用テーブル(PAT)の確率値を算出するベイジアンネットワークを図 16に示す。そして、患者の歩行が確認されると図 17に示すベイジアンネットワークとなり、患者状態は良好(Good)であるため、患者状態(PAT)にGoodが設定される。同様に治療計画から治療内容の複雑さ(METH)は標準(Standard)であり、スタッフのスキル(SKLL)を標準(Standard)に設定すると患者リスク(RISK)を示すベイジアンネットワークは図 18となる。次に患者の蛇行(ふらつき)が検知されると図 19に示す様に患者ふらつきのエビデンスが設定される。しかし、患者状態が低(Low)と判断するしきい値を0.7とすると患者状態が低(Low)の確率値(PAT)は0.5384なので、患者リスク(RISK)算出用ベイジアンネットワークの患者状態に患者低(Low)のエビデンスは設定されない。
図 16患者の状態(PAT)算出用ベイジアンネットワーク(初期状態)
図 17 患者の状態(PAT)算出用ベイジアンネットワーク(患者の歩行確認)
図 18 患者支援度(RISK)算出用ベイジアンネットワーク
しかし、あらかじめ、図 19の患者パフォーマンスステータス(Pstus)がLowであることが認識されていれば、図 20に示す様に患者状態が低(Low)の確率値は0.8860となり、しきい値の0.7を越えるため、患者リスク(RISK)算出用ベイジアンネットワークの患者状態に患者低(Low)のエビデンスが設定され、図 21に示す様に患者リスク(RISK)は0,823となり、3秒ルールインテリジェンスは患者支援の意思決定を行う、そして3秒ルールインテリジェンスの意思決定は医療スタッフの意思決定に近いプロセスにより行われている。
図 19 患者の状態(PAT)算出用ベイジアンネットワーク(患者のふらつき確認)
図 20 患者の状態(PAT)算出用ベイジアンネットワーク(患者のふらつきとパフォーマンスステータス(Pstus)がLowを確認)
図 21 患者支援度(RISK)算出用ベイジアンネットワーク(患者状態Low)
6. 考察とまとめ
本研究は3秒ルールインテリジェンスによる患者様子見行動が可能であることを示し、患者様子見行動の自動化の可能性を示した。患者様子見行動に於ける意思決定とは医療スタッフが患者支援行動を取るか、取らないかである。本研究では患者支援行動の発現確率を患者リスクと定義して、患者リスクがあるしきい値を超えた場合に、3秒ルールインテリジェンスは患者支援行動の意思決定を行う。3秒ルールインテリジェンスは患者リスクをベイジアンネットワークにより算出する。ベイジアンネットワークでは事実が確認されるとエビデンスが設定される。そこで、3秒ルールインテリジェンスは初めに、環境監視により、行動選択トリガが検知されるとベイジアンネットワークにエビデンスを設定して、患者リスクの計算を行う。行動選択トリガとは環境情報の重要性を心理的次元で配置したものの中で最優先位置にあるものであり、行動選択を左右する要因である[9]。本研究では、行動選択トリガをヒヤリハット情報から収集しており、行動選択トリガには医療スタッフの経験に基づく心理的な重み付けが反映されている。従って、3秒ルールインテリジェンスは人の感覚に近い視点で環境監視を行うことが可能である[11]。しかし、今回は患者蛇行(ふらつき)のトリガ検知は手動で行ったため、今後、トリガの自動検知が必要である。更に、本研究は患者支援行動の必要性を時系列的な数値で示すため、行動選択の根拠が明確であり、環境の変化と意思決定の経緯を数字で記録することできる。今後、人的感覚を持つ環境評価機能が実現すれば、病棟やICUでの患者監視の自動化が可能となる。例えば、病棟スタッフは、複数の患者の状態を同時に監視して、適切な患者対応行動を行っている。そこで3秒ルールインテリジェンスによる人的感覚を持つ患者様子見機能が実現すれば、対応の緊急度を自動的に判断することが可能となり、経験の少ない医療スタッフでも対応の優先順位を即時に知ることができ、余裕のある患者対応が実現する。更に、熟練スタッフが観察している要素を、行動選択トリガデータベースに追加できれば、3秒ルールインテリジェンスは熟練スタッフに近い意思決定を行うことが可能となり、更に意思決定に至ったエビデンスを示すことができるため、意思決定の根拠を明確に示すことができ、信頼できる汎用人工知能(GAI: General Artificial Intelligence)への展開が期待できる。今後、実現が求められる汎用人工知能は判断根拠を示すことが求められており、本研究はGAI実現の可能性をも示した[16]。
謝辞
本研究はJSPS科研費 20K11983の助成を受けた。
本研究に助言と貴重な情報を頂いた広島国際大学の橘昌幸教授と九大病院の福永淳一先生に感謝申し上げる。
参考文献
[1]持田 信治,池添 律代,矢鳴 虎夫:"判断マトリクスを使用した内部状態モデル構築に関する研究",バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 6 巻 1号,10-16,(2004)
[2]持田 信治,橘 昌幸:"人の観点から見た環境評価に関する研究",BMFSA学会誌 VOL11 NO.2 PP.25‐31
[3] エリック.R・カンデル,記憶のしくみ
[4]松本元・大津展之:「神経細胞の生物学的特性」,培風館,(1992)
[5]伊藤薫:「脳と神経の細胞学」,培風館,(1975)
[6]Armand M.de Callatay,島田禎晉訳:「人間の脳と人工知能」,丸善株式会社,(1991)
[7] 小林春雄他:「神経情報生物学入門」,オーム社,(1990)
[8] 「IBMが2nm半導体プロセスの試作成功、研究トップに聞く「ムーアの法則」の将来」, 日経クロステック,2021年5月13日
[9] リンゼイ/ノーマン:「情報処理心理学入門Ⅰ(感覚と知覚]」,サイエンス社,1984
[10] リンゼイ/ノーマン:「情報処理心理学入門Ⅱ(注意と記憶]」,サイエンス社,1984
[11] 持田 信治:「3秒ルールAI実現に関する研究」,日本経営システム学会第62回全国研究発表大会講演論文集,138-139, 2019
[12]牧下寛,松永勝也:「自動車運転中の突然の危機に対する制動反応の時間」,人間工学,38巻6号 pp.324-332,2002
[13]山下昇:「車間距離より車間時間を取ろう」,セイフティエクスプレス企業開発センター,6月号,2008
[14] 藤田一弥:「見えないものをさぐる それがベイズ」,オーム社,2015
[15] 持田 信治:「3秒ルーインテリジェスを用いた患者様子見行動の模擬に向けた基礎研究」,BMFSA2020年次大会予稿集,pp.150-153,2020
[16]「人間中心のAI社会原則の草案,人間中心のAI社会原則検討会議」,内閣府,2018年12月
著者氏名(ふりがな)
現職○○大学○○学部○○科
略歴

プロジェクトリスクの推定
ヒット: 2 開く 保存
状況
プロジェクトが計画通りに終了するかどうかの不確実な状況において、スタッフからの進捗報告というエビデンスが存在する。
行動
ベイジアンネットワークを用い、プロジェクトの遅延確率(リスク)を条件付き確率テーブルに基づいて計算した。
結果
スタッフからの「計画通り」という報告(エビデンス)を反映させることで、プロジェクトが計画通りに終了する確率が0.9から0.95へと更新され、状況の変化を確率的に導出できた。
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【分析:状況】
プロジェクトが計画通りに終了するかどうかの不確実な状況において、スタッフからの進捗報告というエビデンスが存在する。
【分析:行動】
ベイジアンネットワークを用い、プロジェクトの遅延確率(リスク)を条件付き確率テーブルに基づいて計算した。
【分析:結果】
スタッフからの「計画通り」という報告(エビデンス)を反映させることで、プロジェクトが計画通りに終了する確率が0.9から0.95へと更新され、状況の変化を確率的に導出できた。
----------------------------------------
【本文】
1. 研究目的
本研究は人を支援できるマルチモーダルAIを提案する。マルチモーダルAIは環境条件と目的に沿って自律的に意思決定のできるAIであり、経験情報に基づく判断を行う。人の経験情報は様々な属性のデータと情報から構成される。特に人の経験は目的と意思決定に伴う結果を持つ。人は過去の経験から意思決定に伴う結果を評価を行い、意思決定を行う。従って意思決定には判断、行動と結果の評価が必要である。マルチモーダルAIの実現に向けてはまず、マルチモーダルデータを扱うデータベースの実現が必要であり、マルチモーダルデータとは音声、画像、テキストと各種環境情報である。現在、多くの場面でのAI(人工知能)利用が進んでいる。しかし、多くの人工知能では意思決定の根拠を明確に示すことができず、信頼できる人工知能となっていない。そこで、意思決定の根拠を明確に示すことができる汎用人工知能(GAI: General Artificial Intelligence)の実現が求められている。しかし、人の意思決定は必ずしも論理的に行われている訳ではなく、人の意思決定は環境の変化と時間の推移に従い、ゆらいでおり、信頼できる人工知能は人の意思決定の揺らぎを理解することが求められる。そこで、本研究は3秒ルールインテリジェンスによる意思決定支援を試みた。3秒ルールインテリジェンスは現在状況を理解して、微小時間後の状況を予測して意思決定を行う人工知能であり、微小時間後の行動候補の出現確率を算出して、行動候補の出現確率を行動選択確率と定義して意思決定を行う。
本研究での微小時間とは3秒である。行動候補の出現確率の算出はベイジアンネットワークにより行う。ベイジアンネットワークは、子ノードの条件付き確率テーブルに確率値を設定することにより、親ノードが示す事象の発現確率を算出する。ベイジアンネットワークは信念ネットワークとも呼ばれ、条件付き確率テーブル上の確率値を主観的に設定することにより、人の主観を確率値として計算に反映可能である。ベイジアンネットワークでは事実が観察される度にエビデンスが設定され、確率計算が再実行されるため、確率値の初期値は曖昧でも構わない。3秒ルールインテリジェンスは環境変化に伴い、事実が観察される度に行動の選択確率の再計算を行う。そして、行動選択確率があるしきい値を越えた場合に、行動選択の意思決定を行う。本研究での意思決定とは患者への支援行動を行うか保留するかである。一方、人の意思決定の揺らぎは人の価値観の揺らぎに起因しているため、3秒ルールインテリジェンスの更なる展開は人の価値観の揺らぎのメカニズム解明につながる。そこで、本研究は3秒ルールインテリジェンスの医療分野への適応を試みた結果、3秒ルールインテリジェンスによる医療スタッフの意思決定の模擬の可能性を示した。具体的には、ベイジアンネットワークにより算出された確率値を患者リスクと見なし、患者リスクがあるしきい値を越えると、3秒ルールインテリジェンスは患者への支援行動選択の意思決定を示し、意思決定は医療スタッフの判断に近いものであった。人工知能が人の意思決定の揺らぎを理解できれば、信頼できる人工知能が実現する。
2. 患者様子見の自動化
現在、医療現場では、患者確認に於けるダブルチェックや手順の標準化が進められている[1]。しかし、例外的な事象が起きた場合の対応は人の判断に頼らざるを得ず、高度な判断できる熟練医療スタッフが求められている。加えて、医療現場では近年、安全監視と記録業務が増加しており、医療スタッフの時間的余裕が減少して、ストレスの高い職場となっている。そこで、本研究は3秒ルールインテリジェンスによる放射線治療現場に於ける患者様子見行動の自動化を目指す[2]。患者への様子見行動とは不安定な患者の事故防止のための、医療スタッフによる患者観察行動であり、様子見行動はスタッフがある一定時間、患者への対応行動を保留して、患者リスクの発現を観察する行動である。患者リスクとは患者に関する事故発現等で、患者治療の障害となる要因である。患者様子見行動は患者が治療室に移動する場合や、治療中に行われる。治療中は患者の動作が限定的であるため、人工知能が患者を観察できれば、スタッフの業務軽減が図れる。更に治療室内での患者観察を自動化できれば、スタッフは次の業務の準備作業等が可能となり業務に余裕が生まれ、安全な医療が実現する。患者様子見行動は患者を含む状況判断とスタッフの経験により行われるため、患者様子見行動の自動化には人工知能への人の経験の反映が必要である。
3. 3秒ルールインテリジェンス
3.1 人の応答速度と行動選択
3秒ルールインテリジェンスは、人と同じプロセスで意思決定を行う人工知能であり、人の脳で行われる意思決定を模擬する。人の大脳内には神経細胞(ニューロン)が約100億個あり、脳全体の神経細胞は1000億個あるとされる[3]。神経細胞は核と樹状突起と信号伝送路に当たる軸索から構成され、樹状突起は信号入力をつかさどる受容体を持つ(図 1参照)。神経細胞間の信号伝達はシナプス間隙において行われており、1つの神経細胞は数千以上のシナプスを持つとされる。シナプスとは神経細胞同士の接続部分のことであり、特定の信号がシナプス前部に積み重なるとシナプスに於いて信号伝達が行われる。シナプス間隙上の信号伝達は科学物資の量と組み合わせで表現されるため、各シナプスは高度な情報処理を行っていると考えられる。シナプスは人では10兆個あるとされ、10兆個のシナプスの結合により経験が記録され、外部刺激により状況判断と行動発現がなされる[4]-[7]。ニューロン内の伝達速度は概ね、1m/秒から100m/秒である。一方、最近のCPU(中央処理演算装置)は約100億程度のトランジスタ(7nm製造プロセスの場合)で構成され、3Ghz(1秒間に30億回の振動数)程度で動作する[8]。人の神経細胞の動作速度はCPUに比べて低速であるにも拘わらず、人が高度な行動選択できる理由は、脳は並列に状況判断を行い、微小時間後に実行可能な行動候補を用意しているからであると考えられる[9][10]。本研究では、微小時間を3秒とする。従って、慣れた行動は3秒以内に行動候補として直ちに用意されるのに対して、不慣れな行動候補は遅れて用意されるため、行動の慣れが発生する。そして優先順位が均衡する複数の行動候補が並列に用意されている状態が迷いであり、遅れて行動候補が準備され、行動選択が混乱する状態が後悔である。
図 1 神経細胞
3.2 人の行動予測と3秒ルールインテリジェンス
人は行動選択に当たって、微小時間周期で次に実行可能な行動候補を選び出して、行動選択を行っており、行動候補は過去の経験と知識から選択される[9][10]。本研究での微小時間は3秒である。そこで、3秒ルールインテリジェンスは3秒後に実行可能な行動候補を人の経験から収集することにより、人と同じプロセスによる行動選択が実現する。3秒ルールインテリジェンスは経験データベース、行動選択トリガデータベース,行動出現確率計算(ベイジアンネットワーク)から構成される(図 2参照)。3秒ルールインテリジェンスは3秒後に実行可能な行動候補の準備を行い、行動選択トリガの観察により行動選択を行う。行動選択トリガとは環境情報を心理的次元で配置したものの中で最優先位置にあるものであり、行動選択を左右する要因である[9]。心理的な重み付けをした行動選択トリガ観察は行動の概念駆動型処理を可能とする[10]。3秒ルールインテリジェンスは経験データベースから現状認識による情報を検索キーにして、3秒後に実行可能な行動候補を準備する。そして、ベイジアンネットワークにより、3秒後に実行可能な行動候補の優先順位を決定する。経験データベースは現在状況と行動実行による3秒後の状態から構成される遷移情報を持つ(図 3参照)。本研究では遷移情報をヒヤリハット報告やインシデントレポートから収集した。遷移情報は初期状況情報と3秒後の遷移情報を持ち、3秒間は人の行動選択の周期である。例えば、車両運行に於いて、人は3秒周期で、現在から3秒後までの遷移空間を構築することにより、運転操作における事故回避を行っている(図 4参照)。
図 2 3秒ルールインテリジェンスの構成
図 3 3秒間の遷移空間
図 4 運転操作における遷移空間
3.3 人の行動予測と3秒ルールインテリジェンス
人が、直ぐに行動判断ができるのは、人は微小時間後に到達可能な遷移空間を事前に構築して状況予測を行いながら、行動選択を行っているからである[11]。微小時間とは3秒である。例えば、車両運転に於いて、先行車との安全な推奨車間距は速度計の示す値から15を減じた距離である、例えば、時速60km/h の場合の推奨車間距は45mである。時速60km/hの車の速度は約17m/秒であるため、45m/17m≒3秒となり、推奨される車間距離を時間的に表すと約3秒となる[12]。一方、車両運転に於ける安全な車間距離を時間で表すと、2秒から3秒と言われており、車間距離が1.8秒を切ると人は不安を感じると言われている[13]。また、報告者のビジネスシステム開発の経験から、エンターキーを押した後のシステム応答時間が3秒以内であればシステム利用者は概ね良好な操作感を得る。しかしシステム応答時間が5秒を超えるとシステム利用者は不満を感じ、システム応答時間が10秒を超えるとシステム利用者はシステムに対する改善を要求するという状況からも、人は現時点から3秒後までの行動予測空間を構築しており、行動予測空間内で状況が進む場合には安心感を得ることができ、3秒後の状況が不確実になると不安やいらつきを感じる。従って、人は現時点から3秒後までの行動遷移空間を持って行動をしていると判断できる。
4.ベイジアンネットワークを用いた事象分析
ベイジアンネットワークとはある事象(親)と事象に関係する要因(子)との因果関係を有効グラフで表現したものであり、ベイジアンネットワークは親ノードと子ノードの因果関係を確率的な関係で表現しており、ベイジアンネットワークの親ノードは親(世界)が取りうる状況が発現する確率を表す。ベイジアンネットワークは信念ネットワークとも呼ばれ、条件付き確率テーブル上の確率値を主観的に設定することにより、人の主観を確率計算に反映できる。従って、条件付き確率テーブルに設定する確率値を主観的に設定することにより、ベイジアンネットワークは不確実な状況を表現することが可能である。そして子ノードの条件が確定することにより、親(世界)が取りうる状況の確率が計算される。子ノードの条件が確定することを、エビデンスをセットすると呼び、事実や状況が判明した場合には、子ノードにエビデンスが設定され、子ノードが親ノードに与える確率が決定する。以下にベイジアンネットワークを用いた計算例を示す。本例はプロジェクトが計画通りに終了する確率計算の例を示す。本例では条件付き確率とベイズ推定の式(1)を使用してプロジクトリスクを推定する。プロジクトリスクとは、プロジェクトが計画通りに終了しない確率、つまりプロジェクトの遅延確率である。以降、プロジェクトリスクとはプロジェクトの遅延確率であるとする。プロジェクトの遅延が発生すると費用超過や契約違反となり、費用的な損害が発生する。
A:親(世界)が取りうる状況に対する確率  
B:子供(世界を説明する条件)を示す確率
本例ではプロジェクトが計画通りに終了する確率とスタッフからのプロジェクトの進捗に関するレポートの信頼性との関係を考える、プロジェクトが​計画通りに終了する確率をA、そしてスタッフからの進捗に関するレポートの信頼性を示す確率をBとする。ここで、A=0.9、B=0.7とすると、プロジェクトが実行される世界の確率状況は図 5となる。ベイジアンネットワークはある事象が取りうる世界の確率的関係を示し、エビデンスが設定されると世界が変化する。
図 5 報告を受ける前の世界確率の図
次に機械学習システムのWeka (Waikato Environment for Knowledge Analysis) [14]を使用してプロジェクトが実行される世界の確率状況を表現した様子を図 6に示す。図 6、図 7と表 1、表 2はWeka上のProjectノードとReportノードに確率を与えている様子を示す。一般的にプロジェクトは10%程度遅延することが知られているため、表 1と図 6に示す様にプロジェクトが計画通り終わる確率は0.9に設定している。ただし、Wekaのベイジアンネットワーク表示では確率0.9は9000、そして確率0.7は6599と表示されている。
表 1 Weka上のProjectノードの条件付き確率
表 2 Weka上のReportノードの条件付き確率
図 6プロジェクトのベイジアンネットワーク表示
図 7 ProjectとReportノードの条件付き確率テーブルに確率値を与えている様子
次に、表 3と図 8はスタッフによりプロジェクトの進捗は計画通りと報告された後のプロジェクトの実行世界を示しており、Aの確率は式(2)に示す通り0.95となる。図 9はWekaで確率を計算した様子を示す。本例でのエビデンスはスタッフによるプロジェクトの進捗は計画通りとの報告である。ベイジアン推定ではエビデンスと呼ばれる状況報告が与えられることにより、確率世界が変化する。
表 3 報告を受けた後の世界確率(抹消線の世界が削除された状態)
図 8報告を受けた後の世界確率の図
(網掛けの部分の世界が消えた)
(2)
図 9 報告を受けた後のベイジアンネットワーク表示
5. 患者様子見行動と患者対応行動の発現
5.1患者リスクの評価
医療現場では、安全のために患者確認に於ける2重チェックや手順の標準化が進められている[15]。しかし、例外的な事象が起きた場合の対応は人の判断に頼らざるを得ず、熟練医療スタッフの経験に基づく対処が求められる。そこで、本研究は熟練医療スタッフに近い状況判断機能の実現を目指して、3秒ルールインテリジェンスを放射線治療現場に応用した。表 4に放射線治療における環境要因と内容を示す。環境要因は医療スタッフからのヒアリングにより取得した。本研究では、ベイジアンネットワークにより算出した患者リスクにより、状況判断を行う。本研究では患者リスクとは患者に拘わる事故発生確率と定義して、患者リスクを患者への支援の必要性とみなす。従って、患者リスクが上昇すると患者への支援必要性が上昇することとなり、患者支援の必要性があるしきい値を越えると患者への支援が必要であるとの意思決定を行う。放射線治療装置は治療を行う機械であり、今後、治療環境に関する情報の取得を機械信号として取得することが可能であり、取得情報の精度向上が期待できる。
表 4 患者を取り巻く環境要因
5.2 患者対応行動の発現
患者への様子見行動とは不安定な患者の事故防止のための、医療スタッフによる患者観察行動のことである。図 10は医療スタッフが患者リスクを観察している状況を示しており、縦軸は患者リスクを示し、横軸は時間軸である。図 10に示す、患者が安全範囲の領域にある場合には、医療スタッフは患者を観察する必要のない状況であることを示し、例えば患者が検査に行っている状態である。次に患者が様子見状態にある場合には医療スタッフが患者を観察する必要がある状況であり、例えば患者が治療室内にいる状況である。そして、患者が支援必要の領域に入った場合には、患者リスクが高い状況であり、患者への支援が必要となる。例えば患者への支援行動として、患者への声掛けや治療中断がある。様子見行動は医療スタッフが患者への対応行動を保留して患者の様子を観察する行動であり、人工知能が患者を観察できれば、医療スタッフの業務軽減が図れる。そこで、本研究は医療スタッフの患者への様子見行動の模擬を目指して、3秒ルールインテリジェンスの放射線治療への適応を試みた。ベイジアンネットワークの親ノードが示す確率値は医療スタッフ経験に基づく患者リスク値を示している。本研究では、ベイジアンネットワークにより算出された患者リスク値は3秒後の患者支援行動の必要度合いを示しており、環境要因の変化に従い、ベイジアンネットワークの再計算を実行する。ベイジアンネットワークが示す患者リスクは患者支援行動の必要度合いを示し、患者支援行動の必要度合いがあるしきい値を越えた場合には患者への支援行動が必要となる。図 11に本研究で設定したベイジアンネットワークを示す。図 11中の略称は表 4の通りであり、表 5から表 9はベイジアンネットワークの各ノードに設定した条件付き確率テーブルの値を示している。本研究において、3秒ルールインテリジェンスに与えたベイジアンネットワークの条件付き確率テーブルの設定は医療スタッフへのヒアリングに基づいていており、医療スタッフの経験値を反映している。図 11に示す通り、患者の支援が必要と支援不要の初期値は共に0.5である。そして、図 11が示す確率値の計算要領を図 12に示す。例えば、図 11のSKILのHigh値は0.4であり、計算要領は以下の通りである。
0.5(TREAT)×0.1(支援必要 High)=0.05
0.5(WATCH)×0.7(支援不要 High)=0.35
0.05+0.35=0.4 SKIL(High)
但し、図 11の同値は0.399と表示されている。
図 10 状況判断
図 11 患者リスク(RISK)算出ベイジアンネットワーク
表 5 患者支援モデルのテーブル例
親テーブル(RISK)
表 6 条件付き確率テーブル(SKIL)
表 7 条件付き確率テーブル(PAT)
表 8 条件付き確率テーブル(METH)
表 9 条件付き確率テーブル(ENV)
図 12 ベイジアンネットワークの計算例
5.3環境評価試験
 3秒ルールインテリジェンスの経験データベースは経験ルールを持ち、経験ルールはヒヤリハット情報から収集した。経験ルールは3秒間の時間的状態遷移に伴う初期状態と3秒後の後状態と発現した発生事象を持つ(図 13参照)。更に経験ルールには行動選択トリガが記述されている(表 10参照)。行動選択トリガとは環境変化を検知するための情報である。環境監視下で、行動選択トリガが検知されると該当する経験ルールが選択され、ベイジアンネットワーク中の指定された要素にエビデンスが設定される。
図 13 ヒヤリハットデータ(一部)
例えば患者の蛇行(ふらつき)が検知された場合には、患者状態が悪いことを示すエビデンスがベイジアンネットワークに設定される(図 14、図 15参照)。具体的には、患者リスク値(RISK)の初期値は図 14の通り、0.5であり、患者への支援必要性は不明であることを示している。そして患者の蛇行(ふらつき)が検知されると、患者の状態が悪いことを示すエビデンスがベイジアンネットワークに設定され、患者リスク値が0.83となり、患者への支援が必要なしきい値が0.7であるとすると、患者への支援が必要との意思決定がなされる(図 15参照)。
表 10 エビデンス設定時のトリガ情報
図 14 初期状態のRISK算出ベイジアンネットワーク
図 15 患者(PAT)が悪い(LOW)エビデンスの設定後
5.3.環境の評価の自動化
 3秒ルールインテリジェンスを用いた患者様子見行動の自動化のためにはエビデンスの自動設定が必要である。そこで本研究では図 11に示す各要素の確率値を更に計算するための表 11に示す様にベイジアンネットワークを設定した。表 11に示す様に確率算出のための要素を細分化することにより、自動的にエビデンスを設定することが可能となる。例えば、患者状態(PAT)を算出する1つの要素の患者搬送状態(Trsus)が取る、歩行か、車椅子かストレッチャーかは自動的に設定できる。
表 11 各要素に確率値を与えるベイジアンネットワークのテーブル構造
例えば、表 11中の患者の状態算出用テーブル(PAT)の確率値を算出するベイジアンネットワークを図 16に示す。そして、患者の歩行が確認されると図 17に示すベイジアンネットワークとなり、患者状態は良好(Good)であるため、患者状態(PAT)にGoodが設定される。同様に治療計画から治療内容の複雑さ(METH)は標準(Standard)であり、スタッフのスキル(SKLL)を標準(Standard)に設定すると患者リスク(RISK)を示すベイジアンネットワークは図 18となる。次に患者の蛇行(ふらつき)が検知されると図 19に示す様に患者ふらつきのエビデンスが設定される。しかし、患者状態が低(Low)と判断するしきい値を0.7とすると患者状態が低(Low)の確率値(PAT)は0.5384なので、患者リスク(RISK)算出用ベイジアンネットワークの患者状態に患者低(Low)のエビデンスは設定されない。
図 16患者の状態(PAT)算出用ベイジアンネットワーク(初期状態)
図 17 患者の状態(PAT)算出用ベイジアンネットワーク(患者の歩行確認)
図 18 患者支援度(RISK)算出用ベイジアンネットワーク
しかし、あらかじめ、図 19の患者パフォーマンスステータス(Pstus)がLowであることが認識されていれば、図 20に示す様に患者状態が低(Low)の確率値は0.8860となり、しきい値の0.7を越えるため、患者リスク(RISK)算出用ベイジアンネットワークの患者状態に患者低(Low)のエビデンスが設定され、図 21に示す様に患者リスク(RISK)は0,823となり、3秒ルールインテリジェンスは患者支援の意思決定を行う、そして3秒ルールインテリジェンスの意思決定は医療スタッフの意思決定に近いプロセスにより行われている。
図 19 患者の状態(PAT)算出用ベイジアンネットワーク(患者のふらつき確認)
図 20 患者の状態(PAT)算出用ベイジアンネットワーク(患者のふらつきとパフォーマンスステータス(Pstus)がLowを確認)
図 21 患者支援度(RISK)算出用ベイジアンネットワーク(患者状態Low)
6. 考察とまとめ
本研究は3秒ルールインテリジェンスによる患者様子見行動が可能であることを示し、患者様子見行動の自動化の可能性を示した。患者様子見行動に於ける意思決定とは医療スタッフが患者支援行動を取るか、取らないかである。本研究では患者支援行動の発現確率を患者リスクと定義して、患者リスクがあるしきい値を超えた場合に、3秒ルールインテリジェンスは患者支援行動の意思決定を行う。3秒ルールインテリジェンスは患者リスクをベイジアンネットワークにより算出する。ベイジアンネットワークでは事実が確認されるとエビデンスが設定される。そこで、3秒ルールインテリジェンスは初めに、環境監視により、行動選択トリガが検知されるとベイジアンネットワークにエビデンスを設定して、患者リスクの計算を行う。行動選択トリガとは環境情報の重要性を心理的次元で配置したものの中で最優先位置にあるものであり、行動選択を左右する要因である[9]。本研究では、行動選択トリガをヒヤリハット情報から収集しており、行動選択トリガには医療スタッフの経験に基づく心理的な重み付けが反映されている。従って、3秒ルールインテリジェンスは人の感覚に近い視点で環境監視を行うことが可能である[11]。しかし、今回は患者蛇行(ふらつき)のトリガ検知は手動で行ったため、今後、トリガの自動検知が必要である。更に、本研究は患者支援行動の必要性を時系列的な数値で示すため、行動選択の根拠が明確であり、環境の変化と意思決定の経緯を数字で記録することできる。今後、人的感覚を持つ環境評価機能が実現すれば、病棟やICUでの患者監視の自動化が可能となる。例えば、病棟スタッフは、複数の患者の状態を同時に監視して、適切な患者対応行動を行っている。そこで3秒ルールインテリジェンスによる人的感覚を持つ患者様子見機能が実現すれば、対応の緊急度を自動的に判断することが可能となり、経験の少ない医療スタッフでも対応の優先順位を即時に知ることができ、余裕のある患者対応が実現する。更に、熟練スタッフが観察している要素を、行動選択トリガデータベースに追加できれば、3秒ルールインテリジェンスは熟練スタッフに近い意思決定を行うことが可能となり、更に意思決定に至ったエビデンスを示すことができるため、意思決定の根拠を明確に示すことができ、信頼できる汎用人工知能(GAI: General Artificial Intelligence)への展開が期待できる。今後、実現が求められる汎用人工知能は判断根拠を示すことが求められており、本研究はGAI実現の可能性をも示した[16]。
謝辞
本研究はJSPS科研費 20K11983の助成を受けた。
本研究に助言と貴重な情報を頂いた広島国際大学の橘昌幸教授と九大病院の福永淳一先生に感謝申し上げる。
参考文献
[1]持田 信治,池添 律代,矢鳴 虎夫:"判断マトリクスを使用した内部状態モデル構築に関する研究",バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 6 巻 1号,10-16,(2004)
[2]持田 信治,橘 昌幸:"人の観点から見た環境評価に関する研究",BMFSA学会誌 VOL11 NO.2 PP.25‐31
[3] エリック.R・カンデル,記憶のしくみ
[4]松本元・大津展之:「神経細胞の生物学的特性」,培風館,(1992)
[5]伊藤薫:「脳と神経の細胞学」,培風館,(1975)
[6]Armand M.de Callatay,島田禎晉訳:「人間の脳と人工知能」,丸善株式会社,(1991)
[7] 小林春雄他:「神経情報生物学入門」,オーム社,(1990)
[8] 「IBMが2nm半導体プロセスの試作成功、研究トップに聞く「ムーアの法則」の将来」, 日経クロステック,2021年5月13日
[9] リンゼイ/ノーマン:「情報処理心理学入門Ⅰ(感覚と知覚]」,サイエンス社,1984
[10] リンゼイ/ノーマン:「情報処理心理学入門Ⅱ(注意と記憶]」,サイエンス社,1984
[11] 持田 信治:「3秒ルールAI実現に関する研究」,日本経営システム学会第62回全国研究発表大会講演論文集,138-139, 2019
[12]牧下寛,松永勝也:「自動車運転中の突然の危機に対する制動反応の時間」,人間工学,38巻6号 pp.324-332,2002
[13]山下昇:「車間距離より車間時間を取ろう」,セイフティエクスプレス企業開発センター,6月号,2008
[14] 藤田一弥:「見えないものをさぐる それがベイズ」,オーム社,2015
[15] 持田 信治:「3秒ルーインテリジェスを用いた患者様子見行動の模擬に向けた基礎研究」,BMFSA2020年次大会予稿集,pp.150-153,2020
[16]「人間中心のAI社会原則の草案,人間中心のAI社会原則検討会議」,内閣府,2018年12月
著者氏名(ふりがな)
現職○○大学○○学部○○科
略歴

チェコの工場長からの問いかけ
ヒット: 2 開く 保存
状況
2016年夏、チェコの精密機械製造工場を見学した際、工場長から「リーン生産方法と改善は同じか」と質問された。
行動
当時の自分には答えられなかったため、帰国後に「改善」と「整理・整頓・清掃(3S)」、「いざ鎌倉」の起源について調査を開始した。
結果
「リーン生産方法(コスト最適化)」と「日本の改善(理想目標を目指す行動様式)」の違いを明確にし、イノベーション推進に向けたアプローチを体系化した。
関連ルール: A-34: 生産 E-1: 明
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【分析:状況】
2016年夏、チェコの精密機械製造工場を見学した際、工場長から「リーン生産方法と改善は同じか」と質問された。
【分析:行動】
当時の自分には答えられなかったため、帰国後に「改善」と「整理・整頓・清掃(3S)」、「いざ鎌倉」の起源について調査を開始した。
【分析:結果】
「リーン生産方法(コスト最適化)」と「日本の改善(理想目標を目指す行動様式)」の違いを明確にし、イノベーション推進に向けたアプローチを体系化した。
----------------------------------------
【本文】
整理、整頓、清掃(3S)の起源といざ鎌倉
明専会 神戸支部長 持田 信治
はじめに
2016年の夏にチェコに暫く滞在していました。この時、チェコのビンペルクにある精密機械製造工場を見学する機会があり、見学の最後に工場長さんから「リーン生産方法と改善は同じですか」と質問を受けました。当時、「リーン生産方法」と「改善」については知っていましたが、なんと答えて良いのか解らず、答えられませんでした。この時の工場さんからの質問が本書で述べる「改善」と「整理、整頓、清掃」そして「いざ鎌倉」の起源を調べるきっかけになりました。「リーン生産方法」は代表的な生産方法の一つで、仕様を満たす範囲でコストダウンを計る生産方法です。製造方法には漢字の「物つくり」とひらがなの「ものつくり」があり、漢字の「物つくり」は仕様が決まった有体物を作る方法であり、仕様を満たす範囲で安く作ることが求められます。欧米では仕様を満たす範囲で安く作るための手法として「5S」と「KAIZEN」が広がっており、「リーン生産方法」と「KAIZEN」は同じであると考えられます。一方、ひらがなの「物つくり」は辞書には「物」以外のものを作ることとあります[1]。「物つくり」は仕様が決まっていない理想製品を作ることを含み、理想目標を目指す「改善」が必要です。「改善」は職人言葉「細工は流々仕上げを御覧じろ」に代表される様に、個人の技術とアイデアを駆使して理想の「ものつくり」を目指す行動様式です。アイデア駆使するためには、アイデアが浮かべば直ぐに試行錯誤を行うことが必要です。直ぐに作業に取りかかるためには「整理、整頓、清掃」による整えられた作業環境と常に作業に取りかかれる姿勢、つまり「いざ、鎌倉」が必要です。「いざ、鎌倉」は謡曲「鉢の木」に出てくるセリフで室町時代から戦国時代を経て現代まで伝わっている言葉です。「整理、整頓、清掃」と「改善」は戦国時代から平和な江戸時代に入ると職人の精神として伝わって来ました。そこで、本書は「整理、整頓、清掃」と「いざ鎌倉」の起源を探りつつ、欧米に広がる有体物を作る「KAIZEN」と日本の理想目標を目指す「改善」の違いを述べたいと思います。そして、今後のイノベーション推進に向けた「整理、整頓、清掃」と「改善」に沿ったアプローチ方法を述べたいと思います。
整理、整頓、清掃と武士道そして改善へ
私の小学校の時の記憶では教室の正面に「整理、整頓、清掃」と書かれた額があり、先生から「整理、整頓、清掃」とは何時でも勉強が出来る様に環境を整えておくことだと説明がありました。つまり「整理、整頓、清掃」とは自分の作業道具を常に「整理、整頓」しておき、「清掃」によりワークスペースの確保しておき、何時でも勉強が出来るようにしておくとのことでした。小学校では始業のベルが鳴ったら、直ぐに机について、勉強できるようにしておくように指導されていました。何時でも作業に取りかかれる様に準備しておく「整理、整頓、清掃」の考えは「いざ、鎌倉」の精神に始まると思われます。「整理、整頓、清掃」をビジネスに当てはめると24時間いつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかれるようにという精神で、日本の創意・工夫を含むアイデアを重視する考えです。また、「源義経の鵯越の逆落し」に由来する「夜討ち、朝駆け」もビジネス好機を逃さない精神であり「いざ、鎌倉」と共に日本のビジネス精神の基礎をなしています。「整理、整頓、清掃」は侍が各自の得物を常に手入れをして「いざ」に備える姿勢で、安土桃山時代から戦国時代、江戸を経て、平和な時代になり、武士から職人精神に反映されて、現在まで続いています。大正時代の尋常小學國語讀本にも「鉢木」は登場しており[2]、常に「いざ」に備えることの必要性は語られて来ています。侍の精神である武士道の始まりは奈良時代の743年(天平15年)に「墾田永年私財法」の制定によります。専門武装集団は有力な荘園主や貴族の荘園を守るために出来ました。そして武士とは「貴人の傍らにさぶらふ人から、「侍」つまり「武士」ができたとされています[3]。平安時代に入り、源氏や平家の武将と武士団が出来、更に鎌倉時代に至って、武家政権が誕生することとなりました。そして鎌倉幕府は禅宗に傾倒して、武道、礼儀を重んじる「武士道」が確立されたと考えられます。武士道には以下の3つのポイントがあります。まず、いつでも一大事への準備ができていること。次ぎに自分で改善する、トレーニングを欠かさないこと。そしてコンディションをきちんと保つ摂生 節制 礼節を守ることです。「武士道」では常に一大事に備える準備と得物の手入れが求められました。得物の手入れについては北条重時(1198-1261)が作成した『六波羅殿御家訓』に「腰刀の錆びたる持つべからず~不断に心用心あるべしとあり[4]、得物の手入れと一大事に備えることは武士道の1つであると示されています。貞永元年(1232年)に北条泰時が「御成敗式目」(ごせいばいしきもく)を制定して武家の基本法典が定まりました。「御成敗式目」には守護の職務が「大犯三箇条」(だいぼんさんかじょう)として定められました。大犯三箇条では、守護の職務はまず鎌倉・京都での大番役(おおばんやくとは警固のこと)の招集と指揮監督を行うこと、そして謀反人の捜索と逮捕、殺害人の捜索することでした。つまり守護の職務には警察的な役割があり、日頃の鍛錬と武器の手入れが必要だったと思われます。天文年間(1532年から1555)吾川郡弘岡城主であった吉良宣経(151-1550頃室町時代)の定目(ていもく)にも武士のたしなみとして武具を整備し、武芸の修練に心がけて軍役に精励することと記載されています[4]。そして、守護大名が戦国大名に代わるにつれ、武士道に於ける武勇の必要性が高まって行ったと思われます。
図1 職人の利益の考え方
2.「ものつくり」と「物つくり」に於ける利益の考え方
江戸時代の職人の利益は図1の利益1にあたる部分です。利益1は客の視界にない商品の魅力又は所有欲から得られます。一方、現代のリーン生産システムによる利益は図1の利益2です。利益2はターゲットプライスに対して生産コストを下げることにより得られます。職人は顧客の視界にある製品は顧客が価格を決めてしまうので、利益が得にくいこと、そして自分だけの技術を発揮しにくいことを知っていました。職人言葉にある「簡単な仕事はしない」が職人の利益に対する考え方を物語っています。また、職人は顧客についても、新しいものが好きな顧客を相手にすることを知っていました。今風ですと図2に示すイノベータを相手にすると利益が得られることを職人は知っており、利益を得るために顧客の視界外の製品を作るためにアイデアと「改善」を重視していました。図2に示すM・ロジャースのイノベータ理論によると画期的な新製品、つまりイノベーティブな製品はまず、新しい物好きなイノベータが購入します。イノベータは価格を気にしませんので、売り手は自由に価格設定ができ、利益を得ることができます。いわゆる先駆者利益です。そして製品が成熟して一般化すると客層は最終的には図2の4層目にあるレイトマジョリティに変化します。レイトマジョリティは高度な機能には感心がなく、基本機能がありさえすれば、安いものを購入します。「整理、整頓、清掃」の「整」は古典に「整は正なり」とあり、ゆがんだ形を真っ直ぐにすることが「整」であり「正」とあります。「整」は真っ直ぐにする、不純物を取り除くという語源から[5]、「整理」は乱れたものを整えること、不必要なものを取り除くこととの意味で使われています[1]。一方、「改」の語源は誤りを改めて正しくすることであり、「改善」は「改良」などと同様にreformやimproveの訳語として明治時代に作られた和製漢語であると思われます[3]。「改善」はよい方向へ改めることとして使われています[1]。
図2 エベレト・M・ロジャースのイノベータ理論
3.「3S」と「改善」の広がり
世界の「3S(整理、整頓、清掃)」と「KAIZEN」は利益創出のためのコスト最適化手法であり、利益に関してはバリュー(金銭的価値)を高めることが求められています。
私が図3にあるチェコの計測機械メーカの工場を見学することがあり、見学時に工場長さんから「改善」とリーン生産方式は同じですかと聞かれたことがあります。このことからも海外では「3S」と「改善」はコスト最適化手法として知られているようです。また、チェコのPrague University of Economics and Business大学では図4や図5に示す様に5Sゲームという講義で「改善」や「無駄」を説明しており、「改善」と「無駄」どちらも生産性向上の手法として説明されていました。5Sゲームではレゴの飛行機模型を教材にして、数人でチームを組み効果的な組み立て方法を考え、どのチームが多く組み立てるかを競う講義でした。「整理、整頓、清掃」を略した「3S」は製造現場に限らず、多くの場所で言われている言葉です。一方、「5S」も良く聞く言葉です。「5S」の最後の2つの「S」は「躾」と「清潔」であり、私がHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)に代表される食品関係の仕事をしている時には「躾」とは作業着、エプロン、マスク、帽子を付けてほこりを落としてから食品工場に入ることであり、白線を踏まないなどの職場のルールを守る習慣を身に付けることが「躾」でした。食品工場の「清潔」とは手を石けんで洗い、更にアルコールで消毒すると言う、いわゆる化学的な清掃でした。「清潔」を「5S」を説明する本で調べると「5S」を維持することとあります。また、「清掃」と「清潔」の英語訳は同じ「Cleaning」であり区別がありません。「3S」はいつでも作業に取りかかるための心構えであるのに対して、「5S」は製造現場の心構えに特化しているようです。しかし、海外での「5S」の普及は苦労があるようです。例えば、チェコの友人から次の様な話を聞きました。チェコのある工場で「5S」を実践するとのことで、始業前に出社して作業準備するように指示した所、作業準備は業務の一部であり、対価が支払らわれない作業は作業者に断られたそうです。
4.「整理、整頓、清掃」といざ鎌倉
「整理、整頓、清掃」とはいつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかる心構えであり、「整理、整頓、清掃」は「いざ、鎌倉」の精神に始まると思われます。「いざ、鎌倉」は室町時代に成立した謡曲「鉢木」に出てくる言葉で、鎌倉に何かあればすぐに鎌倉に駆け付けるというものです。当時、すべての武士が鎌倉に住んでいたわけではないので、常に鎌倉での争いへの準備が必要あったことに由来しています。ただ、鎌倉に掛け着けるのは恩賞、つまり利益を得るためであり、「いざ鎌倉」は、主人公の佐野源左衛門常世が、宿を貸した旅僧(旅僧は諸国行脚中の執権北条時頼(最明寺入道)に対して語った「今にても鎌倉に一大事あらば、千切れたりとも具足を着け、錆びたりとも長刀を持ち、痩せたりとも馬に乗り、一番に馳せ参じ、合戦始らば一番に敵と討合ひて死なん覚悟なれど」のセリフが有名な謡曲で、鎌倉で何か騒動が起こったとき御家人たちがすぐに鎌倉に、はせ参じる様子を描いています[6][7][8]。「いざ、鎌倉」が出てくる「鉢木」は室町時代の観阿弥(1334~1384)作又は世阿弥の作と言われており、2度の元寇の後の作です。当時、武士は得物の手入れに余念の無い状況であったと思われます。また、太刀と槍は2度の元寇の後、めざましい性能向上がありました。名刀「正宗」が登場するのもこの時代です。
5.「鉢木」成立の時代背景
「鉢木」からわかるのは、まず鎌倉では騒動が頻発したことと、次ぎに鎌倉に一大事ありと聞けば、諸国の御家人は先を争って馳せ参じ、幕府の着到状(出席簿)に姓名を記録して恩賞を期待していたことです。このようなことは鎌倉時代特有のことで、他の時代にはあまりみられないため、「いざ鎌倉」という言葉は現在まで残ったと考えられます。一大事ありと聞いて、御家人たちが鎌倉に駆けつけたという記述は、鎌倉幕府の歴史書である『吾妻鏡』[4]に散見されます。例えば吾妻鏡の元久2年(1205)にある「畠山重忠、討たれるの」項には「軍勢が由比ヶ浜の辺りを先を争って走った」とあり、先駆けの心がけが表現されています。争いが最も多いのは、源頼朝の時代ではなく、鎌倉中期の北条時頼(1227-1263)の時代です。摂家将軍を追放した上、三浦氏を滅ぼし、北条氏専制政治への道を開いた「時頼」の時代は、いつ何が起こるかわからない不安定な社会状況でした。「時頼」と「いざ鎌倉」には深い関わりがあり、謡曲「鉢の木」は、その史実を反映しているといえます。「鎌倉幕府の歴史を記載した「吾妻鏡」には、源頼朝が挙兵した治承4年(1180)から六代将軍宗尊親王が鎌倉から京都に送還された文永3年(1266)までの歴史を記載しています。「鉢の木」は観阿弥(1334~1384)の作と言われており、「吾妻鏡」の鎌倉武士の精神を反映していると思われます。また、北条幕府に起きた2度に渡る元寇の役も、常に戦闘に備える精神が維持された理由であると思われます。2度に渡る元寇の役とは文永の役(1274)と弘安の役(1281)です。当時、北条時宗(1251-1284)は2度の元の軍を退けました[4]。元寇の役に於ける勝利は北条武士の大きな働きと神風によるものとされています。福岡市の東公園には図6に示す巨大な日蓮聖人の像があり、日蓮聖人がお題目を唱えて2回の元寇を退けた姿があり、神風についても語り継がれています。日蓮聖人は「立正安国論(1260)」を北条時頼(1227-1263)に宛てに送り、外的の襲来を警告したとされており、当時が不安な情勢であったことを示しています。山梨県身延町にある久遠寺宝物館に「立正安国論」は展示されています。2度の元寇は日本の武士の装備にも変化をもたらしました。元軍の真綿を何層も重ねた鎧を当時の軟鉄で作られた太刀では切ることが出来ませんでした。そこで、鎌倉幕府は各地から刀匠を集めて太刀作りを奨励しました。そして刀匠、五郎入道正宗が太刀の製造方法を完成させました。新しい製造方法は軟鉄の鉄に鋼鉄を巻いて、鍛えた後、焼き入れをする工程を繰り返す方法で、良く切れる太刀ができました。名刀正宗です(元寇記念館資料より)。鎌倉幕府後の武士も一大事に備える心意気であったことは土佐の「一領具足」にも見られます。「一領具足」は耕作時に槍の柄に草鞋(わらじ)と兵糧をくくりつけて田の畦(あぜ)に立てておき、有事の時には武装して直ぐさま、駆け付けるという生活でした。「一領具足」に関して土佐物語には「一領具足と申すは、僅かの田地を領して、常には守護へ動仕(きんし)もなく役もなく、己が領地に引き籠り、自らたがやし、くさぎり、諸士の交はりもせされば、礼儀もなく作法もなく、明け暮れ武勇のみを事として、田に出づるにも、鎗の柄に草桂・兵糧を括り付け、田の畔に立て置き、すはと言へば鎌鍬を投げ捨て走り行く。鎧一領にて着替への領もなく、馬一疋にて乗り替へもなく、自身走り廻りければ一領具足と名付けたり。弓・鉄胞・太刀打ちに調練して、死生知らずの野武士なり」とあり[9]、土佐武士は有事の際には戦場に馳せ向い、弓、鉄砲、大刀打に鍛錬をして、勇猛かつ命知らずの野武士であったとあります。「一領具足」は長宗我部元親(1539-1599)が安芸国虎攻めにあたり、兵力増強のために思いついたとされています。「いざ鎌倉」の「いざ」と「一領具足」の「いさ」は一大事に備える鎌倉幕府から戦国時代の武士の共通の心意気でした。
5.鎌倉幕府の「いざ鎌倉」はどこ
「いざ鎌倉」にある鎌倉幕府に始まる、武家政治については、源頼朝が1192年(建久3年)に朝廷から「征夷大将軍」に任命され、鎌倉幕府による鎌倉幕府が始まります。源頼朝は治承4年(1180年)、伊豆で反平氏の軍を挙げた頼朝を討つため京からやってきた平家軍を富士川の戦いで破った後、図7にある鎌倉の大蔵(雪ノ下)の屋敷に入り、鎌倉が武家政権の政治の中心地となりました。頼朝はまず元八幡を現在の鶴岡八幡宮の地に移して町づくりの中心にしました。また頼朝は図8の永福寺(ようふくじ)を建立して、合戦で亡くなった将兵の鎮魂のために建立しました。鎌倉幕府では禅宗が奨励され、「武士道」が成立しました。「武士道」では「鉢木」に描かれた様に常に得物を手入れして、一大事に備えることが必要となりました。
6.職人気質
アイデアが浮かんだ時に直ぐに作業に取りかかるための「整理、整頓、清掃」と理想目標を求める「改善」は日本の職人の精神です。そして、職人はオリジナルな作品を作ることを誇りにしていました。職人は自分の技術を基礎に唯一のもの作りを目指しており、製作した品は商品ではなく、作品です。一方、今日、求められるイノベーティブな商品とはお客の視界にない製品です。21世紀最大のイノベーティブな製品の一つにスマートフォンがあります。スマートフォンの始まりは2007年にスティーブジョブズ氏が発表したiPhoneです。iPhoneは画期的なインターフェースとポインティングデバイスを備えていました。当時のスマートフォンは図9に示すスマートフォンの様に下や横に小さなキーボードを備えた物で、使い勝手は良くありませんでした。また当時の多くの携帯電話は折りたたみ型の電話機であり、俗に言うガラケー電話であり、iPhoneは多くのユーザにとって見たことのない電話でした。しかし、スティーブジョブズ氏にしてみれば、1984年に発表したマッキントッシュでグラフィカルインターフェースとマウスによるポインティングデバイスに関する技術を取得しており、更に、その後のネクスト・ソフトウエアにより優れたグラフィカルインターフェース技術を所有していましたので、スティーブジョブズ氏は自分の持つ技術を用いて電話を進化させることによりiPhoneを開発しました。スティーブジョブズ氏は2007年のiPhone発表時に「電話を再発明した」と語っています。
イノベーティブな製品とはiPhoneからも解る様に自分の持つ技術と他の何かを組み合わせることにより生まれます。イノベーティブな製品開発には自分の持つ技術や道具を明確にすることが必要です。例えば、職人の道具自慢では、「腕のいい大工が道具に凝って稼ぎのほとんどを道具につぎこみ年がら年中素寒貧で..」や、「荒仕工鉋(かんな)...こちとら大工の肝玉をふるい立たせてくれなくちゃいけね」[10]にある通り、職人はいい仕事には自分の技術と良い道具が必要だと知っていました。また職人は、自分の作事の価値について「自分の仕事に自分で値段をつけて、それが売れるようになりまして」[11]とある通り、稼げる製品(作品)には技術とアイデアが必要であり、お客が求めるものだけを作っていたのでは稼げないということは、昔から「日本の職人精神」として伝わってきています。現在、イノベーションやイノベーティブな製品が求められていますが、イノベーティブな製品の創造には職人の「整理、整頓、清掃」と「いざ、鎌倉」の精神が必要です。
7. 製品の魅力の変化とイノベーション
最近、イノベーションと言うことばを良く聞きます。例えば、イノベーションセンターやイノベーション人材養成です。イノベーションとはドラッカー氏やシュンペーター氏の定義では、画期的な製品やサービスの導入により経済に新たな好況局面を創り出すこととあります。従いまして、イノベーションとは必ずしも製品を生み出すことではありません。しかし、イノベーションとはイノベーティブな製品やサービスの創造と考えることが一般的であると思われます。イノベーティブな製品とは、顧客の視界に無い製品であり、定義は次の2つと考えられます。一つは開発者が価格を設定できること、そして2つめはお客さんの財布からお金を捻出してもらうほど、魅力ある製品であることです。例えばお客さんが食費を節約してでも欲しくなるくらい魅力ある製品がイノベーティブな製品です。このカテゴリに入る例は、初期のiPhoneです。しかし、製品はだんだん一般化して、差別化することが難しくなります。製品の差別化が難しくなると価格競争になり、利益を得づらくなっていきます。製品の一般化(コモディティ化)、つまり製品の成熟度が進むに従い、客層も変化します。レイトマジョリティが製品を購入する状況になると、製品の差別化は難しく、価格競争となります。するとメーカは大量生産による薄利多売となり、大規模な生産設備の投資が必要となります。若し、設備投資の時期が失敗すると経営が大変なことになります。例えば液晶ディスプレイが成熟段階の製品だと思われます。仮に画面の精細度が4Kや8Kであって、しかも高品質なスピーカを搭載してもレイトマジョリティには製品の魅力が届かず、差別化にはなりません。最近では、自動車が成熟段階に入っていると思われます。ビジネスとはお金の流れのことであり、お金の流れとは物(もの)やサービスと対価(お金)がループを形成することです。対価とはバリューとも呼ばれ、対価は金額で評価されます。しかし、バリューとは物の機能や性能だけで決まるものではなく、感覚的な要素もあります。例えば、ネームバリューや希少性や野球チーム名を加えるコラボ等があります。「もの」や「物」のバリューは顧客の客層や顧客の主観が大きく影響します。顧客の主観とは客の評価軸のことで製品が持つ評価軸が多いほど、バリューは高まります。リーン生産方式は無駄を省き、シックスシグマは作業を平準化してむりとむらのないマニュアル主義による製造を実現するものです。リーン生産方式では仕様に対するオーバースペックも無駄となります。オーバースペックがイノベータに対する製品の魅力の1つであり、イノベーティブな製品に必要なものですので、仕様主義、コスト主義ではイノベーティブな製品は生まれません。イノベーティブな製品は理想目標を掲げることによりイメージが浮かんできます。そしてアイデアが浮かんだ時に直ぐに試作に取りかかるためには「整理、整頓、清掃」が必要です。そして、より良いものを作るには良い道具が必要です。そしてアイデアを試すためのワークスペースの確保が必要です。この精神を簡単にしたものが日本の「整理、整頓、清掃」と「改善」です。
謝辞
本書の作成あたり、助言と貴重な情報を頂いた鎌倉市鎌倉歴史文化交流館殿とオーテピア高知図書館の横山 有弐氏に感謝申し上げます。
参考文献
[1] 岩波国語辞典、岩波書店、2019
[2] 尋常小學國語讀本 卷1、文部省、1918(大正7年)国立国会図書館デジタルコレクション
[3] 新明解語源辞典、小松寿雄, 三省堂、2011
[4] 吾妻鏡 西田友広、角川文庫、2021
[5] 漢字語源語義辞典、加納喜光、1940
[6] 明治の源流, 平泉澄、時事通信社、1970 国立国会図書館 デジタルコレクション
[7] 鉢木 国立国会図書館デジタルコレクション
[8] 駒とめて袖うちはらう-謡曲「鉢木」考 森延哉 (株)文芸社 2010
[9] 長宗我部元親 その謎と生涯、山本大(やまもと たけし)、新人物往来社、2010
[10] 続江戸職人綺譚、佐江衆、新潮文庫、2003
[11]職人、永六輔、岩波書店、1996
小学校での「整理・整頓・清掃」の教え
ヒット: 2 開く 保存
状況
小学校の教室に掲げられた「整理・整頓・清掃」の額と、先生による指導。
行動
「いつでも勉強ができるように環境を整えておくこと」という教えを実践し、始業ベルと同時に作業に取りかかれる準備を習慣化した。
結果
「整理・整頓・清掃」を、単なる掃除ではなく「アイデアが浮かんだ時に直ちに作業に取りかかるための心構え」として理解する基礎となった。
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【分析:状況】
小学校の教室に掲げられた「整理・整頓・清掃」の額と、先生による指導。
【分析:行動】
「いつでも勉強ができるように環境を整えておくこと」という教えを実践し、始業ベルと同時に作業に取りかかれる準備を習慣化した。
【分析:結果】
「整理・整頓・清掃」を、単なる掃除ではなく「アイデアが浮かんだ時に直ちに作業に取りかかるための心構え」として理解する基礎となった。
----------------------------------------
【本文】
整理、整頓、清掃(3S)の起源といざ鎌倉
明専会 神戸支部長 持田 信治
はじめに
2016年の夏にチェコに暫く滞在していました。この時、チェコのビンペルクにある精密機械製造工場を見学する機会があり、見学の最後に工場長さんから「リーン生産方法と改善は同じですか」と質問を受けました。当時、「リーン生産方法」と「改善」については知っていましたが、なんと答えて良いのか解らず、答えられませんでした。この時の工場さんからの質問が本書で述べる「改善」と「整理、整頓、清掃」そして「いざ鎌倉」の起源を調べるきっかけになりました。「リーン生産方法」は代表的な生産方法の一つで、仕様を満たす範囲でコストダウンを計る生産方法です。製造方法には漢字の「物つくり」とひらがなの「ものつくり」があり、漢字の「物つくり」は仕様が決まった有体物を作る方法であり、仕様を満たす範囲で安く作ることが求められます。欧米では仕様を満たす範囲で安く作るための手法として「5S」と「KAIZEN」が広がっており、「リーン生産方法」と「KAIZEN」は同じであると考えられます。一方、ひらがなの「物つくり」は辞書には「物」以外のものを作ることとあります[1]。「物つくり」は仕様が決まっていない理想製品を作ることを含み、理想目標を目指す「改善」が必要です。「改善」は職人言葉「細工は流々仕上げを御覧じろ」に代表される様に、個人の技術とアイデアを駆使して理想の「ものつくり」を目指す行動様式です。アイデア駆使するためには、アイデアが浮かべば直ぐに試行錯誤を行うことが必要です。直ぐに作業に取りかかるためには「整理、整頓、清掃」による整えられた作業環境と常に作業に取りかかれる姿勢、つまり「いざ、鎌倉」が必要です。「いざ、鎌倉」は謡曲「鉢の木」に出てくるセリフで室町時代から戦国時代を経て現代まで伝わっている言葉です。「整理、整頓、清掃」と「改善」は戦国時代から平和な江戸時代に入ると職人の精神として伝わって来ました。そこで、本書は「整理、整頓、清掃」と「いざ鎌倉」の起源を探りつつ、欧米に広がる有体物を作る「KAIZEN」と日本の理想目標を目指す「改善」の違いを述べたいと思います。そして、今後のイノベーション推進に向けた「整理、整頓、清掃」と「改善」に沿ったアプローチ方法を述べたいと思います。
整理、整頓、清掃と武士道そして改善へ
私の小学校の時の記憶では教室の正面に「整理、整頓、清掃」と書かれた額があり、先生から「整理、整頓、清掃」とは何時でも勉強が出来る様に環境を整えておくことだと説明がありました。つまり「整理、整頓、清掃」とは自分の作業道具を常に「整理、整頓」しておき、「清掃」によりワークスペースの確保しておき、何時でも勉強が出来るようにしておくとのことでした。小学校では始業のベルが鳴ったら、直ぐに机について、勉強できるようにしておくように指導されていました。何時でも作業に取りかかれる様に準備しておく「整理、整頓、清掃」の考えは「いざ、鎌倉」の精神に始まると思われます。「整理、整頓、清掃」をビジネスに当てはめると24時間いつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかれるようにという精神で、日本の創意・工夫を含むアイデアを重視する考えです。また、「源義経の鵯越の逆落し」に由来する「夜討ち、朝駆け」もビジネス好機を逃さない精神であり「いざ、鎌倉」と共に日本のビジネス精神の基礎をなしています。「整理、整頓、清掃」は侍が各自の得物を常に手入れをして「いざ」に備える姿勢で、安土桃山時代から戦国時代、江戸を経て、平和な時代になり、武士から職人精神に反映されて、現在まで続いています。大正時代の尋常小學國語讀本にも「鉢木」は登場しており[2]、常に「いざ」に備えることの必要性は語られて来ています。侍の精神である武士道の始まりは奈良時代の743年(天平15年)に「墾田永年私財法」の制定によります。専門武装集団は有力な荘園主や貴族の荘園を守るために出来ました。そして武士とは「貴人の傍らにさぶらふ人から、「侍」つまり「武士」ができたとされています[3]。平安時代に入り、源氏や平家の武将と武士団が出来、更に鎌倉時代に至って、武家政権が誕生することとなりました。そして鎌倉幕府は禅宗に傾倒して、武道、礼儀を重んじる「武士道」が確立されたと考えられます。武士道には以下の3つのポイントがあります。まず、いつでも一大事への準備ができていること。次ぎに自分で改善する、トレーニングを欠かさないこと。そしてコンディションをきちんと保つ摂生 節制 礼節を守ることです。「武士道」では常に一大事に備える準備と得物の手入れが求められました。得物の手入れについては北条重時(1198-1261)が作成した『六波羅殿御家訓』に「腰刀の錆びたる持つべからず~不断に心用心あるべしとあり[4]、得物の手入れと一大事に備えることは武士道の1つであると示されています。貞永元年(1232年)に北条泰時が「御成敗式目」(ごせいばいしきもく)を制定して武家の基本法典が定まりました。「御成敗式目」には守護の職務が「大犯三箇条」(だいぼんさんかじょう)として定められました。大犯三箇条では、守護の職務はまず鎌倉・京都での大番役(おおばんやくとは警固のこと)の招集と指揮監督を行うこと、そして謀反人の捜索と逮捕、殺害人の捜索することでした。つまり守護の職務には警察的な役割があり、日頃の鍛錬と武器の手入れが必要だったと思われます。天文年間(1532年から1555)吾川郡弘岡城主であった吉良宣経(151-1550頃室町時代)の定目(ていもく)にも武士のたしなみとして武具を整備し、武芸の修練に心がけて軍役に精励することと記載されています[4]。そして、守護大名が戦国大名に代わるにつれ、武士道に於ける武勇の必要性が高まって行ったと思われます。
図1 職人の利益の考え方
2.「ものつくり」と「物つくり」に於ける利益の考え方
江戸時代の職人の利益は図1の利益1にあたる部分です。利益1は客の視界にない商品の魅力又は所有欲から得られます。一方、現代のリーン生産システムによる利益は図1の利益2です。利益2はターゲットプライスに対して生産コストを下げることにより得られます。職人は顧客の視界にある製品は顧客が価格を決めてしまうので、利益が得にくいこと、そして自分だけの技術を発揮しにくいことを知っていました。職人言葉にある「簡単な仕事はしない」が職人の利益に対する考え方を物語っています。また、職人は顧客についても、新しいものが好きな顧客を相手にすることを知っていました。今風ですと図2に示すイノベータを相手にすると利益が得られることを職人は知っており、利益を得るために顧客の視界外の製品を作るためにアイデアと「改善」を重視していました。図2に示すM・ロジャースのイノベータ理論によると画期的な新製品、つまりイノベーティブな製品はまず、新しい物好きなイノベータが購入します。イノベータは価格を気にしませんので、売り手は自由に価格設定ができ、利益を得ることができます。いわゆる先駆者利益です。そして製品が成熟して一般化すると客層は最終的には図2の4層目にあるレイトマジョリティに変化します。レイトマジョリティは高度な機能には感心がなく、基本機能がありさえすれば、安いものを購入します。「整理、整頓、清掃」の「整」は古典に「整は正なり」とあり、ゆがんだ形を真っ直ぐにすることが「整」であり「正」とあります。「整」は真っ直ぐにする、不純物を取り除くという語源から[5]、「整理」は乱れたものを整えること、不必要なものを取り除くこととの意味で使われています[1]。一方、「改」の語源は誤りを改めて正しくすることであり、「改善」は「改良」などと同様にreformやimproveの訳語として明治時代に作られた和製漢語であると思われます[3]。「改善」はよい方向へ改めることとして使われています[1]。
図2 エベレト・M・ロジャースのイノベータ理論
3.「3S」と「改善」の広がり
世界の「3S(整理、整頓、清掃)」と「KAIZEN」は利益創出のためのコスト最適化手法であり、利益に関してはバリュー(金銭的価値)を高めることが求められています。
私が図3にあるチェコの計測機械メーカの工場を見学することがあり、見学時に工場長さんから「改善」とリーン生産方式は同じですかと聞かれたことがあります。このことからも海外では「3S」と「改善」はコスト最適化手法として知られているようです。また、チェコのPrague University of Economics and Business大学では図4や図5に示す様に5Sゲームという講義で「改善」や「無駄」を説明しており、「改善」と「無駄」どちらも生産性向上の手法として説明されていました。5Sゲームではレゴの飛行機模型を教材にして、数人でチームを組み効果的な組み立て方法を考え、どのチームが多く組み立てるかを競う講義でした。「整理、整頓、清掃」を略した「3S」は製造現場に限らず、多くの場所で言われている言葉です。一方、「5S」も良く聞く言葉です。「5S」の最後の2つの「S」は「躾」と「清潔」であり、私がHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)に代表される食品関係の仕事をしている時には「躾」とは作業着、エプロン、マスク、帽子を付けてほこりを落としてから食品工場に入ることであり、白線を踏まないなどの職場のルールを守る習慣を身に付けることが「躾」でした。食品工場の「清潔」とは手を石けんで洗い、更にアルコールで消毒すると言う、いわゆる化学的な清掃でした。「清潔」を「5S」を説明する本で調べると「5S」を維持することとあります。また、「清掃」と「清潔」の英語訳は同じ「Cleaning」であり区別がありません。「3S」はいつでも作業に取りかかるための心構えであるのに対して、「5S」は製造現場の心構えに特化しているようです。しかし、海外での「5S」の普及は苦労があるようです。例えば、チェコの友人から次の様な話を聞きました。チェコのある工場で「5S」を実践するとのことで、始業前に出社して作業準備するように指示した所、作業準備は業務の一部であり、対価が支払らわれない作業は作業者に断られたそうです。
4.「整理、整頓、清掃」といざ鎌倉
「整理、整頓、清掃」とはいつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかる心構えであり、「整理、整頓、清掃」は「いざ、鎌倉」の精神に始まると思われます。「いざ、鎌倉」は室町時代に成立した謡曲「鉢木」に出てくる言葉で、鎌倉に何かあればすぐに鎌倉に駆け付けるというものです。当時、すべての武士が鎌倉に住んでいたわけではないので、常に鎌倉での争いへの準備が必要あったことに由来しています。ただ、鎌倉に掛け着けるのは恩賞、つまり利益を得るためであり、「いざ鎌倉」は、主人公の佐野源左衛門常世が、宿を貸した旅僧(旅僧は諸国行脚中の執権北条時頼(最明寺入道)に対して語った「今にても鎌倉に一大事あらば、千切れたりとも具足を着け、錆びたりとも長刀を持ち、痩せたりとも馬に乗り、一番に馳せ参じ、合戦始らば一番に敵と討合ひて死なん覚悟なれど」のセリフが有名な謡曲で、鎌倉で何か騒動が起こったとき御家人たちがすぐに鎌倉に、はせ参じる様子を描いています[6][7][8]。「いざ、鎌倉」が出てくる「鉢木」は室町時代の観阿弥(1334~1384)作又は世阿弥の作と言われており、2度の元寇の後の作です。当時、武士は得物の手入れに余念の無い状況であったと思われます。また、太刀と槍は2度の元寇の後、めざましい性能向上がありました。名刀「正宗」が登場するのもこの時代です。
5.「鉢木」成立の時代背景
「鉢木」からわかるのは、まず鎌倉では騒動が頻発したことと、次ぎに鎌倉に一大事ありと聞けば、諸国の御家人は先を争って馳せ参じ、幕府の着到状(出席簿)に姓名を記録して恩賞を期待していたことです。このようなことは鎌倉時代特有のことで、他の時代にはあまりみられないため、「いざ鎌倉」という言葉は現在まで残ったと考えられます。一大事ありと聞いて、御家人たちが鎌倉に駆けつけたという記述は、鎌倉幕府の歴史書である『吾妻鏡』[4]に散見されます。例えば吾妻鏡の元久2年(1205)にある「畠山重忠、討たれるの」項には「軍勢が由比ヶ浜の辺りを先を争って走った」とあり、先駆けの心がけが表現されています。争いが最も多いのは、源頼朝の時代ではなく、鎌倉中期の北条時頼(1227-1263)の時代です。摂家将軍を追放した上、三浦氏を滅ぼし、北条氏専制政治への道を開いた「時頼」の時代は、いつ何が起こるかわからない不安定な社会状況でした。「時頼」と「いざ鎌倉」には深い関わりがあり、謡曲「鉢の木」は、その史実を反映しているといえます。「鎌倉幕府の歴史を記載した「吾妻鏡」には、源頼朝が挙兵した治承4年(1180)から六代将軍宗尊親王が鎌倉から京都に送還された文永3年(1266)までの歴史を記載しています。「鉢の木」は観阿弥(1334~1384)の作と言われており、「吾妻鏡」の鎌倉武士の精神を反映していると思われます。また、北条幕府に起きた2度に渡る元寇の役も、常に戦闘に備える精神が維持された理由であると思われます。2度に渡る元寇の役とは文永の役(1274)と弘安の役(1281)です。当時、北条時宗(1251-1284)は2度の元の軍を退けました[4]。元寇の役に於ける勝利は北条武士の大きな働きと神風によるものとされています。福岡市の東公園には図6に示す巨大な日蓮聖人の像があり、日蓮聖人がお題目を唱えて2回の元寇を退けた姿があり、神風についても語り継がれています。日蓮聖人は「立正安国論(1260)」を北条時頼(1227-1263)に宛てに送り、外的の襲来を警告したとされており、当時が不安な情勢であったことを示しています。山梨県身延町にある久遠寺宝物館に「立正安国論」は展示されています。2度の元寇は日本の武士の装備にも変化をもたらしました。元軍の真綿を何層も重ねた鎧を当時の軟鉄で作られた太刀では切ることが出来ませんでした。そこで、鎌倉幕府は各地から刀匠を集めて太刀作りを奨励しました。そして刀匠、五郎入道正宗が太刀の製造方法を完成させました。新しい製造方法は軟鉄の鉄に鋼鉄を巻いて、鍛えた後、焼き入れをする工程を繰り返す方法で、良く切れる太刀ができました。名刀正宗です(元寇記念館資料より)。鎌倉幕府後の武士も一大事に備える心意気であったことは土佐の「一領具足」にも見られます。「一領具足」は耕作時に槍の柄に草鞋(わらじ)と兵糧をくくりつけて田の畦(あぜ)に立てておき、有事の時には武装して直ぐさま、駆け付けるという生活でした。「一領具足」に関して土佐物語には「一領具足と申すは、僅かの田地を領して、常には守護へ動仕(きんし)もなく役もなく、己が領地に引き籠り、自らたがやし、くさぎり、諸士の交はりもせされば、礼儀もなく作法もなく、明け暮れ武勇のみを事として、田に出づるにも、鎗の柄に草桂・兵糧を括り付け、田の畔に立て置き、すはと言へば鎌鍬を投げ捨て走り行く。鎧一領にて着替への領もなく、馬一疋にて乗り替へもなく、自身走り廻りければ一領具足と名付けたり。弓・鉄胞・太刀打ちに調練して、死生知らずの野武士なり」とあり[9]、土佐武士は有事の際には戦場に馳せ向い、弓、鉄砲、大刀打に鍛錬をして、勇猛かつ命知らずの野武士であったとあります。「一領具足」は長宗我部元親(1539-1599)が安芸国虎攻めにあたり、兵力増強のために思いついたとされています。「いざ鎌倉」の「いざ」と「一領具足」の「いさ」は一大事に備える鎌倉幕府から戦国時代の武士の共通の心意気でした。
5.鎌倉幕府の「いざ鎌倉」はどこ
「いざ鎌倉」にある鎌倉幕府に始まる、武家政治については、源頼朝が1192年(建久3年)に朝廷から「征夷大将軍」に任命され、鎌倉幕府による鎌倉幕府が始まります。源頼朝は治承4年(1180年)、伊豆で反平氏の軍を挙げた頼朝を討つため京からやってきた平家軍を富士川の戦いで破った後、図7にある鎌倉の大蔵(雪ノ下)の屋敷に入り、鎌倉が武家政権の政治の中心地となりました。頼朝はまず元八幡を現在の鶴岡八幡宮の地に移して町づくりの中心にしました。また頼朝は図8の永福寺(ようふくじ)を建立して、合戦で亡くなった将兵の鎮魂のために建立しました。鎌倉幕府では禅宗が奨励され、「武士道」が成立しました。「武士道」では「鉢木」に描かれた様に常に得物を手入れして、一大事に備えることが必要となりました。
6.職人気質
アイデアが浮かんだ時に直ぐに作業に取りかかるための「整理、整頓、清掃」と理想目標を求める「改善」は日本の職人の精神です。そして、職人はオリジナルな作品を作ることを誇りにしていました。職人は自分の技術を基礎に唯一のもの作りを目指しており、製作した品は商品ではなく、作品です。一方、今日、求められるイノベーティブな商品とはお客の視界にない製品です。21世紀最大のイノベーティブな製品の一つにスマートフォンがあります。スマートフォンの始まりは2007年にスティーブジョブズ氏が発表したiPhoneです。iPhoneは画期的なインターフェースとポインティングデバイスを備えていました。当時のスマートフォンは図9に示すスマートフォンの様に下や横に小さなキーボードを備えた物で、使い勝手は良くありませんでした。また当時の多くの携帯電話は折りたたみ型の電話機であり、俗に言うガラケー電話であり、iPhoneは多くのユーザにとって見たことのない電話でした。しかし、スティーブジョブズ氏にしてみれば、1984年に発表したマッキントッシュでグラフィカルインターフェースとマウスによるポインティングデバイスに関する技術を取得しており、更に、その後のネクスト・ソフトウエアにより優れたグラフィカルインターフェース技術を所有していましたので、スティーブジョブズ氏は自分の持つ技術を用いて電話を進化させることによりiPhoneを開発しました。スティーブジョブズ氏は2007年のiPhone発表時に「電話を再発明した」と語っています。
イノベーティブな製品とはiPhoneからも解る様に自分の持つ技術と他の何かを組み合わせることにより生まれます。イノベーティブな製品開発には自分の持つ技術や道具を明確にすることが必要です。例えば、職人の道具自慢では、「腕のいい大工が道具に凝って稼ぎのほとんどを道具につぎこみ年がら年中素寒貧で..」や、「荒仕工鉋(かんな)...こちとら大工の肝玉をふるい立たせてくれなくちゃいけね」[10]にある通り、職人はいい仕事には自分の技術と良い道具が必要だと知っていました。また職人は、自分の作事の価値について「自分の仕事に自分で値段をつけて、それが売れるようになりまして」[11]とある通り、稼げる製品(作品)には技術とアイデアが必要であり、お客が求めるものだけを作っていたのでは稼げないということは、昔から「日本の職人精神」として伝わってきています。現在、イノベーションやイノベーティブな製品が求められていますが、イノベーティブな製品の創造には職人の「整理、整頓、清掃」と「いざ、鎌倉」の精神が必要です。
7. 製品の魅力の変化とイノベーション
最近、イノベーションと言うことばを良く聞きます。例えば、イノベーションセンターやイノベーション人材養成です。イノベーションとはドラッカー氏やシュンペーター氏の定義では、画期的な製品やサービスの導入により経済に新たな好況局面を創り出すこととあります。従いまして、イノベーションとは必ずしも製品を生み出すことではありません。しかし、イノベーションとはイノベーティブな製品やサービスの創造と考えることが一般的であると思われます。イノベーティブな製品とは、顧客の視界に無い製品であり、定義は次の2つと考えられます。一つは開発者が価格を設定できること、そして2つめはお客さんの財布からお金を捻出してもらうほど、魅力ある製品であることです。例えばお客さんが食費を節約してでも欲しくなるくらい魅力ある製品がイノベーティブな製品です。このカテゴリに入る例は、初期のiPhoneです。しかし、製品はだんだん一般化して、差別化することが難しくなります。製品の差別化が難しくなると価格競争になり、利益を得づらくなっていきます。製品の一般化(コモディティ化)、つまり製品の成熟度が進むに従い、客層も変化します。レイトマジョリティが製品を購入する状況になると、製品の差別化は難しく、価格競争となります。するとメーカは大量生産による薄利多売となり、大規模な生産設備の投資が必要となります。若し、設備投資の時期が失敗すると経営が大変なことになります。例えば液晶ディスプレイが成熟段階の製品だと思われます。仮に画面の精細度が4Kや8Kであって、しかも高品質なスピーカを搭載してもレイトマジョリティには製品の魅力が届かず、差別化にはなりません。最近では、自動車が成熟段階に入っていると思われます。ビジネスとはお金の流れのことであり、お金の流れとは物(もの)やサービスと対価(お金)がループを形成することです。対価とはバリューとも呼ばれ、対価は金額で評価されます。しかし、バリューとは物の機能や性能だけで決まるものではなく、感覚的な要素もあります。例えば、ネームバリューや希少性や野球チーム名を加えるコラボ等があります。「もの」や「物」のバリューは顧客の客層や顧客の主観が大きく影響します。顧客の主観とは客の評価軸のことで製品が持つ評価軸が多いほど、バリューは高まります。リーン生産方式は無駄を省き、シックスシグマは作業を平準化してむりとむらのないマニュアル主義による製造を実現するものです。リーン生産方式では仕様に対するオーバースペックも無駄となります。オーバースペックがイノベータに対する製品の魅力の1つであり、イノベーティブな製品に必要なものですので、仕様主義、コスト主義ではイノベーティブな製品は生まれません。イノベーティブな製品は理想目標を掲げることによりイメージが浮かんできます。そしてアイデアが浮かんだ時に直ぐに試作に取りかかるためには「整理、整頓、清掃」が必要です。そして、より良いものを作るには良い道具が必要です。そしてアイデアを試すためのワークスペースの確保が必要です。この精神を簡単にしたものが日本の「整理、整頓、清掃」と「改善」です。
謝辞
本書の作成あたり、助言と貴重な情報を頂いた鎌倉市鎌倉歴史文化交流館殿とオーテピア高知図書館の横山 有弐氏に感謝申し上げます。
参考文献
[1] 岩波国語辞典、岩波書店、2019
[2] 尋常小學國語讀本 卷1、文部省、1918(大正7年)国立国会図書館デジタルコレクション
[3] 新明解語源辞典、小松寿雄, 三省堂、2011
[4] 吾妻鏡 西田友広、角川文庫、2021
[5] 漢字語源語義辞典、加納喜光、1940
[6] 明治の源流, 平泉澄、時事通信社、1970 国立国会図書館 デジタルコレクション
[7] 鉢木 国立国会図書館デジタルコレクション
[8] 駒とめて袖うちはらう-謡曲「鉢木」考 森延哉 (株)文芸社 2010
[9] 長宗我部元親 その謎と生涯、山本大(やまもと たけし)、新人物往来社、2010
[10] 続江戸職人綺譚、佐江衆、新潮文庫、2003
[11]職人、永六輔、岩波書店、1996
チェコの工場における「5S」導入の苦労
ヒット: 2 開く 保存
状況
チェコの工場で「5S」を実践しようとした際、作業準備を始業前に行うよう指示した。
関連ルール: N-1: 工場
行動
作業者に対し、始業前の準備を業務の一部として求めた。
結果
対価が支払われない作業であるとして作業者に拒否され、海外での「5S」普及における文化的な難しさを認識した。
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【分析:状況】
チェコの工場で「5S」を実践しようとした際、作業準備を始業前に行うよう指示した。
【分析:行動】
作業者に対し、始業前の準備を業務の一部として求めた。
【分析:結果】
対価が支払われない作業であるとして作業者に拒否され、海外での「5S」普及における文化的な難しさを認識した。
----------------------------------------
【本文】
整理、整頓、清掃(3S)の起源といざ鎌倉
明専会 神戸支部長 持田 信治
はじめに
2016年の夏にチェコに暫く滞在していました。この時、チェコのビンペルクにある精密機械製造工場を見学する機会があり、見学の最後に工場長さんから「リーン生産方法と改善は同じですか」と質問を受けました。当時、「リーン生産方法」と「改善」については知っていましたが、なんと答えて良いのか解らず、答えられませんでした。この時の工場さんからの質問が本書で述べる「改善」と「整理、整頓、清掃」そして「いざ鎌倉」の起源を調べるきっかけになりました。「リーン生産方法」は代表的な生産方法の一つで、仕様を満たす範囲でコストダウンを計る生産方法です。製造方法には漢字の「物つくり」とひらがなの「ものつくり」があり、漢字の「物つくり」は仕様が決まった有体物を作る方法であり、仕様を満たす範囲で安く作ることが求められます。欧米では仕様を満たす範囲で安く作るための手法として「5S」と「KAIZEN」が広がっており、「リーン生産方法」と「KAIZEN」は同じであると考えられます。一方、ひらがなの「物つくり」は辞書には「物」以外のものを作ることとあります[1]。「物つくり」は仕様が決まっていない理想製品を作ることを含み、理想目標を目指す「改善」が必要です。「改善」は職人言葉「細工は流々仕上げを御覧じろ」に代表される様に、個人の技術とアイデアを駆使して理想の「ものつくり」を目指す行動様式です。アイデア駆使するためには、アイデアが浮かべば直ぐに試行錯誤を行うことが必要です。直ぐに作業に取りかかるためには「整理、整頓、清掃」による整えられた作業環境と常に作業に取りかかれる姿勢、つまり「いざ、鎌倉」が必要です。「いざ、鎌倉」は謡曲「鉢の木」に出てくるセリフで室町時代から戦国時代を経て現代まで伝わっている言葉です。「整理、整頓、清掃」と「改善」は戦国時代から平和な江戸時代に入ると職人の精神として伝わって来ました。そこで、本書は「整理、整頓、清掃」と「いざ鎌倉」の起源を探りつつ、欧米に広がる有体物を作る「KAIZEN」と日本の理想目標を目指す「改善」の違いを述べたいと思います。そして、今後のイノベーション推進に向けた「整理、整頓、清掃」と「改善」に沿ったアプローチ方法を述べたいと思います。
整理、整頓、清掃と武士道そして改善へ
私の小学校の時の記憶では教室の正面に「整理、整頓、清掃」と書かれた額があり、先生から「整理、整頓、清掃」とは何時でも勉強が出来る様に環境を整えておくことだと説明がありました。つまり「整理、整頓、清掃」とは自分の作業道具を常に「整理、整頓」しておき、「清掃」によりワークスペースの確保しておき、何時でも勉強が出来るようにしておくとのことでした。小学校では始業のベルが鳴ったら、直ぐに机について、勉強できるようにしておくように指導されていました。何時でも作業に取りかかれる様に準備しておく「整理、整頓、清掃」の考えは「いざ、鎌倉」の精神に始まると思われます。「整理、整頓、清掃」をビジネスに当てはめると24時間いつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかれるようにという精神で、日本の創意・工夫を含むアイデアを重視する考えです。また、「源義経の鵯越の逆落し」に由来する「夜討ち、朝駆け」もビジネス好機を逃さない精神であり「いざ、鎌倉」と共に日本のビジネス精神の基礎をなしています。「整理、整頓、清掃」は侍が各自の得物を常に手入れをして「いざ」に備える姿勢で、安土桃山時代から戦国時代、江戸を経て、平和な時代になり、武士から職人精神に反映されて、現在まで続いています。大正時代の尋常小學國語讀本にも「鉢木」は登場しており[2]、常に「いざ」に備えることの必要性は語られて来ています。侍の精神である武士道の始まりは奈良時代の743年(天平15年)に「墾田永年私財法」の制定によります。専門武装集団は有力な荘園主や貴族の荘園を守るために出来ました。そして武士とは「貴人の傍らにさぶらふ人から、「侍」つまり「武士」ができたとされています[3]。平安時代に入り、源氏や平家の武将と武士団が出来、更に鎌倉時代に至って、武家政権が誕生することとなりました。そして鎌倉幕府は禅宗に傾倒して、武道、礼儀を重んじる「武士道」が確立されたと考えられます。武士道には以下の3つのポイントがあります。まず、いつでも一大事への準備ができていること。次ぎに自分で改善する、トレーニングを欠かさないこと。そしてコンディションをきちんと保つ摂生 節制 礼節を守ることです。「武士道」では常に一大事に備える準備と得物の手入れが求められました。得物の手入れについては北条重時(1198-1261)が作成した『六波羅殿御家訓』に「腰刀の錆びたる持つべからず~不断に心用心あるべしとあり[4]、得物の手入れと一大事に備えることは武士道の1つであると示されています。貞永元年(1232年)に北条泰時が「御成敗式目」(ごせいばいしきもく)を制定して武家の基本法典が定まりました。「御成敗式目」には守護の職務が「大犯三箇条」(だいぼんさんかじょう)として定められました。大犯三箇条では、守護の職務はまず鎌倉・京都での大番役(おおばんやくとは警固のこと)の招集と指揮監督を行うこと、そして謀反人の捜索と逮捕、殺害人の捜索することでした。つまり守護の職務には警察的な役割があり、日頃の鍛錬と武器の手入れが必要だったと思われます。天文年間(1532年から1555)吾川郡弘岡城主であった吉良宣経(151-1550頃室町時代)の定目(ていもく)にも武士のたしなみとして武具を整備し、武芸の修練に心がけて軍役に精励することと記載されています[4]。そして、守護大名が戦国大名に代わるにつれ、武士道に於ける武勇の必要性が高まって行ったと思われます。
図1 職人の利益の考え方
2.「ものつくり」と「物つくり」に於ける利益の考え方
江戸時代の職人の利益は図1の利益1にあたる部分です。利益1は客の視界にない商品の魅力又は所有欲から得られます。一方、現代のリーン生産システムによる利益は図1の利益2です。利益2はターゲットプライスに対して生産コストを下げることにより得られます。職人は顧客の視界にある製品は顧客が価格を決めてしまうので、利益が得にくいこと、そして自分だけの技術を発揮しにくいことを知っていました。職人言葉にある「簡単な仕事はしない」が職人の利益に対する考え方を物語っています。また、職人は顧客についても、新しいものが好きな顧客を相手にすることを知っていました。今風ですと図2に示すイノベータを相手にすると利益が得られることを職人は知っており、利益を得るために顧客の視界外の製品を作るためにアイデアと「改善」を重視していました。図2に示すM・ロジャースのイノベータ理論によると画期的な新製品、つまりイノベーティブな製品はまず、新しい物好きなイノベータが購入します。イノベータは価格を気にしませんので、売り手は自由に価格設定ができ、利益を得ることができます。いわゆる先駆者利益です。そして製品が成熟して一般化すると客層は最終的には図2の4層目にあるレイトマジョリティに変化します。レイトマジョリティは高度な機能には感心がなく、基本機能がありさえすれば、安いものを購入します。「整理、整頓、清掃」の「整」は古典に「整は正なり」とあり、ゆがんだ形を真っ直ぐにすることが「整」であり「正」とあります。「整」は真っ直ぐにする、不純物を取り除くという語源から[5]、「整理」は乱れたものを整えること、不必要なものを取り除くこととの意味で使われています[1]。一方、「改」の語源は誤りを改めて正しくすることであり、「改善」は「改良」などと同様にreformやimproveの訳語として明治時代に作られた和製漢語であると思われます[3]。「改善」はよい方向へ改めることとして使われています[1]。
図2 エベレト・M・ロジャースのイノベータ理論
3.「3S」と「改善」の広がり
世界の「3S(整理、整頓、清掃)」と「KAIZEN」は利益創出のためのコスト最適化手法であり、利益に関してはバリュー(金銭的価値)を高めることが求められています。
私が図3にあるチェコの計測機械メーカの工場を見学することがあり、見学時に工場長さんから「改善」とリーン生産方式は同じですかと聞かれたことがあります。このことからも海外では「3S」と「改善」はコスト最適化手法として知られているようです。また、チェコのPrague University of Economics and Business大学では図4や図5に示す様に5Sゲームという講義で「改善」や「無駄」を説明しており、「改善」と「無駄」どちらも生産性向上の手法として説明されていました。5Sゲームではレゴの飛行機模型を教材にして、数人でチームを組み効果的な組み立て方法を考え、どのチームが多く組み立てるかを競う講義でした。「整理、整頓、清掃」を略した「3S」は製造現場に限らず、多くの場所で言われている言葉です。一方、「5S」も良く聞く言葉です。「5S」の最後の2つの「S」は「躾」と「清潔」であり、私がHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)に代表される食品関係の仕事をしている時には「躾」とは作業着、エプロン、マスク、帽子を付けてほこりを落としてから食品工場に入ることであり、白線を踏まないなどの職場のルールを守る習慣を身に付けることが「躾」でした。食品工場の「清潔」とは手を石けんで洗い、更にアルコールで消毒すると言う、いわゆる化学的な清掃でした。「清潔」を「5S」を説明する本で調べると「5S」を維持することとあります。また、「清掃」と「清潔」の英語訳は同じ「Cleaning」であり区別がありません。「3S」はいつでも作業に取りかかるための心構えであるのに対して、「5S」は製造現場の心構えに特化しているようです。しかし、海外での「5S」の普及は苦労があるようです。例えば、チェコの友人から次の様な話を聞きました。チェコのある工場で「5S」を実践するとのことで、始業前に出社して作業準備するように指示した所、作業準備は業務の一部であり、対価が支払らわれない作業は作業者に断られたそうです。
4.「整理、整頓、清掃」といざ鎌倉
「整理、整頓、清掃」とはいつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかる心構えであり、「整理、整頓、清掃」は「いざ、鎌倉」の精神に始まると思われます。「いざ、鎌倉」は室町時代に成立した謡曲「鉢木」に出てくる言葉で、鎌倉に何かあればすぐに鎌倉に駆け付けるというものです。当時、すべての武士が鎌倉に住んでいたわけではないので、常に鎌倉での争いへの準備が必要あったことに由来しています。ただ、鎌倉に掛け着けるのは恩賞、つまり利益を得るためであり、「いざ鎌倉」は、主人公の佐野源左衛門常世が、宿を貸した旅僧(旅僧は諸国行脚中の執権北条時頼(最明寺入道)に対して語った「今にても鎌倉に一大事あらば、千切れたりとも具足を着け、錆びたりとも長刀を持ち、痩せたりとも馬に乗り、一番に馳せ参じ、合戦始らば一番に敵と討合ひて死なん覚悟なれど」のセリフが有名な謡曲で、鎌倉で何か騒動が起こったとき御家人たちがすぐに鎌倉に、はせ参じる様子を描いています[6][7][8]。「いざ、鎌倉」が出てくる「鉢木」は室町時代の観阿弥(1334~1384)作又は世阿弥の作と言われており、2度の元寇の後の作です。当時、武士は得物の手入れに余念の無い状況であったと思われます。また、太刀と槍は2度の元寇の後、めざましい性能向上がありました。名刀「正宗」が登場するのもこの時代です。
5.「鉢木」成立の時代背景
「鉢木」からわかるのは、まず鎌倉では騒動が頻発したことと、次ぎに鎌倉に一大事ありと聞けば、諸国の御家人は先を争って馳せ参じ、幕府の着到状(出席簿)に姓名を記録して恩賞を期待していたことです。このようなことは鎌倉時代特有のことで、他の時代にはあまりみられないため、「いざ鎌倉」という言葉は現在まで残ったと考えられます。一大事ありと聞いて、御家人たちが鎌倉に駆けつけたという記述は、鎌倉幕府の歴史書である『吾妻鏡』[4]に散見されます。例えば吾妻鏡の元久2年(1205)にある「畠山重忠、討たれるの」項には「軍勢が由比ヶ浜の辺りを先を争って走った」とあり、先駆けの心がけが表現されています。争いが最も多いのは、源頼朝の時代ではなく、鎌倉中期の北条時頼(1227-1263)の時代です。摂家将軍を追放した上、三浦氏を滅ぼし、北条氏専制政治への道を開いた「時頼」の時代は、いつ何が起こるかわからない不安定な社会状況でした。「時頼」と「いざ鎌倉」には深い関わりがあり、謡曲「鉢の木」は、その史実を反映しているといえます。「鎌倉幕府の歴史を記載した「吾妻鏡」には、源頼朝が挙兵した治承4年(1180)から六代将軍宗尊親王が鎌倉から京都に送還された文永3年(1266)までの歴史を記載しています。「鉢の木」は観阿弥(1334~1384)の作と言われており、「吾妻鏡」の鎌倉武士の精神を反映していると思われます。また、北条幕府に起きた2度に渡る元寇の役も、常に戦闘に備える精神が維持された理由であると思われます。2度に渡る元寇の役とは文永の役(1274)と弘安の役(1281)です。当時、北条時宗(1251-1284)は2度の元の軍を退けました[4]。元寇の役に於ける勝利は北条武士の大きな働きと神風によるものとされています。福岡市の東公園には図6に示す巨大な日蓮聖人の像があり、日蓮聖人がお題目を唱えて2回の元寇を退けた姿があり、神風についても語り継がれています。日蓮聖人は「立正安国論(1260)」を北条時頼(1227-1263)に宛てに送り、外的の襲来を警告したとされており、当時が不安な情勢であったことを示しています。山梨県身延町にある久遠寺宝物館に「立正安国論」は展示されています。2度の元寇は日本の武士の装備にも変化をもたらしました。元軍の真綿を何層も重ねた鎧を当時の軟鉄で作られた太刀では切ることが出来ませんでした。そこで、鎌倉幕府は各地から刀匠を集めて太刀作りを奨励しました。そして刀匠、五郎入道正宗が太刀の製造方法を完成させました。新しい製造方法は軟鉄の鉄に鋼鉄を巻いて、鍛えた後、焼き入れをする工程を繰り返す方法で、良く切れる太刀ができました。名刀正宗です(元寇記念館資料より)。鎌倉幕府後の武士も一大事に備える心意気であったことは土佐の「一領具足」にも見られます。「一領具足」は耕作時に槍の柄に草鞋(わらじ)と兵糧をくくりつけて田の畦(あぜ)に立てておき、有事の時には武装して直ぐさま、駆け付けるという生活でした。「一領具足」に関して土佐物語には「一領具足と申すは、僅かの田地を領して、常には守護へ動仕(きんし)もなく役もなく、己が領地に引き籠り、自らたがやし、くさぎり、諸士の交はりもせされば、礼儀もなく作法もなく、明け暮れ武勇のみを事として、田に出づるにも、鎗の柄に草桂・兵糧を括り付け、田の畔に立て置き、すはと言へば鎌鍬を投げ捨て走り行く。鎧一領にて着替への領もなく、馬一疋にて乗り替へもなく、自身走り廻りければ一領具足と名付けたり。弓・鉄胞・太刀打ちに調練して、死生知らずの野武士なり」とあり[9]、土佐武士は有事の際には戦場に馳せ向い、弓、鉄砲、大刀打に鍛錬をして、勇猛かつ命知らずの野武士であったとあります。「一領具足」は長宗我部元親(1539-1599)が安芸国虎攻めにあたり、兵力増強のために思いついたとされています。「いざ鎌倉」の「いざ」と「一領具足」の「いさ」は一大事に備える鎌倉幕府から戦国時代の武士の共通の心意気でした。
5.鎌倉幕府の「いざ鎌倉」はどこ
「いざ鎌倉」にある鎌倉幕府に始まる、武家政治については、源頼朝が1192年(建久3年)に朝廷から「征夷大将軍」に任命され、鎌倉幕府による鎌倉幕府が始まります。源頼朝は治承4年(1180年)、伊豆で反平氏の軍を挙げた頼朝を討つため京からやってきた平家軍を富士川の戦いで破った後、図7にある鎌倉の大蔵(雪ノ下)の屋敷に入り、鎌倉が武家政権の政治の中心地となりました。頼朝はまず元八幡を現在の鶴岡八幡宮の地に移して町づくりの中心にしました。また頼朝は図8の永福寺(ようふくじ)を建立して、合戦で亡くなった将兵の鎮魂のために建立しました。鎌倉幕府では禅宗が奨励され、「武士道」が成立しました。「武士道」では「鉢木」に描かれた様に常に得物を手入れして、一大事に備えることが必要となりました。
6.職人気質
アイデアが浮かんだ時に直ぐに作業に取りかかるための「整理、整頓、清掃」と理想目標を求める「改善」は日本の職人の精神です。そして、職人はオリジナルな作品を作ることを誇りにしていました。職人は自分の技術を基礎に唯一のもの作りを目指しており、製作した品は商品ではなく、作品です。一方、今日、求められるイノベーティブな商品とはお客の視界にない製品です。21世紀最大のイノベーティブな製品の一つにスマートフォンがあります。スマートフォンの始まりは2007年にスティーブジョブズ氏が発表したiPhoneです。iPhoneは画期的なインターフェースとポインティングデバイスを備えていました。当時のスマートフォンは図9に示すスマートフォンの様に下や横に小さなキーボードを備えた物で、使い勝手は良くありませんでした。また当時の多くの携帯電話は折りたたみ型の電話機であり、俗に言うガラケー電話であり、iPhoneは多くのユーザにとって見たことのない電話でした。しかし、スティーブジョブズ氏にしてみれば、1984年に発表したマッキントッシュでグラフィカルインターフェースとマウスによるポインティングデバイスに関する技術を取得しており、更に、その後のネクスト・ソフトウエアにより優れたグラフィカルインターフェース技術を所有していましたので、スティーブジョブズ氏は自分の持つ技術を用いて電話を進化させることによりiPhoneを開発しました。スティーブジョブズ氏は2007年のiPhone発表時に「電話を再発明した」と語っています。
イノベーティブな製品とはiPhoneからも解る様に自分の持つ技術と他の何かを組み合わせることにより生まれます。イノベーティブな製品開発には自分の持つ技術や道具を明確にすることが必要です。例えば、職人の道具自慢では、「腕のいい大工が道具に凝って稼ぎのほとんどを道具につぎこみ年がら年中素寒貧で..」や、「荒仕工鉋(かんな)...こちとら大工の肝玉をふるい立たせてくれなくちゃいけね」[10]にある通り、職人はいい仕事には自分の技術と良い道具が必要だと知っていました。また職人は、自分の作事の価値について「自分の仕事に自分で値段をつけて、それが売れるようになりまして」[11]とある通り、稼げる製品(作品)には技術とアイデアが必要であり、お客が求めるものだけを作っていたのでは稼げないということは、昔から「日本の職人精神」として伝わってきています。現在、イノベーションやイノベーティブな製品が求められていますが、イノベーティブな製品の創造には職人の「整理、整頓、清掃」と「いざ、鎌倉」の精神が必要です。
7. 製品の魅力の変化とイノベーション
最近、イノベーションと言うことばを良く聞きます。例えば、イノベーションセンターやイノベーション人材養成です。イノベーションとはドラッカー氏やシュンペーター氏の定義では、画期的な製品やサービスの導入により経済に新たな好況局面を創り出すこととあります。従いまして、イノベーションとは必ずしも製品を生み出すことではありません。しかし、イノベーションとはイノベーティブな製品やサービスの創造と考えることが一般的であると思われます。イノベーティブな製品とは、顧客の視界に無い製品であり、定義は次の2つと考えられます。一つは開発者が価格を設定できること、そして2つめはお客さんの財布からお金を捻出してもらうほど、魅力ある製品であることです。例えばお客さんが食費を節約してでも欲しくなるくらい魅力ある製品がイノベーティブな製品です。このカテゴリに入る例は、初期のiPhoneです。しかし、製品はだんだん一般化して、差別化することが難しくなります。製品の差別化が難しくなると価格競争になり、利益を得づらくなっていきます。製品の一般化(コモディティ化)、つまり製品の成熟度が進むに従い、客層も変化します。レイトマジョリティが製品を購入する状況になると、製品の差別化は難しく、価格競争となります。するとメーカは大量生産による薄利多売となり、大規模な生産設備の投資が必要となります。若し、設備投資の時期が失敗すると経営が大変なことになります。例えば液晶ディスプレイが成熟段階の製品だと思われます。仮に画面の精細度が4Kや8Kであって、しかも高品質なスピーカを搭載してもレイトマジョリティには製品の魅力が届かず、差別化にはなりません。最近では、自動車が成熟段階に入っていると思われます。ビジネスとはお金の流れのことであり、お金の流れとは物(もの)やサービスと対価(お金)がループを形成することです。対価とはバリューとも呼ばれ、対価は金額で評価されます。しかし、バリューとは物の機能や性能だけで決まるものではなく、感覚的な要素もあります。例えば、ネームバリューや希少性や野球チーム名を加えるコラボ等があります。「もの」や「物」のバリューは顧客の客層や顧客の主観が大きく影響します。顧客の主観とは客の評価軸のことで製品が持つ評価軸が多いほど、バリューは高まります。リーン生産方式は無駄を省き、シックスシグマは作業を平準化してむりとむらのないマニュアル主義による製造を実現するものです。リーン生産方式では仕様に対するオーバースペックも無駄となります。オーバースペックがイノベータに対する製品の魅力の1つであり、イノベーティブな製品に必要なものですので、仕様主義、コスト主義ではイノベーティブな製品は生まれません。イノベーティブな製品は理想目標を掲げることによりイメージが浮かんできます。そしてアイデアが浮かんだ時に直ぐに試作に取りかかるためには「整理、整頓、清掃」が必要です。そして、より良いものを作るには良い道具が必要です。そしてアイデアを試すためのワークスペースの確保が必要です。この精神を簡単にしたものが日本の「整理、整頓、清掃」と「改善」です。
謝辞
本書の作成あたり、助言と貴重な情報を頂いた鎌倉市鎌倉歴史文化交流館殿とオーテピア高知図書館の横山 有弐氏に感謝申し上げます。
参考文献
[1] 岩波国語辞典、岩波書店、2019
[2] 尋常小學國語讀本 卷1、文部省、1918(大正7年)国立国会図書館デジタルコレクション
[3] 新明解語源辞典、小松寿雄, 三省堂、2011
[4] 吾妻鏡 西田友広、角川文庫、2021
[5] 漢字語源語義辞典、加納喜光、1940
[6] 明治の源流, 平泉澄、時事通信社、1970 国立国会図書館 デジタルコレクション
[7] 鉢木 国立国会図書館デジタルコレクション
[8] 駒とめて袖うちはらう-謡曲「鉢木」考 森延哉 (株)文芸社 2010
[9] 長宗我部元親 その謎と生涯、山本大(やまもと たけし)、新人物往来社、2010
[10] 続江戸職人綺譚、佐江衆、新潮文庫、2003
[11]職人、永六輔、岩波書店、1996
プロジェクトリスク対策の意思決定
ヒット: 2 開く 保存
状況
プロジェクトマネジメントにおいて、顧客の要求仕様の精度が低いことが判明し、プロジェクトの遅延確率が20%のしきい値を超えた状況。
関連ルール: E-1: 明
行動
3秒ルールインテリジェンスを用いてリスク対策(熟練システムエンジニアによる仕様書の見直し等)の発動を指示。
結果
熟練のプロジェクトマネージャーに近い判断が示され、リスク対策の適切な発動が可能となった。
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【分析:状況】
プロジェクトマネジメントにおいて、顧客の要求仕様の精度が低いことが判明し、プロジェクトの遅延確率が20%のしきい値を超えた状況。
【分析:行動】
3秒ルールインテリジェンスを用いてリスク対策(熟練システムエンジニアによる仕様書の見直し等)の発動を指示。
【分析:結果】
熟練のプロジェクトマネージャーに近い判断が示され、リスク対策の適切な発動が可能となった。
----------------------------------------
【本文】
3秒ルールインテリジェンスによる意思決定
Decision-making based on Three-Second rule Intelligence
持田 信治*
Shinji Mochida
3秒ルールインテリジェンスは3秒後までの状況予測値に基づいて行動判断を行う人工知能であり、本研究はプロジェクトマネジメントにおけるリスク対策の発動と患者様子見行動における支援行動実施に対する意思決定への3秒ルールインテリジェンスの応用を検討した。そこで、3秒ルールインテリジェンスを用いた意思決定の可能性が示されたので報告する。
キーワード:3秒ルールインテリジェンス、ベイジアンネットワーク、様子見行動、プロジェクト
Ⅰ.はじめに
研究の目的
 3秒ルールインテリジェンスは、人と同じプロセスで意思決定を行う人工知能であり、人の脳で行われる意思決定を模擬する。人の大脳内には神経細胞(ニューロン)が約100億個あり、脳全体の神経細胞は1000億個あるとされる1)。神経細胞は核と樹状突起と信号伝送路に当たる軸索から構成され、樹状突起は信号入力をつかさどる受容体を持つ(図 1参照)。神経細胞間の信号伝達はシナプス間隙において行われており、1つの神経細胞は数千以上のシナプスを持つとされる。シナプスとは神経細胞同士の接続部分のことであり、特定の信号がシナプス前部に積み重なるとシナプスに於いて信号伝達が行われる。シナプス間隙上の信号伝達は科学物資の量と組み合わせで表現されるため、各シナプスは高度な情報処理を行っていると考えられる。シナプスは人では10兆個あるとされ、10兆個のシナプスの結合により経験が記録され、外部刺激により状況判断と行動発現がなされる2)-5)。一方、ニューロン内の伝達速度は概ね、1m/秒から100m/秒であり、最近のCPU(中央処理演算装置)は約100億程度のトランジスタ(7nm製造プロセスの場合)で構成され、3Ghz(1秒間に30億回の振動数)程度で動作する6)。人の神経細胞の動作速度はCPUに比べて低速であるにも拘わらず、人が高度な行動選択できる理由は、脳は並列に状況判断を行い、微小時間後に実行可能な行動候補を用意しているからであると考えられる7)8)。そこで、本研究では、微小時間を3秒と定義する。従って、慣れた行動は3秒以内に行動候補として直ちに用意されるのに対して、不慣れな行動候補は遅れて用意されるため、行動の慣れが発生する。そして優先順位が均衡する複数の行動候補が並列に用意されている状態が迷いであり、遅れて行動候補が準備され、行動選択が混乱する状態が後悔である。
図 1 神経細胞
Ⅱ. 3秒ルールインテリジェンス
1.人の行動判断
人は行動選択に当たって、微小時間周期で次に実行可能な行動候補を選び出して、行動選択を行っており、行動候補は過去の経験と知識から選択される7)8)。本研究での微小時間は3秒である。そこで、3秒ルールインテリジェンスは3秒後に実行可能な行動候補を人と共有することにより、人が理解可能な判断プロセスによる行動選択が実現する。3秒ルールインテリジェンスは3秒後に実行可能な行動候補の準備を行い、行動選択トリガ観察機能により行動選択を行う。行動選択トリガとは環境情報を心理的次元で配置したものの中で最優先位置にあるものであり、行動選択を左右する要因である9)。そして心理的な重み付けを行った行動選択トリガの発現観察を行うことにより、人と同じ概念駆動型処理を可能とする10)。3秒ルールインテリジェンスは経験データベースから現状認識情報をキーにして、3秒後に実行可能な行動候補を準備する。そして、ベイジアンネットワークにより、3秒後に実行可能な行動候補の優先順位を決定する。経験データベースは遷移情報を持ち、遷移情報は、現在状況と行動実行後の状況情報から構成される。行動遷移時間は3秒間である(図 2参照)。本研究では遷移情報をヒヤリハット報告やインシデントレポートから収集した。遷移情報は初期状況情報と3秒後の遷移情報を持つ。3秒間は人の行動選択の周期である。例えば、車両運行に於いて、人は3秒周期で、現在から3秒後までの遷移空間を構築することにより、運転操作における事故回避を行っている。
図 2 3秒間の遷移空間
図 3 運転操作における遷移空間
2. 人の行動予測と3秒ルールインテリジェンス
人が、直ぐに行動判断ができるのは、人は微小時間後に到達可能な遷移空間を事前に構築して状況予測を行いながら、行動選択を行っているからである11)。微小時間とは3秒である。例えば、車両運転に於いて、先行車との安全な推奨車間距は速度計の示す値から15を減じた距離である、例えば、時速60km/h の場合の推奨車間距は45mである。時速60km/hの車の速度は約17m/秒であるため、45m/17m≒3秒となり、推奨される車間距離を時間的に表すと約3秒となる12)。一方、車両運転に於ける安全な車間距離を時間で表すと、2秒から3秒と言われており、車間距離が1.8秒を切ると人は不安を感じると言われている13)。また、報告者のビジネスシステム開発の経験から、エンターキーを押した後のシステム応答時間が3秒以内であればシステム利用者は概ね良好な操作感を得る。しかしシステム応答時間が5秒を超えるとシステム利用者は不満を感じ、システム応答時間が10秒を超えるとシステム利用者はシステムに対する改善を要求するという状況からも、人は現時点から3秒後までの行動予測空間を構築しており、行動予測空間内で状況が進む場合には安心感を得ることができ、3秒後の状況が不確実になると不安やいらつきを感じると考えられる。以上から人は現時点から3秒後までの行動遷移空間を持って行動をしていると判断できる。
Ⅲ. ベイジアンネットワーク
1.ベイジアンネットワーク
ベイジアンネットワークとはある事象(親)と事象に関係する要因(子)との因果関係を有効グラフで表現したものであり、ベイジアンネットワークは親ノードと子ノードの因果関係を確率的な関係で表現しており、ベイジアンネットワークの親ノードは親(世界)が取りうる状況が発現する確率を表す14)。ベイジアンネットワークは信念ネットワークとも呼ばれ、条件付き確率テーブル上の確率値を主観的に設定することにより、人の主観を確率計算に反映できる。従って、条件付き確率テーブルに設定する確率値を主観的に設定することにより、ベイジアンネットワークは不確実な状況を表現することが可能である。そして子ノードの条件が確定することにより、親(世界)が取りうる状況の確率が計算される。子ノードの条件が確定することを、エビデンスをセットすると呼び、事実や状況が判明した場合には、子ノードにエビデンスが設定され、子ノードが親ノードに与える確率が決定する。以下にベイジアンネットワークを用いた計算例を示す。本例はプロジェクトが計画通りに終了する確率計算の例を示す。本例では条件付き確率とベイズ推定の式(1)を使用してプロジクトリスクを推定する。プロジクトリスクとは、プロジェクトが計画通りに終了しない確率、つまりプロジェクトの遅延確率である。以降、プロジェクトリスクとはプロジェクトの遅延確率であるとする。プロジェクトの遅延が発生すると費用超過や契約違反となり、費用的な損害が発生する。
(1)
A:親(世界)が取りうる状況に対する確率  B:子供(世界を説明する条件)を示す確率
本例ではプロジェクトが計画通りに終了する確率とスタッフからのプロジェクトの進捗に関するレポートの信頼性との関係を考え、プロジェクトが計画通りに終了する確率をA、そしてスタッフからの進捗に関するレポートの信頼性を示す確率をBとする。ここで、A=0.9、B=0.7とすると、プロジェクトが実行される世界の確率状況は図 4となる。ベイジアンネットワークはある事象が取りうる世界の確率的関係を示し、エビデンスが設定されると世界が変化する。
図 4 報告を受ける前の世界確率の図
次に機械学習システムのWeka (Waikato Environment for Knowledge Analysis) 14)を使用してプロジェクトが実行される世界の確率状況を表現した様子を図 5に示す。図 5、図 6と表 1、表 2はWeka上のProjectノードとReportノードに確率を与えている様子を示す。一般的にプロジェクトは10%程度遅延することが知られているため、表 1と図 5に示す様にプロジェクトが計画通り終わる確率は0.9に設定している。ただし、Wekaのベイジアンネットワーク表示では確率0.9は9000、そして確率0.7は6599と表示されている。
表 1 Weka上のProjectノードの条件付き確率
表 2 Weka上のReportノードの条件付き確率
図 5プロジェクトのベイジアンネットワーク表示
図 6 ProjectとReportノードの条件付き確率テーブルに確率値を与えている様子
次に、表 3と図 7はスタッフがプロジェクトの進捗は計画通りと報告した後のプロジェクトの実行世界を示しており、Aの確率は式(2)に示す通り0.95となる。図 8はWekaで確率を計算した様子を示す。本例でのエビデンスはスタッフのプロジェクトの進捗は計画通りとの報告である。ベイジアン推定ではエビデンスと呼ばれる状況報告が与えることにより、確率世界が変化する。
表 3 報告を受けた後の世界確率(抹消線の世界が削除された)
図 7報告を受けた後の世界確率の図(網掛けの部分の世界が消えた)
(2)
図 8 報告を受けた後のベイジアンネットワーク表示
2.プロジェクトに於ける遅延分析の必要性
複数の要素が存在するベイジアンネットワークの例として、プロジェクトリスクを算出する例を示す。プロジェクトリスクとはプロジェクトの予算超過と行程遅延を引き起こすリスクである。プロジェクトではプロジェクトリスクを避けるために、プロジェクトマネジメントにより、事前にリスクの洗い出しが行われ、プロジェクトリスクとリスク発現トリガとリスク発現時の対策をまとめたリスク管理表を作成しており、リスク発現トリガが観察されるとリスク対策が発動される。リスク発現トリガとはあるリスクが発現と判断するための環境状況である。しかし、リスク対策を発動すると経営資源を消費するため、リスク対策の発動には高度な意思決定が必要である。つまり、リスク対策発動には様々な状況を考慮する必要である。プロジェクトリスクが生じる主な要因として、顧客からの要求仕様の精度やプロジェクトマネージャーやプログラマーのスキルと見積もり精度がある。図 9はプロジェクト中の要因の関係をベイジアンネットワークで表現した様子であり、表 4は図 9に示すベイジアンネットワークの各要因が取り得る値を示す15)。図 10中の親ノードはプロジェクトの遅延確率(PPD)であり、子ノードにエビデンスが与えられると親ノードが示すプロジェクトの遅延確率(PPD)が変化する。
表 4 ベイジアンネットワーク中の要因の内容
図 9プロジェクトリスクを示すベイジアンネットワーク
3.遅延予測
表 4に示すベイジアンネットワークの要素をWeKaで表現したものを図 10に示す。図 10中のプロジェクトの遅延確率(PPD)はPro+と表現される。ベイジアンネットワークの初期状態は図 10に示す通り、プロジェクトの遅延確率(PPD)は0.5である。一般的にベイジアンネットワークの初期値は主観値であるので、遅延する場合としない場合は共に0.5である。表 5プロジェクト中の各リスク要因とプロジェクトの状態との関係を示す。プロジェクトの状態とはプロジェクトが遅延するか計画通り進捗するかである。表 5の条件付き確率は5人のプロジェクトマネージャーからヒアリングした値の平均であり、主観値である。そして、図 10に示すPPDのPro+とPro-の値を0.5に設定した後に各子ノードに示される確率値の計算要領を図 11に示す。例えば、図 11のAEのLow値は0.4であり、計算要領は以下の通りである。
0.5(Pro+)×0.7(支援必要 Low)=0.35
0.5(Pro-)×0.1(支援不要 Low)=0.05
0.35+0.05=0.4 AE(Low)
但し、図 10の同値は0.399と表示されている。
図 10 リスクのベイジアンネットワーク表現
図 12 リスク予測(Case1)
図 11 子ノードに表示されている確率の計算要領
次に、ベイジアンネットワークにエビデンスを与える。Case1のエビデンスの組みあわせはAE:見積精度とSPM:プロジェクトマネージャーのスキルがStandard、STP:プログラマーのスキルがHigh、AR:要求仕様の精度がLowであり、この時プロジェクトが遅延する確率は約0.26となる(表 6、図 12参照)。
図 13 プロジェクトの費用
表 5 プロジェクトの条件付き確率
表 6 リスク要因の組みあわせ状況と遅延リスク
表 6にCas1からCase6までのエビデンスを与えた時プロジェクトの遅延リスクを示す。一般的にプロジェクトマネージャーとプログラマーのスキルはStandardであるため、プロジェクトの遅延確率は10%程度であり、一般的なプロジェクトマネジメントの許容範囲内である(図 13参照)。そこで、プロジェクトの遅延のしきい値を20%と設定した場合、表 6のCASE1に示す様に要求仕様がLowであることが判明した場合にはプロジェクトの遅延確率が20%を超えるので、プロジェクトリスク対策の発動が必要となり、3秒ルールインテリジェンスはプロジェクトリスク対策の発動を指示する。例えば、プロジェクトリスク対策としてスキルがHighのプロジェクトマネージャーを投入することが考えられる。一般的なプロジェクトでは、Stndardのスキルを持つプロジェクトマネージャーとプログラマーがプロジェクトを実行する。しかし、顧客の要求仕様の精度は不確実であるため、顧客からの要求仕様の曖昧さや仕様変更がプロジェクトリスクを左右する。
Ⅳ.  患者への様子見行動と患者対応
1.患者監視自動化の必要性
現在、医療現場では、患者確認に於けるダブルチェックや手順の標準化が進められている7)8)。しかし、例外的な事象が起きた場合の対応は人の判断に頼らざるを得ず、医療スタッフの経験度により、対処時間や対処方法が異なる。そこで、高度な判断できる熟練医療スタッフが求められる。加えて、医療現場では近年、安全監視と記録業務が増加しており、医療スタッフの時間的余裕が減少して、ストレスの高い職場となっている。そこで、本研究は3秒ルールインテリジェンスを用いた人的感覚を持つ環境評価機能を提案する。そして、本研究が目指すのは医療スタッフによる患者への様子見行動の自動化である15)。患者への様子見行動とは不安定な患者の事故防止のための、医療スタッフによる患者観察行動であり、様子見行動はスタッフがある一定時間、患者への対応行動を保留して、患者リスクの発現を観察する行動である。患者様子見行動は患者が治療室に移動する場合や、治療中は患者の動作は限定的であるため、人工知能が患者を観察できれば、スタッフの業務軽減が図れる。更に工知能に患者観察を任せることにより、スタッフは次の業務の準備作業等が可能となり業務に余裕が生まれる。様子見行動は患者観察を含む状況判断とスタッフの経験により行われる行動であり、人工知能による患者様子見行動が可能になれば人と人工知能による協働作業実現が実現する。
2.患者リスクの評価
医療現場では、安全のために患者確認に於ける2重チェックや手順の標準化が進められている15)。しかし、例外的な事象が起きた場合の対応は人の判断に頼らざるを得ず、熟練医療スタッフの経験に基づく対処が求められる。そこで、本研究は熟練医療スタッフに近い状況判断機能の実現を目指して、3秒ルールインテリジェンスを放射線治療現場に応用した。表 7に放射線治療における環境要因と要因の略称を示す。環境要因は医療スタッフからのヒアリングにより取得した。本研究では、ベイジアンネットワークにより算出した患者リスクにより、状況判断を行う。患者リスクとは患者に拘わる事故発生確率のことであり、本研究では患者リスクを患者への支援の必要性とみなす。従って、患者リスクが上昇すると患者への支援必要性が上昇することとなる。患者支援の必要性があるしきい値を越えると患者への支援が必要となる。放射線治療装置は治療を行う機械であり、今後、治療環境に関する情報の取得を機械信号として取得することが可能であり、環境状況取得の精度向上が期待できる。
表 7 患者を取り巻く環境とベイジアンネットワークの要素
3.患者様子見行動分析
患者への様子見行動とは不安定な患者の事故防止のための、医療スタッフによる患者観察行動のことである。図 14は医療スタッフが患者の様子を観察している状況を示しており、縦軸は患者リスクを示し、横軸は時間軸である。図 14に示す、患者が問題無しの領域にある場合には、医療スタッフは患者を観察する必要のない状況であることを示す、例えば患者が検査に行っている状態である。次に患者が様子見状態にある場合には医療スタッフが患者を観察する必要がある状況であり、更に、患者が事故発生確率大の領域に入った場合には、患者リスクが高い状況であり、患者への支援が必要となる。例えば患者への支援行動として、患者への声掛けや治療中断がある。様子見行動は医療スタッフが患者への対応行動を保留して患者の様子を観察する行動であり、人工知能が患者を観察できれば、医療スタッフの業務軽減が図れる。そこで、本研究は医療スタッフの患者への様子見行動の模擬を目指して、3秒ルールインテリジェンスの放射線治療への適応を試みた。ベイジアンネットワークの親ノードが示す確率値は医療スタッフ経験に基づく患者リスク値を示している。本研究では、ベイジアンネットワークにより算出された患者リスク値は3秒後の患者支援行動の必要度合いを示している。そして、環境要因の変化に従い、ベイジアンネットワークの再計算を実行する。ベイジアンネットワークが示す患者リスクは患者支援行動の必要度合いを示し、患者支援行動の必要度合いがあるしきい値を越えた場合には患者への支援行動が必要となる。図 15に本研究で設定したベイジアンネットワークを示す。図 15中の略称は表 7の通りであり、表 8はベイジアンネットワークに設定した条件付き確率テーブルを示している。表 8の各数値は医療スタッフからのヒアリングにより取得しており、医療スタッフの経験値を反映している。
図 14 状況判断
図 15 治療環境のベイジアンネットワーク(初期状態)
表 8 患者支援モデルのテーブル例
親テーブル(RISK)
条件付き確率子テーブル(SKIL,PAT,METH,ENV)
4.患者様子見の評価
 3秒ルールインテリジェンスは経験データベースを持ち、経験データベースは経験ルールを持ち、経験ルールは現在情報と3秒後情報に加えて、発現したリスク情報を持つ。経験ルールはヒヤリハット情報から抽出しており、スタッフの経験を反映している。本研究ではヒヤリハット情報から抽出した、環境の時間的変化を3秒間の状態遷移状況と見なして、経験ルールに記述する。経験ルールはXML形式で登録される(エラー! 参照元が見つかりません。参照)。本研究では、環境監視において、特定な環境変化情報が検知されると関連した経験ルールが選択される(表 9参照)。本研究では特定な情報を経験トリガと呼ぶ。環境情報の監視下で、経験トリガが検知されると該当する経験ルールが選択され、ベイジアンネットワーク中の指定されたエビデンスが設定される。例えば患者のふらつきが検知された場合には、患者の状態判断を行う経験ルールが選択され、患者の状態が悪いことを示すエビデンスがベイジアンネットワークに設定される。図 15に患者監視の初期状態を示す。初期状態での患者への支援必要性値は図 15に示す通り、0.5である。そして、患者のふらつきが検知されると、患者の状態が悪いことを示すエビデンスがベイジアンネットワークに設定され、図 16に示す通り、患者への支援の必要性を示す値が0.83となる。若し、患者様子見行動が継続する場合の患者リスク値を0.5から0.7の間とすると(図 14参照)、患者様子見行動のしきい値の0.7を超えたため、患者への支援が必要となる。従って本結果は、3秒ルールインテリジェンスは医療スタッフの判断に近い行動判断が可能であることを示し、3秒ルールインテリジェンスによる患者様子見行動の自動化の可能性を示す。図 17にヒヤリハット情報から抽出した経験ルールをXML形式で登録した例を示す。本研究では、トリガに記述された環境要因を監視する、トリガの自動監視ができれば、患者様子見行動の自動化が実現する。本例では患者の動きを観察して、手動でエビデンスを与えた。
表 9 エビデンス設定のトリガ
図 16 治療環境のベイジアンネットワーク(エビデンスの設定後)
図 17  登録したヒヤリハットデータの例
Ⅴ. 考察とまとめ
本研究は3秒ルールインテリジェンスを用いた意思決定を検討した。3秒ルールインテリジェンスは3秒後までの状況予測値に基づいて行動判断を行う人工知能であり、3秒後の予測値をベイジアンネットワークにより算出する。そこで。本研究はプロジェクトマネジメントにおけるリスク対策の発動と患者様子見行動における支援行動の実行に対する意思決定への3秒ルールインテリジェンスの応用を検討した。プロジェクトマネジメントにおけるリスク対策の発動では3秒ルールインテリジェンスは熟練のプロジェクトマネージャーに近い判断を示した。具体的には、複数のプロジェクトリスク要因がある中で顧客の要求仕様の精度が低いことが検知された場合には速やかにリスク対策を行う意思決定を示した。リスク対策とは、例えば、熟練のシステムエンジニアによる仕様書の見直しである。次に本研究では、患者様子見行動に於ける患者支援活動の必要性判断を試行した。試行の結果、3秒ルールインテリジェンスによる意思決定の自動化の可能性が示された。患者様子見行動に於ける意思決定とは医療スタッフによる患者支援を実行することである。3秒ルールインテリジェンスは環境監視を行い、トリガの発現を観察する。トリガの発現が検知されると対応行動の出現確率が計算される。プロジェクトリスク監視では、トリガは要求仕様の精度やプログラマーのスキルであり、プログラマーのスキルはプログラムミスの回数を観測することにより客観的に設定できる。また、患者リスクの監視に於けるトリガは患者の状態やスタッフの状態であり、患者の状態はカメラやマイクを使用して患者状況を自動監視することが可能である。3秒ルールインテリジェンスは人と同じ視点で環境要因を監視することにより、人の感覚に近い環境監視を行うことが可能である。特に、患者の様子見行動では患者支援行動の必要性を数値で示し、患者様子見行動の自動化の可能性を示した。患者支援の必要性を示す数値は環境の変化に伴い、再計算される。しかし、今回は環境変化のトリガ検知は手動で行ったため、今後、トリガの自動検知が必要である。今後、人的感覚を持つ環境評価機能が実現すれば、病棟やICUでの患者監視の自動化が可能となる。例えば、病棟スタッフは、複数の患者の状態を同時に監視して、適切な患者対応行動を行っている。そこで3秒ルールインテリジェンスによる人的感覚を持つ患者様子見機能が実現すれば、対応の緊急度を自動的に判断することが可能となり、経験の少ない医療スタッフでも対応の優先順位を即時に知ることができ、余裕のある患者対応が実現する。今後、熟練スタッフが観察している要素を、ベイジアンネットワークに追加して、客観的にエビデンスを設定することができれば、3秒ルールインテリジェンスは熟練スタッフに近い意思決定を行うことが可能となる。更に3秒ルールインテリジェンスは設定されたエビデンスを示すことができるため、意思決定の根拠を明確に示すことができ、信頼できる汎用人工知能(GAI: General Artificial Intelligence)への展開が期待できる。今後、実現が求められる汎用人工知能は判断根拠を示すことが必要である15)16)。
謝辞
本研究はJSPS科研費 20K11983の助成を受けた。
本研究に助言と貴重な情報を頂いた広島国際大学の橘昌幸教授と九大病院の福永淳一先生に感謝申し上げる。
引用文献
1)エリック.R・カンデル,記憶のしくみ 上,講談社,2013
2)小林春雄他:「神経情報生物学入門」,オーム社,1990
3)松本元・大津展之:「神経細胞の生物学的特性」,培風館,1992
4)伊藤薫:「脳と神経の細胞学」,培風館,1975
5)Armand M.de Callatay,島田禎晉訳:「人間の脳と人工知能」,丸善株式会社,1991
6) 「IBMが2nm半導体プロセスの試作成功、研究トップに聞く「ムーアの法則」の将来」,
日経クロステック,2021年5月13日
7) 持田 信治,池添 律代,矢鳴 虎夫:「判断マトリクスを使用した内部状態モデル構築に関する研究」,バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 6 巻 1 号,10-16,2004
8)持田 信治,橘 昌幸:「人の観点から見た環境評価に関する研究」,BMFSA学会誌 VOL11 NO.2 PP.25‐31
9) リンゼイ/ノーマン:「情報処理心理学入門Ⅰ(感覚と知覚)」,サイエンス社,1984
10) リンゼイ/ノーマン:「情報処理心理学入門Ⅱ(注意と記憶)」,サイエンス社,1984
11) 持田 信治:「3秒ルールAI実現に関する研究」,日本経営システム学会第62回全国研究発表大会講演論文集,138-139, 2019
12)牧下寛,松永勝也:「自動車運転中の突然の危機に対する制動反応の時間」,人間工学,38巻6号 pp.324-332,2002
13)山下昇:「車間距離より車間時間を取ろう」,セイフティエクスプレス企業開発センター,6月号,2008
14) 藤田一弥:「見えないものをさぐる」,オーム社,2015
15) 持田 信治:「3秒ルールインテリジェスを用いた患者様子見行動の模擬に向けた基礎研究」,BMFSA2020年次大会予稿集,pp.150-153,2020
16)「人間中心のAI社会原則の草案,人間中心のAI社会原則検討会議」,内閣府,2018年12月
17)「もうブラックボックスじゃない 根拠を示してAIの用途拡大」,NIKKEI ELECTRONICS 2018.09,53-58

患者様子見行動の自動化
ヒット: 2 開く 保存
状況
放射線治療現場において、患者のふらつきが検知され、患者リスク(支援必要性)が上昇した状況。
行動
3秒ルールインテリジェンスが環境変化を検知し、ベイジアンネットワークを用いて患者支援行動の必要度を再計算。
結果
患者支援の必要性がしきい値を超えたことを示し、医療スタッフの判断に近い行動判断と自動化の可能性が示された。
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【分析:状況】
放射線治療現場において、患者のふらつきが検知され、患者リスク(支援必要性)が上昇した状況。
【分析:行動】
3秒ルールインテリジェンスが環境変化を検知し、ベイジアンネットワークを用いて患者支援行動の必要度を再計算。
【分析:結果】
患者支援の必要性がしきい値を超えたことを示し、医療スタッフの判断に近い行動判断と自動化の可能性が示された。
----------------------------------------
【本文】
3秒ルールインテリジェンスによる意思決定
Decision-making based on Three-Second rule Intelligence
持田 信治*
Shinji Mochida
3秒ルールインテリジェンスは3秒後までの状況予測値に基づいて行動判断を行う人工知能であり、本研究はプロジェクトマネジメントにおけるリスク対策の発動と患者様子見行動における支援行動実施に対する意思決定への3秒ルールインテリジェンスの応用を検討した。そこで、3秒ルールインテリジェンスを用いた意思決定の可能性が示されたので報告する。
キーワード:3秒ルールインテリジェンス、ベイジアンネットワーク、様子見行動、プロジェクト
Ⅰ.はじめに
研究の目的
 3秒ルールインテリジェンスは、人と同じプロセスで意思決定を行う人工知能であり、人の脳で行われる意思決定を模擬する。人の大脳内には神経細胞(ニューロン)が約100億個あり、脳全体の神経細胞は1000億個あるとされる1)。神経細胞は核と樹状突起と信号伝送路に当たる軸索から構成され、樹状突起は信号入力をつかさどる受容体を持つ(図 1参照)。神経細胞間の信号伝達はシナプス間隙において行われており、1つの神経細胞は数千以上のシナプスを持つとされる。シナプスとは神経細胞同士の接続部分のことであり、特定の信号がシナプス前部に積み重なるとシナプスに於いて信号伝達が行われる。シナプス間隙上の信号伝達は科学物資の量と組み合わせで表現されるため、各シナプスは高度な情報処理を行っていると考えられる。シナプスは人では10兆個あるとされ、10兆個のシナプスの結合により経験が記録され、外部刺激により状況判断と行動発現がなされる2)-5)。一方、ニューロン内の伝達速度は概ね、1m/秒から100m/秒であり、最近のCPU(中央処理演算装置)は約100億程度のトランジスタ(7nm製造プロセスの場合)で構成され、3Ghz(1秒間に30億回の振動数)程度で動作する6)。人の神経細胞の動作速度はCPUに比べて低速であるにも拘わらず、人が高度な行動選択できる理由は、脳は並列に状況判断を行い、微小時間後に実行可能な行動候補を用意しているからであると考えられる7)8)。そこで、本研究では、微小時間を3秒と定義する。従って、慣れた行動は3秒以内に行動候補として直ちに用意されるのに対して、不慣れな行動候補は遅れて用意されるため、行動の慣れが発生する。そして優先順位が均衡する複数の行動候補が並列に用意されている状態が迷いであり、遅れて行動候補が準備され、行動選択が混乱する状態が後悔である。
図 1 神経細胞
Ⅱ. 3秒ルールインテリジェンス
1.人の行動判断
人は行動選択に当たって、微小時間周期で次に実行可能な行動候補を選び出して、行動選択を行っており、行動候補は過去の経験と知識から選択される7)8)。本研究での微小時間は3秒である。そこで、3秒ルールインテリジェンスは3秒後に実行可能な行動候補を人と共有することにより、人が理解可能な判断プロセスによる行動選択が実現する。3秒ルールインテリジェンスは3秒後に実行可能な行動候補の準備を行い、行動選択トリガ観察機能により行動選択を行う。行動選択トリガとは環境情報を心理的次元で配置したものの中で最優先位置にあるものであり、行動選択を左右する要因である9)。そして心理的な重み付けを行った行動選択トリガの発現観察を行うことにより、人と同じ概念駆動型処理を可能とする10)。3秒ルールインテリジェンスは経験データベースから現状認識情報をキーにして、3秒後に実行可能な行動候補を準備する。そして、ベイジアンネットワークにより、3秒後に実行可能な行動候補の優先順位を決定する。経験データベースは遷移情報を持ち、遷移情報は、現在状況と行動実行後の状況情報から構成される。行動遷移時間は3秒間である(図 2参照)。本研究では遷移情報をヒヤリハット報告やインシデントレポートから収集した。遷移情報は初期状況情報と3秒後の遷移情報を持つ。3秒間は人の行動選択の周期である。例えば、車両運行に於いて、人は3秒周期で、現在から3秒後までの遷移空間を構築することにより、運転操作における事故回避を行っている。
図 2 3秒間の遷移空間
図 3 運転操作における遷移空間
2. 人の行動予測と3秒ルールインテリジェンス
人が、直ぐに行動判断ができるのは、人は微小時間後に到達可能な遷移空間を事前に構築して状況予測を行いながら、行動選択を行っているからである11)。微小時間とは3秒である。例えば、車両運転に於いて、先行車との安全な推奨車間距は速度計の示す値から15を減じた距離である、例えば、時速60km/h の場合の推奨車間距は45mである。時速60km/hの車の速度は約17m/秒であるため、45m/17m≒3秒となり、推奨される車間距離を時間的に表すと約3秒となる12)。一方、車両運転に於ける安全な車間距離を時間で表すと、2秒から3秒と言われており、車間距離が1.8秒を切ると人は不安を感じると言われている13)。また、報告者のビジネスシステム開発の経験から、エンターキーを押した後のシステム応答時間が3秒以内であればシステム利用者は概ね良好な操作感を得る。しかしシステム応答時間が5秒を超えるとシステム利用者は不満を感じ、システム応答時間が10秒を超えるとシステム利用者はシステムに対する改善を要求するという状況からも、人は現時点から3秒後までの行動予測空間を構築しており、行動予測空間内で状況が進む場合には安心感を得ることができ、3秒後の状況が不確実になると不安やいらつきを感じると考えられる。以上から人は現時点から3秒後までの行動遷移空間を持って行動をしていると判断できる。
Ⅲ. ベイジアンネットワーク
1.ベイジアンネットワーク
ベイジアンネットワークとはある事象(親)と事象に関係する要因(子)との因果関係を有効グラフで表現したものであり、ベイジアンネットワークは親ノードと子ノードの因果関係を確率的な関係で表現しており、ベイジアンネットワークの親ノードは親(世界)が取りうる状況が発現する確率を表す14)。ベイジアンネットワークは信念ネットワークとも呼ばれ、条件付き確率テーブル上の確率値を主観的に設定することにより、人の主観を確率計算に反映できる。従って、条件付き確率テーブルに設定する確率値を主観的に設定することにより、ベイジアンネットワークは不確実な状況を表現することが可能である。そして子ノードの条件が確定することにより、親(世界)が取りうる状況の確率が計算される。子ノードの条件が確定することを、エビデンスをセットすると呼び、事実や状況が判明した場合には、子ノードにエビデンスが設定され、子ノードが親ノードに与える確率が決定する。以下にベイジアンネットワークを用いた計算例を示す。本例はプロジェクトが計画通りに終了する確率計算の例を示す。本例では条件付き確率とベイズ推定の式(1)を使用してプロジクトリスクを推定する。プロジクトリスクとは、プロジェクトが計画通りに終了しない確率、つまりプロジェクトの遅延確率である。以降、プロジェクトリスクとはプロジェクトの遅延確率であるとする。プロジェクトの遅延が発生すると費用超過や契約違反となり、費用的な損害が発生する。
(1)
A:親(世界)が取りうる状況に対する確率  B:子供(世界を説明する条件)を示す確率
本例ではプロジェクトが計画通りに終了する確率とスタッフからのプロジェクトの進捗に関するレポートの信頼性との関係を考え、プロジェクトが計画通りに終了する確率をA、そしてスタッフからの進捗に関するレポートの信頼性を示す確率をBとする。ここで、A=0.9、B=0.7とすると、プロジェクトが実行される世界の確率状況は図 4となる。ベイジアンネットワークはある事象が取りうる世界の確率的関係を示し、エビデンスが設定されると世界が変化する。
図 4 報告を受ける前の世界確率の図
次に機械学習システムのWeka (Waikato Environment for Knowledge Analysis) 14)を使用してプロジェクトが実行される世界の確率状況を表現した様子を図 5に示す。図 5、図 6と表 1、表 2はWeka上のProjectノードとReportノードに確率を与えている様子を示す。一般的にプロジェクトは10%程度遅延することが知られているため、表 1と図 5に示す様にプロジェクトが計画通り終わる確率は0.9に設定している。ただし、Wekaのベイジアンネットワーク表示では確率0.9は9000、そして確率0.7は6599と表示されている。
表 1 Weka上のProjectノードの条件付き確率
表 2 Weka上のReportノードの条件付き確率
図 5プロジェクトのベイジアンネットワーク表示
図 6 ProjectとReportノードの条件付き確率テーブルに確率値を与えている様子
次に、表 3と図 7はスタッフがプロジェクトの進捗は計画通りと報告した後のプロジェクトの実行世界を示しており、Aの確率は式(2)に示す通り0.95となる。図 8はWekaで確率を計算した様子を示す。本例でのエビデンスはスタッフのプロジェクトの進捗は計画通りとの報告である。ベイジアン推定ではエビデンスと呼ばれる状況報告が与えることにより、確率世界が変化する。
表 3 報告を受けた後の世界確率(抹消線の世界が削除された)
図 7報告を受けた後の世界確率の図(網掛けの部分の世界が消えた)
(2)
図 8 報告を受けた後のベイジアンネットワーク表示
2.プロジェクトに於ける遅延分析の必要性
複数の要素が存在するベイジアンネットワークの例として、プロジェクトリスクを算出する例を示す。プロジェクトリスクとはプロジェクトの予算超過と行程遅延を引き起こすリスクである。プロジェクトではプロジェクトリスクを避けるために、プロジェクトマネジメントにより、事前にリスクの洗い出しが行われ、プロジェクトリスクとリスク発現トリガとリスク発現時の対策をまとめたリスク管理表を作成しており、リスク発現トリガが観察されるとリスク対策が発動される。リスク発現トリガとはあるリスクが発現と判断するための環境状況である。しかし、リスク対策を発動すると経営資源を消費するため、リスク対策の発動には高度な意思決定が必要である。つまり、リスク対策発動には様々な状況を考慮する必要である。プロジェクトリスクが生じる主な要因として、顧客からの要求仕様の精度やプロジェクトマネージャーやプログラマーのスキルと見積もり精度がある。図 9はプロジェクト中の要因の関係をベイジアンネットワークで表現した様子であり、表 4は図 9に示すベイジアンネットワークの各要因が取り得る値を示す15)。図 10中の親ノードはプロジェクトの遅延確率(PPD)であり、子ノードにエビデンスが与えられると親ノードが示すプロジェクトの遅延確率(PPD)が変化する。
表 4 ベイジアンネットワーク中の要因の内容
図 9プロジェクトリスクを示すベイジアンネットワーク
3.遅延予測
表 4に示すベイジアンネットワークの要素をWeKaで表現したものを図 10に示す。図 10中のプロジェクトの遅延確率(PPD)はPro+と表現される。ベイジアンネットワークの初期状態は図 10に示す通り、プロジェクトの遅延確率(PPD)は0.5である。一般的にベイジアンネットワークの初期値は主観値であるので、遅延する場合としない場合は共に0.5である。表 5プロジェクト中の各リスク要因とプロジェクトの状態との関係を示す。プロジェクトの状態とはプロジェクトが遅延するか計画通り進捗するかである。表 5の条件付き確率は5人のプロジェクトマネージャーからヒアリングした値の平均であり、主観値である。そして、図 10に示すPPDのPro+とPro-の値を0.5に設定した後に各子ノードに示される確率値の計算要領を図 11に示す。例えば、図 11のAEのLow値は0.4であり、計算要領は以下の通りである。
0.5(Pro+)×0.7(支援必要 Low)=0.35
0.5(Pro-)×0.1(支援不要 Low)=0.05
0.35+0.05=0.4 AE(Low)
但し、図 10の同値は0.399と表示されている。
図 10 リスクのベイジアンネットワーク表現
図 12 リスク予測(Case1)
図 11 子ノードに表示されている確率の計算要領
次に、ベイジアンネットワークにエビデンスを与える。Case1のエビデンスの組みあわせはAE:見積精度とSPM:プロジェクトマネージャーのスキルがStandard、STP:プログラマーのスキルがHigh、AR:要求仕様の精度がLowであり、この時プロジェクトが遅延する確率は約0.26となる(表 6、図 12参照)。
図 13 プロジェクトの費用
表 5 プロジェクトの条件付き確率
表 6 リスク要因の組みあわせ状況と遅延リスク
表 6にCas1からCase6までのエビデンスを与えた時プロジェクトの遅延リスクを示す。一般的にプロジェクトマネージャーとプログラマーのスキルはStandardであるため、プロジェクトの遅延確率は10%程度であり、一般的なプロジェクトマネジメントの許容範囲内である(図 13参照)。そこで、プロジェクトの遅延のしきい値を20%と設定した場合、表 6のCASE1に示す様に要求仕様がLowであることが判明した場合にはプロジェクトの遅延確率が20%を超えるので、プロジェクトリスク対策の発動が必要となり、3秒ルールインテリジェンスはプロジェクトリスク対策の発動を指示する。例えば、プロジェクトリスク対策としてスキルがHighのプロジェクトマネージャーを投入することが考えられる。一般的なプロジェクトでは、Stndardのスキルを持つプロジェクトマネージャーとプログラマーがプロジェクトを実行する。しかし、顧客の要求仕様の精度は不確実であるため、顧客からの要求仕様の曖昧さや仕様変更がプロジェクトリスクを左右する。
Ⅳ.  患者への様子見行動と患者対応
1.患者監視自動化の必要性
現在、医療現場では、患者確認に於けるダブルチェックや手順の標準化が進められている7)8)。しかし、例外的な事象が起きた場合の対応は人の判断に頼らざるを得ず、医療スタッフの経験度により、対処時間や対処方法が異なる。そこで、高度な判断できる熟練医療スタッフが求められる。加えて、医療現場では近年、安全監視と記録業務が増加しており、医療スタッフの時間的余裕が減少して、ストレスの高い職場となっている。そこで、本研究は3秒ルールインテリジェンスを用いた人的感覚を持つ環境評価機能を提案する。そして、本研究が目指すのは医療スタッフによる患者への様子見行動の自動化である15)。患者への様子見行動とは不安定な患者の事故防止のための、医療スタッフによる患者観察行動であり、様子見行動はスタッフがある一定時間、患者への対応行動を保留して、患者リスクの発現を観察する行動である。患者様子見行動は患者が治療室に移動する場合や、治療中は患者の動作は限定的であるため、人工知能が患者を観察できれば、スタッフの業務軽減が図れる。更に工知能に患者観察を任せることにより、スタッフは次の業務の準備作業等が可能となり業務に余裕が生まれる。様子見行動は患者観察を含む状況判断とスタッフの経験により行われる行動であり、人工知能による患者様子見行動が可能になれば人と人工知能による協働作業実現が実現する。
2.患者リスクの評価
医療現場では、安全のために患者確認に於ける2重チェックや手順の標準化が進められている15)。しかし、例外的な事象が起きた場合の対応は人の判断に頼らざるを得ず、熟練医療スタッフの経験に基づく対処が求められる。そこで、本研究は熟練医療スタッフに近い状況判断機能の実現を目指して、3秒ルールインテリジェンスを放射線治療現場に応用した。表 7に放射線治療における環境要因と要因の略称を示す。環境要因は医療スタッフからのヒアリングにより取得した。本研究では、ベイジアンネットワークにより算出した患者リスクにより、状況判断を行う。患者リスクとは患者に拘わる事故発生確率のことであり、本研究では患者リスクを患者への支援の必要性とみなす。従って、患者リスクが上昇すると患者への支援必要性が上昇することとなる。患者支援の必要性があるしきい値を越えると患者への支援が必要となる。放射線治療装置は治療を行う機械であり、今後、治療環境に関する情報の取得を機械信号として取得することが可能であり、環境状況取得の精度向上が期待できる。
表 7 患者を取り巻く環境とベイジアンネットワークの要素
3.患者様子見行動分析
患者への様子見行動とは不安定な患者の事故防止のための、医療スタッフによる患者観察行動のことである。図 14は医療スタッフが患者の様子を観察している状況を示しており、縦軸は患者リスクを示し、横軸は時間軸である。図 14に示す、患者が問題無しの領域にある場合には、医療スタッフは患者を観察する必要のない状況であることを示す、例えば患者が検査に行っている状態である。次に患者が様子見状態にある場合には医療スタッフが患者を観察する必要がある状況であり、更に、患者が事故発生確率大の領域に入った場合には、患者リスクが高い状況であり、患者への支援が必要となる。例えば患者への支援行動として、患者への声掛けや治療中断がある。様子見行動は医療スタッフが患者への対応行動を保留して患者の様子を観察する行動であり、人工知能が患者を観察できれば、医療スタッフの業務軽減が図れる。そこで、本研究は医療スタッフの患者への様子見行動の模擬を目指して、3秒ルールインテリジェンスの放射線治療への適応を試みた。ベイジアンネットワークの親ノードが示す確率値は医療スタッフ経験に基づく患者リスク値を示している。本研究では、ベイジアンネットワークにより算出された患者リスク値は3秒後の患者支援行動の必要度合いを示している。そして、環境要因の変化に従い、ベイジアンネットワークの再計算を実行する。ベイジアンネットワークが示す患者リスクは患者支援行動の必要度合いを示し、患者支援行動の必要度合いがあるしきい値を越えた場合には患者への支援行動が必要となる。図 15に本研究で設定したベイジアンネットワークを示す。図 15中の略称は表 7の通りであり、表 8はベイジアンネットワークに設定した条件付き確率テーブルを示している。表 8の各数値は医療スタッフからのヒアリングにより取得しており、医療スタッフの経験値を反映している。
図 14 状況判断
図 15 治療環境のベイジアンネットワーク(初期状態)
表 8 患者支援モデルのテーブル例
親テーブル(RISK)
条件付き確率子テーブル(SKIL,PAT,METH,ENV)
4.患者様子見の評価
 3秒ルールインテリジェンスは経験データベースを持ち、経験データベースは経験ルールを持ち、経験ルールは現在情報と3秒後情報に加えて、発現したリスク情報を持つ。経験ルールはヒヤリハット情報から抽出しており、スタッフの経験を反映している。本研究ではヒヤリハット情報から抽出した、環境の時間的変化を3秒間の状態遷移状況と見なして、経験ルールに記述する。経験ルールはXML形式で登録される(エラー! 参照元が見つかりません。参照)。本研究では、環境監視において、特定な環境変化情報が検知されると関連した経験ルールが選択される(表 9参照)。本研究では特定な情報を経験トリガと呼ぶ。環境情報の監視下で、経験トリガが検知されると該当する経験ルールが選択され、ベイジアンネットワーク中の指定されたエビデンスが設定される。例えば患者のふらつきが検知された場合には、患者の状態判断を行う経験ルールが選択され、患者の状態が悪いことを示すエビデンスがベイジアンネットワークに設定される。図 15に患者監視の初期状態を示す。初期状態での患者への支援必要性値は図 15に示す通り、0.5である。そして、患者のふらつきが検知されると、患者の状態が悪いことを示すエビデンスがベイジアンネットワークに設定され、図 16に示す通り、患者への支援の必要性を示す値が0.83となる。若し、患者様子見行動が継続する場合の患者リスク値を0.5から0.7の間とすると(図 14参照)、患者様子見行動のしきい値の0.7を超えたため、患者への支援が必要となる。従って本結果は、3秒ルールインテリジェンスは医療スタッフの判断に近い行動判断が可能であることを示し、3秒ルールインテリジェンスによる患者様子見行動の自動化の可能性を示す。図 17にヒヤリハット情報から抽出した経験ルールをXML形式で登録した例を示す。本研究では、トリガに記述された環境要因を監視する、トリガの自動監視ができれば、患者様子見行動の自動化が実現する。本例では患者の動きを観察して、手動でエビデンスを与えた。
表 9 エビデンス設定のトリガ
図 16 治療環境のベイジアンネットワーク(エビデンスの設定後)
図 17  登録したヒヤリハットデータの例
Ⅴ. 考察とまとめ
本研究は3秒ルールインテリジェンスを用いた意思決定を検討した。3秒ルールインテリジェンスは3秒後までの状況予測値に基づいて行動判断を行う人工知能であり、3秒後の予測値をベイジアンネットワークにより算出する。そこで。本研究はプロジェクトマネジメントにおけるリスク対策の発動と患者様子見行動における支援行動の実行に対する意思決定への3秒ルールインテリジェンスの応用を検討した。プロジェクトマネジメントにおけるリスク対策の発動では3秒ルールインテリジェンスは熟練のプロジェクトマネージャーに近い判断を示した。具体的には、複数のプロジェクトリスク要因がある中で顧客の要求仕様の精度が低いことが検知された場合には速やかにリスク対策を行う意思決定を示した。リスク対策とは、例えば、熟練のシステムエンジニアによる仕様書の見直しである。次に本研究では、患者様子見行動に於ける患者支援活動の必要性判断を試行した。試行の結果、3秒ルールインテリジェンスによる意思決定の自動化の可能性が示された。患者様子見行動に於ける意思決定とは医療スタッフによる患者支援を実行することである。3秒ルールインテリジェンスは環境監視を行い、トリガの発現を観察する。トリガの発現が検知されると対応行動の出現確率が計算される。プロジェクトリスク監視では、トリガは要求仕様の精度やプログラマーのスキルであり、プログラマーのスキルはプログラムミスの回数を観測することにより客観的に設定できる。また、患者リスクの監視に於けるトリガは患者の状態やスタッフの状態であり、患者の状態はカメラやマイクを使用して患者状況を自動監視することが可能である。3秒ルールインテリジェンスは人と同じ視点で環境要因を監視することにより、人の感覚に近い環境監視を行うことが可能である。特に、患者の様子見行動では患者支援行動の必要性を数値で示し、患者様子見行動の自動化の可能性を示した。患者支援の必要性を示す数値は環境の変化に伴い、再計算される。しかし、今回は環境変化のトリガ検知は手動で行ったため、今後、トリガの自動検知が必要である。今後、人的感覚を持つ環境評価機能が実現すれば、病棟やICUでの患者監視の自動化が可能となる。例えば、病棟スタッフは、複数の患者の状態を同時に監視して、適切な患者対応行動を行っている。そこで3秒ルールインテリジェンスによる人的感覚を持つ患者様子見機能が実現すれば、対応の緊急度を自動的に判断することが可能となり、経験の少ない医療スタッフでも対応の優先順位を即時に知ることができ、余裕のある患者対応が実現する。今後、熟練スタッフが観察している要素を、ベイジアンネットワークに追加して、客観的にエビデンスを設定することができれば、3秒ルールインテリジェンスは熟練スタッフに近い意思決定を行うことが可能となる。更に3秒ルールインテリジェンスは設定されたエビデンスを示すことができるため、意思決定の根拠を明確に示すことができ、信頼できる汎用人工知能(GAI: General Artificial Intelligence)への展開が期待できる。今後、実現が求められる汎用人工知能は判断根拠を示すことが必要である15)16)。
謝辞
本研究はJSPS科研費 20K11983の助成を受けた。
本研究に助言と貴重な情報を頂いた広島国際大学の橘昌幸教授と九大病院の福永淳一先生に感謝申し上げる。
引用文献
1)エリック.R・カンデル,記憶のしくみ 上,講談社,2013
2)小林春雄他:「神経情報生物学入門」,オーム社,1990
3)松本元・大津展之:「神経細胞の生物学的特性」,培風館,1992
4)伊藤薫:「脳と神経の細胞学」,培風館,1975
5)Armand M.de Callatay,島田禎晉訳:「人間の脳と人工知能」,丸善株式会社,1991
6) 「IBMが2nm半導体プロセスの試作成功、研究トップに聞く「ムーアの法則」の将来」,
日経クロステック,2021年5月13日
7) 持田 信治,池添 律代,矢鳴 虎夫:「判断マトリクスを使用した内部状態モデル構築に関する研究」,バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 6 巻 1 号,10-16,2004
8)持田 信治,橘 昌幸:「人の観点から見た環境評価に関する研究」,BMFSA学会誌 VOL11 NO.2 PP.25‐31
9) リンゼイ/ノーマン:「情報処理心理学入門Ⅰ(感覚と知覚)」,サイエンス社,1984
10) リンゼイ/ノーマン:「情報処理心理学入門Ⅱ(注意と記憶)」,サイエンス社,1984
11) 持田 信治:「3秒ルールAI実現に関する研究」,日本経営システム学会第62回全国研究発表大会講演論文集,138-139, 2019
12)牧下寛,松永勝也:「自動車運転中の突然の危機に対する制動反応の時間」,人間工学,38巻6号 pp.324-332,2002
13)山下昇:「車間距離より車間時間を取ろう」,セイフティエクスプレス企業開発センター,6月号,2008
14) 藤田一弥:「見えないものをさぐる」,オーム社,2015
15) 持田 信治:「3秒ルールインテリジェスを用いた患者様子見行動の模擬に向けた基礎研究」,BMFSA2020年次大会予稿集,pp.150-153,2020
16)「人間中心のAI社会原則の草案,人間中心のAI社会原則検討会議」,内閣府,2018年12月
17)「もうブラックボックスじゃない 根拠を示してAIの用途拡大」,NIKKEI ELECTRONICS 2018.09,53-58

相州伝の完成
ヒット: 1 開く 保存
状況
元寇による外国からの侵略という未曽有の事態に直面し、従来の太刀では真綿の鎧に通用しないなど、実戦的な強靭さが求められた。
関連ルール: A-33: 侵略
行動
五郎入道正宗が各地の刀生産地を行脚して技術を研究し、硬軟の地鉄を組み合わせる「相州伝」を完成させた。
関連ルール: A-34: 生産
結果
「折れず、曲がらず、良く切れる」という革新的な刀が生まれ、日本刀中興の祖として全国の刀工に多大な影響を与えた。
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【分析:状況】
元寇による外国からの侵略という未曽有の事態に直面し、従来の太刀では真綿の鎧に通用しないなど、実戦的な強靭さが求められた。
【分析:行動】
五郎入道正宗が各地の刀生産地を行脚して技術を研究し、硬軟の地鉄を組み合わせる「相州伝」を完成させた。
【分析:結果】
「折れず、曲がらず、良く切れる」という革新的な刀が生まれ、日本刀中興の祖として全国の刀工に多大な影響を与えた。
----------------------------------------
【本文】
令和7年6月28日
戦国の世に生きる武士として軍務に精進する、が、かれらは法によって規制されており、武具を整備し、武芸の修練に心がけて軍役に精励しなけれなければならなかった。このような傾向はすでに早く、天文ころ吾川郡弘岡城主であった吉良宣経(151-1550頃:室町時代)の定目にあり。すなわち、 田地二町以上耕作する百姓には武具を与が、かれらは法によって規制されており、武具を整備し、武芸の修練に心がけて軍役に精励しなけれならかった。
山本大(やまもと たけし). 長宗我部元親 その謎と生涯
山本大. 長宗我部元親 (新人物文庫) . KADOKAWA / 中経出版. Kindle 版. (新人物文庫) . KADOKAWA / 中経出版. Kindle 版. 2014 新人物往来社 2010
室町時代(1932―1573)天文年間(1532年から1555).
令和7年6月26日
鉄と鋼の違いは、主に炭素含有量によって分類されます。 刃物に使用される鋼(ハガネ)は炭素含有量が0.08〜2.0%で、それ以下の材料は鍛鉄または軟鉄と呼ばれ、柔らかく、焼き入れしても硬化しない材料です。 鋼(ハガネ)以上に炭素(C)を含む材料は銑鉄または鋳鉄で、硬く脆いので鋳物の材料などに使用されます。
正宗は、1264年(弘長4年/文永元年)、鎌倉鍛冶の名工「藤三郎行光」(とうさぶろうゆきみつ)の子として生まれました。1280年(弘安3年)に17歳で父親と別れ、「新藤五国光」(しんとうごくにみつ)の門下に入ります。ここで作刀秘術を習得。その後、山城国(現在の京都府南部)、備前国(現在の岡山県東南部)、伯耆国(現在の鳥取県中西部)など、刀の生産地を行脚して、各地の技術を研究。ついに「相州伝」(そうしゅうでん)を完成させます。相州伝の刀は、薄いながらも強度抜群の刀身が特徴であり、これは、刀の常識を一変させる革新的な鍛法でした。
正宗による相州伝の完成は、時代背景と密接に関係しています。正宗が刀工としての道を歩み始めた時期は、いわゆる「元寇[蒙古襲来]」(げんこう[もうこしゅうらい])の時期と重なっています。外国からの侵略という未曽有の事態となった日本では、これまでになく自国の防衛意識が上昇。これを受けて武を貴ぶ気風が盛り上がり、併せて刀のあり方が問われるようになったのです。
武士達が求めたのは豪壮にして実用に耐え、武運を強くしてくれる1振でした。こうした動向の中、五郎入道正宗が相州伝を完成させるのです。相州伝は硬軟の「地鉄」(じがね)を組み合わせ、「地景」(ちけい)や「金筋」(きんすじ)など刃中の働きと、「湾れ刃」(のたれば)を基調とした大模様の刃文による「沸」(にえ)の美しさを強調する作風です。これにより、刀身の強度向上はさることながら、刃文の躍動感が一気に増しました。「山城伝」(やましろでん)の「粟田口派」(あわたぐちは)による伝統を継承した、整った「直刃」(すぐは)ではなく、荒々しい波濤(はとう:大きな波)のような刃文を刀身に表現したのです。この雄渾(ゆうこん:雄大で勢いが良いこと)さが、武運長久を希求する鎌倉武士達の琴線に触れ、正宗は、一躍著名な刀工となったのです。
以後、正宗の作風は全国に影響を及ぼし、後世に言う「正宗十哲」(まさむねじってつ)が生まれます。これは、正宗の影響を強く受けた10人の刀工のこと。正宗十哲のすべてを正宗門下と認めるのは困難ですが、「沸出来」(にえでき)を強調している点は共通しています。正宗十哲によって新しい作刀技術は日本全国に拡大し、のちに「新刀」や「新々刀」(しんしんとう)が誕生する原動力となるのです。
このように、五郎入道正宗の登場により、日本における刀の歴史は大きく転換しました。このため正宗は、「日本刀中興の祖」と位置付けられています。正宗はその後、行光に学んだ相州伝の技法をもとに、さらに品質を高めた刀を作刀するために研究を重ねます。
その動機のひとつとなったのが、1274年(文永11年)と1281年(弘安4年)の2度に亘り、「元」(げん)と称する旧モンゴル帝国から軍勢が襲来した「元寇」(げんこう)です。
このとき元軍は、その当時、一騎打ちが主流であった日本とは異なる集団戦であったり、火薬を使った武器で攻撃したりするなど、それまでの日本では見ることがなかった戦法を用いていました。元寇では最終的に、鎌倉幕府軍が勝利を収めましたが、さらなる外国からの侵攻に備えて、美しいだけでなく、より強靭である実用華美な刀が求められるようになったのです。
正宗は苦心の末、「折れず、曲がらず、良く切れる」と評される刀を作刀することに成功。地刃ともに強い相州伝の伝法を完成させました。
そこで、鎌倉幕府5代執権「北条時頼」(ほうじょうときより)が、全国から刀工達を呼び寄せます。その刀工とは、建長年間(1249~1256年)に、山城国の「粟田口国綱」(あわたぐちくにつな)、及び備前国(現在の岡山県東南部)の「備前三郎国宗」(びぜんさぶろうくにむね)の2名。
五箇伝から輩出された日本刀の名工は、数多くの名刀を鍛え上げました。しかし、江戸時代になると日本刀の需要が激減。刀工達は、「打ち刃物」(うちはもの:高温に熱した軟鉄と鋼などを打って形にする製法)と呼ばれる包丁や鎌、ノコギリ、ナタなどの農業用刃物の需要を求め、地方に広がっていきます。さらに、明治時代の「廃刀令」によって、ほとんどの刀工が日本刀から業務用、及び家庭で使われる刃物づくりに転業しました。
気候に恵まれた高知県は、県民ひとりあたりの森林占有率が日本一で、全国屈指の木材の産出地。そのため、山林伐採用の打ち刃物づくりが古くから行なわれてきました。
江戸時代に入ると、森林資源の確保や新田開発の振興政策が採られ、農業や林業用の刃物への需要がますます高まり、それに伴って「土佐打刃物」のクオリティが向上。土佐には、もともと多くの鍛冶職人が存在し、堺で学んだことをもとに技術革新に取り組んだ結果、包丁づくりが飛躍的な発展を遂げたと言われています。
林業から発展した土佐打刃物は、庶民の生活に添う機能を最優先としているため、その性能と丈夫さは折紙つき。また、野鍛冶の伝統をくみ、注文に応じて様々な刃物を作る「自由鋳造」の技術も魅力で、高知県は日本を代表する包丁産地のひとつとなっているのです。
包丁の作り方
地金(鉄)に鋼(はがね)を貼り合わせる。
令和7年6月24日
横山さん 高知図書館より
長宗我部元親 その謎と生涯
山本 大(たけし)
新人物往来社P39
令和7年5月25日
オーテピア高知 横山氏
長宗我部元親 考
 1両具足は、譜代にあらず、 山内家と関係なし。
令和7年5月12日
元寇記念館調査
1986年 長崎清国水兵事件
元寇記念館の場所は千代の松原の古戦場
中国の真綿の鎧は刀や槍は通らない
鍛刀の改革 準備が必要
昔の刀は馬上から切りつけるためにそりの入った身幅の広い平肉月猪首切先長寸の太刀
真綿の鎧に通用しない
刀匠 五郎正宗 父行光 太刀作り
高度の高い皮鉄と半鍛の硬度の低い鉄
面綿の鎧は太宰府に保管
文永の役 鹿原高地激戦
令和7年5月5日
鎌倉調査
元八幡
https://www.trip-kamakura.com/place/9.html
この社は相模守であった源頼義が奥羽(東北)での戦に勝利し京に帰る途中、1063年(康平6)に鎌倉に立ち寄り、この地に源氏の守り神である石清水八幡宮の祭神を移しまつったといわれる。源氏と鎌倉とのつながりができた初めである。その後、源頼朝が現在の鶴岡八幡宮がある場所に社殿を移してから、ここは元八幡と呼ばれるようになったといわれる。
行き方
鎌倉市材木座1-7
1.JR鎌倉駅東口バス乗り場から九品寺方面行きで「元八幡」下車徒歩1分
2.JR鎌倉駅東口から徒歩15分
2.鶴岡八幡宮
JR横須賀線 JR湘南新宿ライン
「JR鎌倉駅」東口から徒歩10分
3.大倉幕府(1180-1225)
鎌倉市雪ノ下三丁目
https://www.trip-kamakura.com/place/ookurabakufu.html
4.宇都宮辻子幕府(1225-1236)
https://www.trip-kamakura.com/place/utsunomiya.html
5.若宮大路幕府(1236-1333)
https://www.trip-kamakura.com/place/wakamiya.html
6.永福寺
https://www.city.kamakura.kanagawa.jp/treasury/yohukuji_cg.html#youhukujiato-access
令和7年5月3日
始めまして、流通科学大の持田と申します。 
お教え頂きたいことがありまして、メールをお送りしています。
私は、製造業に関する講義を担当しており、
「改善」と「3S」を正しく学生に伝えたいと考えています。
「3S」とは「整理、整頓、清掃」の頭文字を取ったもので、
「改善」と共に日本の製造業での常識となっている言葉です。
しかし、製造現場では3Sは単なる合い言葉の様に使われており、
3Sの精神が伝わっていないのではと感じています。
私は、3Sの精神は鎌倉武士に由来するもので、「整理、整頓、清掃」とは
鎌倉武士が必要な刀、槍、馬を常に整備、準備して、何時でも出撃できる
ような状態でいたことに由来すると私は思っており、関連資料を探している次第です。
私がそう考える理由は、小学生の時の社会見学にあります。
見学は福岡の東公園で、日蓮上人像の前で教員から
「整理、整頓、清掃」の精神は鎌倉幕府の「いざ、鎌倉」に由来する
もので、24時間いつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかる
精神である。一方、「夜討ち、朝駆け」はビジネスチャンスを逃さない
精神であり、「整理、整頓、清掃」と共に日本のビジネス精神の基礎をなしている。
と教わりました。そこで、「整理、整頓、清掃」といざ、鎌倉」に関する
資料をお持ちでしたら、ご紹介頂きたく存じます。
お忙しい所、誠にお手数ですが、本件、ご教授頂けますと幸いです。
今後とも宜しくお願いします。
令和7年5月1日
1937年 トヨタ自動車設立 
1938年(昭和13年) ジャストインタイム開始 
豊田喜一郎の「ジャスト・イン・タイム」の考え
豊田喜一郎は、1927年(昭和2年)に完成した月産能力300台の織機工場の組立ラインに、チェーンコンベアを用いた流れ作業を導入した。さらにその経験を生かして、1938年(昭和13年)に完成させたトヨタ自動車の挙母(ころも)工場(現 トヨタ自動車本社工場)でも流れ作業を導入した。その工場において「ジャスト・イン・タイム」の考えを提唱し、各工程の同期化を目指した。
https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/data/automotive_business/production/system/explanation02.html
よく使われる単語
アンドン(特定の問題をフロアの監督者に警告するために使用される大きな照明付きボード。英語:Signboard)
着々(英語:Load-Load)
現場(英語:On site)
現地現物(英語:Go and see for yourself)
反省(英語:Self-reflection)
平準化(英語: Production Smoothing)
自働化(英語:automation with human intelligence)
ジャストインタイム(英語:Just-in-Time)
改善(英語: Continuous Improvement)
カンバン(英語:Sign, Index Card)
Manufacturing supermarket
ムダ(英語:Waste)
ムラ(英語:Unevenness)
ムリ(無理)(英語:Overburden)
根回し(英語:building consensus)
大部屋(英語:Manager's meeting)
ポカヨケ(英語:fail-safing)
整備(英語:To Prepare)
整理(英語:Sort, removing whatever isn't necessary.)
整頓(英語: Tidy)
清掃(英語:Cleaning)
清潔(英語:Clean)
躾(英語:Discipline)
秋田県立金足農業高等
学校教育方針(校是)
「自主 勤労 感謝」
生活信条(金農三生活信条)
「時間厳守 挨拶励行 整理整頓」
2025/4/9
irst, the 3S method.  I have not find any notice on 3S, but there is a lot of them on 5S (Seiri, Seiton, Seiso, Seiketsu, Shitsuke). It is frequently presented as the typical  first step to introduce lean management. In my opinion, it came to Europe with Japanese companies and was applied in their affiliates here. But I heard stories about problems with their Czech employees. In one company, for example, they demanded that employees come half an hour early and get everything ready, but this caused a storm of resistance and a revolt by the unions. After all, it was against Czech law.  But there must be ways in which it is applied in Czech companies, there is a lot of talk about lean management. I think Josef used it in restructuring his department in Vimperk. Josef now works in Pasau, Germany, so I will ask him about it. But it will take some time, he is very busy and does not write often.
ジャストインタイムは豊田喜一郎が提唱
大野耐一
現場の人間を中心としたボトムアップの改善運動に依存した生産システムを作ろうと考えた。
日本の生産システムは現状に満足せず、創造的なアイデアや創造、工夫により常に変化に挑戦してより高い目標を実現しようとする。従って、変化に強く柔軟性のある生産システムである。(P52)
NHKヒューマニエンス「“整理整頓” それはヒトの本能なのか」を観て
持田 信治さま
鎌倉歴史文化交流館でございます。
「整理、整頓、清掃」が鎌倉武士の精神に由来するのではないか、とのことですが、
そうした考え方は初めて知りました。
中世の東国は自力救済の世界、かつ鎌倉の町は狭く、本拠地の所領経営もありますので、すべての武士が鎌倉に住んでいたわけではありません。
ゆえに、何かあればすぐに鎌倉に駆け付ける必要があります。これは恩賞を得るためです。
「整理、整頓、清掃」に関連する資料はわかりません。
当館は、市内の出土品を所蔵・展示する博物館であるため、関係する所蔵資料もございません。
「いざ鎌倉」に関する資料ですが、これはご存じの通り、室町時代に成立した謡曲「鉢の木」に由来することばです。
当館に「鉢の木」に関する資料はございませんが、以下謡曲の内容と参考文献をご紹介します。
「いざ鎌倉」は、主人公の佐野源左衛門常世が、宿を貸した旅僧(正体は諸国行脚中の執権北条時頼)に対して語った
「鎌倉におん大事出(い)で来(きた)るならば…一番に馳せ参じ着到に付き」を典拠とします。
したがって、「鉢の木」では何か騒動が起こったとき御家人たちがすぐに鎌倉にはせ参じる様子を描いています。
「鉢の木」からわかるのは、次の2点です。
すなわち、鎌倉では騒動が頻発したこと、また鎌倉に一大事ありと聞けば、諸国の御家人は先を争って馳せ参じ、
幕府の着到状(出席簿)に姓名を記録して恩賞を期待したということです。
このようなことは鎌倉時代特有のことで、他の時代にはあまりみられず、だからこそ、
「いざ鎌倉」という言葉は現在まで残ったと考えられます。
一大事ありと聞いて、御家人たちが鎌倉に駆けつけたという記述は、鎌倉幕府の歴史書
『吾妻鏡』に散見します。もっとも多いのは、源頼朝の時代ではなく、鎌倉中期の北条時頼の時代です。
摂家将軍を追放した上、三浦氏を滅ぼし、北条氏専制政治への道を開いた時頼の時代は、
いつ何が起こるかわからない不安定な社会状況でした。
ですので、時頼と「いざ鎌倉」には深い関わりがあり、謡曲「鉢の木」は、その史実を反映しているといえるでしょう。
以上の内容は、平泉澄『明治の源流』(時事通信社、1970年)を参考にしています。
武士たちが鎌倉に馳せ参じたときの『吾妻鏡』の記事も具体的に示されておりますので、よろしければご覧ください。
また、鎌倉武士については、石井進『鎌倉武士の実像』(平凡社、1987年)が参考になると思います。
「いざ鎌倉」の際に、武士たちが馬を走らせた鎌倉街道についても言及しています。
以上がご質問への回答となります。
よろしくお願いいたします。
....................................
鎌倉歴史文化交流館
〒248-0011 神奈川県鎌倉市扇ガ谷1-5-1
TEL:0467-73-8501 FAX:0467-73-8545
rekibun@city.kamakura.kanagawa.jp
....................................
----- Original Message -----
>> From: 持田 信治 <Shinji_Mochida@red.umds.ac.jp>
>> To: "rekibun@city.kamakura.kanagawa.jp" <rekibun@city.kamakura.kanagawa.jp>
>> Date: 2025-03-28 11:08:54
>> Subject: お教え頂きたいことがあります。 流通科学大の持田
>>
>> 鎌倉歴史文化交流館
>> ご担当様
>>
>> 始めまして、流通科学大の持田と申します。 
>> お教え頂きたいことがありまして、メールをお送りしています。
>>
>> 私は、製造業に関する講義を担当しており、
>> 「改善」と「3S」を正しく学生に伝えたいと考えています。
>> 「3S」とは「整理、整頓、清掃」の頭文字を取ったもので、
>> 「改善」と共に日本の製造業での常識となっている言葉です。
>> しかし、製造現場では3Sは単なる合い言葉の様に使われており、
>> 3Sの精神が伝わっていないのではと感じています。
>> 私は、3Sの精神は鎌倉武士に由来するもので、「整理、整頓、清掃」とは
>> 鎌倉武士が必要な刀、槍、馬を常に整備、準備して、何時でも出撃できる
>> ような状態でいたことに由来すると私は思っており、関連資料を探している次第です。
>>
>> 私がそう考える理由は、小学生の時の社会見学にあります。
>> 見学は福岡の東公園で、日蓮上人像の前で教員から
>> 「整理、整頓、清掃」の精神は鎌倉幕府の「いざ、鎌倉」に由来する
>> もので、24時間いつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかる
>> 精神である。一方、「夜討ち、朝駆け」はビジネスチャンスを逃さない
>> 精神であり、「整理、整頓、清掃」と共に日本のビジネス精神の基礎をなしている。
>> と教わりました。そこで、「整理、整頓、清掃」といざ、鎌倉」に関する
>> 資料をお持ちでしたら、ご紹介頂きたく存じます。
>>
>> お忙しい所、誠にお手数ですが、本件、ご教授頂けますと幸いです。
>> 今後とも宜しくお願いします。
Hi Shinji,
this is it:
* Utridit -separate (in the sense necessary from unnecessary)
* Usporadat -organize (in the meaning of organizing things e.g. in order)
* Udrzovat poradek - keep clean (keep the area clean)
* Urcit pravidla -define rules/procedures
* Upevnovat a zlepsovat - strengthen (maybe maintain) and improve
Yes, Kaizen and 5U are like one thing. If I understand it well, Kaizen
is a philosophy, 5U is how to do it - to be "Kaizen"....
V.
Dear Vaclav,
Thank you for your prompt reply so much.
Please tell me, what does 5U stand for?
Are Kaizen and 5S used in pairs?
Thank you.
Shinji Mochida
Dear Shinji,
I have never heard of it, but I am not a good person to ask. So I
asked my daughter Lada who is studying economy and she knows it very
well. Just, instead of 3S she knows 5S - in Czech it is knows as 5U -
they have 5 words beginning with U letter with the similar meaning as
you wrote.
Vaclav
Dear Vaclav,
Thank you for your prompt reply.
I have a question.
Kaizen and 3S are very famous in the manufacturing industry in Japan.
3s stands for Sort, Tify, Clearning.
Have you heard the 3S and Kaizen?
I would like to know if the 3S is known in Europe.
I am researching the origin of the 3S in manufacturing.
I believe 3S was born from the behavior of the Kamakura samurai of ancient Japan.
If you know anything about the 3S in Europe, please let me know.
Thank you.
Shinji Mochida
Dear Shinji,
That's unfortunate news, but thank you for letting me know.
Hopefully, we’ll see each other in September during the Czech-Japan
seminar. I’m also trying to secure some funding.
Enjoy your visit to Izumo Taisha Shrine!
Here in the Czech Republic, we’re finally enjoying spring ? lots of
sunshine and beautiful weather after a long winter.
In the meantime, I’m busy with grant proposals ? we’re working on two,
though the chances of success are rather low. Still, hope never dies.
:-)
See you soon!
Vaclav
Dear Vaclav,
How are you. I and my wife are fine.
In early April, I will be visiting Izumo Taisha Shrine in Shimane Prefecture.
Izumo Taisha Shrine is one of the most famous shrines in Japan.
I am sorry,
I didin't get the budget for going to your Conference.
I am not able to go to your Conference.
Best regards,
Shinji Mochida
ドラッカー  P74
企業の目的は顧客である。
マーケットの創出(コンピュータ、コピー機の登場でマーケットと顧客が造られた)。
イノベーション、信用供与、広告、販売活動により要求が創造された。
IBMのマーケティング
顧客はだれか、顧客にとっての価値とは、顧客はどのように買うか、顧客に必要なものはなにか
イノベーションには技術的、製品的なイノベーションと経済的イノベーションがある。
イヌイットに凍結防止のために冷蔵庫を売るのは経済的なイノベーションであり、技術的、製品的なイノベーションではない。農民が分割払いにより、高価な脳機械を手に入れ、農業生産物を低コストで大量生産することが可能になった。
利益とは目的ではなく、結果である。マーケティング、イノベーション、生産性向上の結果手にするのが利益である。
第51回 「一領具足」の実像
高知市広報「あかるいまち」2016年8月号より
浦戸城明け渡しを拒み、討ち取られた一領具足供養のために建立された六体地蔵(浦戸)
●浦戸城明け渡しを拒み、討ち取られた一領具足供養のために建立された六体地蔵(浦戸)。
  戦国時代の土佐を治めた大名・長宗我部氏の主たる兵力が、いわゆる「一領具足」である。軍記物語『土佐物語』には「死生知らずの野武士なり」と記されるなど、勇猛果敢な土佐武士の代名詞として聞いたこともあるだろう。彼らは平時、農民的な生活を送り、戦時には武装して駆け付ける半士半農の存在とされる。そして、一領具足の名称は、彼らが具足(よろい)を一領しか持っていないという質素さに由来すると考えられてきた。
 しかし近年、長宗我部氏の研究者の中でその由来が疑問視されつつある。最新の研究によると、古文書など歴史資料から一領具足の用例を網羅的に分析した結果、「具足を一領しか持たない武士」ではなく、「具足一領分の軍役を負担する武士」がその実態であるという(平井上総「一領具足考」(『花園史学』三十六号、二〇一六年))。軍役とは武士が主君に対して負う軍事上の負担である。つまり、戦が発生した際に一人分の兵力を負担する下級武士が一領具足の実像というのだ。
 具足一領分の軍役しか負担しない下級武士は、戦国の世においてどこの大名家でも一般的で、長宗我部氏特有のものではない。しかし、長宗我部氏の家臣にはそのような下級武士が他の大名家より圧倒的に多かったのは事実である。
 慶長五(一六〇〇)年の関ケ原合戦を経て、土佐の国主が山内氏になった江戸時代。三代藩主・山内忠豊が親類大名から受け取った書状には「土佐国之儀ハ余国ニ違、長曽我部代より一領具足とて余多有之儀ハ隠れもなき事候」(『山内家史料第三代忠豊公紀』一巻)とある。この事例からも、長宗我部氏の時代から一領具足が土佐に多くいたことは、他国でも有名な話であったことがうかがえる。
 戦国の世、下級武士は一般的だったが、長宗我部氏にとっては主な兵力であったことは間違いない。彼らのような名もなき武士の活躍があったからこそ、「土佐の出来人」長宗我部元親が大名として四国を席巻したということを忘れてはなるまい。
こうちミュージアムネットワーク 高知県立歴史民俗資料館 学芸員 石畑匡基(こくはたまさき)
福田先生
持田です。 
大変、ご無沙汰しております。
お元気でしょうか。
わたしは、現在、横浜のみなとみらい地区に住んでおりますので、
是非、先生にお会いしたく、思っています。
ところで、今、「3Sの起源といざかまくら」を調べており、
海外での「3S」の理解について、先生のお考えをお聞きしたいと
思っています。
「3S」と「改善」は共に日本の製造業での常識となっている言葉です。しかし、製造現場では「3S」はコストダウンの手法として使われており、「3S」の精神が間違って伝わっていないのではと感じています。私は、「3S」の精神は鎌倉武士の「いざ鎌倉」に由来するもので、「整理、整頓、清掃」とは鎌倉武士が必要な刀、槍、馬を常に整備、準備して、何時でも出撃できるような状態でいたことに由来すると私は考えています。そこで、特に海外での理解について調査したいと考えている次第です。「いざ鎌倉」と同様な考えは土佐武士の「一領具足」にもあり、同じく戦時には武装して直ぐさま、駆け付けるという精神です。
私が「3S」の精神は鎌倉武士に由来すると考える理由は、
小学生の時の社会見学にあります。見学は福岡の東公園でした。東公園には巨大な日蓮聖人の像があり、日蓮聖人がお題目を唱えて2回の元寇を退けた姿となっています。見学では、日蓮上人像の前で教員から「整理、整頓、清掃」の精神は鎌倉幕府の「いざ、鎌倉」に由来するもので、24時間いつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかる精神であり、君らは何時でも学習ができる状態になければならないと教わりました(多少脚色がありますが)。同じく、鎌倉武士に由来する「夜討ち、朝駆け」はビジネスチャンスを逃さない精神であり、「整理、整頓、清掃」と共に日本のビジネス精神の基礎をなしていると思われます。そこで、「整理、整頓、清掃」の海外での理解について先生にご教授願いたく、御願い申し上げる次第です。
余談ですが、最近は「3S」に2つの「S」を付けて「5S」として広がっているようです。しかし、2つのSは蛇足であり、全く「いざ鎌倉」の精神ではなく、何時でも働ける精神ではありません。「5S」の最後の2つの「S」は「躾」と「清潔」であり、私が食品関係の仕事をしている時には「躾」とは作業着、エプロン、マスク、帽子を付けてほこりを落としてから食品工場に入るというルールや白線を踏まないと言うルールを守ることであり、「清潔」とは手を石けんで洗い、更にアルコールで消毒すると言う、いわゆる化学的な清掃でした。実際、「清掃」と「清潔」の英語訳は同じ「Cleaning」であり区別がありません。「5S」の解説を見ると「清潔」とは職場環境の維持とあり、全くトンチンカンな理解であると思われ、「3S」の起源は「いざかまくら」であることを製造現場に示したいと思っています。そこで、是非、海外での「3S」の理解について、先生のお考えをお聞きしたいと思っています。
またまた、余談ですが、チェコの友人に「5S」の広がりを聞いた所
「5S」と「改善」はコストダウンの手法として、広がっているようです。ある企業で「5S」に基づき、始業前に準備するように従業員に指示したところ、無給の業務指示は違法であるとされたそうです。
土佐打刃物の発展
ヒット: 1 開く 保存
状況
江戸時代に日本刀の需要が激減し、刀工たちが生活のために農業用刃物への転業を余儀なくされた。
行動
土佐の鍛冶職人が堺で学んだ技術を導入し、林業・農業用の打ち刃物づくりに技術革新を行った。
結果
庶民の生活に根ざした「自由鋳造」の技術が確立され、高知県が日本を代表する包丁産地へと発展した。
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【分析:状況】
江戸時代に日本刀の需要が激減し、刀工たちが生活のために農業用刃物への転業を余儀なくされた。
【分析:行動】
土佐の鍛冶職人が堺で学んだ技術を導入し、林業・農業用の打ち刃物づくりに技術革新を行った。
【分析:結果】
庶民の生活に根ざした「自由鋳造」の技術が確立され、高知県が日本を代表する包丁産地へと発展した。
----------------------------------------
【本文】
令和7年6月28日
戦国の世に生きる武士として軍務に精進する、が、かれらは法によって規制されており、武具を整備し、武芸の修練に心がけて軍役に精励しなけれなければならなかった。このような傾向はすでに早く、天文ころ吾川郡弘岡城主であった吉良宣経(151-1550頃:室町時代)の定目にあり。すなわち、 田地二町以上耕作する百姓には武具を与が、かれらは法によって規制されており、武具を整備し、武芸の修練に心がけて軍役に精励しなけれならかった。
山本大(やまもと たけし). 長宗我部元親 その謎と生涯
山本大. 長宗我部元親 (新人物文庫) . KADOKAWA / 中経出版. Kindle 版. (新人物文庫) . KADOKAWA / 中経出版. Kindle 版. 2014 新人物往来社 2010
室町時代(1932―1573)天文年間(1532年から1555).
令和7年6月26日
鉄と鋼の違いは、主に炭素含有量によって分類されます。 刃物に使用される鋼(ハガネ)は炭素含有量が0.08〜2.0%で、それ以下の材料は鍛鉄または軟鉄と呼ばれ、柔らかく、焼き入れしても硬化しない材料です。 鋼(ハガネ)以上に炭素(C)を含む材料は銑鉄または鋳鉄で、硬く脆いので鋳物の材料などに使用されます。
正宗は、1264年(弘長4年/文永元年)、鎌倉鍛冶の名工「藤三郎行光」(とうさぶろうゆきみつ)の子として生まれました。1280年(弘安3年)に17歳で父親と別れ、「新藤五国光」(しんとうごくにみつ)の門下に入ります。ここで作刀秘術を習得。その後、山城国(現在の京都府南部)、備前国(現在の岡山県東南部)、伯耆国(現在の鳥取県中西部)など、刀の生産地を行脚して、各地の技術を研究。ついに「相州伝」(そうしゅうでん)を完成させます。相州伝の刀は、薄いながらも強度抜群の刀身が特徴であり、これは、刀の常識を一変させる革新的な鍛法でした。
正宗による相州伝の完成は、時代背景と密接に関係しています。正宗が刀工としての道を歩み始めた時期は、いわゆる「元寇[蒙古襲来]」(げんこう[もうこしゅうらい])の時期と重なっています。外国からの侵略という未曽有の事態となった日本では、これまでになく自国の防衛意識が上昇。これを受けて武を貴ぶ気風が盛り上がり、併せて刀のあり方が問われるようになったのです。
武士達が求めたのは豪壮にして実用に耐え、武運を強くしてくれる1振でした。こうした動向の中、五郎入道正宗が相州伝を完成させるのです。相州伝は硬軟の「地鉄」(じがね)を組み合わせ、「地景」(ちけい)や「金筋」(きんすじ)など刃中の働きと、「湾れ刃」(のたれば)を基調とした大模様の刃文による「沸」(にえ)の美しさを強調する作風です。これにより、刀身の強度向上はさることながら、刃文の躍動感が一気に増しました。「山城伝」(やましろでん)の「粟田口派」(あわたぐちは)による伝統を継承した、整った「直刃」(すぐは)ではなく、荒々しい波濤(はとう:大きな波)のような刃文を刀身に表現したのです。この雄渾(ゆうこん:雄大で勢いが良いこと)さが、武運長久を希求する鎌倉武士達の琴線に触れ、正宗は、一躍著名な刀工となったのです。
以後、正宗の作風は全国に影響を及ぼし、後世に言う「正宗十哲」(まさむねじってつ)が生まれます。これは、正宗の影響を強く受けた10人の刀工のこと。正宗十哲のすべてを正宗門下と認めるのは困難ですが、「沸出来」(にえでき)を強調している点は共通しています。正宗十哲によって新しい作刀技術は日本全国に拡大し、のちに「新刀」や「新々刀」(しんしんとう)が誕生する原動力となるのです。
このように、五郎入道正宗の登場により、日本における刀の歴史は大きく転換しました。このため正宗は、「日本刀中興の祖」と位置付けられています。正宗はその後、行光に学んだ相州伝の技法をもとに、さらに品質を高めた刀を作刀するために研究を重ねます。
その動機のひとつとなったのが、1274年(文永11年)と1281年(弘安4年)の2度に亘り、「元」(げん)と称する旧モンゴル帝国から軍勢が襲来した「元寇」(げんこう)です。
このとき元軍は、その当時、一騎打ちが主流であった日本とは異なる集団戦であったり、火薬を使った武器で攻撃したりするなど、それまでの日本では見ることがなかった戦法を用いていました。元寇では最終的に、鎌倉幕府軍が勝利を収めましたが、さらなる外国からの侵攻に備えて、美しいだけでなく、より強靭である実用華美な刀が求められるようになったのです。
正宗は苦心の末、「折れず、曲がらず、良く切れる」と評される刀を作刀することに成功。地刃ともに強い相州伝の伝法を完成させました。
そこで、鎌倉幕府5代執権「北条時頼」(ほうじょうときより)が、全国から刀工達を呼び寄せます。その刀工とは、建長年間(1249~1256年)に、山城国の「粟田口国綱」(あわたぐちくにつな)、及び備前国(現在の岡山県東南部)の「備前三郎国宗」(びぜんさぶろうくにむね)の2名。
五箇伝から輩出された日本刀の名工は、数多くの名刀を鍛え上げました。しかし、江戸時代になると日本刀の需要が激減。刀工達は、「打ち刃物」(うちはもの:高温に熱した軟鉄と鋼などを打って形にする製法)と呼ばれる包丁や鎌、ノコギリ、ナタなどの農業用刃物の需要を求め、地方に広がっていきます。さらに、明治時代の「廃刀令」によって、ほとんどの刀工が日本刀から業務用、及び家庭で使われる刃物づくりに転業しました。
気候に恵まれた高知県は、県民ひとりあたりの森林占有率が日本一で、全国屈指の木材の産出地。そのため、山林伐採用の打ち刃物づくりが古くから行なわれてきました。
江戸時代に入ると、森林資源の確保や新田開発の振興政策が採られ、農業や林業用の刃物への需要がますます高まり、それに伴って「土佐打刃物」のクオリティが向上。土佐には、もともと多くの鍛冶職人が存在し、堺で学んだことをもとに技術革新に取り組んだ結果、包丁づくりが飛躍的な発展を遂げたと言われています。
林業から発展した土佐打刃物は、庶民の生活に添う機能を最優先としているため、その性能と丈夫さは折紙つき。また、野鍛冶の伝統をくみ、注文に応じて様々な刃物を作る「自由鋳造」の技術も魅力で、高知県は日本を代表する包丁産地のひとつとなっているのです。
包丁の作り方
地金(鉄)に鋼(はがね)を貼り合わせる。
令和7年6月24日
横山さん 高知図書館より
長宗我部元親 その謎と生涯
山本 大(たけし)
新人物往来社P39
令和7年5月25日
オーテピア高知 横山氏
長宗我部元親 考
 1両具足は、譜代にあらず、 山内家と関係なし。
令和7年5月12日
元寇記念館調査
1986年 長崎清国水兵事件
元寇記念館の場所は千代の松原の古戦場
中国の真綿の鎧は刀や槍は通らない
鍛刀の改革 準備が必要
昔の刀は馬上から切りつけるためにそりの入った身幅の広い平肉月猪首切先長寸の太刀
真綿の鎧に通用しない
刀匠 五郎正宗 父行光 太刀作り
高度の高い皮鉄と半鍛の硬度の低い鉄
面綿の鎧は太宰府に保管
文永の役 鹿原高地激戦
令和7年5月5日
鎌倉調査
元八幡
https://www.trip-kamakura.com/place/9.html
この社は相模守であった源頼義が奥羽(東北)での戦に勝利し京に帰る途中、1063年(康平6)に鎌倉に立ち寄り、この地に源氏の守り神である石清水八幡宮の祭神を移しまつったといわれる。源氏と鎌倉とのつながりができた初めである。その後、源頼朝が現在の鶴岡八幡宮がある場所に社殿を移してから、ここは元八幡と呼ばれるようになったといわれる。
行き方
鎌倉市材木座1-7
1.JR鎌倉駅東口バス乗り場から九品寺方面行きで「元八幡」下車徒歩1分
2.JR鎌倉駅東口から徒歩15分
2.鶴岡八幡宮
JR横須賀線 JR湘南新宿ライン
「JR鎌倉駅」東口から徒歩10分
3.大倉幕府(1180-1225)
鎌倉市雪ノ下三丁目
https://www.trip-kamakura.com/place/ookurabakufu.html
4.宇都宮辻子幕府(1225-1236)
https://www.trip-kamakura.com/place/utsunomiya.html
5.若宮大路幕府(1236-1333)
https://www.trip-kamakura.com/place/wakamiya.html
6.永福寺
https://www.city.kamakura.kanagawa.jp/treasury/yohukuji_cg.html#youhukujiato-access
令和7年5月3日
始めまして、流通科学大の持田と申します。 
お教え頂きたいことがありまして、メールをお送りしています。
私は、製造業に関する講義を担当しており、
「改善」と「3S」を正しく学生に伝えたいと考えています。
「3S」とは「整理、整頓、清掃」の頭文字を取ったもので、
「改善」と共に日本の製造業での常識となっている言葉です。
しかし、製造現場では3Sは単なる合い言葉の様に使われており、
3Sの精神が伝わっていないのではと感じています。
私は、3Sの精神は鎌倉武士に由来するもので、「整理、整頓、清掃」とは
鎌倉武士が必要な刀、槍、馬を常に整備、準備して、何時でも出撃できる
ような状態でいたことに由来すると私は思っており、関連資料を探している次第です。
私がそう考える理由は、小学生の時の社会見学にあります。
見学は福岡の東公園で、日蓮上人像の前で教員から
「整理、整頓、清掃」の精神は鎌倉幕府の「いざ、鎌倉」に由来する
もので、24時間いつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかる
精神である。一方、「夜討ち、朝駆け」はビジネスチャンスを逃さない
精神であり、「整理、整頓、清掃」と共に日本のビジネス精神の基礎をなしている。
と教わりました。そこで、「整理、整頓、清掃」といざ、鎌倉」に関する
資料をお持ちでしたら、ご紹介頂きたく存じます。
お忙しい所、誠にお手数ですが、本件、ご教授頂けますと幸いです。
今後とも宜しくお願いします。
令和7年5月1日
1937年 トヨタ自動車設立 
1938年(昭和13年) ジャストインタイム開始 
豊田喜一郎の「ジャスト・イン・タイム」の考え
豊田喜一郎は、1927年(昭和2年)に完成した月産能力300台の織機工場の組立ラインに、チェーンコンベアを用いた流れ作業を導入した。さらにその経験を生かして、1938年(昭和13年)に完成させたトヨタ自動車の挙母(ころも)工場(現 トヨタ自動車本社工場)でも流れ作業を導入した。その工場において「ジャスト・イン・タイム」の考えを提唱し、各工程の同期化を目指した。
https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/data/automotive_business/production/system/explanation02.html
よく使われる単語
アンドン(特定の問題をフロアの監督者に警告するために使用される大きな照明付きボード。英語:Signboard)
着々(英語:Load-Load)
現場(英語:On site)
現地現物(英語:Go and see for yourself)
反省(英語:Self-reflection)
平準化(英語: Production Smoothing)
自働化(英語:automation with human intelligence)
ジャストインタイム(英語:Just-in-Time)
改善(英語: Continuous Improvement)
カンバン(英語:Sign, Index Card)
Manufacturing supermarket
ムダ(英語:Waste)
ムラ(英語:Unevenness)
ムリ(無理)(英語:Overburden)
根回し(英語:building consensus)
大部屋(英語:Manager's meeting)
ポカヨケ(英語:fail-safing)
整備(英語:To Prepare)
整理(英語:Sort, removing whatever isn't necessary.)
整頓(英語: Tidy)
清掃(英語:Cleaning)
清潔(英語:Clean)
躾(英語:Discipline)
秋田県立金足農業高等
学校教育方針(校是)
「自主 勤労 感謝」
生活信条(金農三生活信条)
「時間厳守 挨拶励行 整理整頓」
2025/4/9
irst, the 3S method.  I have not find any notice on 3S, but there is a lot of them on 5S (Seiri, Seiton, Seiso, Seiketsu, Shitsuke). It is frequently presented as the typical  first step to introduce lean management. In my opinion, it came to Europe with Japanese companies and was applied in their affiliates here. But I heard stories about problems with their Czech employees. In one company, for example, they demanded that employees come half an hour early and get everything ready, but this caused a storm of resistance and a revolt by the unions. After all, it was against Czech law.  But there must be ways in which it is applied in Czech companies, there is a lot of talk about lean management. I think Josef used it in restructuring his department in Vimperk. Josef now works in Pasau, Germany, so I will ask him about it. But it will take some time, he is very busy and does not write often.
ジャストインタイムは豊田喜一郎が提唱
大野耐一
現場の人間を中心としたボトムアップの改善運動に依存した生産システムを作ろうと考えた。
日本の生産システムは現状に満足せず、創造的なアイデアや創造、工夫により常に変化に挑戦してより高い目標を実現しようとする。従って、変化に強く柔軟性のある生産システムである。(P52)
NHKヒューマニエンス「“整理整頓” それはヒトの本能なのか」を観て
持田 信治さま
鎌倉歴史文化交流館でございます。
「整理、整頓、清掃」が鎌倉武士の精神に由来するのではないか、とのことですが、
そうした考え方は初めて知りました。
中世の東国は自力救済の世界、かつ鎌倉の町は狭く、本拠地の所領経営もありますので、すべての武士が鎌倉に住んでいたわけではありません。
ゆえに、何かあればすぐに鎌倉に駆け付ける必要があります。これは恩賞を得るためです。
「整理、整頓、清掃」に関連する資料はわかりません。
当館は、市内の出土品を所蔵・展示する博物館であるため、関係する所蔵資料もございません。
「いざ鎌倉」に関する資料ですが、これはご存じの通り、室町時代に成立した謡曲「鉢の木」に由来することばです。
当館に「鉢の木」に関する資料はございませんが、以下謡曲の内容と参考文献をご紹介します。
「いざ鎌倉」は、主人公の佐野源左衛門常世が、宿を貸した旅僧(正体は諸国行脚中の執権北条時頼)に対して語った
「鎌倉におん大事出(い)で来(きた)るならば…一番に馳せ参じ着到に付き」を典拠とします。
したがって、「鉢の木」では何か騒動が起こったとき御家人たちがすぐに鎌倉にはせ参じる様子を描いています。
「鉢の木」からわかるのは、次の2点です。
すなわち、鎌倉では騒動が頻発したこと、また鎌倉に一大事ありと聞けば、諸国の御家人は先を争って馳せ参じ、
幕府の着到状(出席簿)に姓名を記録して恩賞を期待したということです。
このようなことは鎌倉時代特有のことで、他の時代にはあまりみられず、だからこそ、
「いざ鎌倉」という言葉は現在まで残ったと考えられます。
一大事ありと聞いて、御家人たちが鎌倉に駆けつけたという記述は、鎌倉幕府の歴史書
『吾妻鏡』に散見します。もっとも多いのは、源頼朝の時代ではなく、鎌倉中期の北条時頼の時代です。
摂家将軍を追放した上、三浦氏を滅ぼし、北条氏専制政治への道を開いた時頼の時代は、
いつ何が起こるかわからない不安定な社会状況でした。
ですので、時頼と「いざ鎌倉」には深い関わりがあり、謡曲「鉢の木」は、その史実を反映しているといえるでしょう。
以上の内容は、平泉澄『明治の源流』(時事通信社、1970年)を参考にしています。
武士たちが鎌倉に馳せ参じたときの『吾妻鏡』の記事も具体的に示されておりますので、よろしければご覧ください。
また、鎌倉武士については、石井進『鎌倉武士の実像』(平凡社、1987年)が参考になると思います。
「いざ鎌倉」の際に、武士たちが馬を走らせた鎌倉街道についても言及しています。
以上がご質問への回答となります。
よろしくお願いいたします。
....................................
鎌倉歴史文化交流館
〒248-0011 神奈川県鎌倉市扇ガ谷1-5-1
TEL:0467-73-8501 FAX:0467-73-8545
rekibun@city.kamakura.kanagawa.jp
....................................
----- Original Message -----
>> From: 持田 信治 <Shinji_Mochida@red.umds.ac.jp>
>> To: "rekibun@city.kamakura.kanagawa.jp" <rekibun@city.kamakura.kanagawa.jp>
>> Date: 2025-03-28 11:08:54
>> Subject: お教え頂きたいことがあります。 流通科学大の持田
>>
>> 鎌倉歴史文化交流館
>> ご担当様
>>
>> 始めまして、流通科学大の持田と申します。 
>> お教え頂きたいことがありまして、メールをお送りしています。
>>
>> 私は、製造業に関する講義を担当しており、
>> 「改善」と「3S」を正しく学生に伝えたいと考えています。
>> 「3S」とは「整理、整頓、清掃」の頭文字を取ったもので、
>> 「改善」と共に日本の製造業での常識となっている言葉です。
>> しかし、製造現場では3Sは単なる合い言葉の様に使われており、
>> 3Sの精神が伝わっていないのではと感じています。
>> 私は、3Sの精神は鎌倉武士に由来するもので、「整理、整頓、清掃」とは
>> 鎌倉武士が必要な刀、槍、馬を常に整備、準備して、何時でも出撃できる
>> ような状態でいたことに由来すると私は思っており、関連資料を探している次第です。
>>
>> 私がそう考える理由は、小学生の時の社会見学にあります。
>> 見学は福岡の東公園で、日蓮上人像の前で教員から
>> 「整理、整頓、清掃」の精神は鎌倉幕府の「いざ、鎌倉」に由来する
>> もので、24時間いつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかる
>> 精神である。一方、「夜討ち、朝駆け」はビジネスチャンスを逃さない
>> 精神であり、「整理、整頓、清掃」と共に日本のビジネス精神の基礎をなしている。
>> と教わりました。そこで、「整理、整頓、清掃」といざ、鎌倉」に関する
>> 資料をお持ちでしたら、ご紹介頂きたく存じます。
>>
>> お忙しい所、誠にお手数ですが、本件、ご教授頂けますと幸いです。
>> 今後とも宜しくお願いします。
Hi Shinji,
this is it:
* Utridit -separate (in the sense necessary from unnecessary)
* Usporadat -organize (in the meaning of organizing things e.g. in order)
* Udrzovat poradek - keep clean (keep the area clean)
* Urcit pravidla -define rules/procedures
* Upevnovat a zlepsovat - strengthen (maybe maintain) and improve
Yes, Kaizen and 5U are like one thing. If I understand it well, Kaizen
is a philosophy, 5U is how to do it - to be "Kaizen"....
V.
Dear Vaclav,
Thank you for your prompt reply so much.
Please tell me, what does 5U stand for?
Are Kaizen and 5S used in pairs?
Thank you.
Shinji Mochida
Dear Shinji,
I have never heard of it, but I am not a good person to ask. So I
asked my daughter Lada who is studying economy and she knows it very
well. Just, instead of 3S she knows 5S - in Czech it is knows as 5U -
they have 5 words beginning with U letter with the similar meaning as
you wrote.
Vaclav
Dear Vaclav,
Thank you for your prompt reply.
I have a question.
Kaizen and 3S are very famous in the manufacturing industry in Japan.
3s stands for Sort, Tify, Clearning.
Have you heard the 3S and Kaizen?
I would like to know if the 3S is known in Europe.
I am researching the origin of the 3S in manufacturing.
I believe 3S was born from the behavior of the Kamakura samurai of ancient Japan.
If you know anything about the 3S in Europe, please let me know.
Thank you.
Shinji Mochida
Dear Shinji,
That's unfortunate news, but thank you for letting me know.
Hopefully, we’ll see each other in September during the Czech-Japan
seminar. I’m also trying to secure some funding.
Enjoy your visit to Izumo Taisha Shrine!
Here in the Czech Republic, we’re finally enjoying spring ? lots of
sunshine and beautiful weather after a long winter.
In the meantime, I’m busy with grant proposals ? we’re working on two,
though the chances of success are rather low. Still, hope never dies.
:-)
See you soon!
Vaclav
Dear Vaclav,
How are you. I and my wife are fine.
In early April, I will be visiting Izumo Taisha Shrine in Shimane Prefecture.
Izumo Taisha Shrine is one of the most famous shrines in Japan.
I am sorry,
I didin't get the budget for going to your Conference.
I am not able to go to your Conference.
Best regards,
Shinji Mochida
ドラッカー  P74
企業の目的は顧客である。
マーケットの創出(コンピュータ、コピー機の登場でマーケットと顧客が造られた)。
イノベーション、信用供与、広告、販売活動により要求が創造された。
IBMのマーケティング
顧客はだれか、顧客にとっての価値とは、顧客はどのように買うか、顧客に必要なものはなにか
イノベーションには技術的、製品的なイノベーションと経済的イノベーションがある。
イヌイットに凍結防止のために冷蔵庫を売るのは経済的なイノベーションであり、技術的、製品的なイノベーションではない。農民が分割払いにより、高価な脳機械を手に入れ、農業生産物を低コストで大量生産することが可能になった。
利益とは目的ではなく、結果である。マーケティング、イノベーション、生産性向上の結果手にするのが利益である。
第51回 「一領具足」の実像
高知市広報「あかるいまち」2016年8月号より
浦戸城明け渡しを拒み、討ち取られた一領具足供養のために建立された六体地蔵(浦戸)
●浦戸城明け渡しを拒み、討ち取られた一領具足供養のために建立された六体地蔵(浦戸)。
  戦国時代の土佐を治めた大名・長宗我部氏の主たる兵力が、いわゆる「一領具足」である。軍記物語『土佐物語』には「死生知らずの野武士なり」と記されるなど、勇猛果敢な土佐武士の代名詞として聞いたこともあるだろう。彼らは平時、農民的な生活を送り、戦時には武装して駆け付ける半士半農の存在とされる。そして、一領具足の名称は、彼らが具足(よろい)を一領しか持っていないという質素さに由来すると考えられてきた。
 しかし近年、長宗我部氏の研究者の中でその由来が疑問視されつつある。最新の研究によると、古文書など歴史資料から一領具足の用例を網羅的に分析した結果、「具足を一領しか持たない武士」ではなく、「具足一領分の軍役を負担する武士」がその実態であるという(平井上総「一領具足考」(『花園史学』三十六号、二〇一六年))。軍役とは武士が主君に対して負う軍事上の負担である。つまり、戦が発生した際に一人分の兵力を負担する下級武士が一領具足の実像というのだ。
 具足一領分の軍役しか負担しない下級武士は、戦国の世においてどこの大名家でも一般的で、長宗我部氏特有のものではない。しかし、長宗我部氏の家臣にはそのような下級武士が他の大名家より圧倒的に多かったのは事実である。
 慶長五(一六〇〇)年の関ケ原合戦を経て、土佐の国主が山内氏になった江戸時代。三代藩主・山内忠豊が親類大名から受け取った書状には「土佐国之儀ハ余国ニ違、長曽我部代より一領具足とて余多有之儀ハ隠れもなき事候」(『山内家史料第三代忠豊公紀』一巻)とある。この事例からも、長宗我部氏の時代から一領具足が土佐に多くいたことは、他国でも有名な話であったことがうかがえる。
 戦国の世、下級武士は一般的だったが、長宗我部氏にとっては主な兵力であったことは間違いない。彼らのような名もなき武士の活躍があったからこそ、「土佐の出来人」長宗我部元親が大名として四国を席巻したということを忘れてはなるまい。
こうちミュージアムネットワーク 高知県立歴史民俗資料館 学芸員 石畑匡基(こくはたまさき)
福田先生
持田です。 
大変、ご無沙汰しております。
お元気でしょうか。
わたしは、現在、横浜のみなとみらい地区に住んでおりますので、
是非、先生にお会いしたく、思っています。
ところで、今、「3Sの起源といざかまくら」を調べており、
海外での「3S」の理解について、先生のお考えをお聞きしたいと
思っています。
「3S」と「改善」は共に日本の製造業での常識となっている言葉です。しかし、製造現場では「3S」はコストダウンの手法として使われており、「3S」の精神が間違って伝わっていないのではと感じています。私は、「3S」の精神は鎌倉武士の「いざ鎌倉」に由来するもので、「整理、整頓、清掃」とは鎌倉武士が必要な刀、槍、馬を常に整備、準備して、何時でも出撃できるような状態でいたことに由来すると私は考えています。そこで、特に海外での理解について調査したいと考えている次第です。「いざ鎌倉」と同様な考えは土佐武士の「一領具足」にもあり、同じく戦時には武装して直ぐさま、駆け付けるという精神です。
私が「3S」の精神は鎌倉武士に由来すると考える理由は、
小学生の時の社会見学にあります。見学は福岡の東公園でした。東公園には巨大な日蓮聖人の像があり、日蓮聖人がお題目を唱えて2回の元寇を退けた姿となっています。見学では、日蓮上人像の前で教員から「整理、整頓、清掃」の精神は鎌倉幕府の「いざ、鎌倉」に由来するもので、24時間いつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかる精神であり、君らは何時でも学習ができる状態になければならないと教わりました(多少脚色がありますが)。同じく、鎌倉武士に由来する「夜討ち、朝駆け」はビジネスチャンスを逃さない精神であり、「整理、整頓、清掃」と共に日本のビジネス精神の基礎をなしていると思われます。そこで、「整理、整頓、清掃」の海外での理解について先生にご教授願いたく、御願い申し上げる次第です。
余談ですが、最近は「3S」に2つの「S」を付けて「5S」として広がっているようです。しかし、2つのSは蛇足であり、全く「いざ鎌倉」の精神ではなく、何時でも働ける精神ではありません。「5S」の最後の2つの「S」は「躾」と「清潔」であり、私が食品関係の仕事をしている時には「躾」とは作業着、エプロン、マスク、帽子を付けてほこりを落としてから食品工場に入るというルールや白線を踏まないと言うルールを守ることであり、「清潔」とは手を石けんで洗い、更にアルコールで消毒すると言う、いわゆる化学的な清掃でした。実際、「清掃」と「清潔」の英語訳は同じ「Cleaning」であり区別がありません。「5S」の解説を見ると「清潔」とは職場環境の維持とあり、全くトンチンカンな理解であると思われ、「3S」の起源は「いざかまくら」であることを製造現場に示したいと思っています。そこで、是非、海外での「3S」の理解について、先生のお考えをお聞きしたいと思っています。
またまた、余談ですが、チェコの友人に「5S」の広がりを聞いた所
「5S」と「改善」はコストダウンの手法として、広がっているようです。ある企業で「5S」に基づき、始業前に準備するように従業員に指示したところ、無給の業務指示は違法であるとされたそうです。
トヨタ自動車のジャスト・イン・タイム導入
ヒット: 1 開く 保存
状況
織機工場の組立ラインにおける流れ作業の経験を、自動車製造に応用する必要があった。
関連ルール: N-1: 工場
行動
豊田喜一郎が挙母工場にて流れ作業を導入し、各工程の同期化を目指す「ジャスト・イン・タイム」の考えを提唱した。
関連ルール: N-1: 工場
結果
生産システムにおけるムダ・ムラ・ムリを排除するトヨタ生産方式の基礎が築かれた。
関連ルール: A-34: 生産
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【分析:状況】
織機工場の組立ラインにおける流れ作業の経験を、自動車製造に応用する必要があった。
【分析:行動】
豊田喜一郎が挙母工場にて流れ作業を導入し、各工程の同期化を目指す「ジャスト・イン・タイム」の考えを提唱した。
【分析:結果】
生産システムにおけるムダ・ムラ・ムリを排除するトヨタ生産方式の基礎が築かれた。
----------------------------------------
【本文】
令和7年6月28日
戦国の世に生きる武士として軍務に精進する、が、かれらは法によって規制されており、武具を整備し、武芸の修練に心がけて軍役に精励しなけれなければならなかった。このような傾向はすでに早く、天文ころ吾川郡弘岡城主であった吉良宣経(151-1550頃:室町時代)の定目にあり。すなわち、 田地二町以上耕作する百姓には武具を与が、かれらは法によって規制されており、武具を整備し、武芸の修練に心がけて軍役に精励しなけれならかった。
山本大(やまもと たけし). 長宗我部元親 その謎と生涯
山本大. 長宗我部元親 (新人物文庫) . KADOKAWA / 中経出版. Kindle 版. (新人物文庫) . KADOKAWA / 中経出版. Kindle 版. 2014 新人物往来社 2010
室町時代(1932―1573)天文年間(1532年から1555).
令和7年6月26日
鉄と鋼の違いは、主に炭素含有量によって分類されます。 刃物に使用される鋼(ハガネ)は炭素含有量が0.08〜2.0%で、それ以下の材料は鍛鉄または軟鉄と呼ばれ、柔らかく、焼き入れしても硬化しない材料です。 鋼(ハガネ)以上に炭素(C)を含む材料は銑鉄または鋳鉄で、硬く脆いので鋳物の材料などに使用されます。
正宗は、1264年(弘長4年/文永元年)、鎌倉鍛冶の名工「藤三郎行光」(とうさぶろうゆきみつ)の子として生まれました。1280年(弘安3年)に17歳で父親と別れ、「新藤五国光」(しんとうごくにみつ)の門下に入ります。ここで作刀秘術を習得。その後、山城国(現在の京都府南部)、備前国(現在の岡山県東南部)、伯耆国(現在の鳥取県中西部)など、刀の生産地を行脚して、各地の技術を研究。ついに「相州伝」(そうしゅうでん)を完成させます。相州伝の刀は、薄いながらも強度抜群の刀身が特徴であり、これは、刀の常識を一変させる革新的な鍛法でした。
正宗による相州伝の完成は、時代背景と密接に関係しています。正宗が刀工としての道を歩み始めた時期は、いわゆる「元寇[蒙古襲来]」(げんこう[もうこしゅうらい])の時期と重なっています。外国からの侵略という未曽有の事態となった日本では、これまでになく自国の防衛意識が上昇。これを受けて武を貴ぶ気風が盛り上がり、併せて刀のあり方が問われるようになったのです。
武士達が求めたのは豪壮にして実用に耐え、武運を強くしてくれる1振でした。こうした動向の中、五郎入道正宗が相州伝を完成させるのです。相州伝は硬軟の「地鉄」(じがね)を組み合わせ、「地景」(ちけい)や「金筋」(きんすじ)など刃中の働きと、「湾れ刃」(のたれば)を基調とした大模様の刃文による「沸」(にえ)の美しさを強調する作風です。これにより、刀身の強度向上はさることながら、刃文の躍動感が一気に増しました。「山城伝」(やましろでん)の「粟田口派」(あわたぐちは)による伝統を継承した、整った「直刃」(すぐは)ではなく、荒々しい波濤(はとう:大きな波)のような刃文を刀身に表現したのです。この雄渾(ゆうこん:雄大で勢いが良いこと)さが、武運長久を希求する鎌倉武士達の琴線に触れ、正宗は、一躍著名な刀工となったのです。
以後、正宗の作風は全国に影響を及ぼし、後世に言う「正宗十哲」(まさむねじってつ)が生まれます。これは、正宗の影響を強く受けた10人の刀工のこと。正宗十哲のすべてを正宗門下と認めるのは困難ですが、「沸出来」(にえでき)を強調している点は共通しています。正宗十哲によって新しい作刀技術は日本全国に拡大し、のちに「新刀」や「新々刀」(しんしんとう)が誕生する原動力となるのです。
このように、五郎入道正宗の登場により、日本における刀の歴史は大きく転換しました。このため正宗は、「日本刀中興の祖」と位置付けられています。正宗はその後、行光に学んだ相州伝の技法をもとに、さらに品質を高めた刀を作刀するために研究を重ねます。
その動機のひとつとなったのが、1274年(文永11年)と1281年(弘安4年)の2度に亘り、「元」(げん)と称する旧モンゴル帝国から軍勢が襲来した「元寇」(げんこう)です。
このとき元軍は、その当時、一騎打ちが主流であった日本とは異なる集団戦であったり、火薬を使った武器で攻撃したりするなど、それまでの日本では見ることがなかった戦法を用いていました。元寇では最終的に、鎌倉幕府軍が勝利を収めましたが、さらなる外国からの侵攻に備えて、美しいだけでなく、より強靭である実用華美な刀が求められるようになったのです。
正宗は苦心の末、「折れず、曲がらず、良く切れる」と評される刀を作刀することに成功。地刃ともに強い相州伝の伝法を完成させました。
そこで、鎌倉幕府5代執権「北条時頼」(ほうじょうときより)が、全国から刀工達を呼び寄せます。その刀工とは、建長年間(1249~1256年)に、山城国の「粟田口国綱」(あわたぐちくにつな)、及び備前国(現在の岡山県東南部)の「備前三郎国宗」(びぜんさぶろうくにむね)の2名。
五箇伝から輩出された日本刀の名工は、数多くの名刀を鍛え上げました。しかし、江戸時代になると日本刀の需要が激減。刀工達は、「打ち刃物」(うちはもの:高温に熱した軟鉄と鋼などを打って形にする製法)と呼ばれる包丁や鎌、ノコギリ、ナタなどの農業用刃物の需要を求め、地方に広がっていきます。さらに、明治時代の「廃刀令」によって、ほとんどの刀工が日本刀から業務用、及び家庭で使われる刃物づくりに転業しました。
気候に恵まれた高知県は、県民ひとりあたりの森林占有率が日本一で、全国屈指の木材の産出地。そのため、山林伐採用の打ち刃物づくりが古くから行なわれてきました。
江戸時代に入ると、森林資源の確保や新田開発の振興政策が採られ、農業や林業用の刃物への需要がますます高まり、それに伴って「土佐打刃物」のクオリティが向上。土佐には、もともと多くの鍛冶職人が存在し、堺で学んだことをもとに技術革新に取り組んだ結果、包丁づくりが飛躍的な発展を遂げたと言われています。
林業から発展した土佐打刃物は、庶民の生活に添う機能を最優先としているため、その性能と丈夫さは折紙つき。また、野鍛冶の伝統をくみ、注文に応じて様々な刃物を作る「自由鋳造」の技術も魅力で、高知県は日本を代表する包丁産地のひとつとなっているのです。
包丁の作り方
地金(鉄)に鋼(はがね)を貼り合わせる。
令和7年6月24日
横山さん 高知図書館より
長宗我部元親 その謎と生涯
山本 大(たけし)
新人物往来社P39
令和7年5月25日
オーテピア高知 横山氏
長宗我部元親 考
 1両具足は、譜代にあらず、 山内家と関係なし。
令和7年5月12日
元寇記念館調査
1986年 長崎清国水兵事件
元寇記念館の場所は千代の松原の古戦場
中国の真綿の鎧は刀や槍は通らない
鍛刀の改革 準備が必要
昔の刀は馬上から切りつけるためにそりの入った身幅の広い平肉月猪首切先長寸の太刀
真綿の鎧に通用しない
刀匠 五郎正宗 父行光 太刀作り
高度の高い皮鉄と半鍛の硬度の低い鉄
面綿の鎧は太宰府に保管
文永の役 鹿原高地激戦
令和7年5月5日
鎌倉調査
元八幡
https://www.trip-kamakura.com/place/9.html
この社は相模守であった源頼義が奥羽(東北)での戦に勝利し京に帰る途中、1063年(康平6)に鎌倉に立ち寄り、この地に源氏の守り神である石清水八幡宮の祭神を移しまつったといわれる。源氏と鎌倉とのつながりができた初めである。その後、源頼朝が現在の鶴岡八幡宮がある場所に社殿を移してから、ここは元八幡と呼ばれるようになったといわれる。
行き方
鎌倉市材木座1-7
1.JR鎌倉駅東口バス乗り場から九品寺方面行きで「元八幡」下車徒歩1分
2.JR鎌倉駅東口から徒歩15分
2.鶴岡八幡宮
JR横須賀線 JR湘南新宿ライン
「JR鎌倉駅」東口から徒歩10分
3.大倉幕府(1180-1225)
鎌倉市雪ノ下三丁目
https://www.trip-kamakura.com/place/ookurabakufu.html
4.宇都宮辻子幕府(1225-1236)
https://www.trip-kamakura.com/place/utsunomiya.html
5.若宮大路幕府(1236-1333)
https://www.trip-kamakura.com/place/wakamiya.html
6.永福寺
https://www.city.kamakura.kanagawa.jp/treasury/yohukuji_cg.html#youhukujiato-access
令和7年5月3日
始めまして、流通科学大の持田と申します。 
お教え頂きたいことがありまして、メールをお送りしています。
私は、製造業に関する講義を担当しており、
「改善」と「3S」を正しく学生に伝えたいと考えています。
「3S」とは「整理、整頓、清掃」の頭文字を取ったもので、
「改善」と共に日本の製造業での常識となっている言葉です。
しかし、製造現場では3Sは単なる合い言葉の様に使われており、
3Sの精神が伝わっていないのではと感じています。
私は、3Sの精神は鎌倉武士に由来するもので、「整理、整頓、清掃」とは
鎌倉武士が必要な刀、槍、馬を常に整備、準備して、何時でも出撃できる
ような状態でいたことに由来すると私は思っており、関連資料を探している次第です。
私がそう考える理由は、小学生の時の社会見学にあります。
見学は福岡の東公園で、日蓮上人像の前で教員から
「整理、整頓、清掃」の精神は鎌倉幕府の「いざ、鎌倉」に由来する
もので、24時間いつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかる
精神である。一方、「夜討ち、朝駆け」はビジネスチャンスを逃さない
精神であり、「整理、整頓、清掃」と共に日本のビジネス精神の基礎をなしている。
と教わりました。そこで、「整理、整頓、清掃」といざ、鎌倉」に関する
資料をお持ちでしたら、ご紹介頂きたく存じます。
お忙しい所、誠にお手数ですが、本件、ご教授頂けますと幸いです。
今後とも宜しくお願いします。
令和7年5月1日
1937年 トヨタ自動車設立 
1938年(昭和13年) ジャストインタイム開始 
豊田喜一郎の「ジャスト・イン・タイム」の考え
豊田喜一郎は、1927年(昭和2年)に完成した月産能力300台の織機工場の組立ラインに、チェーンコンベアを用いた流れ作業を導入した。さらにその経験を生かして、1938年(昭和13年)に完成させたトヨタ自動車の挙母(ころも)工場(現 トヨタ自動車本社工場)でも流れ作業を導入した。その工場において「ジャスト・イン・タイム」の考えを提唱し、各工程の同期化を目指した。
https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/data/automotive_business/production/system/explanation02.html
よく使われる単語
アンドン(特定の問題をフロアの監督者に警告するために使用される大きな照明付きボード。英語:Signboard)
着々(英語:Load-Load)
現場(英語:On site)
現地現物(英語:Go and see for yourself)
反省(英語:Self-reflection)
平準化(英語: Production Smoothing)
自働化(英語:automation with human intelligence)
ジャストインタイム(英語:Just-in-Time)
改善(英語: Continuous Improvement)
カンバン(英語:Sign, Index Card)
Manufacturing supermarket
ムダ(英語:Waste)
ムラ(英語:Unevenness)
ムリ(無理)(英語:Overburden)
根回し(英語:building consensus)
大部屋(英語:Manager's meeting)
ポカヨケ(英語:fail-safing)
整備(英語:To Prepare)
整理(英語:Sort, removing whatever isn't necessary.)
整頓(英語: Tidy)
清掃(英語:Cleaning)
清潔(英語:Clean)
躾(英語:Discipline)
秋田県立金足農業高等
学校教育方針(校是)
「自主 勤労 感謝」
生活信条(金農三生活信条)
「時間厳守 挨拶励行 整理整頓」
2025/4/9
irst, the 3S method.  I have not find any notice on 3S, but there is a lot of them on 5S (Seiri, Seiton, Seiso, Seiketsu, Shitsuke). It is frequently presented as the typical  first step to introduce lean management. In my opinion, it came to Europe with Japanese companies and was applied in their affiliates here. But I heard stories about problems with their Czech employees. In one company, for example, they demanded that employees come half an hour early and get everything ready, but this caused a storm of resistance and a revolt by the unions. After all, it was against Czech law.  But there must be ways in which it is applied in Czech companies, there is a lot of talk about lean management. I think Josef used it in restructuring his department in Vimperk. Josef now works in Pasau, Germany, so I will ask him about it. But it will take some time, he is very busy and does not write often.
ジャストインタイムは豊田喜一郎が提唱
大野耐一
現場の人間を中心としたボトムアップの改善運動に依存した生産システムを作ろうと考えた。
日本の生産システムは現状に満足せず、創造的なアイデアや創造、工夫により常に変化に挑戦してより高い目標を実現しようとする。従って、変化に強く柔軟性のある生産システムである。(P52)
NHKヒューマニエンス「“整理整頓” それはヒトの本能なのか」を観て
持田 信治さま
鎌倉歴史文化交流館でございます。
「整理、整頓、清掃」が鎌倉武士の精神に由来するのではないか、とのことですが、
そうした考え方は初めて知りました。
中世の東国は自力救済の世界、かつ鎌倉の町は狭く、本拠地の所領経営もありますので、すべての武士が鎌倉に住んでいたわけではありません。
ゆえに、何かあればすぐに鎌倉に駆け付ける必要があります。これは恩賞を得るためです。
「整理、整頓、清掃」に関連する資料はわかりません。
当館は、市内の出土品を所蔵・展示する博物館であるため、関係する所蔵資料もございません。
「いざ鎌倉」に関する資料ですが、これはご存じの通り、室町時代に成立した謡曲「鉢の木」に由来することばです。
当館に「鉢の木」に関する資料はございませんが、以下謡曲の内容と参考文献をご紹介します。
「いざ鎌倉」は、主人公の佐野源左衛門常世が、宿を貸した旅僧(正体は諸国行脚中の執権北条時頼)に対して語った
「鎌倉におん大事出(い)で来(きた)るならば…一番に馳せ参じ着到に付き」を典拠とします。
したがって、「鉢の木」では何か騒動が起こったとき御家人たちがすぐに鎌倉にはせ参じる様子を描いています。
「鉢の木」からわかるのは、次の2点です。
すなわち、鎌倉では騒動が頻発したこと、また鎌倉に一大事ありと聞けば、諸国の御家人は先を争って馳せ参じ、
幕府の着到状(出席簿)に姓名を記録して恩賞を期待したということです。
このようなことは鎌倉時代特有のことで、他の時代にはあまりみられず、だからこそ、
「いざ鎌倉」という言葉は現在まで残ったと考えられます。
一大事ありと聞いて、御家人たちが鎌倉に駆けつけたという記述は、鎌倉幕府の歴史書
『吾妻鏡』に散見します。もっとも多いのは、源頼朝の時代ではなく、鎌倉中期の北条時頼の時代です。
摂家将軍を追放した上、三浦氏を滅ぼし、北条氏専制政治への道を開いた時頼の時代は、
いつ何が起こるかわからない不安定な社会状況でした。
ですので、時頼と「いざ鎌倉」には深い関わりがあり、謡曲「鉢の木」は、その史実を反映しているといえるでしょう。
以上の内容は、平泉澄『明治の源流』(時事通信社、1970年)を参考にしています。
武士たちが鎌倉に馳せ参じたときの『吾妻鏡』の記事も具体的に示されておりますので、よろしければご覧ください。
また、鎌倉武士については、石井進『鎌倉武士の実像』(平凡社、1987年)が参考になると思います。
「いざ鎌倉」の際に、武士たちが馬を走らせた鎌倉街道についても言及しています。
以上がご質問への回答となります。
よろしくお願いいたします。
....................................
鎌倉歴史文化交流館
〒248-0011 神奈川県鎌倉市扇ガ谷1-5-1
TEL:0467-73-8501 FAX:0467-73-8545
rekibun@city.kamakura.kanagawa.jp
....................................
----- Original Message -----
>> From: 持田 信治 <Shinji_Mochida@red.umds.ac.jp>
>> To: "rekibun@city.kamakura.kanagawa.jp" <rekibun@city.kamakura.kanagawa.jp>
>> Date: 2025-03-28 11:08:54
>> Subject: お教え頂きたいことがあります。 流通科学大の持田
>>
>> 鎌倉歴史文化交流館
>> ご担当様
>>
>> 始めまして、流通科学大の持田と申します。 
>> お教え頂きたいことがありまして、メールをお送りしています。
>>
>> 私は、製造業に関する講義を担当しており、
>> 「改善」と「3S」を正しく学生に伝えたいと考えています。
>> 「3S」とは「整理、整頓、清掃」の頭文字を取ったもので、
>> 「改善」と共に日本の製造業での常識となっている言葉です。
>> しかし、製造現場では3Sは単なる合い言葉の様に使われており、
>> 3Sの精神が伝わっていないのではと感じています。
>> 私は、3Sの精神は鎌倉武士に由来するもので、「整理、整頓、清掃」とは
>> 鎌倉武士が必要な刀、槍、馬を常に整備、準備して、何時でも出撃できる
>> ような状態でいたことに由来すると私は思っており、関連資料を探している次第です。
>>
>> 私がそう考える理由は、小学生の時の社会見学にあります。
>> 見学は福岡の東公園で、日蓮上人像の前で教員から
>> 「整理、整頓、清掃」の精神は鎌倉幕府の「いざ、鎌倉」に由来する
>> もので、24時間いつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかる
>> 精神である。一方、「夜討ち、朝駆け」はビジネスチャンスを逃さない
>> 精神であり、「整理、整頓、清掃」と共に日本のビジネス精神の基礎をなしている。
>> と教わりました。そこで、「整理、整頓、清掃」といざ、鎌倉」に関する
>> 資料をお持ちでしたら、ご紹介頂きたく存じます。
>>
>> お忙しい所、誠にお手数ですが、本件、ご教授頂けますと幸いです。
>> 今後とも宜しくお願いします。
Hi Shinji,
this is it:
* Utridit -separate (in the sense necessary from unnecessary)
* Usporadat -organize (in the meaning of organizing things e.g. in order)
* Udrzovat poradek - keep clean (keep the area clean)
* Urcit pravidla -define rules/procedures
* Upevnovat a zlepsovat - strengthen (maybe maintain) and improve
Yes, Kaizen and 5U are like one thing. If I understand it well, Kaizen
is a philosophy, 5U is how to do it - to be "Kaizen"....
V.
Dear Vaclav,
Thank you for your prompt reply so much.
Please tell me, what does 5U stand for?
Are Kaizen and 5S used in pairs?
Thank you.
Shinji Mochida
Dear Shinji,
I have never heard of it, but I am not a good person to ask. So I
asked my daughter Lada who is studying economy and she knows it very
well. Just, instead of 3S she knows 5S - in Czech it is knows as 5U -
they have 5 words beginning with U letter with the similar meaning as
you wrote.
Vaclav
Dear Vaclav,
Thank you for your prompt reply.
I have a question.
Kaizen and 3S are very famous in the manufacturing industry in Japan.
3s stands for Sort, Tify, Clearning.
Have you heard the 3S and Kaizen?
I would like to know if the 3S is known in Europe.
I am researching the origin of the 3S in manufacturing.
I believe 3S was born from the behavior of the Kamakura samurai of ancient Japan.
If you know anything about the 3S in Europe, please let me know.
Thank you.
Shinji Mochida
Dear Shinji,
That's unfortunate news, but thank you for letting me know.
Hopefully, we’ll see each other in September during the Czech-Japan
seminar. I’m also trying to secure some funding.
Enjoy your visit to Izumo Taisha Shrine!
Here in the Czech Republic, we’re finally enjoying spring ? lots of
sunshine and beautiful weather after a long winter.
In the meantime, I’m busy with grant proposals ? we’re working on two,
though the chances of success are rather low. Still, hope never dies.
:-)
See you soon!
Vaclav
Dear Vaclav,
How are you. I and my wife are fine.
In early April, I will be visiting Izumo Taisha Shrine in Shimane Prefecture.
Izumo Taisha Shrine is one of the most famous shrines in Japan.
I am sorry,
I didin't get the budget for going to your Conference.
I am not able to go to your Conference.
Best regards,
Shinji Mochida
ドラッカー  P74
企業の目的は顧客である。
マーケットの創出(コンピュータ、コピー機の登場でマーケットと顧客が造られた)。
イノベーション、信用供与、広告、販売活動により要求が創造された。
IBMのマーケティング
顧客はだれか、顧客にとっての価値とは、顧客はどのように買うか、顧客に必要なものはなにか
イノベーションには技術的、製品的なイノベーションと経済的イノベーションがある。
イヌイットに凍結防止のために冷蔵庫を売るのは経済的なイノベーションであり、技術的、製品的なイノベーションではない。農民が分割払いにより、高価な脳機械を手に入れ、農業生産物を低コストで大量生産することが可能になった。
利益とは目的ではなく、結果である。マーケティング、イノベーション、生産性向上の結果手にするのが利益である。
第51回 「一領具足」の実像
高知市広報「あかるいまち」2016年8月号より
浦戸城明け渡しを拒み、討ち取られた一領具足供養のために建立された六体地蔵(浦戸)
●浦戸城明け渡しを拒み、討ち取られた一領具足供養のために建立された六体地蔵(浦戸)。
  戦国時代の土佐を治めた大名・長宗我部氏の主たる兵力が、いわゆる「一領具足」である。軍記物語『土佐物語』には「死生知らずの野武士なり」と記されるなど、勇猛果敢な土佐武士の代名詞として聞いたこともあるだろう。彼らは平時、農民的な生活を送り、戦時には武装して駆け付ける半士半農の存在とされる。そして、一領具足の名称は、彼らが具足(よろい)を一領しか持っていないという質素さに由来すると考えられてきた。
 しかし近年、長宗我部氏の研究者の中でその由来が疑問視されつつある。最新の研究によると、古文書など歴史資料から一領具足の用例を網羅的に分析した結果、「具足を一領しか持たない武士」ではなく、「具足一領分の軍役を負担する武士」がその実態であるという(平井上総「一領具足考」(『花園史学』三十六号、二〇一六年))。軍役とは武士が主君に対して負う軍事上の負担である。つまり、戦が発生した際に一人分の兵力を負担する下級武士が一領具足の実像というのだ。
 具足一領分の軍役しか負担しない下級武士は、戦国の世においてどこの大名家でも一般的で、長宗我部氏特有のものではない。しかし、長宗我部氏の家臣にはそのような下級武士が他の大名家より圧倒的に多かったのは事実である。
 慶長五(一六〇〇)年の関ケ原合戦を経て、土佐の国主が山内氏になった江戸時代。三代藩主・山内忠豊が親類大名から受け取った書状には「土佐国之儀ハ余国ニ違、長曽我部代より一領具足とて余多有之儀ハ隠れもなき事候」(『山内家史料第三代忠豊公紀』一巻)とある。この事例からも、長宗我部氏の時代から一領具足が土佐に多くいたことは、他国でも有名な話であったことがうかがえる。
 戦国の世、下級武士は一般的だったが、長宗我部氏にとっては主な兵力であったことは間違いない。彼らのような名もなき武士の活躍があったからこそ、「土佐の出来人」長宗我部元親が大名として四国を席巻したということを忘れてはなるまい。
こうちミュージアムネットワーク 高知県立歴史民俗資料館 学芸員 石畑匡基(こくはたまさき)
福田先生
持田です。 
大変、ご無沙汰しております。
お元気でしょうか。
わたしは、現在、横浜のみなとみらい地区に住んでおりますので、
是非、先生にお会いしたく、思っています。
ところで、今、「3Sの起源といざかまくら」を調べており、
海外での「3S」の理解について、先生のお考えをお聞きしたいと
思っています。
「3S」と「改善」は共に日本の製造業での常識となっている言葉です。しかし、製造現場では「3S」はコストダウンの手法として使われており、「3S」の精神が間違って伝わっていないのではと感じています。私は、「3S」の精神は鎌倉武士の「いざ鎌倉」に由来するもので、「整理、整頓、清掃」とは鎌倉武士が必要な刀、槍、馬を常に整備、準備して、何時でも出撃できるような状態でいたことに由来すると私は考えています。そこで、特に海外での理解について調査したいと考えている次第です。「いざ鎌倉」と同様な考えは土佐武士の「一領具足」にもあり、同じく戦時には武装して直ぐさま、駆け付けるという精神です。
私が「3S」の精神は鎌倉武士に由来すると考える理由は、
小学生の時の社会見学にあります。見学は福岡の東公園でした。東公園には巨大な日蓮聖人の像があり、日蓮聖人がお題目を唱えて2回の元寇を退けた姿となっています。見学では、日蓮上人像の前で教員から「整理、整頓、清掃」の精神は鎌倉幕府の「いざ、鎌倉」に由来するもので、24時間いつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかる精神であり、君らは何時でも学習ができる状態になければならないと教わりました(多少脚色がありますが)。同じく、鎌倉武士に由来する「夜討ち、朝駆け」はビジネスチャンスを逃さない精神であり、「整理、整頓、清掃」と共に日本のビジネス精神の基礎をなしていると思われます。そこで、「整理、整頓、清掃」の海外での理解について先生にご教授願いたく、御願い申し上げる次第です。
余談ですが、最近は「3S」に2つの「S」を付けて「5S」として広がっているようです。しかし、2つのSは蛇足であり、全く「いざ鎌倉」の精神ではなく、何時でも働ける精神ではありません。「5S」の最後の2つの「S」は「躾」と「清潔」であり、私が食品関係の仕事をしている時には「躾」とは作業着、エプロン、マスク、帽子を付けてほこりを落としてから食品工場に入るというルールや白線を踏まないと言うルールを守ることであり、「清潔」とは手を石けんで洗い、更にアルコールで消毒すると言う、いわゆる化学的な清掃でした。実際、「清掃」と「清潔」の英語訳は同じ「Cleaning」であり区別がありません。「5S」の解説を見ると「清潔」とは職場環境の維持とあり、全くトンチンカンな理解であると思われ、「3S」の起源は「いざかまくら」であることを製造現場に示したいと思っています。そこで、是非、海外での「3S」の理解について、先生のお考えをお聞きしたいと思っています。
またまた、余談ですが、チェコの友人に「5S」の広がりを聞いた所
「5S」と「改善」はコストダウンの手法として、広がっているようです。ある企業で「5S」に基づき、始業前に準備するように従業員に指示したところ、無給の業務指示は違法であるとされたそうです。