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患者のヒヤリハット検知
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状況
実際の治療現場での行動観察が困難なため、九州大学病院の協力を得て治療準備・対応・終了の3ステップからなる治療シナリオを作成した。
行動
認知科学の手法を用いて行動を観察し、環境監視ルールに基づいて情報をイメージ化して情報マトリクスを生成・蓄積した。
結果
患者確認や金属確認が抜けた際にルールがヒットしないことを確認し、過去のパターンとの比較によりヒヤリハットの可能性を検知できることを示した。
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詳細コンテキスト
【分析:状況】
実際の治療現場での行動観察が困難なため、九州大学病院の協力を得て治療準備・対応・終了の3ステップからなる治療シナリオを作成した。
【分析:行動】
認知科学の手法を用いて行動を観察し、環境監視ルールに基づいて情報をイメージ化して情報マトリクスを生成・蓄積した。
【分析:結果】
患者確認や金属確認が抜けた際にルールがヒットしないことを確認し、過去のパターンとの比較によりヒヤリハットの可能性を検知できることを示した。
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【本文】
1. はじめに
最近の人工知能は高度化しており利用範囲が広がっており、今後、様々な行動判断を行うAGI(Artificial General Intelligence)の登場が期待されている。AGIは予め準備された行動目標別のプログラムは無く、目的指向で動作する。AGIが多様な行動判断を行うには経験の蓄積と行動目的の理解が必要である。一方、人の行動には迷いや後悔があり、必ずしも論理的に行われている訳ではなく、論理的な行動判断を行わない人の行動をモデル化することはできない。また、人の行動判断は取得済みの経験をもとに、新たな目標達成に向けて様々な要因を考慮して行われるため、行動には経験が必要である。そこで、本研究は「人インスパイアードモデル」を提案する。「人インスパイアードモデル」は図1に示す様に人の行動を外部から観察して得た体験を暗黙知化して経験を得て、取得した経験をもとに次の新たな行動を行い、更に経験を得るという行動サイクルを持つ。暗黙知化とは取得した体験や経験を図2に示す様に構造化して新たな行動への対応可能な形式にすることである。「人インスパイアードモデル」では、経験をイメージ化してデータベースに格納する。そして、取得した経験を時系列的に配置することにより時系列的経験を得る。本研究では体験を暗黙知化して経験を得ることをイメージ化と呼び、イメージ化された経験は情報マトリクスとして記述される。情報マトリクスはXml(eXtensible Markup Language)で記述され、行動情報や環境情報その他を一括して記載する。本書では以降、暗黙知化された経験を単に経験(Tacit knowing)と呼び、暗黙知化されていない経験を体験と呼ぶ。本研究は体験を暗黙知化して経験とするメカニズムの解明を目指して「人インスパイアードモデル」の有効性を検証したので報告する。
2. 自律行動可能な人工知能実現にむけて
2.1 体験の暗黙知化
体験の暗黙知化とは図1に示す様に取得した体験を再利用可能な経験に変換することである。生成された経験は機能的構造(Functional Structure)を持ち、新たな行動目標に向けた行動発現への利用が可能である。機能的構造とはPolanvi[[1]が唱えた知識構造であり、人が暗黙の内に物事を認識する上で言葉では、表現できない基本機能を含む枠組みのことである[1]。例えば、歩行に関する経験において、人は歩行して何処かへ行くという目標のみを認識しており、身体の筋肉の動きを理解している訳ではない。歩行という機能的構造には体の動きに関する言葉では表現できない基本機能が含まれている[1][2]。例えば図2に示す様に「コンビニに行く」という行動目標がある場合に前進歩行に於いて、足の動きを認識している訳ではない、また機能的構造を持つ経験であれば、前進歩行を自転車の運転に置き換えることができる。体験が暗黙知化されて経験が形成されるメカニズムは明らかになっていない[1][2]。
図1 経験の生成と行動のサイクル 
図2 経験の機能的構造(構造化された経験)
2.2 過去の研究
人の行動選択のプロセスを模擬するシステムとして米国Xerox社が開発したMHP(Model Human Processor)が有名である[3][4]。しかし人の行動選択の基本となる経験を生成するメカニズムに関する研究はない。一方、アナロジーやアブダクションといった人の認知的・創造的な推論方法を記号処理モデルとして明らかにして推論システムの実現を目指す研究がある[5]。しかし、アナロジーやアブダクションを行うために経験の取得が前提となっているにも拘わらず、経験の記録を試みるものはない。また、知的エージェントにより、経験を記録して再現する手法の研究はあるものの[6]、経験そのものの記録を試みるものはない。著者はこれまで人の行動発現に先立つ行動動機の発現モデルに関する研究を進めて来ている[7]。人の行動の根底には主観があり主観の揺らぎにより人の行動には様子見や迷いが生じる。筆者はベイジアンネットワークを用いて、人の主観の模擬を試た[8][9][10]。以上の研究から人の行動発現にはまず、行動目標の理解が重要であることが示された。
2.3 自律行動は目的指向
自律して行動判断を行う人工知能としてロボットがある。一般的にロボットはあらかじめ想定された環境下かつ、特定な目標を達成するプログラムで動作しており、2015年実施のDARPAのロボティクス・チャレンジではロボットは予め想定された環境とシリオに沿った活動でも、目標を達することは難しいことが示された。現状のロボットでは、環境条件が変更、追加される度に行動プログラムの修正、調整が必要となり、想定外の動作環境に対応することは難しい[11]。そこで、自律的に行動判断可能な人工知能の実現には目的指向の行動判断が必である。
2.4 行動目標の理解
目的指向の行動手順の生成により効果的な行動が実現する。そこで、本研究は経験の記録にはそのときの行動目標を同時に記載する必要があると考え、経験に目標を含めて記録する経験の暗黙知化を提案する。具体的には目標を含む経験の暗黙知化は目標を含む行動状況等の情報のイメージ化により行う。イメージ化とは複数の情報を統合変換することであり、本研究では統合変換された経験は情報マトリクスとして表現される。本研究では経験の暗黙知化とはイメージ化のことである。生成された情報マトリクスは過去に取得した情報マトリクスと比較可能である。
2.5 人インスパイア-ドモデルの機能
目標に向かう行動手順は1つではなく、しかも環境情報の想定も無限に存在する。そこで、本研究は実際の行動について、環境情報と共に行動観察を行い、記録することを提案する。そこで、本研究では認知科学の手法を用いて人の行動を観察し、行動の特徴を抽出してイメージ化を行う[12]。そして、行動観察ルールにより抽出した特徴に環境情報等を加えて構造化したものを情報マトリクスと呼び(図3の⑥参照)、情報マトリクスを時系列的に配置したものを経験とする。情報マトリクスを図形化することにより過去に取得したイメージ(情報マトリクス)とのパターンマッチングによる比較や類似検索が可能となる。情報マトリクス化された経験は機能的構造を持ち、目標に従って機能を入れ替えることが可能である。
図3 人インスパイア-ドモデルの概念図
2.5 経験情報の操作と再利用
人の行動には到達すべき目標があり、人は経験に従って行動を行う。経験のないことは行動出来ない。しかし、人はマニュアルや指示書に従って行動することが出来るため、マニュアルや指示書も拡張された経験であると見なすことができ、経験とは目標と環境情報を含む、目標に向かう手順情報であると見なすことができる。更に暗黙知化により機能的構造を持つ経験は再利用性が高まる。そして複数の環境で取得された経験の追加が可能となれば、体験のない行動も可能となる。また、目的指向の行動検索が可能になれば、目的に向かう新たな行動手順の生成も期待できる。
3. 患者行動の観察
3.1 人インスパイア-ドモデル
本研究では人の行動判断を模擬するモデルとして人インスパイアードモデルを提案する。人インスパイア-ドモデルは図3に示す様に「経験取得・行動指示部」と「動作部」から構成され、「経験取得・行動指示部」は人の行動を環境情報と共に観察、記録した情報をイメージ化して格納する経験データベースを持ち、行動目標の理解を行う。「動作部」は目標に向かう行動遷移列を生成する。図2に示すシステムの主な機能は以下の通りである。
(1)認知科学の手法を用いて人の行動を観察し、行動特徴を抽出して観察情報をイメージ化して情報マトリクスを生成する入力部(図3の④)。
(2)時系列的情報マトリクスを経験情報として格納する経験データベース(図3の⑦)
(3)行動目標と外部環境に従い、行動手順を生成する行動手順生成機能を持つ動作部(図3の⑧⑨)。
3.2 試験の流れ
 本研究では図3に示す人インスパイアードモデルを試作して行動観察して得られた情報をイメージ化して情報マトリクスを生成する試験を行った。試験手順は以下の通り。
シミュレーションシナリオの作成
本研究では実際の治療現場での行動観察は困難であったため、治療に於けるシナリオデータを作成した(図3の②)。シナリオ作成に当たっては、九州大学病院のスタッフの協力を得て治療状況のヒアリングを行い、5件のヒヤリハット情報を収集した。そして、試験用の治療シナリオを作成した。ただし、各シナリオは治療準備、治療対応、治療終了段階の3ステップとした。図4に患者確認が発生したヒヤリハットのシナリオの一部を示す。シナリオデータは通常の場合とヒヤリハット発生時のストーリを作成した、各シナリオには5分間隔で環境、患者、治療装置、2人のスタッフの動作を記述している。ヒヤリハット発生時のケースでは「患者確認」と「金属確認」の操作が抜けたことにより、ヒヤリハットが生じたストーリになっている。
図4 シナリオの一部(ヒヤリハット)
(2)シミュレーションシナリオからの行動データ作成シミュレーションシナリオから環境情報、治療機情報、患者情報、スタッフA、スタッフB、環境情報と治療機の操作情報からなる観察対象の時系列的情報を生成して⑤行動観察空間に書き込む。
(3)各時系列データの環境監視ルールによる監視
時系列的に生成された観察対象のデータを環境監視ルールにて監視を行い、環境監視ルールがヒットした場合には、経験情報を作成して経験情報データベースに登録する、図5に環境観察ルールの一部を示す。環境観察ルールのヒット状況をイメージ化して情報マトリクスとして生成する。図7にイメージ化された情報マトリクスの一部を示す。生成された情報マトリクスには行動目的、ヒットしたルールNOと探索ルール中に記載されたタグ名とタグに続くオペランドに加えて、環境情報が記入されている。ただし、本試験では行動目的は手動で記入した。情報マトリクスはXml形式で記述される[13]。オペランドとは各用語の詳細情報や用語の分類情報等である。用語辞書のイメージコードはキーワードとヒヤリハットやアクシデントとの関係性を示す。例えばマイナスのイメージコードは状況が悪いことを示している。図8に用語辞書の一部を示す。
図5 環境観測ルール(治療状況観察の一部)
環境情報と動作又は機械操作量を一括してイメージ化を行い、情報マトリクスとして生成する。図6に平常時、ヒヤリハット発生時、アクシデント発生時に於ける環境観察ルールのヒット状況の比較例を示す。図6では、ヒヤリハット発生時には患者確認と金属確認の手順がなされなかったことを示している。表1からもルールのヒット数が少ない場合にはしたヒヤリハットとなる可能性が高いことが解る。
図6 監視ルールのヒット状況(平常時、ヒヤリハット発生時、アクシデント発生時)
表1 ヒットしたルール数
図7 生成された情報マトリクスの例(一部)
図8 用語辞書の例(一部)
3.3 結果
本試験では、情報マトリクス生成ルールにより、治療現場の環境監視を行った。監視のケースは平常状態、ヒヤリハット発生時、トラブル発生時とした。図6に示す様に患者確認と金属確認が行われなかったケースにおいては、通常時と比較してヒヤリハット発生の可能性がある事が示された。具体的には平常時には患者確認と金属確認のルールがヒットしているのに対して、ヒヤリハット発生時には患者確認と金属確認のルールがヒットしていない。患者確認が無い場合には患者取り違えの可能性があり、金属確認がない場合には治療計画に悪影響を与えることがある。更に平常時とアクシデント発生時の状況もパターンルール状況のパターンを比較することにより状況判断が可能となることが示された。具体的には患者声掛け、患者補助、転倒のルールがヒットした場合にはアクシデントとなる可能性高い。表1に示す通り環境監視のルールのヒット数が通常より少ない場合にはヒヤリハットはが発生する可能性があることを検知することが可能である。図6に示す監視ルールのヒット状況を過去のヒット状況とパターンマッチング比較することにより、現在の状況を判断することができ、ヒヤリハット発生の可能性が高い場合には図2の動作部から患者確認や患者声掛けの行動の発動指示が可能である。
4. 操船操作
4.1操船情報から経験情報の生成
 本試験では人インスパイアードモデルを用いて、新たな目標に向かう操船手順の生成試験を行った。本試験ではシミュレーションシナリオに基づき図9に示す船舶航行シミュレータを操作して、行動の観察を行い、航行情報を作成した(図10参照)。
4.2 船舶航行シミュレータ
船舶操縦シミュレータは、ROS2及びUnityを用いて開発したものである[14]。実験水槽や実海域での船舶の自由航走試験をコンピューター上で実施可能な枠組みで構成されており、船舶操縦運動モデルとして代表的なMMG 3DOFモデル[15]に沿って船舶が運動し、操作量である舵角とプロペラ回転数を外部コントローラーから通信して入力する。船舶操縦シミュレータはロボット開発で広く使われているROS2をプラットホームとして採用しているため、実機でもROS2を採用している場合はシミュレータ上で開発・検証した機能をそのまま実機に転用可能である。
図9 船舶シミュレータ
4.3 試験の流れ
本試験ではUnity上の船舶モデルで航行シミュレーションを行い、船舶の運動データを取得した[16]。ある目標に沿って取得したモデルの運動データは模型の経験情報となる。試験の手順は以下の通り。
(1)船舶モデルの運動データ収集
操船シナリオの作成を行い、シナリオに従い、図8に示す様にシミュレータを使用して、船舶の操船シミュレーションを行う。
(2)取得した運動能力データを情報マトリクス化してデータベースに記録する。情報マトリクスはXml形式で記述される。
(3)取得した経験情報から、新たな到達目標に向けた航行ルートを計画して、シミュレータを使用して操船の模擬を行う。
4.4 船舶の運動データ収集
操船シナリオに従い、図9に示すにシミュレータにて操船シミュレーションを行った。操船シミュレーションでは船舶モデルのプロペラ回転数:n(rps)、θ:舵角(度)を変更しながら情報記録を行った。取得した船舶モデルの航行状況を図11に示す。図10の舵角とは舵角を変更した点である。例えば図10の0->1とは舵角0からプラス方向に舵を操作したことを示す。取得した航行情報の一部を図11に示す。図11の(X、Y)はモデルの位置であり、船の位置座標は無単位である。データは3秒単位に情報を取得している。3秒とは人の行動判断のサイクル時間であり、以前の研究結果から人は3秒毎に行動判断を行うとの想定している[8][9]。例えば車の運転に於ける安全距離を時間で表すと約3秒である[17]。表2に取得した観察データから得た観察情報の一部を示す。観察情報は言語で記述され直接数字データ等とはリンクしないことにより経験の構造性を高めている。
図10航行シミュレーションの様子(船の座標と舵角)
図11 取得したデータの一部
表2 取得した観察情報(一部)
4.5情報マトリクスの生成
取得した運動能力データと環境情報を一括してイメージ化を行い、情報マトリクスに変換して経験データベースにXml形式で記録する。具体的には操船シミュレーションから図12に示す環境監視ルールを用いて運動情報の特徴を検知することにより時系列的な情報マトリクスを得て経験とする。ただし本試験では、行動目標は手動で判断している。例えば図10のオペランドの「右旋回」は右に舵が切られたことをトリガーとする行動検知ルールである。しかし本試験では「右旋回」は手動で判断している。トリガーとは行動に先立ち、観察される状況のことである。図13に直進状態に得られた情報マトリクスの一部を示す。舵角は0である。同じく図14に右旋回時に得られた情報マトリクスの一部を示す。舵角は約1.1である。環境情報としてプロペラの回転数や操作者が記載されている。
図12 船舶対する環境監視ルール(一部)
4.6 経験からの新たな航行ルートの作成
取得した運動能力から得られた経験から新たな目標到達に向けた航行ルートを計画する。経験は時系列的な情報マトリクス遷移列として表現されている。例えば、図13に示す様に直進時のプロペラ回転数と舵角量情報に加えて、右旋回時のプロペラ回転数と舵角量経験情報を組み合わせることにより、直進の後右旋回を行う航行を行う新たな行動計画の立案が可能である。本試験での新たな航行ルートは直進の後、右旋回である。
図13 取得した情報マトリクスの例(直進)
図14 取得した情報マトリクスの例(右旋回)
4.7新たな航行計画の作成
 新たな航行計画として取得した経験から直進から右旋回を行う操船計画を立てた(表3参照)。
表3 操船計画(直進から右旋回)
図15 船の動きの様子(グラフ上の数字は経過時間(秒))
表3に示す操船計画を実施した時の船の動きを図15に示す。操船計画は直進から右旋回である。ただしグラフ上の数字は秒であり、xとy座標値は無単位である。
4.8 結果
本試験ではUnity上の船舶モデルによるシミュレーションを行い、船舶の運動特性を観察して得た観測値の経験化を行った。そして取得した経験から新たな目標達成に向けた操船計画を得て、同じくシミュレータによる操船試験を行った。その結果、図15に示す様に操船計画通り、直進から右旋回の操船が可能であることが示された。今後、波高や風速のある様々な環境下での経験情報の蓄積を進めることにより、新たな操船計画の立案が可能である。
5. まとめ
本研究はAGIの実現に向けた基礎研究を行い、人の行動経験の蓄積と再利用性の可能性を示した。本研究では人の行動判断を模擬する手法として、人インスパイアードモデルを提案した。人インスパイアードモデルは人と同様に暗黙知化された経験を持つ。暗黙知化された経験は機能的構造を持っており再利用可能である。本研究では経験の暗黙知化をイメージ化と呼ぶ。イメージ化は、人の行動を行動観察ルールにより観察を行い、ヒットしたルールのパターンに環境情報を加えて情報マトリクスを生成することにより行なう。情報マトリクスを図形的に表現することにより、過去に取得したイメージ(経験)との比較が可能となる。そして情報マトリクスの時系列が時系列的経験となり、取得した時系列的経験を再利用することにより、新たな目標達成に向けた行動手順の生成が可能となる。本研究は人インスパイアードモデルを院内の患者支援と船の操船操作に適応して、その有効性を示した。具体的には患者観察からインシデントとアクシデントの発生の可能性を得て患者支援行動の発動が可能であることを示した。また、操船操作から得た時系列的経験を使用して新たな操船計画が可能であることを示した。人インスパイアードモデルが持つ行動観察ルールは1つの観測ルールファイルに一様に記述することが可能であり、多様な機械操作や人の行動観測を1つのファイルで行うことが可能であり、様々な観測ルールを連続的に蓄積することが可能である。例えば、図16には車の運転と操船操作を監視するルールが1つの観測ルールファイルに記述されている。本試験では実際の人の行動観察に代えて患者観察シナリオを使用した、あるいは操船試験ではシミュレーションデータを使用して試験を行っており、行動目的は手動で与えている。しかし今後、図3の①に示す様にカメラやマイク等による情報入力装置による環境情報の自動取得が可能になれば、環境の自動分析が可能となり、行動目標を含む多様な行動状況と環境状況の記録と取得した経験の暗黙知化が可能となる。
図16 環境観測ルール(車の運転と操船の一部)
謝辞
本研究に助言と貴重な情報を頂いた九州大学病院 医療技術部 放射線部門の福永淳一先生に感謝申し上げる。
参考文献
[1] Michael Polanyi: The tacit dimension, University of Chicago Press ,2003
[2] Michael Polanyi,高橋勇夫,暗黙知の次元,ちくま学芸文庫,2003
[3]椎塚 久雄:感性工学ハンドブック, 朝倉書店,2013.
[4]北島宗雄:消費者行動の科学,東京電機大学出版局, 2010.
[5]非公理的項論理:認知的記号推論の計算理論、船越孝太郎,人工知能学会論文誌37 巻6号 p. C-M11_1-18,2022
[6]Experience Selection in Multi-agent Deep Reinforcement Learning,Yishen Wang,Zongzhang Zhang,IEEE,2019
[7] 内部状態モデル構築と行動支援に関する研究、持田信治、学位論文、2005
[8]持田 信治:「3秒ルールインテリジェンスを用いた患者様子見の模擬」, バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 VOL 24 NO1 pp.37-46,2022
[9]持田 信治, 3秒ルールインテリジェンスを用いた人の行動選択の模擬、55-74、流通科学大学論集 経済・情報・政策編 第32巻第2号,2023
[10]藤田一弥:「見えないものをさぐる―それがベイズ」、
[11] 阿部拓磨: DDARPA・ロボティクス・チャレンジ・ファイナルA、建設機械施工 Vol.67 No.12 December 2015
[12]佐伯胖:認知科学の方法、東京大学出版会、2007
[13]高橋麻奈:やさしいXML、ソフトバンク、2022
[14] 田渕景太,満行泰河:ROS2とUnityを用いた船舶操縦シミュレータの開発,OpenCAE Symposium2023, B-04,pp1-8(2023)
[15] Yasukawa, H., and Yoshimura, Y.: Introduction of MMG standard method for ship maneuvering predictions, Journal of Marine Science and Technology, 20, 37–52, 2
[16]北村愛実:「Unityの教科書」、SBクリエイティブ、(2022)
[17]セイフティエクスプレス企業開発センター、6月号、(2008)
著者氏名(ふりがな)
現職○○大学○○学部○○科
略歴
著者氏名(ふりがな)
現職○○大学○○学部○○科
略歴

撮影前の患者確認不足による誤登録
主要項目ヒット ヒット: 6 開く 保存
状況
患者入室後、予約表を受け取りポジショニングを行った。
行動
撮影を取り止め、患者確認を行った。
関連ルール: A-14: 患者確認
結果
誤った患者名での登録を未然に防いだ。
このエピソード全体の関連ルール: A-14: 患者確認 S-1: 咳 A-19: 転倒 A-15: 金属確認
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詳細コンテキスト
【分析:状況】
患者入室後、予約表を受け取りポジショニングを行った。
【分析:行動】
撮影を取り止め、患者確認を行った。
【分析:結果】
誤った患者名での登録を未然に防いだ。
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【本文】
ヒヤリ・ハット概要
【撮影前に患者確認を行わなかったため、誤った患者名で登録しようとした】
■ヒヤリ・ハットの前状況
患者入室後、予約表を受け取り、撮影するためのポジショニングを行った
■ヒヤリ・ハットの後状況
撮影直前に装置側と予約表を確認したところ、間違っていることに気づいた
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
撮影を取り止め、患者確認を行った
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
撮影装置側にも入室した患者情報が展開されていると思っていた
■考えられる改善策
撮影するためのポジショニングを行う前に、患者が予約表と合っていることを確認し、指差し呼称で予約表と撮影装置の情報が合っていることを確認する
2.ヒヤリ・ハット概要
【MRI検査室入室前に案内担当技師が金属探知機による金属確認を行わないまま、体内金属がある患者を入室させようとした】
■ヒヤリ・ハットの前状況
患者確認後、入室の案内をした
■ヒヤリ・ハットの後状況
案内担当技師が入室直前に金属探知機による金属確認を行っていないことに撮影担当技師が気づき、確認を行うように指示した
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
金属探知機による金属確認を行った
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
患者自身によるセルフチェックシートの金属無しの欄にチェックがあり、それを鵜呑みにしてしまった
■考えられる改善策
セルフチェックシートの記載内容に関わらず、入室直前に金属探知機による金属確認を行う
3.ヒヤリ・ハット概要
【小児患者の撮影後、小児患者から目を離したスキにベットから落ちそうになった】
■ヒヤリ・ハットの前状況
小児患者の撮影後、小児患者は寝たままの状態
■ヒヤリ・ハットの後状況
撮影後の画像を確認するために、小児患者から目を離したとき、物音がしたため、小児患者の方に目を向けると、小児患者が起き上がっており、ベットから落ちそうになった
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
小児患者の側に駆け寄り、体を支えた
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
撮影するまで撮影者の言うことをしっかり聞いて行動できていたため、撮影後も動かないと思いこんでいた
■考えられる改善策
特に小児患者からは目を離さない
4.ヒヤリ・ハット概要
【造影剤を使用した撮影後に患者が体をかきはじめ、その後意識消失しそうになった
■ヒヤリ・ハットの前状況
造影剤を使用した撮影後に患者が体をかきはじめた
■ヒヤリ・ハットの後状況
造影剤を使用した撮影後に患者が体をかきはじめた場合には、造影剤によるアレルギー反応であるため、すぐに患者の状態の確認を行った際に、意識が消失しかけていた
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
患者が体をかきはじめた行動を確認したため、患者の状態の確認を行った
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
アレルギー反応
■考えられる改善策
造影剤使用時には患者の状態を常に確認する
5.ヒヤリ・ハット概要
【造影剤を使用した撮影後に患者が咳をしはじめ、その後意識消失しそうになった
■ヒヤリ・ハットの前状況
造影剤を使用した撮影後に患者がせきをしはじめた
■ヒヤリ・ハットの後状況
造影剤を使用した撮影後に患者がせきをしはじめた場合には、造影剤によるアレルギー反応であるため、すぐに患者の状態の確認を行った際に、意識が消失しかけていた
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
患者が咳をしはじめた行動を確認したため、患者の状態の確認を行った
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
アレルギー反応
■考えられる改善策
造影剤使用時には患者の状態を常に確認する
6.ヒヤリ・ハット概要
【検査後に患者が転倒しそうになった】
■ヒヤリ・ハットの前状況
検査終了後起き上がり、検査台から降り、歩き出した
■ヒヤリ・ハットの後状況
歩き出し後に、急に立ち止まり、倒れそうになった
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
患者が急に立ち止まったため、患者を支えた
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
寝た状態から立ち上がることによる起立性低血圧のため
■考えられる改善策
検査終了し起き上がった際には、すぐに立ち上がらず、ふらつきを確認する

MRI検査室入室前の金属確認漏れ
主要項目ヒット ヒット: 5 開く 保存
状況
患者確認後、入室案内を行ったが金属探知機による確認を失念した。
関連ルール: A-14: 患者確認
行動
撮影担当技師が気づき、金属探知機による確認を指示・実施した。
結果
体内金属がある患者の誤入室を防いだ。
このエピソード全体の関連ルール: A-14: 患者確認 S-1: 咳 A-19: 転倒 A-15: 金属確認
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詳細コンテキスト
【分析:状況】
患者確認後、入室案内を行ったが金属探知機による確認を失念した。
【分析:行動】
撮影担当技師が気づき、金属探知機による確認を指示・実施した。
【分析:結果】
体内金属がある患者の誤入室を防いだ。
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【本文】
ヒヤリ・ハット概要
【撮影前に患者確認を行わなかったため、誤った患者名で登録しようとした】
■ヒヤリ・ハットの前状況
患者入室後、予約表を受け取り、撮影するためのポジショニングを行った
■ヒヤリ・ハットの後状況
撮影直前に装置側と予約表を確認したところ、間違っていることに気づいた
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
撮影を取り止め、患者確認を行った
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
撮影装置側にも入室した患者情報が展開されていると思っていた
■考えられる改善策
撮影するためのポジショニングを行う前に、患者が予約表と合っていることを確認し、指差し呼称で予約表と撮影装置の情報が合っていることを確認する
2.ヒヤリ・ハット概要
【MRI検査室入室前に案内担当技師が金属探知機による金属確認を行わないまま、体内金属がある患者を入室させようとした】
■ヒヤリ・ハットの前状況
患者確認後、入室の案内をした
■ヒヤリ・ハットの後状況
案内担当技師が入室直前に金属探知機による金属確認を行っていないことに撮影担当技師が気づき、確認を行うように指示した
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
金属探知機による金属確認を行った
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
患者自身によるセルフチェックシートの金属無しの欄にチェックがあり、それを鵜呑みにしてしまった
■考えられる改善策
セルフチェックシートの記載内容に関わらず、入室直前に金属探知機による金属確認を行う
3.ヒヤリ・ハット概要
【小児患者の撮影後、小児患者から目を離したスキにベットから落ちそうになった】
■ヒヤリ・ハットの前状況
小児患者の撮影後、小児患者は寝たままの状態
■ヒヤリ・ハットの後状況
撮影後の画像を確認するために、小児患者から目を離したとき、物音がしたため、小児患者の方に目を向けると、小児患者が起き上がっており、ベットから落ちそうになった
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
小児患者の側に駆け寄り、体を支えた
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
撮影するまで撮影者の言うことをしっかり聞いて行動できていたため、撮影後も動かないと思いこんでいた
■考えられる改善策
特に小児患者からは目を離さない
4.ヒヤリ・ハット概要
【造影剤を使用した撮影後に患者が体をかきはじめ、その後意識消失しそうになった
■ヒヤリ・ハットの前状況
造影剤を使用した撮影後に患者が体をかきはじめた
■ヒヤリ・ハットの後状況
造影剤を使用した撮影後に患者が体をかきはじめた場合には、造影剤によるアレルギー反応であるため、すぐに患者の状態の確認を行った際に、意識が消失しかけていた
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
患者が体をかきはじめた行動を確認したため、患者の状態の確認を行った
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
アレルギー反応
■考えられる改善策
造影剤使用時には患者の状態を常に確認する
5.ヒヤリ・ハット概要
【造影剤を使用した撮影後に患者が咳をしはじめ、その後意識消失しそうになった
■ヒヤリ・ハットの前状況
造影剤を使用した撮影後に患者がせきをしはじめた
■ヒヤリ・ハットの後状況
造影剤を使用した撮影後に患者がせきをしはじめた場合には、造影剤によるアレルギー反応であるため、すぐに患者の状態の確認を行った際に、意識が消失しかけていた
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
患者が咳をしはじめた行動を確認したため、患者の状態の確認を行った
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
アレルギー反応
■考えられる改善策
造影剤使用時には患者の状態を常に確認する
6.ヒヤリ・ハット概要
【検査後に患者が転倒しそうになった】
■ヒヤリ・ハットの前状況
検査終了後起き上がり、検査台から降り、歩き出した
■ヒヤリ・ハットの後状況
歩き出し後に、急に立ち止まり、倒れそうになった
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
患者が急に立ち止まったため、患者を支えた
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
寝た状態から立ち上がることによる起立性低血圧のため
■考えられる改善策
検査終了し起き上がった際には、すぐに立ち上がらず、ふらつきを確認する

船舶の操船計画生成
ヒット: 8 開く 保存
状況
ROS2とUnityを用いた船舶操縦シミュレータを使用し、船舶の運動データを取得する環境を構築した。
行動
操船シミュレーションから得られた運動データと環境情報を情報マトリクス化し、時系列的な経験としてデータベースに記録した。
結果
取得した経験(直進、右旋回)を組み合わせることで、新たな目標に向けた航行ルートを計画し、シミュレータ上で実行可能であることを実証した。
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【分析:状況】
ROS2とUnityを用いた船舶操縦シミュレータを使用し、船舶の運動データを取得する環境を構築した。
【分析:行動】
操船シミュレーションから得られた運動データと環境情報を情報マトリクス化し、時系列的な経験としてデータベースに記録した。
【分析:結果】
取得した経験(直進、右旋回)を組み合わせることで、新たな目標に向けた航行ルートを計画し、シミュレータ上で実行可能であることを実証した。
----------------------------------------
【本文】
1. はじめに
最近の人工知能は高度化しており利用範囲が広がっており、今後、様々な行動判断を行うAGI(Artificial General Intelligence)の登場が期待されている。AGIは予め準備された行動目標別のプログラムは無く、目的指向で動作する。AGIが多様な行動判断を行うには経験の蓄積と行動目的の理解が必要である。一方、人の行動には迷いや後悔があり、必ずしも論理的に行われている訳ではなく、論理的な行動判断を行わない人の行動をモデル化することはできない。また、人の行動判断は取得済みの経験をもとに、新たな目標達成に向けて様々な要因を考慮して行われるため、行動には経験が必要である。そこで、本研究は「人インスパイアードモデル」を提案する。「人インスパイアードモデル」は図1に示す様に人の行動を外部から観察して得た体験を暗黙知化して経験を得て、取得した経験をもとに次の新たな行動を行い、更に経験を得るという行動サイクルを持つ。暗黙知化とは取得した体験や経験を図2に示す様に構造化して新たな行動への対応可能な形式にすることである。「人インスパイアードモデル」では、経験をイメージ化してデータベースに格納する。そして、取得した経験を時系列的に配置することにより時系列的経験を得る。本研究では体験を暗黙知化して経験を得ることをイメージ化と呼び、イメージ化された経験は情報マトリクスとして記述される。情報マトリクスはXml(eXtensible Markup Language)で記述され、行動情報や環境情報その他を一括して記載する。本書では以降、暗黙知化された経験を単に経験(Tacit knowing)と呼び、暗黙知化されていない経験を体験と呼ぶ。本研究は体験を暗黙知化して経験とするメカニズムの解明を目指して「人インスパイアードモデル」の有効性を検証したので報告する。
2. 自律行動可能な人工知能実現にむけて
2.1 体験の暗黙知化
体験の暗黙知化とは図1に示す様に取得した体験を再利用可能な経験に変換することである。生成された経験は機能的構造(Functional Structure)を持ち、新たな行動目標に向けた行動発現への利用が可能である。機能的構造とはPolanvi[[1]が唱えた知識構造であり、人が暗黙の内に物事を認識する上で言葉では、表現できない基本機能を含む枠組みのことである[1]。例えば、歩行に関する経験において、人は歩行して何処かへ行くという目標のみを認識しており、身体の筋肉の動きを理解している訳ではない。歩行という機能的構造には体の動きに関する言葉では表現できない基本機能が含まれている[1][2]。例えば図2に示す様に「コンビニに行く」という行動目標がある場合に前進歩行に於いて、足の動きを認識している訳ではない、また機能的構造を持つ経験であれば、前進歩行を自転車の運転に置き換えることができる。体験が暗黙知化されて経験が形成されるメカニズムは明らかになっていない[1][2]。
図1 経験の生成と行動のサイクル 
図2 経験の機能的構造(構造化された経験)
2.2 過去の研究
人の行動選択のプロセスを模擬するシステムとして米国Xerox社が開発したMHP(Model Human Processor)が有名である[3][4]。しかし人の行動選択の基本となる経験を生成するメカニズムに関する研究はない。一方、アナロジーやアブダクションといった人の認知的・創造的な推論方法を記号処理モデルとして明らかにして推論システムの実現を目指す研究がある[5]。しかし、アナロジーやアブダクションを行うために経験の取得が前提となっているにも拘わらず、経験の記録を試みるものはない。また、知的エージェントにより、経験を記録して再現する手法の研究はあるものの[6]、経験そのものの記録を試みるものはない。著者はこれまで人の行動発現に先立つ行動動機の発現モデルに関する研究を進めて来ている[7]。人の行動の根底には主観があり主観の揺らぎにより人の行動には様子見や迷いが生じる。筆者はベイジアンネットワークを用いて、人の主観の模擬を試た[8][9][10]。以上の研究から人の行動発現にはまず、行動目標の理解が重要であることが示された。
2.3 自律行動は目的指向
自律して行動判断を行う人工知能としてロボットがある。一般的にロボットはあらかじめ想定された環境下かつ、特定な目標を達成するプログラムで動作しており、2015年実施のDARPAのロボティクス・チャレンジではロボットは予め想定された環境とシリオに沿った活動でも、目標を達することは難しいことが示された。現状のロボットでは、環境条件が変更、追加される度に行動プログラムの修正、調整が必要となり、想定外の動作環境に対応することは難しい[11]。そこで、自律的に行動判断可能な人工知能の実現には目的指向の行動判断が必である。
2.4 行動目標の理解
目的指向の行動手順の生成により効果的な行動が実現する。そこで、本研究は経験の記録にはそのときの行動目標を同時に記載する必要があると考え、経験に目標を含めて記録する経験の暗黙知化を提案する。具体的には目標を含む経験の暗黙知化は目標を含む行動状況等の情報のイメージ化により行う。イメージ化とは複数の情報を統合変換することであり、本研究では統合変換された経験は情報マトリクスとして表現される。本研究では経験の暗黙知化とはイメージ化のことである。生成された情報マトリクスは過去に取得した情報マトリクスと比較可能である。
2.5 人インスパイア-ドモデルの機能
目標に向かう行動手順は1つではなく、しかも環境情報の想定も無限に存在する。そこで、本研究は実際の行動について、環境情報と共に行動観察を行い、記録することを提案する。そこで、本研究では認知科学の手法を用いて人の行動を観察し、行動の特徴を抽出してイメージ化を行う[12]。そして、行動観察ルールにより抽出した特徴に環境情報等を加えて構造化したものを情報マトリクスと呼び(図3の⑥参照)、情報マトリクスを時系列的に配置したものを経験とする。情報マトリクスを図形化することにより過去に取得したイメージ(情報マトリクス)とのパターンマッチングによる比較や類似検索が可能となる。情報マトリクス化された経験は機能的構造を持ち、目標に従って機能を入れ替えることが可能である。
図3 人インスパイア-ドモデルの概念図
2.5 経験情報の操作と再利用
人の行動には到達すべき目標があり、人は経験に従って行動を行う。経験のないことは行動出来ない。しかし、人はマニュアルや指示書に従って行動することが出来るため、マニュアルや指示書も拡張された経験であると見なすことができ、経験とは目標と環境情報を含む、目標に向かう手順情報であると見なすことができる。更に暗黙知化により機能的構造を持つ経験は再利用性が高まる。そして複数の環境で取得された経験の追加が可能となれば、体験のない行動も可能となる。また、目的指向の行動検索が可能になれば、目的に向かう新たな行動手順の生成も期待できる。
3. 患者行動の観察
3.1 人インスパイア-ドモデル
本研究では人の行動判断を模擬するモデルとして人インスパイアードモデルを提案する。人インスパイア-ドモデルは図3に示す様に「経験取得・行動指示部」と「動作部」から構成され、「経験取得・行動指示部」は人の行動を環境情報と共に観察、記録した情報をイメージ化して格納する経験データベースを持ち、行動目標の理解を行う。「動作部」は目標に向かう行動遷移列を生成する。図2に示すシステムの主な機能は以下の通りである。
(1)認知科学の手法を用いて人の行動を観察し、行動特徴を抽出して観察情報をイメージ化して情報マトリクスを生成する入力部(図3の④)。
(2)時系列的情報マトリクスを経験情報として格納する経験データベース(図3の⑦)
(3)行動目標と外部環境に従い、行動手順を生成する行動手順生成機能を持つ動作部(図3の⑧⑨)。
3.2 試験の流れ
 本研究では図3に示す人インスパイアードモデルを試作して行動観察して得られた情報をイメージ化して情報マトリクスを生成する試験を行った。試験手順は以下の通り。
シミュレーションシナリオの作成
本研究では実際の治療現場での行動観察は困難であったため、治療に於けるシナリオデータを作成した(図3の②)。シナリオ作成に当たっては、九州大学病院のスタッフの協力を得て治療状況のヒアリングを行い、5件のヒヤリハット情報を収集した。そして、試験用の治療シナリオを作成した。ただし、各シナリオは治療準備、治療対応、治療終了段階の3ステップとした。図4に患者確認が発生したヒヤリハットのシナリオの一部を示す。シナリオデータは通常の場合とヒヤリハット発生時のストーリを作成した、各シナリオには5分間隔で環境、患者、治療装置、2人のスタッフの動作を記述している。ヒヤリハット発生時のケースでは「患者確認」と「金属確認」の操作が抜けたことにより、ヒヤリハットが生じたストーリになっている。
図4 シナリオの一部(ヒヤリハット)
(2)シミュレーションシナリオからの行動データ作成シミュレーションシナリオから環境情報、治療機情報、患者情報、スタッフA、スタッフB、環境情報と治療機の操作情報からなる観察対象の時系列的情報を生成して⑤行動観察空間に書き込む。
(3)各時系列データの環境監視ルールによる監視
時系列的に生成された観察対象のデータを環境監視ルールにて監視を行い、環境監視ルールがヒットした場合には、経験情報を作成して経験情報データベースに登録する、図5に環境観察ルールの一部を示す。環境観察ルールのヒット状況をイメージ化して情報マトリクスとして生成する。図7にイメージ化された情報マトリクスの一部を示す。生成された情報マトリクスには行動目的、ヒットしたルールNOと探索ルール中に記載されたタグ名とタグに続くオペランドに加えて、環境情報が記入されている。ただし、本試験では行動目的は手動で記入した。情報マトリクスはXml形式で記述される[13]。オペランドとは各用語の詳細情報や用語の分類情報等である。用語辞書のイメージコードはキーワードとヒヤリハットやアクシデントとの関係性を示す。例えばマイナスのイメージコードは状況が悪いことを示している。図8に用語辞書の一部を示す。
図5 環境観測ルール(治療状況観察の一部)
環境情報と動作又は機械操作量を一括してイメージ化を行い、情報マトリクスとして生成する。図6に平常時、ヒヤリハット発生時、アクシデント発生時に於ける環境観察ルールのヒット状況の比較例を示す。図6では、ヒヤリハット発生時には患者確認と金属確認の手順がなされなかったことを示している。表1からもルールのヒット数が少ない場合にはしたヒヤリハットとなる可能性が高いことが解る。
図6 監視ルールのヒット状況(平常時、ヒヤリハット発生時、アクシデント発生時)
表1 ヒットしたルール数
図7 生成された情報マトリクスの例(一部)
図8 用語辞書の例(一部)
3.3 結果
本試験では、情報マトリクス生成ルールにより、治療現場の環境監視を行った。監視のケースは平常状態、ヒヤリハット発生時、トラブル発生時とした。図6に示す様に患者確認と金属確認が行われなかったケースにおいては、通常時と比較してヒヤリハット発生の可能性がある事が示された。具体的には平常時には患者確認と金属確認のルールがヒットしているのに対して、ヒヤリハット発生時には患者確認と金属確認のルールがヒットしていない。患者確認が無い場合には患者取り違えの可能性があり、金属確認がない場合には治療計画に悪影響を与えることがある。更に平常時とアクシデント発生時の状況もパターンルール状況のパターンを比較することにより状況判断が可能となることが示された。具体的には患者声掛け、患者補助、転倒のルールがヒットした場合にはアクシデントとなる可能性高い。表1に示す通り環境監視のルールのヒット数が通常より少ない場合にはヒヤリハットはが発生する可能性があることを検知することが可能である。図6に示す監視ルールのヒット状況を過去のヒット状況とパターンマッチング比較することにより、現在の状況を判断することができ、ヒヤリハット発生の可能性が高い場合には図2の動作部から患者確認や患者声掛けの行動の発動指示が可能である。
4. 操船操作
4.1操船情報から経験情報の生成
 本試験では人インスパイアードモデルを用いて、新たな目標に向かう操船手順の生成試験を行った。本試験ではシミュレーションシナリオに基づき図9に示す船舶航行シミュレータを操作して、行動の観察を行い、航行情報を作成した(図10参照)。
4.2 船舶航行シミュレータ
船舶操縦シミュレータは、ROS2及びUnityを用いて開発したものである[14]。実験水槽や実海域での船舶の自由航走試験をコンピューター上で実施可能な枠組みで構成されており、船舶操縦運動モデルとして代表的なMMG 3DOFモデル[15]に沿って船舶が運動し、操作量である舵角とプロペラ回転数を外部コントローラーから通信して入力する。船舶操縦シミュレータはロボット開発で広く使われているROS2をプラットホームとして採用しているため、実機でもROS2を採用している場合はシミュレータ上で開発・検証した機能をそのまま実機に転用可能である。
図9 船舶シミュレータ
4.3 試験の流れ
本試験ではUnity上の船舶モデルで航行シミュレーションを行い、船舶の運動データを取得した[16]。ある目標に沿って取得したモデルの運動データは模型の経験情報となる。試験の手順は以下の通り。
(1)船舶モデルの運動データ収集
操船シナリオの作成を行い、シナリオに従い、図8に示す様にシミュレータを使用して、船舶の操船シミュレーションを行う。
(2)取得した運動能力データを情報マトリクス化してデータベースに記録する。情報マトリクスはXml形式で記述される。
(3)取得した経験情報から、新たな到達目標に向けた航行ルートを計画して、シミュレータを使用して操船の模擬を行う。
4.4 船舶の運動データ収集
操船シナリオに従い、図9に示すにシミュレータにて操船シミュレーションを行った。操船シミュレーションでは船舶モデルのプロペラ回転数:n(rps)、θ:舵角(度)を変更しながら情報記録を行った。取得した船舶モデルの航行状況を図11に示す。図10の舵角とは舵角を変更した点である。例えば図10の0->1とは舵角0からプラス方向に舵を操作したことを示す。取得した航行情報の一部を図11に示す。図11の(X、Y)はモデルの位置であり、船の位置座標は無単位である。データは3秒単位に情報を取得している。3秒とは人の行動判断のサイクル時間であり、以前の研究結果から人は3秒毎に行動判断を行うとの想定している[8][9]。例えば車の運転に於ける安全距離を時間で表すと約3秒である[17]。表2に取得した観察データから得た観察情報の一部を示す。観察情報は言語で記述され直接数字データ等とはリンクしないことにより経験の構造性を高めている。
図10航行シミュレーションの様子(船の座標と舵角)
図11 取得したデータの一部
表2 取得した観察情報(一部)
4.5情報マトリクスの生成
取得した運動能力データと環境情報を一括してイメージ化を行い、情報マトリクスに変換して経験データベースにXml形式で記録する。具体的には操船シミュレーションから図12に示す環境監視ルールを用いて運動情報の特徴を検知することにより時系列的な情報マトリクスを得て経験とする。ただし本試験では、行動目標は手動で判断している。例えば図10のオペランドの「右旋回」は右に舵が切られたことをトリガーとする行動検知ルールである。しかし本試験では「右旋回」は手動で判断している。トリガーとは行動に先立ち、観察される状況のことである。図13に直進状態に得られた情報マトリクスの一部を示す。舵角は0である。同じく図14に右旋回時に得られた情報マトリクスの一部を示す。舵角は約1.1である。環境情報としてプロペラの回転数や操作者が記載されている。
図12 船舶対する環境監視ルール(一部)
4.6 経験からの新たな航行ルートの作成
取得した運動能力から得られた経験から新たな目標到達に向けた航行ルートを計画する。経験は時系列的な情報マトリクス遷移列として表現されている。例えば、図13に示す様に直進時のプロペラ回転数と舵角量情報に加えて、右旋回時のプロペラ回転数と舵角量経験情報を組み合わせることにより、直進の後右旋回を行う航行を行う新たな行動計画の立案が可能である。本試験での新たな航行ルートは直進の後、右旋回である。
図13 取得した情報マトリクスの例(直進)
図14 取得した情報マトリクスの例(右旋回)
4.7新たな航行計画の作成
 新たな航行計画として取得した経験から直進から右旋回を行う操船計画を立てた(表3参照)。
表3 操船計画(直進から右旋回)
図15 船の動きの様子(グラフ上の数字は経過時間(秒))
表3に示す操船計画を実施した時の船の動きを図15に示す。操船計画は直進から右旋回である。ただしグラフ上の数字は秒であり、xとy座標値は無単位である。
4.8 結果
本試験ではUnity上の船舶モデルによるシミュレーションを行い、船舶の運動特性を観察して得た観測値の経験化を行った。そして取得した経験から新たな目標達成に向けた操船計画を得て、同じくシミュレータによる操船試験を行った。その結果、図15に示す様に操船計画通り、直進から右旋回の操船が可能であることが示された。今後、波高や風速のある様々な環境下での経験情報の蓄積を進めることにより、新たな操船計画の立案が可能である。
5. まとめ
本研究はAGIの実現に向けた基礎研究を行い、人の行動経験の蓄積と再利用性の可能性を示した。本研究では人の行動判断を模擬する手法として、人インスパイアードモデルを提案した。人インスパイアードモデルは人と同様に暗黙知化された経験を持つ。暗黙知化された経験は機能的構造を持っており再利用可能である。本研究では経験の暗黙知化をイメージ化と呼ぶ。イメージ化は、人の行動を行動観察ルールにより観察を行い、ヒットしたルールのパターンに環境情報を加えて情報マトリクスを生成することにより行なう。情報マトリクスを図形的に表現することにより、過去に取得したイメージ(経験)との比較が可能となる。そして情報マトリクスの時系列が時系列的経験となり、取得した時系列的経験を再利用することにより、新たな目標達成に向けた行動手順の生成が可能となる。本研究は人インスパイアードモデルを院内の患者支援と船の操船操作に適応して、その有効性を示した。具体的には患者観察からインシデントとアクシデントの発生の可能性を得て患者支援行動の発動が可能であることを示した。また、操船操作から得た時系列的経験を使用して新たな操船計画が可能であることを示した。人インスパイアードモデルが持つ行動観察ルールは1つの観測ルールファイルに一様に記述することが可能であり、多様な機械操作や人の行動観測を1つのファイルで行うことが可能であり、様々な観測ルールを連続的に蓄積することが可能である。例えば、図16には車の運転と操船操作を監視するルールが1つの観測ルールファイルに記述されている。本試験では実際の人の行動観察に代えて患者観察シナリオを使用した、あるいは操船試験ではシミュレーションデータを使用して試験を行っており、行動目的は手動で与えている。しかし今後、図3の①に示す様にカメラやマイク等による情報入力装置による環境情報の自動取得が可能になれば、環境の自動分析が可能となり、行動目標を含む多様な行動状況と環境状況の記録と取得した経験の暗黙知化が可能となる。
図16 環境観測ルール(車の運転と操船の一部)
謝辞
本研究に助言と貴重な情報を頂いた九州大学病院 医療技術部 放射線部門の福永淳一先生に感謝申し上げる。
参考文献
[1] Michael Polanyi: The tacit dimension, University of Chicago Press ,2003
[2] Michael Polanyi,高橋勇夫,暗黙知の次元,ちくま学芸文庫,2003
[3]椎塚 久雄:感性工学ハンドブック, 朝倉書店,2013.
[4]北島宗雄:消費者行動の科学,東京電機大学出版局, 2010.
[5]非公理的項論理:認知的記号推論の計算理論、船越孝太郎,人工知能学会論文誌37 巻6号 p. C-M11_1-18,2022
[6]Experience Selection in Multi-agent Deep Reinforcement Learning,Yishen Wang,Zongzhang Zhang,IEEE,2019
[7] 内部状態モデル構築と行動支援に関する研究、持田信治、学位論文、2005
[8]持田 信治:「3秒ルールインテリジェンスを用いた患者様子見の模擬」, バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 VOL 24 NO1 pp.37-46,2022
[9]持田 信治, 3秒ルールインテリジェンスを用いた人の行動選択の模擬、55-74、流通科学大学論集 経済・情報・政策編 第32巻第2号,2023
[10]藤田一弥:「見えないものをさぐる―それがベイズ」、
[11] 阿部拓磨: DDARPA・ロボティクス・チャレンジ・ファイナルA、建設機械施工 Vol.67 No.12 December 2015
[12]佐伯胖:認知科学の方法、東京大学出版会、2007
[13]高橋麻奈:やさしいXML、ソフトバンク、2022
[14] 田渕景太,満行泰河:ROS2とUnityを用いた船舶操縦シミュレータの開発,OpenCAE Symposium2023, B-04,pp1-8(2023)
[15] Yasukawa, H., and Yoshimura, Y.: Introduction of MMG standard method for ship maneuvering predictions, Journal of Marine Science and Technology, 20, 37–52, 2
[16]北村愛実:「Unityの教科書」、SBクリエイティブ、(2022)
[17]セイフティエクスプレス企業開発センター、6月号、(2008)
著者氏名(ふりがな)
現職○○大学○○学部○○科
略歴
著者氏名(ふりがな)
現職○○大学○○学部○○科
略歴

小児患者のベッドからの転落未遂
ヒット: 3 開く 保存
状況
撮影後、小児患者から目を離して画像確認を行っていた。
行動
物音に気づき、駆け寄って体を支えた。
結果
転落事故を回避した。
このエピソード全体の関連ルール: S-1: 咳 A-19: 転倒 A-15: 金属確認 A-14: 患者確認
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【分析:状況】
撮影後、小児患者から目を離して画像確認を行っていた。
【分析:行動】
物音に気づき、駆け寄って体を支えた。
【分析:結果】
転落事故を回避した。
----------------------------------------
【本文】
ヒヤリ・ハット概要
【撮影前に患者確認を行わなかったため、誤った患者名で登録しようとした】
■ヒヤリ・ハットの前状況
患者入室後、予約表を受け取り、撮影するためのポジショニングを行った
■ヒヤリ・ハットの後状況
撮影直前に装置側と予約表を確認したところ、間違っていることに気づいた
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
撮影を取り止め、患者確認を行った
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
撮影装置側にも入室した患者情報が展開されていると思っていた
■考えられる改善策
撮影するためのポジショニングを行う前に、患者が予約表と合っていることを確認し、指差し呼称で予約表と撮影装置の情報が合っていることを確認する
2.ヒヤリ・ハット概要
【MRI検査室入室前に案内担当技師が金属探知機による金属確認を行わないまま、体内金属がある患者を入室させようとした】
■ヒヤリ・ハットの前状況
患者確認後、入室の案内をした
■ヒヤリ・ハットの後状況
案内担当技師が入室直前に金属探知機による金属確認を行っていないことに撮影担当技師が気づき、確認を行うように指示した
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
金属探知機による金属確認を行った
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
患者自身によるセルフチェックシートの金属無しの欄にチェックがあり、それを鵜呑みにしてしまった
■考えられる改善策
セルフチェックシートの記載内容に関わらず、入室直前に金属探知機による金属確認を行う
3.ヒヤリ・ハット概要
【小児患者の撮影後、小児患者から目を離したスキにベットから落ちそうになった】
■ヒヤリ・ハットの前状況
小児患者の撮影後、小児患者は寝たままの状態
■ヒヤリ・ハットの後状況
撮影後の画像を確認するために、小児患者から目を離したとき、物音がしたため、小児患者の方に目を向けると、小児患者が起き上がっており、ベットから落ちそうになった
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
小児患者の側に駆け寄り、体を支えた
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
撮影するまで撮影者の言うことをしっかり聞いて行動できていたため、撮影後も動かないと思いこんでいた
■考えられる改善策
特に小児患者からは目を離さない
4.ヒヤリ・ハット概要
【造影剤を使用した撮影後に患者が体をかきはじめ、その後意識消失しそうになった
■ヒヤリ・ハットの前状況
造影剤を使用した撮影後に患者が体をかきはじめた
■ヒヤリ・ハットの後状況
造影剤を使用した撮影後に患者が体をかきはじめた場合には、造影剤によるアレルギー反応であるため、すぐに患者の状態の確認を行った際に、意識が消失しかけていた
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
患者が体をかきはじめた行動を確認したため、患者の状態の確認を行った
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
アレルギー反応
■考えられる改善策
造影剤使用時には患者の状態を常に確認する
5.ヒヤリ・ハット概要
【造影剤を使用した撮影後に患者が咳をしはじめ、その後意識消失しそうになった
■ヒヤリ・ハットの前状況
造影剤を使用した撮影後に患者がせきをしはじめた
■ヒヤリ・ハットの後状況
造影剤を使用した撮影後に患者がせきをしはじめた場合には、造影剤によるアレルギー反応であるため、すぐに患者の状態の確認を行った際に、意識が消失しかけていた
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
患者が咳をしはじめた行動を確認したため、患者の状態の確認を行った
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
アレルギー反応
■考えられる改善策
造影剤使用時には患者の状態を常に確認する
6.ヒヤリ・ハット概要
【検査後に患者が転倒しそうになった】
■ヒヤリ・ハットの前状況
検査終了後起き上がり、検査台から降り、歩き出した
■ヒヤリ・ハットの後状況
歩き出し後に、急に立ち止まり、倒れそうになった
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
患者が急に立ち止まったため、患者を支えた
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
寝た状態から立ち上がることによる起立性低血圧のため
■考えられる改善策
検査終了し起き上がった際には、すぐに立ち上がらず、ふらつきを確認する

造影剤使用後のアレルギー反応(掻痒感)
ヒット: 3 開く 保存
状況
造影剤使用後の撮影中、患者が体をかき始めた。
行動
患者の状態を確認し、意識消失しかけていることを察知した。
結果
アレルギー反応による意識消失の兆候を早期に発見した。
このエピソード全体の関連ルール: S-1: 咳 A-19: 転倒 A-15: 金属確認 A-14: 患者確認
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【分析:状況】
造影剤使用後の撮影中、患者が体をかき始めた。
【分析:行動】
患者の状態を確認し、意識消失しかけていることを察知した。
【分析:結果】
アレルギー反応による意識消失の兆候を早期に発見した。
----------------------------------------
【本文】
ヒヤリ・ハット概要
【撮影前に患者確認を行わなかったため、誤った患者名で登録しようとした】
■ヒヤリ・ハットの前状況
患者入室後、予約表を受け取り、撮影するためのポジショニングを行った
■ヒヤリ・ハットの後状況
撮影直前に装置側と予約表を確認したところ、間違っていることに気づいた
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
撮影を取り止め、患者確認を行った
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
撮影装置側にも入室した患者情報が展開されていると思っていた
■考えられる改善策
撮影するためのポジショニングを行う前に、患者が予約表と合っていることを確認し、指差し呼称で予約表と撮影装置の情報が合っていることを確認する
2.ヒヤリ・ハット概要
【MRI検査室入室前に案内担当技師が金属探知機による金属確認を行わないまま、体内金属がある患者を入室させようとした】
■ヒヤリ・ハットの前状況
患者確認後、入室の案内をした
■ヒヤリ・ハットの後状況
案内担当技師が入室直前に金属探知機による金属確認を行っていないことに撮影担当技師が気づき、確認を行うように指示した
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
金属探知機による金属確認を行った
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
患者自身によるセルフチェックシートの金属無しの欄にチェックがあり、それを鵜呑みにしてしまった
■考えられる改善策
セルフチェックシートの記載内容に関わらず、入室直前に金属探知機による金属確認を行う
3.ヒヤリ・ハット概要
【小児患者の撮影後、小児患者から目を離したスキにベットから落ちそうになった】
■ヒヤリ・ハットの前状況
小児患者の撮影後、小児患者は寝たままの状態
■ヒヤリ・ハットの後状況
撮影後の画像を確認するために、小児患者から目を離したとき、物音がしたため、小児患者の方に目を向けると、小児患者が起き上がっており、ベットから落ちそうになった
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
小児患者の側に駆け寄り、体を支えた
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
撮影するまで撮影者の言うことをしっかり聞いて行動できていたため、撮影後も動かないと思いこんでいた
■考えられる改善策
特に小児患者からは目を離さない
4.ヒヤリ・ハット概要
【造影剤を使用した撮影後に患者が体をかきはじめ、その後意識消失しそうになった
■ヒヤリ・ハットの前状況
造影剤を使用した撮影後に患者が体をかきはじめた
■ヒヤリ・ハットの後状況
造影剤を使用した撮影後に患者が体をかきはじめた場合には、造影剤によるアレルギー反応であるため、すぐに患者の状態の確認を行った際に、意識が消失しかけていた
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
患者が体をかきはじめた行動を確認したため、患者の状態の確認を行った
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
アレルギー反応
■考えられる改善策
造影剤使用時には患者の状態を常に確認する
5.ヒヤリ・ハット概要
【造影剤を使用した撮影後に患者が咳をしはじめ、その後意識消失しそうになった
■ヒヤリ・ハットの前状況
造影剤を使用した撮影後に患者がせきをしはじめた
■ヒヤリ・ハットの後状況
造影剤を使用した撮影後に患者がせきをしはじめた場合には、造影剤によるアレルギー反応であるため、すぐに患者の状態の確認を行った際に、意識が消失しかけていた
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
患者が咳をしはじめた行動を確認したため、患者の状態の確認を行った
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
アレルギー反応
■考えられる改善策
造影剤使用時には患者の状態を常に確認する
6.ヒヤリ・ハット概要
【検査後に患者が転倒しそうになった】
■ヒヤリ・ハットの前状況
検査終了後起き上がり、検査台から降り、歩き出した
■ヒヤリ・ハットの後状況
歩き出し後に、急に立ち止まり、倒れそうになった
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
患者が急に立ち止まったため、患者を支えた
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
寝た状態から立ち上がることによる起立性低血圧のため
■考えられる改善策
検査終了し起き上がった際には、すぐに立ち上がらず、ふらつきを確認する

造影剤使用後のアレルギー反応(咳嗽)
ヒット: 3 開く 保存
状況
造影剤使用後の撮影中、患者が咳をし始めた。
関連ルール: S-1: 咳
行動
患者の状態を確認し、意識消失しかけていることを察知した。
結果
アレルギー反応による意識消失の兆候を早期に発見した。
このエピソード全体の関連ルール: S-1: 咳 A-19: 転倒 A-15: 金属確認 A-14: 患者確認
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【分析:状況】
造影剤使用後の撮影中、患者が咳をし始めた。
【分析:行動】
患者の状態を確認し、意識消失しかけていることを察知した。
【分析:結果】
アレルギー反応による意識消失の兆候を早期に発見した。
----------------------------------------
【本文】
ヒヤリ・ハット概要
【撮影前に患者確認を行わなかったため、誤った患者名で登録しようとした】
■ヒヤリ・ハットの前状況
患者入室後、予約表を受け取り、撮影するためのポジショニングを行った
■ヒヤリ・ハットの後状況
撮影直前に装置側と予約表を確認したところ、間違っていることに気づいた
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
撮影を取り止め、患者確認を行った
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
撮影装置側にも入室した患者情報が展開されていると思っていた
■考えられる改善策
撮影するためのポジショニングを行う前に、患者が予約表と合っていることを確認し、指差し呼称で予約表と撮影装置の情報が合っていることを確認する
2.ヒヤリ・ハット概要
【MRI検査室入室前に案内担当技師が金属探知機による金属確認を行わないまま、体内金属がある患者を入室させようとした】
■ヒヤリ・ハットの前状況
患者確認後、入室の案内をした
■ヒヤリ・ハットの後状況
案内担当技師が入室直前に金属探知機による金属確認を行っていないことに撮影担当技師が気づき、確認を行うように指示した
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
金属探知機による金属確認を行った
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
患者自身によるセルフチェックシートの金属無しの欄にチェックがあり、それを鵜呑みにしてしまった
■考えられる改善策
セルフチェックシートの記載内容に関わらず、入室直前に金属探知機による金属確認を行う
3.ヒヤリ・ハット概要
【小児患者の撮影後、小児患者から目を離したスキにベットから落ちそうになった】
■ヒヤリ・ハットの前状況
小児患者の撮影後、小児患者は寝たままの状態
■ヒヤリ・ハットの後状況
撮影後の画像を確認するために、小児患者から目を離したとき、物音がしたため、小児患者の方に目を向けると、小児患者が起き上がっており、ベットから落ちそうになった
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
小児患者の側に駆け寄り、体を支えた
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
撮影するまで撮影者の言うことをしっかり聞いて行動できていたため、撮影後も動かないと思いこんでいた
■考えられる改善策
特に小児患者からは目を離さない
4.ヒヤリ・ハット概要
【造影剤を使用した撮影後に患者が体をかきはじめ、その後意識消失しそうになった
■ヒヤリ・ハットの前状況
造影剤を使用した撮影後に患者が体をかきはじめた
■ヒヤリ・ハットの後状況
造影剤を使用した撮影後に患者が体をかきはじめた場合には、造影剤によるアレルギー反応であるため、すぐに患者の状態の確認を行った際に、意識が消失しかけていた
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
患者が体をかきはじめた行動を確認したため、患者の状態の確認を行った
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
アレルギー反応
■考えられる改善策
造影剤使用時には患者の状態を常に確認する
5.ヒヤリ・ハット概要
【造影剤を使用した撮影後に患者が咳をしはじめ、その後意識消失しそうになった
■ヒヤリ・ハットの前状況
造影剤を使用した撮影後に患者がせきをしはじめた
■ヒヤリ・ハットの後状況
造影剤を使用した撮影後に患者がせきをしはじめた場合には、造影剤によるアレルギー反応であるため、すぐに患者の状態の確認を行った際に、意識が消失しかけていた
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
患者が咳をしはじめた行動を確認したため、患者の状態の確認を行った
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
アレルギー反応
■考えられる改善策
造影剤使用時には患者の状態を常に確認する
6.ヒヤリ・ハット概要
【検査後に患者が転倒しそうになった】
■ヒヤリ・ハットの前状況
検査終了後起き上がり、検査台から降り、歩き出した
■ヒヤリ・ハットの後状況
歩き出し後に、急に立ち止まり、倒れそうになった
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
患者が急に立ち止まったため、患者を支えた
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
寝た状態から立ち上がることによる起立性低血圧のため
■考えられる改善策
検査終了し起き上がった際には、すぐに立ち上がらず、ふらつきを確認する

検査後の起立性低血圧による転倒未遂
ヒット: 3 開く 保存
状況
検査終了後、患者が起き上がり歩き出した。
行動
患者が急に立ち止まったため、支えた。
結果
転倒事故を回避した。
関連ルール: A-19: 転倒
このエピソード全体の関連ルール: A-19: 転倒 S-1: 咳 A-15: 金属確認 A-14: 患者確認
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【分析:状況】
検査終了後、患者が起き上がり歩き出した。
【分析:行動】
患者が急に立ち止まったため、支えた。
【分析:結果】
転倒事故を回避した。
----------------------------------------
【本文】
ヒヤリ・ハット概要
【撮影前に患者確認を行わなかったため、誤った患者名で登録しようとした】
■ヒヤリ・ハットの前状況
患者入室後、予約表を受け取り、撮影するためのポジショニングを行った
■ヒヤリ・ハットの後状況
撮影直前に装置側と予約表を確認したところ、間違っていることに気づいた
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
撮影を取り止め、患者確認を行った
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
撮影装置側にも入室した患者情報が展開されていると思っていた
■考えられる改善策
撮影するためのポジショニングを行う前に、患者が予約表と合っていることを確認し、指差し呼称で予約表と撮影装置の情報が合っていることを確認する
2.ヒヤリ・ハット概要
【MRI検査室入室前に案内担当技師が金属探知機による金属確認を行わないまま、体内金属がある患者を入室させようとした】
■ヒヤリ・ハットの前状況
患者確認後、入室の案内をした
■ヒヤリ・ハットの後状況
案内担当技師が入室直前に金属探知機による金属確認を行っていないことに撮影担当技師が気づき、確認を行うように指示した
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
金属探知機による金属確認を行った
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
患者自身によるセルフチェックシートの金属無しの欄にチェックがあり、それを鵜呑みにしてしまった
■考えられる改善策
セルフチェックシートの記載内容に関わらず、入室直前に金属探知機による金属確認を行う
3.ヒヤリ・ハット概要
【小児患者の撮影後、小児患者から目を離したスキにベットから落ちそうになった】
■ヒヤリ・ハットの前状況
小児患者の撮影後、小児患者は寝たままの状態
■ヒヤリ・ハットの後状況
撮影後の画像を確認するために、小児患者から目を離したとき、物音がしたため、小児患者の方に目を向けると、小児患者が起き上がっており、ベットから落ちそうになった
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
小児患者の側に駆け寄り、体を支えた
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
撮影するまで撮影者の言うことをしっかり聞いて行動できていたため、撮影後も動かないと思いこんでいた
■考えられる改善策
特に小児患者からは目を離さない
4.ヒヤリ・ハット概要
【造影剤を使用した撮影後に患者が体をかきはじめ、その後意識消失しそうになった
■ヒヤリ・ハットの前状況
造影剤を使用した撮影後に患者が体をかきはじめた
■ヒヤリ・ハットの後状況
造影剤を使用した撮影後に患者が体をかきはじめた場合には、造影剤によるアレルギー反応であるため、すぐに患者の状態の確認を行った際に、意識が消失しかけていた
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
患者が体をかきはじめた行動を確認したため、患者の状態の確認を行った
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
アレルギー反応
■考えられる改善策
造影剤使用時には患者の状態を常に確認する
5.ヒヤリ・ハット概要
【造影剤を使用した撮影後に患者が咳をしはじめ、その後意識消失しそうになった
■ヒヤリ・ハットの前状況
造影剤を使用した撮影後に患者がせきをしはじめた
■ヒヤリ・ハットの後状況
造影剤を使用した撮影後に患者がせきをしはじめた場合には、造影剤によるアレルギー反応であるため、すぐに患者の状態の確認を行った際に、意識が消失しかけていた
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
患者が咳をしはじめた行動を確認したため、患者の状態の確認を行った
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
アレルギー反応
■考えられる改善策
造影剤使用時には患者の状態を常に確認する
6.ヒヤリ・ハット概要
【検査後に患者が転倒しそうになった】
■ヒヤリ・ハットの前状況
検査終了後起き上がり、検査台から降り、歩き出した
■ヒヤリ・ハットの後状況
歩き出し後に、急に立ち止まり、倒れそうになった
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
患者が急に立ち止まったため、患者を支えた
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
寝た状態から立ち上がることによる起立性低血圧のため
■考えられる改善策
検査終了し起き上がった際には、すぐに立ち上がらず、ふらつきを確認する

放射線治療現場における患者様子見行動の自動化
ヒット: 2 開く 保存
状況
医療現場において、患者の安全監視や記録業務の増加によりスタッフの負担が増大し、例外的な事象への対応が熟練スタッフの判断に依存している。
行動
「3秒ルールインテリジェンス」を導入し、ベイジアンネットワークを用いて患者リスクを算出し、しきい値を超えた場合に患者への支援行動を決定するシステムを構築した。
結果
医療スタッフの判断に近いプロセスで患者支援の意思決定が可能となり、患者様子見行動の自動化と業務軽減の可能性が示された。
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【分析:状況】
医療現場において、患者の安全監視や記録業務の増加によりスタッフの負担が増大し、例外的な事象への対応が熟練スタッフの判断に依存している。
【分析:行動】
「3秒ルールインテリジェンス」を導入し、ベイジアンネットワークを用いて患者リスクを算出し、しきい値を超えた場合に患者への支援行動を決定するシステムを構築した。
【分析:結果】
医療スタッフの判断に近いプロセスで患者支援の意思決定が可能となり、患者様子見行動の自動化と業務軽減の可能性が示された。
----------------------------------------
【本文】
1. 研究目的
本研究は人を支援できるマルチモーダルAIを提案する。マルチモーダルAIは環境条件と目的に沿って自律的に意思決定のできるAIであり、経験情報に基づく判断を行う。人の経験情報は様々な属性のデータと情報から構成される。特に人の経験は目的と意思決定に伴う結果を持つ。人は過去の経験から意思決定に伴う結果を評価を行い、意思決定を行う。従って意思決定には判断、行動と結果の評価が必要である。マルチモーダルAIの実現に向けてはまず、マルチモーダルデータを扱うデータベースの実現が必要であり、マルチモーダルデータとは音声、画像、テキストと各種環境情報である。現在、多くの場面でのAI(人工知能)利用が進んでいる。しかし、多くの人工知能では意思決定の根拠を明確に示すことができず、信頼できる人工知能となっていない。そこで、意思決定の根拠を明確に示すことができる汎用人工知能(GAI: General Artificial Intelligence)の実現が求められている。しかし、人の意思決定は必ずしも論理的に行われている訳ではなく、人の意思決定は環境の変化と時間の推移に従い、ゆらいでおり、信頼できる人工知能は人の意思決定の揺らぎを理解することが求められる。そこで、本研究は3秒ルールインテリジェンスによる意思決定支援を試みた。3秒ルールインテリジェンスは現在状況を理解して、微小時間後の状況を予測して意思決定を行う人工知能であり、微小時間後の行動候補の出現確率を算出して、行動候補の出現確率を行動選択確率と定義して意思決定を行う。
本研究での微小時間とは3秒である。行動候補の出現確率の算出はベイジアンネットワークにより行う。ベイジアンネットワークは、子ノードの条件付き確率テーブルに確率値を設定することにより、親ノードが示す事象の発現確率を算出する。ベイジアンネットワークは信念ネットワークとも呼ばれ、条件付き確率テーブル上の確率値を主観的に設定することにより、人の主観を確率値として計算に反映可能である。ベイジアンネットワークでは事実が観察される度にエビデンスが設定され、確率計算が再実行されるため、確率値の初期値は曖昧でも構わない。3秒ルールインテリジェンスは環境変化に伴い、事実が観察される度に行動の選択確率の再計算を行う。そして、行動選択確率があるしきい値を越えた場合に、行動選択の意思決定を行う。本研究での意思決定とは患者への支援行動を行うか保留するかである。一方、人の意思決定の揺らぎは人の価値観の揺らぎに起因しているため、3秒ルールインテリジェンスの更なる展開は人の価値観の揺らぎのメカニズム解明につながる。そこで、本研究は3秒ルールインテリジェンスの医療分野への適応を試みた結果、3秒ルールインテリジェンスによる医療スタッフの意思決定の模擬の可能性を示した。具体的には、ベイジアンネットワークにより算出された確率値を患者リスクと見なし、患者リスクがあるしきい値を越えると、3秒ルールインテリジェンスは患者への支援行動選択の意思決定を示し、意思決定は医療スタッフの判断に近いものであった。人工知能が人の意思決定の揺らぎを理解できれば、信頼できる人工知能が実現する。
2. 患者様子見の自動化
現在、医療現場では、患者確認に於けるダブルチェックや手順の標準化が進められている[1]。しかし、例外的な事象が起きた場合の対応は人の判断に頼らざるを得ず、高度な判断できる熟練医療スタッフが求められている。加えて、医療現場では近年、安全監視と記録業務が増加しており、医療スタッフの時間的余裕が減少して、ストレスの高い職場となっている。そこで、本研究は3秒ルールインテリジェンスによる放射線治療現場に於ける患者様子見行動の自動化を目指す[2]。患者への様子見行動とは不安定な患者の事故防止のための、医療スタッフによる患者観察行動であり、様子見行動はスタッフがある一定時間、患者への対応行動を保留して、患者リスクの発現を観察する行動である。患者リスクとは患者に関する事故発現等で、患者治療の障害となる要因である。患者様子見行動は患者が治療室に移動する場合や、治療中に行われる。治療中は患者の動作が限定的であるため、人工知能が患者を観察できれば、スタッフの業務軽減が図れる。更に治療室内での患者観察を自動化できれば、スタッフは次の業務の準備作業等が可能となり業務に余裕が生まれ、安全な医療が実現する。患者様子見行動は患者を含む状況判断とスタッフの経験により行われるため、患者様子見行動の自動化には人工知能への人の経験の反映が必要である。
3. 3秒ルールインテリジェンス
3.1 人の応答速度と行動選択
3秒ルールインテリジェンスは、人と同じプロセスで意思決定を行う人工知能であり、人の脳で行われる意思決定を模擬する。人の大脳内には神経細胞(ニューロン)が約100億個あり、脳全体の神経細胞は1000億個あるとされる[3]。神経細胞は核と樹状突起と信号伝送路に当たる軸索から構成され、樹状突起は信号入力をつかさどる受容体を持つ(図 1参照)。神経細胞間の信号伝達はシナプス間隙において行われており、1つの神経細胞は数千以上のシナプスを持つとされる。シナプスとは神経細胞同士の接続部分のことであり、特定の信号がシナプス前部に積み重なるとシナプスに於いて信号伝達が行われる。シナプス間隙上の信号伝達は科学物資の量と組み合わせで表現されるため、各シナプスは高度な情報処理を行っていると考えられる。シナプスは人では10兆個あるとされ、10兆個のシナプスの結合により経験が記録され、外部刺激により状況判断と行動発現がなされる[4]-[7]。ニューロン内の伝達速度は概ね、1m/秒から100m/秒である。一方、最近のCPU(中央処理演算装置)は約100億程度のトランジスタ(7nm製造プロセスの場合)で構成され、3Ghz(1秒間に30億回の振動数)程度で動作する[8]。人の神経細胞の動作速度はCPUに比べて低速であるにも拘わらず、人が高度な行動選択できる理由は、脳は並列に状況判断を行い、微小時間後に実行可能な行動候補を用意しているからであると考えられる[9][10]。本研究では、微小時間を3秒とする。従って、慣れた行動は3秒以内に行動候補として直ちに用意されるのに対して、不慣れな行動候補は遅れて用意されるため、行動の慣れが発生する。そして優先順位が均衡する複数の行動候補が並列に用意されている状態が迷いであり、遅れて行動候補が準備され、行動選択が混乱する状態が後悔である。
図 1 神経細胞
3.2 人の行動予測と3秒ルールインテリジェンス
人は行動選択に当たって、微小時間周期で次に実行可能な行動候補を選び出して、行動選択を行っており、行動候補は過去の経験と知識から選択される[9][10]。本研究での微小時間は3秒である。そこで、3秒ルールインテリジェンスは3秒後に実行可能な行動候補を人の経験から収集することにより、人と同じプロセスによる行動選択が実現する。3秒ルールインテリジェンスは経験データベース、行動選択トリガデータベース,行動出現確率計算(ベイジアンネットワーク)から構成される(図 2参照)。3秒ルールインテリジェンスは3秒後に実行可能な行動候補の準備を行い、行動選択トリガの観察により行動選択を行う。行動選択トリガとは環境情報を心理的次元で配置したものの中で最優先位置にあるものであり、行動選択を左右する要因である[9]。心理的な重み付けをした行動選択トリガ観察は行動の概念駆動型処理を可能とする[10]。3秒ルールインテリジェンスは経験データベースから現状認識による情報を検索キーにして、3秒後に実行可能な行動候補を準備する。そして、ベイジアンネットワークにより、3秒後に実行可能な行動候補の優先順位を決定する。経験データベースは現在状況と行動実行による3秒後の状態から構成される遷移情報を持つ(図 3参照)。本研究では遷移情報をヒヤリハット報告やインシデントレポートから収集した。遷移情報は初期状況情報と3秒後の遷移情報を持ち、3秒間は人の行動選択の周期である。例えば、車両運行に於いて、人は3秒周期で、現在から3秒後までの遷移空間を構築することにより、運転操作における事故回避を行っている(図 4参照)。
図 2 3秒ルールインテリジェンスの構成
図 3 3秒間の遷移空間
図 4 運転操作における遷移空間
3.3 人の行動予測と3秒ルールインテリジェンス
人が、直ぐに行動判断ができるのは、人は微小時間後に到達可能な遷移空間を事前に構築して状況予測を行いながら、行動選択を行っているからである[11]。微小時間とは3秒である。例えば、車両運転に於いて、先行車との安全な推奨車間距は速度計の示す値から15を減じた距離である、例えば、時速60km/h の場合の推奨車間距は45mである。時速60km/hの車の速度は約17m/秒であるため、45m/17m≒3秒となり、推奨される車間距離を時間的に表すと約3秒となる[12]。一方、車両運転に於ける安全な車間距離を時間で表すと、2秒から3秒と言われており、車間距離が1.8秒を切ると人は不安を感じると言われている[13]。また、報告者のビジネスシステム開発の経験から、エンターキーを押した後のシステム応答時間が3秒以内であればシステム利用者は概ね良好な操作感を得る。しかしシステム応答時間が5秒を超えるとシステム利用者は不満を感じ、システム応答時間が10秒を超えるとシステム利用者はシステムに対する改善を要求するという状況からも、人は現時点から3秒後までの行動予測空間を構築しており、行動予測空間内で状況が進む場合には安心感を得ることができ、3秒後の状況が不確実になると不安やいらつきを感じる。従って、人は現時点から3秒後までの行動遷移空間を持って行動をしていると判断できる。
4.ベイジアンネットワークを用いた事象分析
ベイジアンネットワークとはある事象(親)と事象に関係する要因(子)との因果関係を有効グラフで表現したものであり、ベイジアンネットワークは親ノードと子ノードの因果関係を確率的な関係で表現しており、ベイジアンネットワークの親ノードは親(世界)が取りうる状況が発現する確率を表す。ベイジアンネットワークは信念ネットワークとも呼ばれ、条件付き確率テーブル上の確率値を主観的に設定することにより、人の主観を確率計算に反映できる。従って、条件付き確率テーブルに設定する確率値を主観的に設定することにより、ベイジアンネットワークは不確実な状況を表現することが可能である。そして子ノードの条件が確定することにより、親(世界)が取りうる状況の確率が計算される。子ノードの条件が確定することを、エビデンスをセットすると呼び、事実や状況が判明した場合には、子ノードにエビデンスが設定され、子ノードが親ノードに与える確率が決定する。以下にベイジアンネットワークを用いた計算例を示す。本例はプロジェクトが計画通りに終了する確率計算の例を示す。本例では条件付き確率とベイズ推定の式(1)を使用してプロジクトリスクを推定する。プロジクトリスクとは、プロジェクトが計画通りに終了しない確率、つまりプロジェクトの遅延確率である。以降、プロジェクトリスクとはプロジェクトの遅延確率であるとする。プロジェクトの遅延が発生すると費用超過や契約違反となり、費用的な損害が発生する。
A:親(世界)が取りうる状況に対する確率  
B:子供(世界を説明する条件)を示す確率
本例ではプロジェクトが計画通りに終了する確率とスタッフからのプロジェクトの進捗に関するレポートの信頼性との関係を考える、プロジェクトが​計画通りに終了する確率をA、そしてスタッフからの進捗に関するレポートの信頼性を示す確率をBとする。ここで、A=0.9、B=0.7とすると、プロジェクトが実行される世界の確率状況は図 5となる。ベイジアンネットワークはある事象が取りうる世界の確率的関係を示し、エビデンスが設定されると世界が変化する。
図 5 報告を受ける前の世界確率の図
次に機械学習システムのWeka (Waikato Environment for Knowledge Analysis) [14]を使用してプロジェクトが実行される世界の確率状況を表現した様子を図 6に示す。図 6、図 7と表 1、表 2はWeka上のProjectノードとReportノードに確率を与えている様子を示す。一般的にプロジェクトは10%程度遅延することが知られているため、表 1と図 6に示す様にプロジェクトが計画通り終わる確率は0.9に設定している。ただし、Wekaのベイジアンネットワーク表示では確率0.9は9000、そして確率0.7は6599と表示されている。
表 1 Weka上のProjectノードの条件付き確率
表 2 Weka上のReportノードの条件付き確率
図 6プロジェクトのベイジアンネットワーク表示
図 7 ProjectとReportノードの条件付き確率テーブルに確率値を与えている様子
次に、表 3と図 8はスタッフによりプロジェクトの進捗は計画通りと報告された後のプロジェクトの実行世界を示しており、Aの確率は式(2)に示す通り0.95となる。図 9はWekaで確率を計算した様子を示す。本例でのエビデンスはスタッフによるプロジェクトの進捗は計画通りとの報告である。ベイジアン推定ではエビデンスと呼ばれる状況報告が与えられることにより、確率世界が変化する。
表 3 報告を受けた後の世界確率(抹消線の世界が削除された状態)
図 8報告を受けた後の世界確率の図
(網掛けの部分の世界が消えた)
(2)
図 9 報告を受けた後のベイジアンネットワーク表示
5. 患者様子見行動と患者対応行動の発現
5.1患者リスクの評価
医療現場では、安全のために患者確認に於ける2重チェックや手順の標準化が進められている[15]。しかし、例外的な事象が起きた場合の対応は人の判断に頼らざるを得ず、熟練医療スタッフの経験に基づく対処が求められる。そこで、本研究は熟練医療スタッフに近い状況判断機能の実現を目指して、3秒ルールインテリジェンスを放射線治療現場に応用した。表 4に放射線治療における環境要因と内容を示す。環境要因は医療スタッフからのヒアリングにより取得した。本研究では、ベイジアンネットワークにより算出した患者リスクにより、状況判断を行う。本研究では患者リスクとは患者に拘わる事故発生確率と定義して、患者リスクを患者への支援の必要性とみなす。従って、患者リスクが上昇すると患者への支援必要性が上昇することとなり、患者支援の必要性があるしきい値を越えると患者への支援が必要であるとの意思決定を行う。放射線治療装置は治療を行う機械であり、今後、治療環境に関する情報の取得を機械信号として取得することが可能であり、取得情報の精度向上が期待できる。
表 4 患者を取り巻く環境要因
5.2 患者対応行動の発現
患者への様子見行動とは不安定な患者の事故防止のための、医療スタッフによる患者観察行動のことである。図 10は医療スタッフが患者リスクを観察している状況を示しており、縦軸は患者リスクを示し、横軸は時間軸である。図 10に示す、患者が安全範囲の領域にある場合には、医療スタッフは患者を観察する必要のない状況であることを示し、例えば患者が検査に行っている状態である。次に患者が様子見状態にある場合には医療スタッフが患者を観察する必要がある状況であり、例えば患者が治療室内にいる状況である。そして、患者が支援必要の領域に入った場合には、患者リスクが高い状況であり、患者への支援が必要となる。例えば患者への支援行動として、患者への声掛けや治療中断がある。様子見行動は医療スタッフが患者への対応行動を保留して患者の様子を観察する行動であり、人工知能が患者を観察できれば、医療スタッフの業務軽減が図れる。そこで、本研究は医療スタッフの患者への様子見行動の模擬を目指して、3秒ルールインテリジェンスの放射線治療への適応を試みた。ベイジアンネットワークの親ノードが示す確率値は医療スタッフ経験に基づく患者リスク値を示している。本研究では、ベイジアンネットワークにより算出された患者リスク値は3秒後の患者支援行動の必要度合いを示しており、環境要因の変化に従い、ベイジアンネットワークの再計算を実行する。ベイジアンネットワークが示す患者リスクは患者支援行動の必要度合いを示し、患者支援行動の必要度合いがあるしきい値を越えた場合には患者への支援行動が必要となる。図 11に本研究で設定したベイジアンネットワークを示す。図 11中の略称は表 4の通りであり、表 5から表 9はベイジアンネットワークの各ノードに設定した条件付き確率テーブルの値を示している。本研究において、3秒ルールインテリジェンスに与えたベイジアンネットワークの条件付き確率テーブルの設定は医療スタッフへのヒアリングに基づいていており、医療スタッフの経験値を反映している。図 11に示す通り、患者の支援が必要と支援不要の初期値は共に0.5である。そして、図 11が示す確率値の計算要領を図 12に示す。例えば、図 11のSKILのHigh値は0.4であり、計算要領は以下の通りである。
0.5(TREAT)×0.1(支援必要 High)=0.05
0.5(WATCH)×0.7(支援不要 High)=0.35
0.05+0.35=0.4 SKIL(High)
但し、図 11の同値は0.399と表示されている。
図 10 状況判断
図 11 患者リスク(RISK)算出ベイジアンネットワーク
表 5 患者支援モデルのテーブル例
親テーブル(RISK)
表 6 条件付き確率テーブル(SKIL)
表 7 条件付き確率テーブル(PAT)
表 8 条件付き確率テーブル(METH)
表 9 条件付き確率テーブル(ENV)
図 12 ベイジアンネットワークの計算例
5.3環境評価試験
 3秒ルールインテリジェンスの経験データベースは経験ルールを持ち、経験ルールはヒヤリハット情報から収集した。経験ルールは3秒間の時間的状態遷移に伴う初期状態と3秒後の後状態と発現した発生事象を持つ(図 13参照)。更に経験ルールには行動選択トリガが記述されている(表 10参照)。行動選択トリガとは環境変化を検知するための情報である。環境監視下で、行動選択トリガが検知されると該当する経験ルールが選択され、ベイジアンネットワーク中の指定された要素にエビデンスが設定される。
図 13 ヒヤリハットデータ(一部)
例えば患者の蛇行(ふらつき)が検知された場合には、患者状態が悪いことを示すエビデンスがベイジアンネットワークに設定される(図 14、図 15参照)。具体的には、患者リスク値(RISK)の初期値は図 14の通り、0.5であり、患者への支援必要性は不明であることを示している。そして患者の蛇行(ふらつき)が検知されると、患者の状態が悪いことを示すエビデンスがベイジアンネットワークに設定され、患者リスク値が0.83となり、患者への支援が必要なしきい値が0.7であるとすると、患者への支援が必要との意思決定がなされる(図 15参照)。
表 10 エビデンス設定時のトリガ情報
図 14 初期状態のRISK算出ベイジアンネットワーク
図 15 患者(PAT)が悪い(LOW)エビデンスの設定後
5.3.環境の評価の自動化
 3秒ルールインテリジェンスを用いた患者様子見行動の自動化のためにはエビデンスの自動設定が必要である。そこで本研究では図 11に示す各要素の確率値を更に計算するための表 11に示す様にベイジアンネットワークを設定した。表 11に示す様に確率算出のための要素を細分化することにより、自動的にエビデンスを設定することが可能となる。例えば、患者状態(PAT)を算出する1つの要素の患者搬送状態(Trsus)が取る、歩行か、車椅子かストレッチャーかは自動的に設定できる。
表 11 各要素に確率値を与えるベイジアンネットワークのテーブル構造
例えば、表 11中の患者の状態算出用テーブル(PAT)の確率値を算出するベイジアンネットワークを図 16に示す。そして、患者の歩行が確認されると図 17に示すベイジアンネットワークとなり、患者状態は良好(Good)であるため、患者状態(PAT)にGoodが設定される。同様に治療計画から治療内容の複雑さ(METH)は標準(Standard)であり、スタッフのスキル(SKLL)を標準(Standard)に設定すると患者リスク(RISK)を示すベイジアンネットワークは図 18となる。次に患者の蛇行(ふらつき)が検知されると図 19に示す様に患者ふらつきのエビデンスが設定される。しかし、患者状態が低(Low)と判断するしきい値を0.7とすると患者状態が低(Low)の確率値(PAT)は0.5384なので、患者リスク(RISK)算出用ベイジアンネットワークの患者状態に患者低(Low)のエビデンスは設定されない。
図 16患者の状態(PAT)算出用ベイジアンネットワーク(初期状態)
図 17 患者の状態(PAT)算出用ベイジアンネットワーク(患者の歩行確認)
図 18 患者支援度(RISK)算出用ベイジアンネットワーク
しかし、あらかじめ、図 19の患者パフォーマンスステータス(Pstus)がLowであることが認識されていれば、図 20に示す様に患者状態が低(Low)の確率値は0.8860となり、しきい値の0.7を越えるため、患者リスク(RISK)算出用ベイジアンネットワークの患者状態に患者低(Low)のエビデンスが設定され、図 21に示す様に患者リスク(RISK)は0,823となり、3秒ルールインテリジェンスは患者支援の意思決定を行う、そして3秒ルールインテリジェンスの意思決定は医療スタッフの意思決定に近いプロセスにより行われている。
図 19 患者の状態(PAT)算出用ベイジアンネットワーク(患者のふらつき確認)
図 20 患者の状態(PAT)算出用ベイジアンネットワーク(患者のふらつきとパフォーマンスステータス(Pstus)がLowを確認)
図 21 患者支援度(RISK)算出用ベイジアンネットワーク(患者状態Low)
6. 考察とまとめ
本研究は3秒ルールインテリジェンスによる患者様子見行動が可能であることを示し、患者様子見行動の自動化の可能性を示した。患者様子見行動に於ける意思決定とは医療スタッフが患者支援行動を取るか、取らないかである。本研究では患者支援行動の発現確率を患者リスクと定義して、患者リスクがあるしきい値を超えた場合に、3秒ルールインテリジェンスは患者支援行動の意思決定を行う。3秒ルールインテリジェンスは患者リスクをベイジアンネットワークにより算出する。ベイジアンネットワークでは事実が確認されるとエビデンスが設定される。そこで、3秒ルールインテリジェンスは初めに、環境監視により、行動選択トリガが検知されるとベイジアンネットワークにエビデンスを設定して、患者リスクの計算を行う。行動選択トリガとは環境情報の重要性を心理的次元で配置したものの中で最優先位置にあるものであり、行動選択を左右する要因である[9]。本研究では、行動選択トリガをヒヤリハット情報から収集しており、行動選択トリガには医療スタッフの経験に基づく心理的な重み付けが反映されている。従って、3秒ルールインテリジェンスは人の感覚に近い視点で環境監視を行うことが可能である[11]。しかし、今回は患者蛇行(ふらつき)のトリガ検知は手動で行ったため、今後、トリガの自動検知が必要である。更に、本研究は患者支援行動の必要性を時系列的な数値で示すため、行動選択の根拠が明確であり、環境の変化と意思決定の経緯を数字で記録することできる。今後、人的感覚を持つ環境評価機能が実現すれば、病棟やICUでの患者監視の自動化が可能となる。例えば、病棟スタッフは、複数の患者の状態を同時に監視して、適切な患者対応行動を行っている。そこで3秒ルールインテリジェンスによる人的感覚を持つ患者様子見機能が実現すれば、対応の緊急度を自動的に判断することが可能となり、経験の少ない医療スタッフでも対応の優先順位を即時に知ることができ、余裕のある患者対応が実現する。更に、熟練スタッフが観察している要素を、行動選択トリガデータベースに追加できれば、3秒ルールインテリジェンスは熟練スタッフに近い意思決定を行うことが可能となり、更に意思決定に至ったエビデンスを示すことができるため、意思決定の根拠を明確に示すことができ、信頼できる汎用人工知能(GAI: General Artificial Intelligence)への展開が期待できる。今後、実現が求められる汎用人工知能は判断根拠を示すことが求められており、本研究はGAI実現の可能性をも示した[16]。
謝辞
本研究はJSPS科研費 20K11983の助成を受けた。
本研究に助言と貴重な情報を頂いた広島国際大学の橘昌幸教授と九大病院の福永淳一先生に感謝申し上げる。
参考文献
[1]持田 信治,池添 律代,矢鳴 虎夫:"判断マトリクスを使用した内部状態モデル構築に関する研究",バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 6 巻 1号,10-16,(2004)
[2]持田 信治,橘 昌幸:"人の観点から見た環境評価に関する研究",BMFSA学会誌 VOL11 NO.2 PP.25‐31
[3] エリック.R・カンデル,記憶のしくみ
[4]松本元・大津展之:「神経細胞の生物学的特性」,培風館,(1992)
[5]伊藤薫:「脳と神経の細胞学」,培風館,(1975)
[6]Armand M.de Callatay,島田禎晉訳:「人間の脳と人工知能」,丸善株式会社,(1991)
[7] 小林春雄他:「神経情報生物学入門」,オーム社,(1990)
[8] 「IBMが2nm半導体プロセスの試作成功、研究トップに聞く「ムーアの法則」の将来」, 日経クロステック,2021年5月13日
[9] リンゼイ/ノーマン:「情報処理心理学入門Ⅰ(感覚と知覚]」,サイエンス社,1984
[10] リンゼイ/ノーマン:「情報処理心理学入門Ⅱ(注意と記憶]」,サイエンス社,1984
[11] 持田 信治:「3秒ルールAI実現に関する研究」,日本経営システム学会第62回全国研究発表大会講演論文集,138-139, 2019
[12]牧下寛,松永勝也:「自動車運転中の突然の危機に対する制動反応の時間」,人間工学,38巻6号 pp.324-332,2002
[13]山下昇:「車間距離より車間時間を取ろう」,セイフティエクスプレス企業開発センター,6月号,2008
[14] 藤田一弥:「見えないものをさぐる それがベイズ」,オーム社,2015
[15] 持田 信治:「3秒ルーインテリジェスを用いた患者様子見行動の模擬に向けた基礎研究」,BMFSA2020年次大会予稿集,pp.150-153,2020
[16]「人間中心のAI社会原則の草案,人間中心のAI社会原則検討会議」,内閣府,2018年12月
著者氏名(ふりがな)
現職○○大学○○学部○○科
略歴

プロジェクトリスクの推定
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状況
プロジェクトが計画通りに終了するかどうかの不確実な状況において、スタッフからの進捗報告というエビデンスが存在する。
行動
ベイジアンネットワークを用い、プロジェクトの遅延確率(リスク)を条件付き確率テーブルに基づいて計算した。
結果
スタッフからの「計画通り」という報告(エビデンス)を反映させることで、プロジェクトが計画通りに終了する確率が0.9から0.95へと更新され、状況の変化を確率的に導出できた。
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詳細コンテキスト
【分析:状況】
プロジェクトが計画通りに終了するかどうかの不確実な状況において、スタッフからの進捗報告というエビデンスが存在する。
【分析:行動】
ベイジアンネットワークを用い、プロジェクトの遅延確率(リスク)を条件付き確率テーブルに基づいて計算した。
【分析:結果】
スタッフからの「計画通り」という報告(エビデンス)を反映させることで、プロジェクトが計画通りに終了する確率が0.9から0.95へと更新され、状況の変化を確率的に導出できた。
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【本文】
1. 研究目的
本研究は人を支援できるマルチモーダルAIを提案する。マルチモーダルAIは環境条件と目的に沿って自律的に意思決定のできるAIであり、経験情報に基づく判断を行う。人の経験情報は様々な属性のデータと情報から構成される。特に人の経験は目的と意思決定に伴う結果を持つ。人は過去の経験から意思決定に伴う結果を評価を行い、意思決定を行う。従って意思決定には判断、行動と結果の評価が必要である。マルチモーダルAIの実現に向けてはまず、マルチモーダルデータを扱うデータベースの実現が必要であり、マルチモーダルデータとは音声、画像、テキストと各種環境情報である。現在、多くの場面でのAI(人工知能)利用が進んでいる。しかし、多くの人工知能では意思決定の根拠を明確に示すことができず、信頼できる人工知能となっていない。そこで、意思決定の根拠を明確に示すことができる汎用人工知能(GAI: General Artificial Intelligence)の実現が求められている。しかし、人の意思決定は必ずしも論理的に行われている訳ではなく、人の意思決定は環境の変化と時間の推移に従い、ゆらいでおり、信頼できる人工知能は人の意思決定の揺らぎを理解することが求められる。そこで、本研究は3秒ルールインテリジェンスによる意思決定支援を試みた。3秒ルールインテリジェンスは現在状況を理解して、微小時間後の状況を予測して意思決定を行う人工知能であり、微小時間後の行動候補の出現確率を算出して、行動候補の出現確率を行動選択確率と定義して意思決定を行う。
本研究での微小時間とは3秒である。行動候補の出現確率の算出はベイジアンネットワークにより行う。ベイジアンネットワークは、子ノードの条件付き確率テーブルに確率値を設定することにより、親ノードが示す事象の発現確率を算出する。ベイジアンネットワークは信念ネットワークとも呼ばれ、条件付き確率テーブル上の確率値を主観的に設定することにより、人の主観を確率値として計算に反映可能である。ベイジアンネットワークでは事実が観察される度にエビデンスが設定され、確率計算が再実行されるため、確率値の初期値は曖昧でも構わない。3秒ルールインテリジェンスは環境変化に伴い、事実が観察される度に行動の選択確率の再計算を行う。そして、行動選択確率があるしきい値を越えた場合に、行動選択の意思決定を行う。本研究での意思決定とは患者への支援行動を行うか保留するかである。一方、人の意思決定の揺らぎは人の価値観の揺らぎに起因しているため、3秒ルールインテリジェンスの更なる展開は人の価値観の揺らぎのメカニズム解明につながる。そこで、本研究は3秒ルールインテリジェンスの医療分野への適応を試みた結果、3秒ルールインテリジェンスによる医療スタッフの意思決定の模擬の可能性を示した。具体的には、ベイジアンネットワークにより算出された確率値を患者リスクと見なし、患者リスクがあるしきい値を越えると、3秒ルールインテリジェンスは患者への支援行動選択の意思決定を示し、意思決定は医療スタッフの判断に近いものであった。人工知能が人の意思決定の揺らぎを理解できれば、信頼できる人工知能が実現する。
2. 患者様子見の自動化
現在、医療現場では、患者確認に於けるダブルチェックや手順の標準化が進められている[1]。しかし、例外的な事象が起きた場合の対応は人の判断に頼らざるを得ず、高度な判断できる熟練医療スタッフが求められている。加えて、医療現場では近年、安全監視と記録業務が増加しており、医療スタッフの時間的余裕が減少して、ストレスの高い職場となっている。そこで、本研究は3秒ルールインテリジェンスによる放射線治療現場に於ける患者様子見行動の自動化を目指す[2]。患者への様子見行動とは不安定な患者の事故防止のための、医療スタッフによる患者観察行動であり、様子見行動はスタッフがある一定時間、患者への対応行動を保留して、患者リスクの発現を観察する行動である。患者リスクとは患者に関する事故発現等で、患者治療の障害となる要因である。患者様子見行動は患者が治療室に移動する場合や、治療中に行われる。治療中は患者の動作が限定的であるため、人工知能が患者を観察できれば、スタッフの業務軽減が図れる。更に治療室内での患者観察を自動化できれば、スタッフは次の業務の準備作業等が可能となり業務に余裕が生まれ、安全な医療が実現する。患者様子見行動は患者を含む状況判断とスタッフの経験により行われるため、患者様子見行動の自動化には人工知能への人の経験の反映が必要である。
3. 3秒ルールインテリジェンス
3.1 人の応答速度と行動選択
3秒ルールインテリジェンスは、人と同じプロセスで意思決定を行う人工知能であり、人の脳で行われる意思決定を模擬する。人の大脳内には神経細胞(ニューロン)が約100億個あり、脳全体の神経細胞は1000億個あるとされる[3]。神経細胞は核と樹状突起と信号伝送路に当たる軸索から構成され、樹状突起は信号入力をつかさどる受容体を持つ(図 1参照)。神経細胞間の信号伝達はシナプス間隙において行われており、1つの神経細胞は数千以上のシナプスを持つとされる。シナプスとは神経細胞同士の接続部分のことであり、特定の信号がシナプス前部に積み重なるとシナプスに於いて信号伝達が行われる。シナプス間隙上の信号伝達は科学物資の量と組み合わせで表現されるため、各シナプスは高度な情報処理を行っていると考えられる。シナプスは人では10兆個あるとされ、10兆個のシナプスの結合により経験が記録され、外部刺激により状況判断と行動発現がなされる[4]-[7]。ニューロン内の伝達速度は概ね、1m/秒から100m/秒である。一方、最近のCPU(中央処理演算装置)は約100億程度のトランジスタ(7nm製造プロセスの場合)で構成され、3Ghz(1秒間に30億回の振動数)程度で動作する[8]。人の神経細胞の動作速度はCPUに比べて低速であるにも拘わらず、人が高度な行動選択できる理由は、脳は並列に状況判断を行い、微小時間後に実行可能な行動候補を用意しているからであると考えられる[9][10]。本研究では、微小時間を3秒とする。従って、慣れた行動は3秒以内に行動候補として直ちに用意されるのに対して、不慣れな行動候補は遅れて用意されるため、行動の慣れが発生する。そして優先順位が均衡する複数の行動候補が並列に用意されている状態が迷いであり、遅れて行動候補が準備され、行動選択が混乱する状態が後悔である。
図 1 神経細胞
3.2 人の行動予測と3秒ルールインテリジェンス
人は行動選択に当たって、微小時間周期で次に実行可能な行動候補を選び出して、行動選択を行っており、行動候補は過去の経験と知識から選択される[9][10]。本研究での微小時間は3秒である。そこで、3秒ルールインテリジェンスは3秒後に実行可能な行動候補を人の経験から収集することにより、人と同じプロセスによる行動選択が実現する。3秒ルールインテリジェンスは経験データベース、行動選択トリガデータベース,行動出現確率計算(ベイジアンネットワーク)から構成される(図 2参照)。3秒ルールインテリジェンスは3秒後に実行可能な行動候補の準備を行い、行動選択トリガの観察により行動選択を行う。行動選択トリガとは環境情報を心理的次元で配置したものの中で最優先位置にあるものであり、行動選択を左右する要因である[9]。心理的な重み付けをした行動選択トリガ観察は行動の概念駆動型処理を可能とする[10]。3秒ルールインテリジェンスは経験データベースから現状認識による情報を検索キーにして、3秒後に実行可能な行動候補を準備する。そして、ベイジアンネットワークにより、3秒後に実行可能な行動候補の優先順位を決定する。経験データベースは現在状況と行動実行による3秒後の状態から構成される遷移情報を持つ(図 3参照)。本研究では遷移情報をヒヤリハット報告やインシデントレポートから収集した。遷移情報は初期状況情報と3秒後の遷移情報を持ち、3秒間は人の行動選択の周期である。例えば、車両運行に於いて、人は3秒周期で、現在から3秒後までの遷移空間を構築することにより、運転操作における事故回避を行っている(図 4参照)。
図 2 3秒ルールインテリジェンスの構成
図 3 3秒間の遷移空間
図 4 運転操作における遷移空間
3.3 人の行動予測と3秒ルールインテリジェンス
人が、直ぐに行動判断ができるのは、人は微小時間後に到達可能な遷移空間を事前に構築して状況予測を行いながら、行動選択を行っているからである[11]。微小時間とは3秒である。例えば、車両運転に於いて、先行車との安全な推奨車間距は速度計の示す値から15を減じた距離である、例えば、時速60km/h の場合の推奨車間距は45mである。時速60km/hの車の速度は約17m/秒であるため、45m/17m≒3秒となり、推奨される車間距離を時間的に表すと約3秒となる[12]。一方、車両運転に於ける安全な車間距離を時間で表すと、2秒から3秒と言われており、車間距離が1.8秒を切ると人は不安を感じると言われている[13]。また、報告者のビジネスシステム開発の経験から、エンターキーを押した後のシステム応答時間が3秒以内であればシステム利用者は概ね良好な操作感を得る。しかしシステム応答時間が5秒を超えるとシステム利用者は不満を感じ、システム応答時間が10秒を超えるとシステム利用者はシステムに対する改善を要求するという状況からも、人は現時点から3秒後までの行動予測空間を構築しており、行動予測空間内で状況が進む場合には安心感を得ることができ、3秒後の状況が不確実になると不安やいらつきを感じる。従って、人は現時点から3秒後までの行動遷移空間を持って行動をしていると判断できる。
4.ベイジアンネットワークを用いた事象分析
ベイジアンネットワークとはある事象(親)と事象に関係する要因(子)との因果関係を有効グラフで表現したものであり、ベイジアンネットワークは親ノードと子ノードの因果関係を確率的な関係で表現しており、ベイジアンネットワークの親ノードは親(世界)が取りうる状況が発現する確率を表す。ベイジアンネットワークは信念ネットワークとも呼ばれ、条件付き確率テーブル上の確率値を主観的に設定することにより、人の主観を確率計算に反映できる。従って、条件付き確率テーブルに設定する確率値を主観的に設定することにより、ベイジアンネットワークは不確実な状況を表現することが可能である。そして子ノードの条件が確定することにより、親(世界)が取りうる状況の確率が計算される。子ノードの条件が確定することを、エビデンスをセットすると呼び、事実や状況が判明した場合には、子ノードにエビデンスが設定され、子ノードが親ノードに与える確率が決定する。以下にベイジアンネットワークを用いた計算例を示す。本例はプロジェクトが計画通りに終了する確率計算の例を示す。本例では条件付き確率とベイズ推定の式(1)を使用してプロジクトリスクを推定する。プロジクトリスクとは、プロジェクトが計画通りに終了しない確率、つまりプロジェクトの遅延確率である。以降、プロジェクトリスクとはプロジェクトの遅延確率であるとする。プロジェクトの遅延が発生すると費用超過や契約違反となり、費用的な損害が発生する。
A:親(世界)が取りうる状況に対する確率  
B:子供(世界を説明する条件)を示す確率
本例ではプロジェクトが計画通りに終了する確率とスタッフからのプロジェクトの進捗に関するレポートの信頼性との関係を考える、プロジェクトが​計画通りに終了する確率をA、そしてスタッフからの進捗に関するレポートの信頼性を示す確率をBとする。ここで、A=0.9、B=0.7とすると、プロジェクトが実行される世界の確率状況は図 5となる。ベイジアンネットワークはある事象が取りうる世界の確率的関係を示し、エビデンスが設定されると世界が変化する。
図 5 報告を受ける前の世界確率の図
次に機械学習システムのWeka (Waikato Environment for Knowledge Analysis) [14]を使用してプロジェクトが実行される世界の確率状況を表現した様子を図 6に示す。図 6、図 7と表 1、表 2はWeka上のProjectノードとReportノードに確率を与えている様子を示す。一般的にプロジェクトは10%程度遅延することが知られているため、表 1と図 6に示す様にプロジェクトが計画通り終わる確率は0.9に設定している。ただし、Wekaのベイジアンネットワーク表示では確率0.9は9000、そして確率0.7は6599と表示されている。
表 1 Weka上のProjectノードの条件付き確率
表 2 Weka上のReportノードの条件付き確率
図 6プロジェクトのベイジアンネットワーク表示
図 7 ProjectとReportノードの条件付き確率テーブルに確率値を与えている様子
次に、表 3と図 8はスタッフによりプロジェクトの進捗は計画通りと報告された後のプロジェクトの実行世界を示しており、Aの確率は式(2)に示す通り0.95となる。図 9はWekaで確率を計算した様子を示す。本例でのエビデンスはスタッフによるプロジェクトの進捗は計画通りとの報告である。ベイジアン推定ではエビデンスと呼ばれる状況報告が与えられることにより、確率世界が変化する。
表 3 報告を受けた後の世界確率(抹消線の世界が削除された状態)
図 8報告を受けた後の世界確率の図
(網掛けの部分の世界が消えた)
(2)
図 9 報告を受けた後のベイジアンネットワーク表示
5. 患者様子見行動と患者対応行動の発現
5.1患者リスクの評価
医療現場では、安全のために患者確認に於ける2重チェックや手順の標準化が進められている[15]。しかし、例外的な事象が起きた場合の対応は人の判断に頼らざるを得ず、熟練医療スタッフの経験に基づく対処が求められる。そこで、本研究は熟練医療スタッフに近い状況判断機能の実現を目指して、3秒ルールインテリジェンスを放射線治療現場に応用した。表 4に放射線治療における環境要因と内容を示す。環境要因は医療スタッフからのヒアリングにより取得した。本研究では、ベイジアンネットワークにより算出した患者リスクにより、状況判断を行う。本研究では患者リスクとは患者に拘わる事故発生確率と定義して、患者リスクを患者への支援の必要性とみなす。従って、患者リスクが上昇すると患者への支援必要性が上昇することとなり、患者支援の必要性があるしきい値を越えると患者への支援が必要であるとの意思決定を行う。放射線治療装置は治療を行う機械であり、今後、治療環境に関する情報の取得を機械信号として取得することが可能であり、取得情報の精度向上が期待できる。
表 4 患者を取り巻く環境要因
5.2 患者対応行動の発現
患者への様子見行動とは不安定な患者の事故防止のための、医療スタッフによる患者観察行動のことである。図 10は医療スタッフが患者リスクを観察している状況を示しており、縦軸は患者リスクを示し、横軸は時間軸である。図 10に示す、患者が安全範囲の領域にある場合には、医療スタッフは患者を観察する必要のない状況であることを示し、例えば患者が検査に行っている状態である。次に患者が様子見状態にある場合には医療スタッフが患者を観察する必要がある状況であり、例えば患者が治療室内にいる状況である。そして、患者が支援必要の領域に入った場合には、患者リスクが高い状況であり、患者への支援が必要となる。例えば患者への支援行動として、患者への声掛けや治療中断がある。様子見行動は医療スタッフが患者への対応行動を保留して患者の様子を観察する行動であり、人工知能が患者を観察できれば、医療スタッフの業務軽減が図れる。そこで、本研究は医療スタッフの患者への様子見行動の模擬を目指して、3秒ルールインテリジェンスの放射線治療への適応を試みた。ベイジアンネットワークの親ノードが示す確率値は医療スタッフ経験に基づく患者リスク値を示している。本研究では、ベイジアンネットワークにより算出された患者リスク値は3秒後の患者支援行動の必要度合いを示しており、環境要因の変化に従い、ベイジアンネットワークの再計算を実行する。ベイジアンネットワークが示す患者リスクは患者支援行動の必要度合いを示し、患者支援行動の必要度合いがあるしきい値を越えた場合には患者への支援行動が必要となる。図 11に本研究で設定したベイジアンネットワークを示す。図 11中の略称は表 4の通りであり、表 5から表 9はベイジアンネットワークの各ノードに設定した条件付き確率テーブルの値を示している。本研究において、3秒ルールインテリジェンスに与えたベイジアンネットワークの条件付き確率テーブルの設定は医療スタッフへのヒアリングに基づいていており、医療スタッフの経験値を反映している。図 11に示す通り、患者の支援が必要と支援不要の初期値は共に0.5である。そして、図 11が示す確率値の計算要領を図 12に示す。例えば、図 11のSKILのHigh値は0.4であり、計算要領は以下の通りである。
0.5(TREAT)×0.1(支援必要 High)=0.05
0.5(WATCH)×0.7(支援不要 High)=0.35
0.05+0.35=0.4 SKIL(High)
但し、図 11の同値は0.399と表示されている。
図 10 状況判断
図 11 患者リスク(RISK)算出ベイジアンネットワーク
表 5 患者支援モデルのテーブル例
親テーブル(RISK)
表 6 条件付き確率テーブル(SKIL)
表 7 条件付き確率テーブル(PAT)
表 8 条件付き確率テーブル(METH)
表 9 条件付き確率テーブル(ENV)
図 12 ベイジアンネットワークの計算例
5.3環境評価試験
 3秒ルールインテリジェンスの経験データベースは経験ルールを持ち、経験ルールはヒヤリハット情報から収集した。経験ルールは3秒間の時間的状態遷移に伴う初期状態と3秒後の後状態と発現した発生事象を持つ(図 13参照)。更に経験ルールには行動選択トリガが記述されている(表 10参照)。行動選択トリガとは環境変化を検知するための情報である。環境監視下で、行動選択トリガが検知されると該当する経験ルールが選択され、ベイジアンネットワーク中の指定された要素にエビデンスが設定される。
図 13 ヒヤリハットデータ(一部)
例えば患者の蛇行(ふらつき)が検知された場合には、患者状態が悪いことを示すエビデンスがベイジアンネットワークに設定される(図 14、図 15参照)。具体的には、患者リスク値(RISK)の初期値は図 14の通り、0.5であり、患者への支援必要性は不明であることを示している。そして患者の蛇行(ふらつき)が検知されると、患者の状態が悪いことを示すエビデンスがベイジアンネットワークに設定され、患者リスク値が0.83となり、患者への支援が必要なしきい値が0.7であるとすると、患者への支援が必要との意思決定がなされる(図 15参照)。
表 10 エビデンス設定時のトリガ情報
図 14 初期状態のRISK算出ベイジアンネットワーク
図 15 患者(PAT)が悪い(LOW)エビデンスの設定後
5.3.環境の評価の自動化
 3秒ルールインテリジェンスを用いた患者様子見行動の自動化のためにはエビデンスの自動設定が必要である。そこで本研究では図 11に示す各要素の確率値を更に計算するための表 11に示す様にベイジアンネットワークを設定した。表 11に示す様に確率算出のための要素を細分化することにより、自動的にエビデンスを設定することが可能となる。例えば、患者状態(PAT)を算出する1つの要素の患者搬送状態(Trsus)が取る、歩行か、車椅子かストレッチャーかは自動的に設定できる。
表 11 各要素に確率値を与えるベイジアンネットワークのテーブル構造
例えば、表 11中の患者の状態算出用テーブル(PAT)の確率値を算出するベイジアンネットワークを図 16に示す。そして、患者の歩行が確認されると図 17に示すベイジアンネットワークとなり、患者状態は良好(Good)であるため、患者状態(PAT)にGoodが設定される。同様に治療計画から治療内容の複雑さ(METH)は標準(Standard)であり、スタッフのスキル(SKLL)を標準(Standard)に設定すると患者リスク(RISK)を示すベイジアンネットワークは図 18となる。次に患者の蛇行(ふらつき)が検知されると図 19に示す様に患者ふらつきのエビデンスが設定される。しかし、患者状態が低(Low)と判断するしきい値を0.7とすると患者状態が低(Low)の確率値(PAT)は0.5384なので、患者リスク(RISK)算出用ベイジアンネットワークの患者状態に患者低(Low)のエビデンスは設定されない。
図 16患者の状態(PAT)算出用ベイジアンネットワーク(初期状態)
図 17 患者の状態(PAT)算出用ベイジアンネットワーク(患者の歩行確認)
図 18 患者支援度(RISK)算出用ベイジアンネットワーク
しかし、あらかじめ、図 19の患者パフォーマンスステータス(Pstus)がLowであることが認識されていれば、図 20に示す様に患者状態が低(Low)の確率値は0.8860となり、しきい値の0.7を越えるため、患者リスク(RISK)算出用ベイジアンネットワークの患者状態に患者低(Low)のエビデンスが設定され、図 21に示す様に患者リスク(RISK)は0,823となり、3秒ルールインテリジェンスは患者支援の意思決定を行う、そして3秒ルールインテリジェンスの意思決定は医療スタッフの意思決定に近いプロセスにより行われている。
図 19 患者の状態(PAT)算出用ベイジアンネットワーク(患者のふらつき確認)
図 20 患者の状態(PAT)算出用ベイジアンネットワーク(患者のふらつきとパフォーマンスステータス(Pstus)がLowを確認)
図 21 患者支援度(RISK)算出用ベイジアンネットワーク(患者状態Low)
6. 考察とまとめ
本研究は3秒ルールインテリジェンスによる患者様子見行動が可能であることを示し、患者様子見行動の自動化の可能性を示した。患者様子見行動に於ける意思決定とは医療スタッフが患者支援行動を取るか、取らないかである。本研究では患者支援行動の発現確率を患者リスクと定義して、患者リスクがあるしきい値を超えた場合に、3秒ルールインテリジェンスは患者支援行動の意思決定を行う。3秒ルールインテリジェンスは患者リスクをベイジアンネットワークにより算出する。ベイジアンネットワークでは事実が確認されるとエビデンスが設定される。そこで、3秒ルールインテリジェンスは初めに、環境監視により、行動選択トリガが検知されるとベイジアンネットワークにエビデンスを設定して、患者リスクの計算を行う。行動選択トリガとは環境情報の重要性を心理的次元で配置したものの中で最優先位置にあるものであり、行動選択を左右する要因である[9]。本研究では、行動選択トリガをヒヤリハット情報から収集しており、行動選択トリガには医療スタッフの経験に基づく心理的な重み付けが反映されている。従って、3秒ルールインテリジェンスは人の感覚に近い視点で環境監視を行うことが可能である[11]。しかし、今回は患者蛇行(ふらつき)のトリガ検知は手動で行ったため、今後、トリガの自動検知が必要である。更に、本研究は患者支援行動の必要性を時系列的な数値で示すため、行動選択の根拠が明確であり、環境の変化と意思決定の経緯を数字で記録することできる。今後、人的感覚を持つ環境評価機能が実現すれば、病棟やICUでの患者監視の自動化が可能となる。例えば、病棟スタッフは、複数の患者の状態を同時に監視して、適切な患者対応行動を行っている。そこで3秒ルールインテリジェンスによる人的感覚を持つ患者様子見機能が実現すれば、対応の緊急度を自動的に判断することが可能となり、経験の少ない医療スタッフでも対応の優先順位を即時に知ることができ、余裕のある患者対応が実現する。更に、熟練スタッフが観察している要素を、行動選択トリガデータベースに追加できれば、3秒ルールインテリジェンスは熟練スタッフに近い意思決定を行うことが可能となり、更に意思決定に至ったエビデンスを示すことができるため、意思決定の根拠を明確に示すことができ、信頼できる汎用人工知能(GAI: General Artificial Intelligence)への展開が期待できる。今後、実現が求められる汎用人工知能は判断根拠を示すことが求められており、本研究はGAI実現の可能性をも示した[16]。
謝辞
本研究はJSPS科研費 20K11983の助成を受けた。
本研究に助言と貴重な情報を頂いた広島国際大学の橘昌幸教授と九大病院の福永淳一先生に感謝申し上げる。
参考文献
[1]持田 信治,池添 律代,矢鳴 虎夫:"判断マトリクスを使用した内部状態モデル構築に関する研究",バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 6 巻 1号,10-16,(2004)
[2]持田 信治,橘 昌幸:"人の観点から見た環境評価に関する研究",BMFSA学会誌 VOL11 NO.2 PP.25‐31
[3] エリック.R・カンデル,記憶のしくみ
[4]松本元・大津展之:「神経細胞の生物学的特性」,培風館,(1992)
[5]伊藤薫:「脳と神経の細胞学」,培風館,(1975)
[6]Armand M.de Callatay,島田禎晉訳:「人間の脳と人工知能」,丸善株式会社,(1991)
[7] 小林春雄他:「神経情報生物学入門」,オーム社,(1990)
[8] 「IBMが2nm半導体プロセスの試作成功、研究トップに聞く「ムーアの法則」の将来」, 日経クロステック,2021年5月13日
[9] リンゼイ/ノーマン:「情報処理心理学入門Ⅰ(感覚と知覚]」,サイエンス社,1984
[10] リンゼイ/ノーマン:「情報処理心理学入門Ⅱ(注意と記憶]」,サイエンス社,1984
[11] 持田 信治:「3秒ルールAI実現に関する研究」,日本経営システム学会第62回全国研究発表大会講演論文集,138-139, 2019
[12]牧下寛,松永勝也:「自動車運転中の突然の危機に対する制動反応の時間」,人間工学,38巻6号 pp.324-332,2002
[13]山下昇:「車間距離より車間時間を取ろう」,セイフティエクスプレス企業開発センター,6月号,2008
[14] 藤田一弥:「見えないものをさぐる それがベイズ」,オーム社,2015
[15] 持田 信治:「3秒ルーインテリジェスを用いた患者様子見行動の模擬に向けた基礎研究」,BMFSA2020年次大会予稿集,pp.150-153,2020
[16]「人間中心のAI社会原則の草案,人間中心のAI社会原則検討会議」,内閣府,2018年12月
著者氏名(ふりがな)
現職○○大学○○学部○○科
略歴

プロジェクトリスク対策の意思決定
ヒット: 2 開く 保存
状況
プロジェクトマネジメントにおいて、顧客の要求仕様の精度が低いことが判明し、プロジェクトの遅延確率が20%のしきい値を超えた状況。
関連ルール: E-1: 明
行動
3秒ルールインテリジェンスを用いてリスク対策(熟練システムエンジニアによる仕様書の見直し等)の発動を指示。
結果
熟練のプロジェクトマネージャーに近い判断が示され、リスク対策の適切な発動が可能となった。
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【分析:状況】
プロジェクトマネジメントにおいて、顧客の要求仕様の精度が低いことが判明し、プロジェクトの遅延確率が20%のしきい値を超えた状況。
【分析:行動】
3秒ルールインテリジェンスを用いてリスク対策(熟練システムエンジニアによる仕様書の見直し等)の発動を指示。
【分析:結果】
熟練のプロジェクトマネージャーに近い判断が示され、リスク対策の適切な発動が可能となった。
----------------------------------------
【本文】
3秒ルールインテリジェンスによる意思決定
Decision-making based on Three-Second rule Intelligence
持田 信治*
Shinji Mochida
3秒ルールインテリジェンスは3秒後までの状況予測値に基づいて行動判断を行う人工知能であり、本研究はプロジェクトマネジメントにおけるリスク対策の発動と患者様子見行動における支援行動実施に対する意思決定への3秒ルールインテリジェンスの応用を検討した。そこで、3秒ルールインテリジェンスを用いた意思決定の可能性が示されたので報告する。
キーワード:3秒ルールインテリジェンス、ベイジアンネットワーク、様子見行動、プロジェクト
Ⅰ.はじめに
研究の目的
 3秒ルールインテリジェンスは、人と同じプロセスで意思決定を行う人工知能であり、人の脳で行われる意思決定を模擬する。人の大脳内には神経細胞(ニューロン)が約100億個あり、脳全体の神経細胞は1000億個あるとされる1)。神経細胞は核と樹状突起と信号伝送路に当たる軸索から構成され、樹状突起は信号入力をつかさどる受容体を持つ(図 1参照)。神経細胞間の信号伝達はシナプス間隙において行われており、1つの神経細胞は数千以上のシナプスを持つとされる。シナプスとは神経細胞同士の接続部分のことであり、特定の信号がシナプス前部に積み重なるとシナプスに於いて信号伝達が行われる。シナプス間隙上の信号伝達は科学物資の量と組み合わせで表現されるため、各シナプスは高度な情報処理を行っていると考えられる。シナプスは人では10兆個あるとされ、10兆個のシナプスの結合により経験が記録され、外部刺激により状況判断と行動発現がなされる2)-5)。一方、ニューロン内の伝達速度は概ね、1m/秒から100m/秒であり、最近のCPU(中央処理演算装置)は約100億程度のトランジスタ(7nm製造プロセスの場合)で構成され、3Ghz(1秒間に30億回の振動数)程度で動作する6)。人の神経細胞の動作速度はCPUに比べて低速であるにも拘わらず、人が高度な行動選択できる理由は、脳は並列に状況判断を行い、微小時間後に実行可能な行動候補を用意しているからであると考えられる7)8)。そこで、本研究では、微小時間を3秒と定義する。従って、慣れた行動は3秒以内に行動候補として直ちに用意されるのに対して、不慣れな行動候補は遅れて用意されるため、行動の慣れが発生する。そして優先順位が均衡する複数の行動候補が並列に用意されている状態が迷いであり、遅れて行動候補が準備され、行動選択が混乱する状態が後悔である。
図 1 神経細胞
Ⅱ. 3秒ルールインテリジェンス
1.人の行動判断
人は行動選択に当たって、微小時間周期で次に実行可能な行動候補を選び出して、行動選択を行っており、行動候補は過去の経験と知識から選択される7)8)。本研究での微小時間は3秒である。そこで、3秒ルールインテリジェンスは3秒後に実行可能な行動候補を人と共有することにより、人が理解可能な判断プロセスによる行動選択が実現する。3秒ルールインテリジェンスは3秒後に実行可能な行動候補の準備を行い、行動選択トリガ観察機能により行動選択を行う。行動選択トリガとは環境情報を心理的次元で配置したものの中で最優先位置にあるものであり、行動選択を左右する要因である9)。そして心理的な重み付けを行った行動選択トリガの発現観察を行うことにより、人と同じ概念駆動型処理を可能とする10)。3秒ルールインテリジェンスは経験データベースから現状認識情報をキーにして、3秒後に実行可能な行動候補を準備する。そして、ベイジアンネットワークにより、3秒後に実行可能な行動候補の優先順位を決定する。経験データベースは遷移情報を持ち、遷移情報は、現在状況と行動実行後の状況情報から構成される。行動遷移時間は3秒間である(図 2参照)。本研究では遷移情報をヒヤリハット報告やインシデントレポートから収集した。遷移情報は初期状況情報と3秒後の遷移情報を持つ。3秒間は人の行動選択の周期である。例えば、車両運行に於いて、人は3秒周期で、現在から3秒後までの遷移空間を構築することにより、運転操作における事故回避を行っている。
図 2 3秒間の遷移空間
図 3 運転操作における遷移空間
2. 人の行動予測と3秒ルールインテリジェンス
人が、直ぐに行動判断ができるのは、人は微小時間後に到達可能な遷移空間を事前に構築して状況予測を行いながら、行動選択を行っているからである11)。微小時間とは3秒である。例えば、車両運転に於いて、先行車との安全な推奨車間距は速度計の示す値から15を減じた距離である、例えば、時速60km/h の場合の推奨車間距は45mである。時速60km/hの車の速度は約17m/秒であるため、45m/17m≒3秒となり、推奨される車間距離を時間的に表すと約3秒となる12)。一方、車両運転に於ける安全な車間距離を時間で表すと、2秒から3秒と言われており、車間距離が1.8秒を切ると人は不安を感じると言われている13)。また、報告者のビジネスシステム開発の経験から、エンターキーを押した後のシステム応答時間が3秒以内であればシステム利用者は概ね良好な操作感を得る。しかしシステム応答時間が5秒を超えるとシステム利用者は不満を感じ、システム応答時間が10秒を超えるとシステム利用者はシステムに対する改善を要求するという状況からも、人は現時点から3秒後までの行動予測空間を構築しており、行動予測空間内で状況が進む場合には安心感を得ることができ、3秒後の状況が不確実になると不安やいらつきを感じると考えられる。以上から人は現時点から3秒後までの行動遷移空間を持って行動をしていると判断できる。
Ⅲ. ベイジアンネットワーク
1.ベイジアンネットワーク
ベイジアンネットワークとはある事象(親)と事象に関係する要因(子)との因果関係を有効グラフで表現したものであり、ベイジアンネットワークは親ノードと子ノードの因果関係を確率的な関係で表現しており、ベイジアンネットワークの親ノードは親(世界)が取りうる状況が発現する確率を表す14)。ベイジアンネットワークは信念ネットワークとも呼ばれ、条件付き確率テーブル上の確率値を主観的に設定することにより、人の主観を確率計算に反映できる。従って、条件付き確率テーブルに設定する確率値を主観的に設定することにより、ベイジアンネットワークは不確実な状況を表現することが可能である。そして子ノードの条件が確定することにより、親(世界)が取りうる状況の確率が計算される。子ノードの条件が確定することを、エビデンスをセットすると呼び、事実や状況が判明した場合には、子ノードにエビデンスが設定され、子ノードが親ノードに与える確率が決定する。以下にベイジアンネットワークを用いた計算例を示す。本例はプロジェクトが計画通りに終了する確率計算の例を示す。本例では条件付き確率とベイズ推定の式(1)を使用してプロジクトリスクを推定する。プロジクトリスクとは、プロジェクトが計画通りに終了しない確率、つまりプロジェクトの遅延確率である。以降、プロジェクトリスクとはプロジェクトの遅延確率であるとする。プロジェクトの遅延が発生すると費用超過や契約違反となり、費用的な損害が発生する。
(1)
A:親(世界)が取りうる状況に対する確率  B:子供(世界を説明する条件)を示す確率
本例ではプロジェクトが計画通りに終了する確率とスタッフからのプロジェクトの進捗に関するレポートの信頼性との関係を考え、プロジェクトが計画通りに終了する確率をA、そしてスタッフからの進捗に関するレポートの信頼性を示す確率をBとする。ここで、A=0.9、B=0.7とすると、プロジェクトが実行される世界の確率状況は図 4となる。ベイジアンネットワークはある事象が取りうる世界の確率的関係を示し、エビデンスが設定されると世界が変化する。
図 4 報告を受ける前の世界確率の図
次に機械学習システムのWeka (Waikato Environment for Knowledge Analysis) 14)を使用してプロジェクトが実行される世界の確率状況を表現した様子を図 5に示す。図 5、図 6と表 1、表 2はWeka上のProjectノードとReportノードに確率を与えている様子を示す。一般的にプロジェクトは10%程度遅延することが知られているため、表 1と図 5に示す様にプロジェクトが計画通り終わる確率は0.9に設定している。ただし、Wekaのベイジアンネットワーク表示では確率0.9は9000、そして確率0.7は6599と表示されている。
表 1 Weka上のProjectノードの条件付き確率
表 2 Weka上のReportノードの条件付き確率
図 5プロジェクトのベイジアンネットワーク表示
図 6 ProjectとReportノードの条件付き確率テーブルに確率値を与えている様子
次に、表 3と図 7はスタッフがプロジェクトの進捗は計画通りと報告した後のプロジェクトの実行世界を示しており、Aの確率は式(2)に示す通り0.95となる。図 8はWekaで確率を計算した様子を示す。本例でのエビデンスはスタッフのプロジェクトの進捗は計画通りとの報告である。ベイジアン推定ではエビデンスと呼ばれる状況報告が与えることにより、確率世界が変化する。
表 3 報告を受けた後の世界確率(抹消線の世界が削除された)
図 7報告を受けた後の世界確率の図(網掛けの部分の世界が消えた)
(2)
図 8 報告を受けた後のベイジアンネットワーク表示
2.プロジェクトに於ける遅延分析の必要性
複数の要素が存在するベイジアンネットワークの例として、プロジェクトリスクを算出する例を示す。プロジェクトリスクとはプロジェクトの予算超過と行程遅延を引き起こすリスクである。プロジェクトではプロジェクトリスクを避けるために、プロジェクトマネジメントにより、事前にリスクの洗い出しが行われ、プロジェクトリスクとリスク発現トリガとリスク発現時の対策をまとめたリスク管理表を作成しており、リスク発現トリガが観察されるとリスク対策が発動される。リスク発現トリガとはあるリスクが発現と判断するための環境状況である。しかし、リスク対策を発動すると経営資源を消費するため、リスク対策の発動には高度な意思決定が必要である。つまり、リスク対策発動には様々な状況を考慮する必要である。プロジェクトリスクが生じる主な要因として、顧客からの要求仕様の精度やプロジェクトマネージャーやプログラマーのスキルと見積もり精度がある。図 9はプロジェクト中の要因の関係をベイジアンネットワークで表現した様子であり、表 4は図 9に示すベイジアンネットワークの各要因が取り得る値を示す15)。図 10中の親ノードはプロジェクトの遅延確率(PPD)であり、子ノードにエビデンスが与えられると親ノードが示すプロジェクトの遅延確率(PPD)が変化する。
表 4 ベイジアンネットワーク中の要因の内容
図 9プロジェクトリスクを示すベイジアンネットワーク
3.遅延予測
表 4に示すベイジアンネットワークの要素をWeKaで表現したものを図 10に示す。図 10中のプロジェクトの遅延確率(PPD)はPro+と表現される。ベイジアンネットワークの初期状態は図 10に示す通り、プロジェクトの遅延確率(PPD)は0.5である。一般的にベイジアンネットワークの初期値は主観値であるので、遅延する場合としない場合は共に0.5である。表 5プロジェクト中の各リスク要因とプロジェクトの状態との関係を示す。プロジェクトの状態とはプロジェクトが遅延するか計画通り進捗するかである。表 5の条件付き確率は5人のプロジェクトマネージャーからヒアリングした値の平均であり、主観値である。そして、図 10に示すPPDのPro+とPro-の値を0.5に設定した後に各子ノードに示される確率値の計算要領を図 11に示す。例えば、図 11のAEのLow値は0.4であり、計算要領は以下の通りである。
0.5(Pro+)×0.7(支援必要 Low)=0.35
0.5(Pro-)×0.1(支援不要 Low)=0.05
0.35+0.05=0.4 AE(Low)
但し、図 10の同値は0.399と表示されている。
図 10 リスクのベイジアンネットワーク表現
図 12 リスク予測(Case1)
図 11 子ノードに表示されている確率の計算要領
次に、ベイジアンネットワークにエビデンスを与える。Case1のエビデンスの組みあわせはAE:見積精度とSPM:プロジェクトマネージャーのスキルがStandard、STP:プログラマーのスキルがHigh、AR:要求仕様の精度がLowであり、この時プロジェクトが遅延する確率は約0.26となる(表 6、図 12参照)。
図 13 プロジェクトの費用
表 5 プロジェクトの条件付き確率
表 6 リスク要因の組みあわせ状況と遅延リスク
表 6にCas1からCase6までのエビデンスを与えた時プロジェクトの遅延リスクを示す。一般的にプロジェクトマネージャーとプログラマーのスキルはStandardであるため、プロジェクトの遅延確率は10%程度であり、一般的なプロジェクトマネジメントの許容範囲内である(図 13参照)。そこで、プロジェクトの遅延のしきい値を20%と設定した場合、表 6のCASE1に示す様に要求仕様がLowであることが判明した場合にはプロジェクトの遅延確率が20%を超えるので、プロジェクトリスク対策の発動が必要となり、3秒ルールインテリジェンスはプロジェクトリスク対策の発動を指示する。例えば、プロジェクトリスク対策としてスキルがHighのプロジェクトマネージャーを投入することが考えられる。一般的なプロジェクトでは、Stndardのスキルを持つプロジェクトマネージャーとプログラマーがプロジェクトを実行する。しかし、顧客の要求仕様の精度は不確実であるため、顧客からの要求仕様の曖昧さや仕様変更がプロジェクトリスクを左右する。
Ⅳ.  患者への様子見行動と患者対応
1.患者監視自動化の必要性
現在、医療現場では、患者確認に於けるダブルチェックや手順の標準化が進められている7)8)。しかし、例外的な事象が起きた場合の対応は人の判断に頼らざるを得ず、医療スタッフの経験度により、対処時間や対処方法が異なる。そこで、高度な判断できる熟練医療スタッフが求められる。加えて、医療現場では近年、安全監視と記録業務が増加しており、医療スタッフの時間的余裕が減少して、ストレスの高い職場となっている。そこで、本研究は3秒ルールインテリジェンスを用いた人的感覚を持つ環境評価機能を提案する。そして、本研究が目指すのは医療スタッフによる患者への様子見行動の自動化である15)。患者への様子見行動とは不安定な患者の事故防止のための、医療スタッフによる患者観察行動であり、様子見行動はスタッフがある一定時間、患者への対応行動を保留して、患者リスクの発現を観察する行動である。患者様子見行動は患者が治療室に移動する場合や、治療中は患者の動作は限定的であるため、人工知能が患者を観察できれば、スタッフの業務軽減が図れる。更に工知能に患者観察を任せることにより、スタッフは次の業務の準備作業等が可能となり業務に余裕が生まれる。様子見行動は患者観察を含む状況判断とスタッフの経験により行われる行動であり、人工知能による患者様子見行動が可能になれば人と人工知能による協働作業実現が実現する。
2.患者リスクの評価
医療現場では、安全のために患者確認に於ける2重チェックや手順の標準化が進められている15)。しかし、例外的な事象が起きた場合の対応は人の判断に頼らざるを得ず、熟練医療スタッフの経験に基づく対処が求められる。そこで、本研究は熟練医療スタッフに近い状況判断機能の実現を目指して、3秒ルールインテリジェンスを放射線治療現場に応用した。表 7に放射線治療における環境要因と要因の略称を示す。環境要因は医療スタッフからのヒアリングにより取得した。本研究では、ベイジアンネットワークにより算出した患者リスクにより、状況判断を行う。患者リスクとは患者に拘わる事故発生確率のことであり、本研究では患者リスクを患者への支援の必要性とみなす。従って、患者リスクが上昇すると患者への支援必要性が上昇することとなる。患者支援の必要性があるしきい値を越えると患者への支援が必要となる。放射線治療装置は治療を行う機械であり、今後、治療環境に関する情報の取得を機械信号として取得することが可能であり、環境状況取得の精度向上が期待できる。
表 7 患者を取り巻く環境とベイジアンネットワークの要素
3.患者様子見行動分析
患者への様子見行動とは不安定な患者の事故防止のための、医療スタッフによる患者観察行動のことである。図 14は医療スタッフが患者の様子を観察している状況を示しており、縦軸は患者リスクを示し、横軸は時間軸である。図 14に示す、患者が問題無しの領域にある場合には、医療スタッフは患者を観察する必要のない状況であることを示す、例えば患者が検査に行っている状態である。次に患者が様子見状態にある場合には医療スタッフが患者を観察する必要がある状況であり、更に、患者が事故発生確率大の領域に入った場合には、患者リスクが高い状況であり、患者への支援が必要となる。例えば患者への支援行動として、患者への声掛けや治療中断がある。様子見行動は医療スタッフが患者への対応行動を保留して患者の様子を観察する行動であり、人工知能が患者を観察できれば、医療スタッフの業務軽減が図れる。そこで、本研究は医療スタッフの患者への様子見行動の模擬を目指して、3秒ルールインテリジェンスの放射線治療への適応を試みた。ベイジアンネットワークの親ノードが示す確率値は医療スタッフ経験に基づく患者リスク値を示している。本研究では、ベイジアンネットワークにより算出された患者リスク値は3秒後の患者支援行動の必要度合いを示している。そして、環境要因の変化に従い、ベイジアンネットワークの再計算を実行する。ベイジアンネットワークが示す患者リスクは患者支援行動の必要度合いを示し、患者支援行動の必要度合いがあるしきい値を越えた場合には患者への支援行動が必要となる。図 15に本研究で設定したベイジアンネットワークを示す。図 15中の略称は表 7の通りであり、表 8はベイジアンネットワークに設定した条件付き確率テーブルを示している。表 8の各数値は医療スタッフからのヒアリングにより取得しており、医療スタッフの経験値を反映している。
図 14 状況判断
図 15 治療環境のベイジアンネットワーク(初期状態)
表 8 患者支援モデルのテーブル例
親テーブル(RISK)
条件付き確率子テーブル(SKIL,PAT,METH,ENV)
4.患者様子見の評価
 3秒ルールインテリジェンスは経験データベースを持ち、経験データベースは経験ルールを持ち、経験ルールは現在情報と3秒後情報に加えて、発現したリスク情報を持つ。経験ルールはヒヤリハット情報から抽出しており、スタッフの経験を反映している。本研究ではヒヤリハット情報から抽出した、環境の時間的変化を3秒間の状態遷移状況と見なして、経験ルールに記述する。経験ルールはXML形式で登録される(エラー! 参照元が見つかりません。参照)。本研究では、環境監視において、特定な環境変化情報が検知されると関連した経験ルールが選択される(表 9参照)。本研究では特定な情報を経験トリガと呼ぶ。環境情報の監視下で、経験トリガが検知されると該当する経験ルールが選択され、ベイジアンネットワーク中の指定されたエビデンスが設定される。例えば患者のふらつきが検知された場合には、患者の状態判断を行う経験ルールが選択され、患者の状態が悪いことを示すエビデンスがベイジアンネットワークに設定される。図 15に患者監視の初期状態を示す。初期状態での患者への支援必要性値は図 15に示す通り、0.5である。そして、患者のふらつきが検知されると、患者の状態が悪いことを示すエビデンスがベイジアンネットワークに設定され、図 16に示す通り、患者への支援の必要性を示す値が0.83となる。若し、患者様子見行動が継続する場合の患者リスク値を0.5から0.7の間とすると(図 14参照)、患者様子見行動のしきい値の0.7を超えたため、患者への支援が必要となる。従って本結果は、3秒ルールインテリジェンスは医療スタッフの判断に近い行動判断が可能であることを示し、3秒ルールインテリジェンスによる患者様子見行動の自動化の可能性を示す。図 17にヒヤリハット情報から抽出した経験ルールをXML形式で登録した例を示す。本研究では、トリガに記述された環境要因を監視する、トリガの自動監視ができれば、患者様子見行動の自動化が実現する。本例では患者の動きを観察して、手動でエビデンスを与えた。
表 9 エビデンス設定のトリガ
図 16 治療環境のベイジアンネットワーク(エビデンスの設定後)
図 17  登録したヒヤリハットデータの例
Ⅴ. 考察とまとめ
本研究は3秒ルールインテリジェンスを用いた意思決定を検討した。3秒ルールインテリジェンスは3秒後までの状況予測値に基づいて行動判断を行う人工知能であり、3秒後の予測値をベイジアンネットワークにより算出する。そこで。本研究はプロジェクトマネジメントにおけるリスク対策の発動と患者様子見行動における支援行動の実行に対する意思決定への3秒ルールインテリジェンスの応用を検討した。プロジェクトマネジメントにおけるリスク対策の発動では3秒ルールインテリジェンスは熟練のプロジェクトマネージャーに近い判断を示した。具体的には、複数のプロジェクトリスク要因がある中で顧客の要求仕様の精度が低いことが検知された場合には速やかにリスク対策を行う意思決定を示した。リスク対策とは、例えば、熟練のシステムエンジニアによる仕様書の見直しである。次に本研究では、患者様子見行動に於ける患者支援活動の必要性判断を試行した。試行の結果、3秒ルールインテリジェンスによる意思決定の自動化の可能性が示された。患者様子見行動に於ける意思決定とは医療スタッフによる患者支援を実行することである。3秒ルールインテリジェンスは環境監視を行い、トリガの発現を観察する。トリガの発現が検知されると対応行動の出現確率が計算される。プロジェクトリスク監視では、トリガは要求仕様の精度やプログラマーのスキルであり、プログラマーのスキルはプログラムミスの回数を観測することにより客観的に設定できる。また、患者リスクの監視に於けるトリガは患者の状態やスタッフの状態であり、患者の状態はカメラやマイクを使用して患者状況を自動監視することが可能である。3秒ルールインテリジェンスは人と同じ視点で環境要因を監視することにより、人の感覚に近い環境監視を行うことが可能である。特に、患者の様子見行動では患者支援行動の必要性を数値で示し、患者様子見行動の自動化の可能性を示した。患者支援の必要性を示す数値は環境の変化に伴い、再計算される。しかし、今回は環境変化のトリガ検知は手動で行ったため、今後、トリガの自動検知が必要である。今後、人的感覚を持つ環境評価機能が実現すれば、病棟やICUでの患者監視の自動化が可能となる。例えば、病棟スタッフは、複数の患者の状態を同時に監視して、適切な患者対応行動を行っている。そこで3秒ルールインテリジェンスによる人的感覚を持つ患者様子見機能が実現すれば、対応の緊急度を自動的に判断することが可能となり、経験の少ない医療スタッフでも対応の優先順位を即時に知ることができ、余裕のある患者対応が実現する。今後、熟練スタッフが観察している要素を、ベイジアンネットワークに追加して、客観的にエビデンスを設定することができれば、3秒ルールインテリジェンスは熟練スタッフに近い意思決定を行うことが可能となる。更に3秒ルールインテリジェンスは設定されたエビデンスを示すことができるため、意思決定の根拠を明確に示すことができ、信頼できる汎用人工知能(GAI: General Artificial Intelligence)への展開が期待できる。今後、実現が求められる汎用人工知能は判断根拠を示すことが必要である15)16)。
謝辞
本研究はJSPS科研費 20K11983の助成を受けた。
本研究に助言と貴重な情報を頂いた広島国際大学の橘昌幸教授と九大病院の福永淳一先生に感謝申し上げる。
引用文献
1)エリック.R・カンデル,記憶のしくみ 上,講談社,2013
2)小林春雄他:「神経情報生物学入門」,オーム社,1990
3)松本元・大津展之:「神経細胞の生物学的特性」,培風館,1992
4)伊藤薫:「脳と神経の細胞学」,培風館,1975
5)Armand M.de Callatay,島田禎晉訳:「人間の脳と人工知能」,丸善株式会社,1991
6) 「IBMが2nm半導体プロセスの試作成功、研究トップに聞く「ムーアの法則」の将来」,
日経クロステック,2021年5月13日
7) 持田 信治,池添 律代,矢鳴 虎夫:「判断マトリクスを使用した内部状態モデル構築に関する研究」,バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 6 巻 1 号,10-16,2004
8)持田 信治,橘 昌幸:「人の観点から見た環境評価に関する研究」,BMFSA学会誌 VOL11 NO.2 PP.25‐31
9) リンゼイ/ノーマン:「情報処理心理学入門Ⅰ(感覚と知覚)」,サイエンス社,1984
10) リンゼイ/ノーマン:「情報処理心理学入門Ⅱ(注意と記憶)」,サイエンス社,1984
11) 持田 信治:「3秒ルールAI実現に関する研究」,日本経営システム学会第62回全国研究発表大会講演論文集,138-139, 2019
12)牧下寛,松永勝也:「自動車運転中の突然の危機に対する制動反応の時間」,人間工学,38巻6号 pp.324-332,2002
13)山下昇:「車間距離より車間時間を取ろう」,セイフティエクスプレス企業開発センター,6月号,2008
14) 藤田一弥:「見えないものをさぐる」,オーム社,2015
15) 持田 信治:「3秒ルールインテリジェスを用いた患者様子見行動の模擬に向けた基礎研究」,BMFSA2020年次大会予稿集,pp.150-153,2020
16)「人間中心のAI社会原則の草案,人間中心のAI社会原則検討会議」,内閣府,2018年12月
17)「もうブラックボックスじゃない 根拠を示してAIの用途拡大」,NIKKEI ELECTRONICS 2018.09,53-58

患者様子見行動の自動化
ヒット: 2 開く 保存
状況
放射線治療現場において、患者のふらつきが検知され、患者リスク(支援必要性)が上昇した状況。
行動
3秒ルールインテリジェンスが環境変化を検知し、ベイジアンネットワークを用いて患者支援行動の必要度を再計算。
結果
患者支援の必要性がしきい値を超えたことを示し、医療スタッフの判断に近い行動判断と自動化の可能性が示された。
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詳細コンテキスト
【分析:状況】
放射線治療現場において、患者のふらつきが検知され、患者リスク(支援必要性)が上昇した状況。
【分析:行動】
3秒ルールインテリジェンスが環境変化を検知し、ベイジアンネットワークを用いて患者支援行動の必要度を再計算。
【分析:結果】
患者支援の必要性がしきい値を超えたことを示し、医療スタッフの判断に近い行動判断と自動化の可能性が示された。
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【本文】
3秒ルールインテリジェンスによる意思決定
Decision-making based on Three-Second rule Intelligence
持田 信治*
Shinji Mochida
3秒ルールインテリジェンスは3秒後までの状況予測値に基づいて行動判断を行う人工知能であり、本研究はプロジェクトマネジメントにおけるリスク対策の発動と患者様子見行動における支援行動実施に対する意思決定への3秒ルールインテリジェンスの応用を検討した。そこで、3秒ルールインテリジェンスを用いた意思決定の可能性が示されたので報告する。
キーワード:3秒ルールインテリジェンス、ベイジアンネットワーク、様子見行動、プロジェクト
Ⅰ.はじめに
研究の目的
 3秒ルールインテリジェンスは、人と同じプロセスで意思決定を行う人工知能であり、人の脳で行われる意思決定を模擬する。人の大脳内には神経細胞(ニューロン)が約100億個あり、脳全体の神経細胞は1000億個あるとされる1)。神経細胞は核と樹状突起と信号伝送路に当たる軸索から構成され、樹状突起は信号入力をつかさどる受容体を持つ(図 1参照)。神経細胞間の信号伝達はシナプス間隙において行われており、1つの神経細胞は数千以上のシナプスを持つとされる。シナプスとは神経細胞同士の接続部分のことであり、特定の信号がシナプス前部に積み重なるとシナプスに於いて信号伝達が行われる。シナプス間隙上の信号伝達は科学物資の量と組み合わせで表現されるため、各シナプスは高度な情報処理を行っていると考えられる。シナプスは人では10兆個あるとされ、10兆個のシナプスの結合により経験が記録され、外部刺激により状況判断と行動発現がなされる2)-5)。一方、ニューロン内の伝達速度は概ね、1m/秒から100m/秒であり、最近のCPU(中央処理演算装置)は約100億程度のトランジスタ(7nm製造プロセスの場合)で構成され、3Ghz(1秒間に30億回の振動数)程度で動作する6)。人の神経細胞の動作速度はCPUに比べて低速であるにも拘わらず、人が高度な行動選択できる理由は、脳は並列に状況判断を行い、微小時間後に実行可能な行動候補を用意しているからであると考えられる7)8)。そこで、本研究では、微小時間を3秒と定義する。従って、慣れた行動は3秒以内に行動候補として直ちに用意されるのに対して、不慣れな行動候補は遅れて用意されるため、行動の慣れが発生する。そして優先順位が均衡する複数の行動候補が並列に用意されている状態が迷いであり、遅れて行動候補が準備され、行動選択が混乱する状態が後悔である。
図 1 神経細胞
Ⅱ. 3秒ルールインテリジェンス
1.人の行動判断
人は行動選択に当たって、微小時間周期で次に実行可能な行動候補を選び出して、行動選択を行っており、行動候補は過去の経験と知識から選択される7)8)。本研究での微小時間は3秒である。そこで、3秒ルールインテリジェンスは3秒後に実行可能な行動候補を人と共有することにより、人が理解可能な判断プロセスによる行動選択が実現する。3秒ルールインテリジェンスは3秒後に実行可能な行動候補の準備を行い、行動選択トリガ観察機能により行動選択を行う。行動選択トリガとは環境情報を心理的次元で配置したものの中で最優先位置にあるものであり、行動選択を左右する要因である9)。そして心理的な重み付けを行った行動選択トリガの発現観察を行うことにより、人と同じ概念駆動型処理を可能とする10)。3秒ルールインテリジェンスは経験データベースから現状認識情報をキーにして、3秒後に実行可能な行動候補を準備する。そして、ベイジアンネットワークにより、3秒後に実行可能な行動候補の優先順位を決定する。経験データベースは遷移情報を持ち、遷移情報は、現在状況と行動実行後の状況情報から構成される。行動遷移時間は3秒間である(図 2参照)。本研究では遷移情報をヒヤリハット報告やインシデントレポートから収集した。遷移情報は初期状況情報と3秒後の遷移情報を持つ。3秒間は人の行動選択の周期である。例えば、車両運行に於いて、人は3秒周期で、現在から3秒後までの遷移空間を構築することにより、運転操作における事故回避を行っている。
図 2 3秒間の遷移空間
図 3 運転操作における遷移空間
2. 人の行動予測と3秒ルールインテリジェンス
人が、直ぐに行動判断ができるのは、人は微小時間後に到達可能な遷移空間を事前に構築して状況予測を行いながら、行動選択を行っているからである11)。微小時間とは3秒である。例えば、車両運転に於いて、先行車との安全な推奨車間距は速度計の示す値から15を減じた距離である、例えば、時速60km/h の場合の推奨車間距は45mである。時速60km/hの車の速度は約17m/秒であるため、45m/17m≒3秒となり、推奨される車間距離を時間的に表すと約3秒となる12)。一方、車両運転に於ける安全な車間距離を時間で表すと、2秒から3秒と言われており、車間距離が1.8秒を切ると人は不安を感じると言われている13)。また、報告者のビジネスシステム開発の経験から、エンターキーを押した後のシステム応答時間が3秒以内であればシステム利用者は概ね良好な操作感を得る。しかしシステム応答時間が5秒を超えるとシステム利用者は不満を感じ、システム応答時間が10秒を超えるとシステム利用者はシステムに対する改善を要求するという状況からも、人は現時点から3秒後までの行動予測空間を構築しており、行動予測空間内で状況が進む場合には安心感を得ることができ、3秒後の状況が不確実になると不安やいらつきを感じると考えられる。以上から人は現時点から3秒後までの行動遷移空間を持って行動をしていると判断できる。
Ⅲ. ベイジアンネットワーク
1.ベイジアンネットワーク
ベイジアンネットワークとはある事象(親)と事象に関係する要因(子)との因果関係を有効グラフで表現したものであり、ベイジアンネットワークは親ノードと子ノードの因果関係を確率的な関係で表現しており、ベイジアンネットワークの親ノードは親(世界)が取りうる状況が発現する確率を表す14)。ベイジアンネットワークは信念ネットワークとも呼ばれ、条件付き確率テーブル上の確率値を主観的に設定することにより、人の主観を確率計算に反映できる。従って、条件付き確率テーブルに設定する確率値を主観的に設定することにより、ベイジアンネットワークは不確実な状況を表現することが可能である。そして子ノードの条件が確定することにより、親(世界)が取りうる状況の確率が計算される。子ノードの条件が確定することを、エビデンスをセットすると呼び、事実や状況が判明した場合には、子ノードにエビデンスが設定され、子ノードが親ノードに与える確率が決定する。以下にベイジアンネットワークを用いた計算例を示す。本例はプロジェクトが計画通りに終了する確率計算の例を示す。本例では条件付き確率とベイズ推定の式(1)を使用してプロジクトリスクを推定する。プロジクトリスクとは、プロジェクトが計画通りに終了しない確率、つまりプロジェクトの遅延確率である。以降、プロジェクトリスクとはプロジェクトの遅延確率であるとする。プロジェクトの遅延が発生すると費用超過や契約違反となり、費用的な損害が発生する。
(1)
A:親(世界)が取りうる状況に対する確率  B:子供(世界を説明する条件)を示す確率
本例ではプロジェクトが計画通りに終了する確率とスタッフからのプロジェクトの進捗に関するレポートの信頼性との関係を考え、プロジェクトが計画通りに終了する確率をA、そしてスタッフからの進捗に関するレポートの信頼性を示す確率をBとする。ここで、A=0.9、B=0.7とすると、プロジェクトが実行される世界の確率状況は図 4となる。ベイジアンネットワークはある事象が取りうる世界の確率的関係を示し、エビデンスが設定されると世界が変化する。
図 4 報告を受ける前の世界確率の図
次に機械学習システムのWeka (Waikato Environment for Knowledge Analysis) 14)を使用してプロジェクトが実行される世界の確率状況を表現した様子を図 5に示す。図 5、図 6と表 1、表 2はWeka上のProjectノードとReportノードに確率を与えている様子を示す。一般的にプロジェクトは10%程度遅延することが知られているため、表 1と図 5に示す様にプロジェクトが計画通り終わる確率は0.9に設定している。ただし、Wekaのベイジアンネットワーク表示では確率0.9は9000、そして確率0.7は6599と表示されている。
表 1 Weka上のProjectノードの条件付き確率
表 2 Weka上のReportノードの条件付き確率
図 5プロジェクトのベイジアンネットワーク表示
図 6 ProjectとReportノードの条件付き確率テーブルに確率値を与えている様子
次に、表 3と図 7はスタッフがプロジェクトの進捗は計画通りと報告した後のプロジェクトの実行世界を示しており、Aの確率は式(2)に示す通り0.95となる。図 8はWekaで確率を計算した様子を示す。本例でのエビデンスはスタッフのプロジェクトの進捗は計画通りとの報告である。ベイジアン推定ではエビデンスと呼ばれる状況報告が与えることにより、確率世界が変化する。
表 3 報告を受けた後の世界確率(抹消線の世界が削除された)
図 7報告を受けた後の世界確率の図(網掛けの部分の世界が消えた)
(2)
図 8 報告を受けた後のベイジアンネットワーク表示
2.プロジェクトに於ける遅延分析の必要性
複数の要素が存在するベイジアンネットワークの例として、プロジェクトリスクを算出する例を示す。プロジェクトリスクとはプロジェクトの予算超過と行程遅延を引き起こすリスクである。プロジェクトではプロジェクトリスクを避けるために、プロジェクトマネジメントにより、事前にリスクの洗い出しが行われ、プロジェクトリスクとリスク発現トリガとリスク発現時の対策をまとめたリスク管理表を作成しており、リスク発現トリガが観察されるとリスク対策が発動される。リスク発現トリガとはあるリスクが発現と判断するための環境状況である。しかし、リスク対策を発動すると経営資源を消費するため、リスク対策の発動には高度な意思決定が必要である。つまり、リスク対策発動には様々な状況を考慮する必要である。プロジェクトリスクが生じる主な要因として、顧客からの要求仕様の精度やプロジェクトマネージャーやプログラマーのスキルと見積もり精度がある。図 9はプロジェクト中の要因の関係をベイジアンネットワークで表現した様子であり、表 4は図 9に示すベイジアンネットワークの各要因が取り得る値を示す15)。図 10中の親ノードはプロジェクトの遅延確率(PPD)であり、子ノードにエビデンスが与えられると親ノードが示すプロジェクトの遅延確率(PPD)が変化する。
表 4 ベイジアンネットワーク中の要因の内容
図 9プロジェクトリスクを示すベイジアンネットワーク
3.遅延予測
表 4に示すベイジアンネットワークの要素をWeKaで表現したものを図 10に示す。図 10中のプロジェクトの遅延確率(PPD)はPro+と表現される。ベイジアンネットワークの初期状態は図 10に示す通り、プロジェクトの遅延確率(PPD)は0.5である。一般的にベイジアンネットワークの初期値は主観値であるので、遅延する場合としない場合は共に0.5である。表 5プロジェクト中の各リスク要因とプロジェクトの状態との関係を示す。プロジェクトの状態とはプロジェクトが遅延するか計画通り進捗するかである。表 5の条件付き確率は5人のプロジェクトマネージャーからヒアリングした値の平均であり、主観値である。そして、図 10に示すPPDのPro+とPro-の値を0.5に設定した後に各子ノードに示される確率値の計算要領を図 11に示す。例えば、図 11のAEのLow値は0.4であり、計算要領は以下の通りである。
0.5(Pro+)×0.7(支援必要 Low)=0.35
0.5(Pro-)×0.1(支援不要 Low)=0.05
0.35+0.05=0.4 AE(Low)
但し、図 10の同値は0.399と表示されている。
図 10 リスクのベイジアンネットワーク表現
図 12 リスク予測(Case1)
図 11 子ノードに表示されている確率の計算要領
次に、ベイジアンネットワークにエビデンスを与える。Case1のエビデンスの組みあわせはAE:見積精度とSPM:プロジェクトマネージャーのスキルがStandard、STP:プログラマーのスキルがHigh、AR:要求仕様の精度がLowであり、この時プロジェクトが遅延する確率は約0.26となる(表 6、図 12参照)。
図 13 プロジェクトの費用
表 5 プロジェクトの条件付き確率
表 6 リスク要因の組みあわせ状況と遅延リスク
表 6にCas1からCase6までのエビデンスを与えた時プロジェクトの遅延リスクを示す。一般的にプロジェクトマネージャーとプログラマーのスキルはStandardであるため、プロジェクトの遅延確率は10%程度であり、一般的なプロジェクトマネジメントの許容範囲内である(図 13参照)。そこで、プロジェクトの遅延のしきい値を20%と設定した場合、表 6のCASE1に示す様に要求仕様がLowであることが判明した場合にはプロジェクトの遅延確率が20%を超えるので、プロジェクトリスク対策の発動が必要となり、3秒ルールインテリジェンスはプロジェクトリスク対策の発動を指示する。例えば、プロジェクトリスク対策としてスキルがHighのプロジェクトマネージャーを投入することが考えられる。一般的なプロジェクトでは、Stndardのスキルを持つプロジェクトマネージャーとプログラマーがプロジェクトを実行する。しかし、顧客の要求仕様の精度は不確実であるため、顧客からの要求仕様の曖昧さや仕様変更がプロジェクトリスクを左右する。
Ⅳ.  患者への様子見行動と患者対応
1.患者監視自動化の必要性
現在、医療現場では、患者確認に於けるダブルチェックや手順の標準化が進められている7)8)。しかし、例外的な事象が起きた場合の対応は人の判断に頼らざるを得ず、医療スタッフの経験度により、対処時間や対処方法が異なる。そこで、高度な判断できる熟練医療スタッフが求められる。加えて、医療現場では近年、安全監視と記録業務が増加しており、医療スタッフの時間的余裕が減少して、ストレスの高い職場となっている。そこで、本研究は3秒ルールインテリジェンスを用いた人的感覚を持つ環境評価機能を提案する。そして、本研究が目指すのは医療スタッフによる患者への様子見行動の自動化である15)。患者への様子見行動とは不安定な患者の事故防止のための、医療スタッフによる患者観察行動であり、様子見行動はスタッフがある一定時間、患者への対応行動を保留して、患者リスクの発現を観察する行動である。患者様子見行動は患者が治療室に移動する場合や、治療中は患者の動作は限定的であるため、人工知能が患者を観察できれば、スタッフの業務軽減が図れる。更に工知能に患者観察を任せることにより、スタッフは次の業務の準備作業等が可能となり業務に余裕が生まれる。様子見行動は患者観察を含む状況判断とスタッフの経験により行われる行動であり、人工知能による患者様子見行動が可能になれば人と人工知能による協働作業実現が実現する。
2.患者リスクの評価
医療現場では、安全のために患者確認に於ける2重チェックや手順の標準化が進められている15)。しかし、例外的な事象が起きた場合の対応は人の判断に頼らざるを得ず、熟練医療スタッフの経験に基づく対処が求められる。そこで、本研究は熟練医療スタッフに近い状況判断機能の実現を目指して、3秒ルールインテリジェンスを放射線治療現場に応用した。表 7に放射線治療における環境要因と要因の略称を示す。環境要因は医療スタッフからのヒアリングにより取得した。本研究では、ベイジアンネットワークにより算出した患者リスクにより、状況判断を行う。患者リスクとは患者に拘わる事故発生確率のことであり、本研究では患者リスクを患者への支援の必要性とみなす。従って、患者リスクが上昇すると患者への支援必要性が上昇することとなる。患者支援の必要性があるしきい値を越えると患者への支援が必要となる。放射線治療装置は治療を行う機械であり、今後、治療環境に関する情報の取得を機械信号として取得することが可能であり、環境状況取得の精度向上が期待できる。
表 7 患者を取り巻く環境とベイジアンネットワークの要素
3.患者様子見行動分析
患者への様子見行動とは不安定な患者の事故防止のための、医療スタッフによる患者観察行動のことである。図 14は医療スタッフが患者の様子を観察している状況を示しており、縦軸は患者リスクを示し、横軸は時間軸である。図 14に示す、患者が問題無しの領域にある場合には、医療スタッフは患者を観察する必要のない状況であることを示す、例えば患者が検査に行っている状態である。次に患者が様子見状態にある場合には医療スタッフが患者を観察する必要がある状況であり、更に、患者が事故発生確率大の領域に入った場合には、患者リスクが高い状況であり、患者への支援が必要となる。例えば患者への支援行動として、患者への声掛けや治療中断がある。様子見行動は医療スタッフが患者への対応行動を保留して患者の様子を観察する行動であり、人工知能が患者を観察できれば、医療スタッフの業務軽減が図れる。そこで、本研究は医療スタッフの患者への様子見行動の模擬を目指して、3秒ルールインテリジェンスの放射線治療への適応を試みた。ベイジアンネットワークの親ノードが示す確率値は医療スタッフ経験に基づく患者リスク値を示している。本研究では、ベイジアンネットワークにより算出された患者リスク値は3秒後の患者支援行動の必要度合いを示している。そして、環境要因の変化に従い、ベイジアンネットワークの再計算を実行する。ベイジアンネットワークが示す患者リスクは患者支援行動の必要度合いを示し、患者支援行動の必要度合いがあるしきい値を越えた場合には患者への支援行動が必要となる。図 15に本研究で設定したベイジアンネットワークを示す。図 15中の略称は表 7の通りであり、表 8はベイジアンネットワークに設定した条件付き確率テーブルを示している。表 8の各数値は医療スタッフからのヒアリングにより取得しており、医療スタッフの経験値を反映している。
図 14 状況判断
図 15 治療環境のベイジアンネットワーク(初期状態)
表 8 患者支援モデルのテーブル例
親テーブル(RISK)
条件付き確率子テーブル(SKIL,PAT,METH,ENV)
4.患者様子見の評価
 3秒ルールインテリジェンスは経験データベースを持ち、経験データベースは経験ルールを持ち、経験ルールは現在情報と3秒後情報に加えて、発現したリスク情報を持つ。経験ルールはヒヤリハット情報から抽出しており、スタッフの経験を反映している。本研究ではヒヤリハット情報から抽出した、環境の時間的変化を3秒間の状態遷移状況と見なして、経験ルールに記述する。経験ルールはXML形式で登録される(エラー! 参照元が見つかりません。参照)。本研究では、環境監視において、特定な環境変化情報が検知されると関連した経験ルールが選択される(表 9参照)。本研究では特定な情報を経験トリガと呼ぶ。環境情報の監視下で、経験トリガが検知されると該当する経験ルールが選択され、ベイジアンネットワーク中の指定されたエビデンスが設定される。例えば患者のふらつきが検知された場合には、患者の状態判断を行う経験ルールが選択され、患者の状態が悪いことを示すエビデンスがベイジアンネットワークに設定される。図 15に患者監視の初期状態を示す。初期状態での患者への支援必要性値は図 15に示す通り、0.5である。そして、患者のふらつきが検知されると、患者の状態が悪いことを示すエビデンスがベイジアンネットワークに設定され、図 16に示す通り、患者への支援の必要性を示す値が0.83となる。若し、患者様子見行動が継続する場合の患者リスク値を0.5から0.7の間とすると(図 14参照)、患者様子見行動のしきい値の0.7を超えたため、患者への支援が必要となる。従って本結果は、3秒ルールインテリジェンスは医療スタッフの判断に近い行動判断が可能であることを示し、3秒ルールインテリジェンスによる患者様子見行動の自動化の可能性を示す。図 17にヒヤリハット情報から抽出した経験ルールをXML形式で登録した例を示す。本研究では、トリガに記述された環境要因を監視する、トリガの自動監視ができれば、患者様子見行動の自動化が実現する。本例では患者の動きを観察して、手動でエビデンスを与えた。
表 9 エビデンス設定のトリガ
図 16 治療環境のベイジアンネットワーク(エビデンスの設定後)
図 17  登録したヒヤリハットデータの例
Ⅴ. 考察とまとめ
本研究は3秒ルールインテリジェンスを用いた意思決定を検討した。3秒ルールインテリジェンスは3秒後までの状況予測値に基づいて行動判断を行う人工知能であり、3秒後の予測値をベイジアンネットワークにより算出する。そこで。本研究はプロジェクトマネジメントにおけるリスク対策の発動と患者様子見行動における支援行動の実行に対する意思決定への3秒ルールインテリジェンスの応用を検討した。プロジェクトマネジメントにおけるリスク対策の発動では3秒ルールインテリジェンスは熟練のプロジェクトマネージャーに近い判断を示した。具体的には、複数のプロジェクトリスク要因がある中で顧客の要求仕様の精度が低いことが検知された場合には速やかにリスク対策を行う意思決定を示した。リスク対策とは、例えば、熟練のシステムエンジニアによる仕様書の見直しである。次に本研究では、患者様子見行動に於ける患者支援活動の必要性判断を試行した。試行の結果、3秒ルールインテリジェンスによる意思決定の自動化の可能性が示された。患者様子見行動に於ける意思決定とは医療スタッフによる患者支援を実行することである。3秒ルールインテリジェンスは環境監視を行い、トリガの発現を観察する。トリガの発現が検知されると対応行動の出現確率が計算される。プロジェクトリスク監視では、トリガは要求仕様の精度やプログラマーのスキルであり、プログラマーのスキルはプログラムミスの回数を観測することにより客観的に設定できる。また、患者リスクの監視に於けるトリガは患者の状態やスタッフの状態であり、患者の状態はカメラやマイクを使用して患者状況を自動監視することが可能である。3秒ルールインテリジェンスは人と同じ視点で環境要因を監視することにより、人の感覚に近い環境監視を行うことが可能である。特に、患者の様子見行動では患者支援行動の必要性を数値で示し、患者様子見行動の自動化の可能性を示した。患者支援の必要性を示す数値は環境の変化に伴い、再計算される。しかし、今回は環境変化のトリガ検知は手動で行ったため、今後、トリガの自動検知が必要である。今後、人的感覚を持つ環境評価機能が実現すれば、病棟やICUでの患者監視の自動化が可能となる。例えば、病棟スタッフは、複数の患者の状態を同時に監視して、適切な患者対応行動を行っている。そこで3秒ルールインテリジェンスによる人的感覚を持つ患者様子見機能が実現すれば、対応の緊急度を自動的に判断することが可能となり、経験の少ない医療スタッフでも対応の優先順位を即時に知ることができ、余裕のある患者対応が実現する。今後、熟練スタッフが観察している要素を、ベイジアンネットワークに追加して、客観的にエビデンスを設定することができれば、3秒ルールインテリジェンスは熟練スタッフに近い意思決定を行うことが可能となる。更に3秒ルールインテリジェンスは設定されたエビデンスを示すことができるため、意思決定の根拠を明確に示すことができ、信頼できる汎用人工知能(GAI: General Artificial Intelligence)への展開が期待できる。今後、実現が求められる汎用人工知能は判断根拠を示すことが必要である15)16)。
謝辞
本研究はJSPS科研費 20K11983の助成を受けた。
本研究に助言と貴重な情報を頂いた広島国際大学の橘昌幸教授と九大病院の福永淳一先生に感謝申し上げる。
引用文献
1)エリック.R・カンデル,記憶のしくみ 上,講談社,2013
2)小林春雄他:「神経情報生物学入門」,オーム社,1990
3)松本元・大津展之:「神経細胞の生物学的特性」,培風館,1992
4)伊藤薫:「脳と神経の細胞学」,培風館,1975
5)Armand M.de Callatay,島田禎晉訳:「人間の脳と人工知能」,丸善株式会社,1991
6) 「IBMが2nm半導体プロセスの試作成功、研究トップに聞く「ムーアの法則」の将来」,
日経クロステック,2021年5月13日
7) 持田 信治,池添 律代,矢鳴 虎夫:「判断マトリクスを使用した内部状態モデル構築に関する研究」,バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 6 巻 1 号,10-16,2004
8)持田 信治,橘 昌幸:「人の観点から見た環境評価に関する研究」,BMFSA学会誌 VOL11 NO.2 PP.25‐31
9) リンゼイ/ノーマン:「情報処理心理学入門Ⅰ(感覚と知覚)」,サイエンス社,1984
10) リンゼイ/ノーマン:「情報処理心理学入門Ⅱ(注意と記憶)」,サイエンス社,1984
11) 持田 信治:「3秒ルールAI実現に関する研究」,日本経営システム学会第62回全国研究発表大会講演論文集,138-139, 2019
12)牧下寛,松永勝也:「自動車運転中の突然の危機に対する制動反応の時間」,人間工学,38巻6号 pp.324-332,2002
13)山下昇:「車間距離より車間時間を取ろう」,セイフティエクスプレス企業開発センター,6月号,2008
14) 藤田一弥:「見えないものをさぐる」,オーム社,2015
15) 持田 信治:「3秒ルールインテリジェスを用いた患者様子見行動の模擬に向けた基礎研究」,BMFSA2020年次大会予稿集,pp.150-153,2020
16)「人間中心のAI社会原則の草案,人間中心のAI社会原則検討会議」,内閣府,2018年12月
17)「もうブラックボックスじゃない 根拠を示してAIの用途拡大」,NIKKEI ELECTRONICS 2018.09,53-58

放射線治療現場におけるヒヤリハット情報のデータベース化
ヒット: 1 開く 保存
状況
放射線治療現場において、医療スタッフの経験度により対処方法が異なることや、安全監視強化によるスタッフのストレス増大が課題となっていた。
行動
放射線治療に従事する医療スタッフ2名からヒヤリハット報告を収集し、発生時の初期状態、要因、3秒後の状態、改善策を含む経験データベースを作成した。
結果
医療スタッフの主観的な経験値を反映した条件付き確率テーブルを構築し、ベイジアンネットワークを用いた患者リスク算出モデルの基礎データとして活用可能となった。
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詳細コンテキスト
【分析:状況】
放射線治療現場において、医療スタッフの経験度により対処方法が異なることや、安全監視強化によるスタッフのストレス増大が課題となっていた。
【分析:行動】
放射線治療に従事する医療スタッフ2名からヒヤリハット報告を収集し、発生時の初期状態、要因、3秒後の状態、改善策を含む経験データベースを作成した。
【分析:結果】
医療スタッフの主観的な経験値を反映した条件付き確率テーブルを構築し、ベイジアンネットワークを用いた患者リスク算出モデルの基礎データとして活用可能となった。
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【本文】
1. はじめに
現在、医療環境では、安全のために、患者確認に於ける2重チェックや手順の標準化が進められている[1]。しかし、例外的な事象が起きた場合の対応は人の判断に頼らざるを得ず、医療スタッフの経験度により、対処時間や対処方法が異なる。加えて、近年、安全監視強化に伴い医療スタッフの時間的余裕が減少して、ストレスの高い職場となっており、安全監視の自動化が求められている[2]。そこで、本研究は3秒ルールインテリジェンスを用いた医療事故防止用人的感覚を持つ環境監視機能を提案する。3秒ルールインテリジェンスはベイジアンネットワークを使用して、人の時系列的な意思決定の揺らぎの模擬を行う。3秒ルールインテリジェンスは人の判断プロセスに近い判断プロセスで安心感のある判断を目指しており、リアルタイムな画像情報や音声情報に基づいて、人の感覚に近い判断を目指している。しかも、3秒ルールインテリジェンスは人の時間的な意思決定の揺らぎを模擬するため、人の判断に近い判断を行うため、判断の信頼性を向上させることが可能である。そこで、本研究は患者の動作が限定的とされる放射線治療現場への応用を目指して、本手法の有効性や課題を実証的に検証した。
2.様子見行動の自動化に向けて
人は行動選択に当たって、微小時間周期で次に実行可能な行動候補から行動選択を行っている。行動候補は過去の経験と知識を反映する[3][4]。そこで、3秒ルールインテリジェンスでは、まず現状認識を行い、3秒後に実行可能な行動候補を選択して、行動選択確率値があるしきい値を越えた場合に、行動選択の意思決定が実行される。行動選択確率はベイジアンネットワークにより取得する。行動候補の選択確率が変動する過程は、人の意思決定がゆらいでいる状態に対応している。図 1に示す様に3秒ルールインテリジェンスは経験データベース、行動発現確率計算機能(ベイジアンネットワーク)と行動選択機能から構成される。3秒ルールインテリジェンスは行動選択トリガの発現を観察して、発現した行動選択トリガの組み合わせにより現状が認識され、現状認識に従った行動候補の発現確率が計算される。従って、発現が観測された行動選択トリガの種類と組み合わせが行動選択を左右する。行動選択トリガとは行動が選択される直前に出現した環境や行動状況のことであり、行動選択トリガの出現を観察することにより、行動候補が選択され、行動選択の模擬が可能となる。
図 1 3秒ルールインテリジェンス
3.患者の様子見行動の実現にむけて
3.1 研究手法
本研究で観察する行動選択トリガは図2に示す通り、医療スタッフのスキル、治療内容の特殊性、患者の状態、医療スタッフの業務ストレスの状態であり、ベイジアンネットワークの各子ノードに対応する。一方、ベイジアンネットワークの親ノードは患者支援行動の発現確率を示す。患者対応行動には患者の観察、様子見と患者支援行動がある。患者支援行動には声掛けにつづいて、患者補助行動がある。本研究では、患者様子見と患者支援行動の間にはある敷居値があり、患者支援行動の発現確率を患者リスクと定義して、患者リスクがある敷居値を超えると患者支援行動が発現されるとする。本研究における、経験データベースは放射線治療に従事する医療スタッフ2名のヒヤリハット報告に基づいて作成した(図 1参照)。経験データベースは現在状況と状況に関する状態遷移情報を持ち、ヒヤリハット発生時の初期状態、発生要因、3秒後の状態、考えられる改善策を含む。作成した経験データベース中のヒヤリハット情報の例を図3に示す。
図 2ベイジアンネットワークのノード
図3 作成したヒヤリハット情報の例(一部)
本研究の子ノードに設定した条件付き確率テーブルの設定値も医療スタッフからのヒアリングによる医療スタッフの主観的な値であり、医療スタッフの経験値を反映している。3秒ルールインテリジェンスは行動選択トリガを元に患者と環境情報を観察して、算出した患者リスクがあるしきい値を超えた場合に患者支援行動実施の意思決定を行う。
3.2 患者リスクの算出
本研究では行動選択トリガの発現を観察することにより患者支援の必要性を観察する。表1に患者を取り巻く環境要因の例を示す。本研究では行動選択トリガをベイジアンネットワークの子ノードに設定して、患者リスクを算出する。そして本研究は算出した患者リスクを患者への支援の必要性と定義して、患者リスクの上昇と患者への支援の必要性を観察する。
表 1 患者を取り巻く環境要因
3. 3 患者支援行動の発現
患者様子見では患者支援行動に先立って発現する行動選択トリガを観察する。行動選択トリガの発現度合いにより患者リスクが上昇して患者支援行動が実行される。図4は縦軸が患者リスク、横軸が時間を表し、医療スタッフが患者リスクを観察している状況を示している。本研究では患者リスクを患者支援行動の必要度合いと定義して患者支援行動の必要性を求める。図4に示す患者リスクは患者支援行動発現確率である。本研究では患者リスク値をΔt 毎に再計算して、行動選択トリガの変化に伴う患者リスク値が、あるしきい値を越えた場合には患者への支援行動が必要と判断する。本研究ではΔtは3秒である[5]。図4に示す安全範囲とは、患者の観察が不要な状況であり、患者が検査に行くなどして、患者が治療室にいない場合である。そして、患者が治療室内に入ると患者様子見となり、患者の観察が必要となる。更に、患者リスクが図4に示す支援必要な領域に入ると患者への支援が必要となる。図4中の患者A1は治療室に入ると患者様子見対象患者のA2となり、更に次の観察時間のΔt中に行動選択トリガである、ふらつきが観察されると患者支援行動が必要なA3の状態となり、声掛け等の患者支援行動が実行される。一方、患者B1は一旦、患者様子見の対象であるB2となった後、観察時間であるΔt間に行動選択トリガが観察されず、更に検査に行くなどして、治療室を退出すると、患者リスクが安全範囲内に入りB3の状態となり、医療スタッフによる患者観察は不要な状況となる。図5に示すベイジアンネットワークの要素は表1の通りである。表2と表3はベイジアンネットワークの各ノードに設定した条件付き確率テーブルの値を示す。図5にWeka(Waikato Environment For Knowledge Analysis)を使用したベイジアンネットワークを示す。図5の医療スタッフのスキル(SKIL)の初期値のHighは 0.4、Standardが0.25、Lowが0.35である。図5の同値は0.399と表示されている。図5のSKILのHigh 値である0.4の具体的な計算要領を以下に示す。この時の患者リスク(RISK)の初期値はTREATとWATCH共に0.5である。TREAT は患者への支援行動の発現確率であり、本研究では患者支援の必要性と定義している。WATCHは 患者様子見行動の発現確率である。
0. 5 (TREAT) ×0.1 (支援必要:High) = 0.05
0. 5 (WATCH) ×0.7 (支援不要:High) = 0.35
0.05 + 0.35 = 0.4 (High)
図 4 患者リスク観察と行動判断状況
表2 患者支援行動モデルの例親テーブル(RISK)
表3 スタッフのスキル(SKIL)の条件付き確率
図5患者リスク算出ベイジアンネットワーク
図6患者(PAT)に悪いエビデンス(Low)を設定
そして、患者の蛇行(ふらつき)が検知されると、ベイジアンネットワークのPATにLowに設定され、図6に示す通り、患者リスク値(RISK)のTREATが0.83となり、しきい値が0.7の場合、しきい値を越えたので、患者への支援が必要との意思決定がなされる。
3. 4 患者支援行動選択の自動化
本研究はエビデンスの自動取得を目指して、更にベイジアンネットワークの細分化を行った。図7に患者の歩行(walk)が確認された場合のPAT(患者状態)のリスクを算出するベイジアンネットワークを示す。各ノードの説明を表4に示す、ここで、患者のふらつきが検知されると図8のベイジアンネットワークに示す様に患者の状況(PAT)が0.53となり、患者リスクが増加する。
表4 ベイジアンネットワークのノードの説明
図7 患者の状態(PAT)算出用ベイジアンネットワーク(患者の歩行確認)
図8 患者の状態(PAT)算出用ベイジアンネットワーク(患者のふらつき確認)
4. まとめ
本研究は患者支援行動の自動化を目指して、試行を行った。試行の結果、行動選択トリガを細分化することにより行動選択トリガの自動検知の可能性を示した。今後、患者様子見の自動化を実現するためには環境情報と患者情報の自動取得を進めることが必要である。患者基本情報は医療システムから受信することが可能であり、ふらつき等の患者状況はカメラからの自動取得が可能である。今後、更なる行動選択トリガの細分化により、患者支援行動の自動化が期待できる。
謝辞
本研究はJSPS科研費 基盤研究(C) 20K11983の助成を受けた。更に本研究に助言と貴重な情報を頂いた広島国際大学 保健医療学部 診療放射線学科の橘昌幸教授と九州大学病院 医療技術部 放射線部門の福永淳一先生に感謝申し上げる。
参考文献
[1]持田 信治, 池添 律代,矢鳴 虎夫,バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 6 巻 1 号、10-16、2004
[2] 持田 信治,橘 昌幸:人の観点から見た環境評価に関する研究,BMFSA学会誌 VOL11 (2), pp. 25‐31.
[3]リンゼイ/ノーマン:情報処理心理学入門Ⅲ(言語と思考), サイエンス社, 1984.
[4]甘利 俊一(監修),田中 啓治(編):認識と行動
[5] 山下昇:車間距離より車間時間を取ろう,セイフティエクスプレス企業開発センター, 6月号, 2008.
3秒ルールインテリジェンスによる患者支援行動の自動化検証
ヒット: 1 開く 保存
状況
患者のふらつき等の行動選択トリガを検知し、適切なタイミングで支援を行う必要があった。
行動
ベイジアンネットワークを用いて患者リスクをΔt=3秒ごとに再計算し、リスク値がしきい値(0.7)を超えた場合に患者支援行動が必要と判断するモデルを構築した。
結果
患者のふらつき(蛇行)が検知された際、患者リスク(TREAT)が0.83まで上昇し、しきい値を超えたことで自動的に支援が必要であるとの意思決定が行われることを実証した。
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【分析:状況】
患者のふらつき等の行動選択トリガを検知し、適切なタイミングで支援を行う必要があった。
【分析:行動】
ベイジアンネットワークを用いて患者リスクをΔt=3秒ごとに再計算し、リスク値がしきい値(0.7)を超えた場合に患者支援行動が必要と判断するモデルを構築した。
【分析:結果】
患者のふらつき(蛇行)が検知された際、患者リスク(TREAT)が0.83まで上昇し、しきい値を超えたことで自動的に支援が必要であるとの意思決定が行われることを実証した。
----------------------------------------
【本文】
1. はじめに
現在、医療環境では、安全のために、患者確認に於ける2重チェックや手順の標準化が進められている[1]。しかし、例外的な事象が起きた場合の対応は人の判断に頼らざるを得ず、医療スタッフの経験度により、対処時間や対処方法が異なる。加えて、近年、安全監視強化に伴い医療スタッフの時間的余裕が減少して、ストレスの高い職場となっており、安全監視の自動化が求められている[2]。そこで、本研究は3秒ルールインテリジェンスを用いた医療事故防止用人的感覚を持つ環境監視機能を提案する。3秒ルールインテリジェンスはベイジアンネットワークを使用して、人の時系列的な意思決定の揺らぎの模擬を行う。3秒ルールインテリジェンスは人の判断プロセスに近い判断プロセスで安心感のある判断を目指しており、リアルタイムな画像情報や音声情報に基づいて、人の感覚に近い判断を目指している。しかも、3秒ルールインテリジェンスは人の時間的な意思決定の揺らぎを模擬するため、人の判断に近い判断を行うため、判断の信頼性を向上させることが可能である。そこで、本研究は患者の動作が限定的とされる放射線治療現場への応用を目指して、本手法の有効性や課題を実証的に検証した。
2.様子見行動の自動化に向けて
人は行動選択に当たって、微小時間周期で次に実行可能な行動候補から行動選択を行っている。行動候補は過去の経験と知識を反映する[3][4]。そこで、3秒ルールインテリジェンスでは、まず現状認識を行い、3秒後に実行可能な行動候補を選択して、行動選択確率値があるしきい値を越えた場合に、行動選択の意思決定が実行される。行動選択確率はベイジアンネットワークにより取得する。行動候補の選択確率が変動する過程は、人の意思決定がゆらいでいる状態に対応している。図 1に示す様に3秒ルールインテリジェンスは経験データベース、行動発現確率計算機能(ベイジアンネットワーク)と行動選択機能から構成される。3秒ルールインテリジェンスは行動選択トリガの発現を観察して、発現した行動選択トリガの組み合わせにより現状が認識され、現状認識に従った行動候補の発現確率が計算される。従って、発現が観測された行動選択トリガの種類と組み合わせが行動選択を左右する。行動選択トリガとは行動が選択される直前に出現した環境や行動状況のことであり、行動選択トリガの出現を観察することにより、行動候補が選択され、行動選択の模擬が可能となる。
図 1 3秒ルールインテリジェンス
3.患者の様子見行動の実現にむけて
3.1 研究手法
本研究で観察する行動選択トリガは図2に示す通り、医療スタッフのスキル、治療内容の特殊性、患者の状態、医療スタッフの業務ストレスの状態であり、ベイジアンネットワークの各子ノードに対応する。一方、ベイジアンネットワークの親ノードは患者支援行動の発現確率を示す。患者対応行動には患者の観察、様子見と患者支援行動がある。患者支援行動には声掛けにつづいて、患者補助行動がある。本研究では、患者様子見と患者支援行動の間にはある敷居値があり、患者支援行動の発現確率を患者リスクと定義して、患者リスクがある敷居値を超えると患者支援行動が発現されるとする。本研究における、経験データベースは放射線治療に従事する医療スタッフ2名のヒヤリハット報告に基づいて作成した(図 1参照)。経験データベースは現在状況と状況に関する状態遷移情報を持ち、ヒヤリハット発生時の初期状態、発生要因、3秒後の状態、考えられる改善策を含む。作成した経験データベース中のヒヤリハット情報の例を図3に示す。
図 2ベイジアンネットワークのノード
図3 作成したヒヤリハット情報の例(一部)
本研究の子ノードに設定した条件付き確率テーブルの設定値も医療スタッフからのヒアリングによる医療スタッフの主観的な値であり、医療スタッフの経験値を反映している。3秒ルールインテリジェンスは行動選択トリガを元に患者と環境情報を観察して、算出した患者リスクがあるしきい値を超えた場合に患者支援行動実施の意思決定を行う。
3.2 患者リスクの算出
本研究では行動選択トリガの発現を観察することにより患者支援の必要性を観察する。表1に患者を取り巻く環境要因の例を示す。本研究では行動選択トリガをベイジアンネットワークの子ノードに設定して、患者リスクを算出する。そして本研究は算出した患者リスクを患者への支援の必要性と定義して、患者リスクの上昇と患者への支援の必要性を観察する。
表 1 患者を取り巻く環境要因
3. 3 患者支援行動の発現
患者様子見では患者支援行動に先立って発現する行動選択トリガを観察する。行動選択トリガの発現度合いにより患者リスクが上昇して患者支援行動が実行される。図4は縦軸が患者リスク、横軸が時間を表し、医療スタッフが患者リスクを観察している状況を示している。本研究では患者リスクを患者支援行動の必要度合いと定義して患者支援行動の必要性を求める。図4に示す患者リスクは患者支援行動発現確率である。本研究では患者リスク値をΔt 毎に再計算して、行動選択トリガの変化に伴う患者リスク値が、あるしきい値を越えた場合には患者への支援行動が必要と判断する。本研究ではΔtは3秒である[5]。図4に示す安全範囲とは、患者の観察が不要な状況であり、患者が検査に行くなどして、患者が治療室にいない場合である。そして、患者が治療室内に入ると患者様子見となり、患者の観察が必要となる。更に、患者リスクが図4に示す支援必要な領域に入ると患者への支援が必要となる。図4中の患者A1は治療室に入ると患者様子見対象患者のA2となり、更に次の観察時間のΔt中に行動選択トリガである、ふらつきが観察されると患者支援行動が必要なA3の状態となり、声掛け等の患者支援行動が実行される。一方、患者B1は一旦、患者様子見の対象であるB2となった後、観察時間であるΔt間に行動選択トリガが観察されず、更に検査に行くなどして、治療室を退出すると、患者リスクが安全範囲内に入りB3の状態となり、医療スタッフによる患者観察は不要な状況となる。図5に示すベイジアンネットワークの要素は表1の通りである。表2と表3はベイジアンネットワークの各ノードに設定した条件付き確率テーブルの値を示す。図5にWeka(Waikato Environment For Knowledge Analysis)を使用したベイジアンネットワークを示す。図5の医療スタッフのスキル(SKIL)の初期値のHighは 0.4、Standardが0.25、Lowが0.35である。図5の同値は0.399と表示されている。図5のSKILのHigh 値である0.4の具体的な計算要領を以下に示す。この時の患者リスク(RISK)の初期値はTREATとWATCH共に0.5である。TREAT は患者への支援行動の発現確率であり、本研究では患者支援の必要性と定義している。WATCHは 患者様子見行動の発現確率である。
0. 5 (TREAT) ×0.1 (支援必要:High) = 0.05
0. 5 (WATCH) ×0.7 (支援不要:High) = 0.35
0.05 + 0.35 = 0.4 (High)
図 4 患者リスク観察と行動判断状況
表2 患者支援行動モデルの例親テーブル(RISK)
表3 スタッフのスキル(SKIL)の条件付き確率
図5患者リスク算出ベイジアンネットワーク
図6患者(PAT)に悪いエビデンス(Low)を設定
そして、患者の蛇行(ふらつき)が検知されると、ベイジアンネットワークのPATにLowに設定され、図6に示す通り、患者リスク値(RISK)のTREATが0.83となり、しきい値が0.7の場合、しきい値を越えたので、患者への支援が必要との意思決定がなされる。
3. 4 患者支援行動選択の自動化
本研究はエビデンスの自動取得を目指して、更にベイジアンネットワークの細分化を行った。図7に患者の歩行(walk)が確認された場合のPAT(患者状態)のリスクを算出するベイジアンネットワークを示す。各ノードの説明を表4に示す、ここで、患者のふらつきが検知されると図8のベイジアンネットワークに示す様に患者の状況(PAT)が0.53となり、患者リスクが増加する。
表4 ベイジアンネットワークのノードの説明
図7 患者の状態(PAT)算出用ベイジアンネットワーク(患者の歩行確認)
図8 患者の状態(PAT)算出用ベイジアンネットワーク(患者のふらつき確認)
4. まとめ
本研究は患者支援行動の自動化を目指して、試行を行った。試行の結果、行動選択トリガを細分化することにより行動選択トリガの自動検知の可能性を示した。今後、患者様子見の自動化を実現するためには環境情報と患者情報の自動取得を進めることが必要である。患者基本情報は医療システムから受信することが可能であり、ふらつき等の患者状況はカメラからの自動取得が可能である。今後、更なる行動選択トリガの細分化により、患者支援行動の自動化が期待できる。
謝辞
本研究はJSPS科研費 基盤研究(C) 20K11983の助成を受けた。更に本研究に助言と貴重な情報を頂いた広島国際大学 保健医療学部 診療放射線学科の橘昌幸教授と九州大学病院 医療技術部 放射線部門の福永淳一先生に感謝申し上げる。
参考文献
[1]持田 信治, 池添 律代,矢鳴 虎夫,バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 6 巻 1 号、10-16、2004
[2] 持田 信治,橘 昌幸:人の観点から見た環境評価に関する研究,BMFSA学会誌 VOL11 (2), pp. 25‐31.
[3]リンゼイ/ノーマン:情報処理心理学入門Ⅲ(言語と思考), サイエンス社, 1984.
[4]甘利 俊一(監修),田中 啓治(編):認識と行動
[5] 山下昇:車間距離より車間時間を取ろう,セイフティエクスプレス企業開発センター, 6月号, 2008.
放射線治療における患者支援行動の意思決定試行
ヒット: 1 開く 保存
状況
医療現場において、例外的な事象が発生した際の判断は熟練スタッフに依存しており、患者支援の必要性を判断するシステムが求められていた。
行動
3秒ルールインテリジェンス(ベイジアンネットワークを用いたAI)を構築し、患者の状態や環境要因から患者リスクを算出し、支援の必要性を判断する試行を行った。
結果
患者リスクがしきい値を超えた場合に支援行動の意思決定を行うことが可能となり、患者様子見行動の自動化の可能性が示された。
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【分析:状況】
医療現場において、例外的な事象が発生した際の判断は熟練スタッフに依存しており、患者支援の必要性を判断するシステムが求められていた。
【分析:行動】
3秒ルールインテリジェンス(ベイジアンネットワークを用いたAI)を構築し、患者の状態や環境要因から患者リスクを算出し、支援の必要性を判断する試行を行った。
【分析:結果】
患者リスクがしきい値を超えた場合に支援行動の意思決定を行うことが可能となり、患者様子見行動の自動化の可能性が示された。
----------------------------------------
【本文】
1. はじめに
3秒ルールインテリジェンスは3秒後の状況予測に基づいて行動選択を行う人工知能であり、状況判断に基づき、行動候補の検索を行い、行動選択を行う。そこで本研究では、3秒ルールインテリジェンスの試行システムを構築して、放射線治療における患者支援行動の意思決定に関する試行を実施した1)2)。 試行の結果、3秒ルールインテリジェンスによる行動選択支援の可能性が示された。図1に示す様に3秒ルールインテリジェンスは行動発現トリガにより状況を監視する。行動の発現トリガとは特定な行動の発現契機となる状況変化を検知する心理的ルールのことであり3)4)、行動目的に沿った行動発現トリガが観察されることにより、行動の行動選択がなされる。
図1 3秒ルールインテリジェンス
2. 行動評価と行動選択
2.1 行動評価
行動選択には目的達成に向けた現状認識が必要である。現在の状況下で行動不可能な行動は選択できない。従って、行動選択では、まず行動目的が認識され、次に目的達成に沿う、行動候補の選択がなされ、そして優先順位を付けされた行動候補から最適な行動が選択される。最適な行動とは現在の環境状況下で実行可能な行動であり、しかも優先順位の高い行動である。行動の優先順位は価値観により決定され、価値観の揺らぎに伴い、優先順位も揺らぐ。そして価値観が揺らぐことにより、行動目的そのものが変化して行動候補も変化する。人の価値観は状況の変化や記憶と経験が思いおこされることにより揺らぐ。3秒ルールインテリジェンスでは目的が変化すると、情報マトリクスが検索され、行動発現トリガが変化する。
2.2 行動選択
人は複数の評価軸で行動を評価しており、行動の評価項目として行動実行時後の結果の期待値や行動頻度(抵抗)や慣れがある(図2参照)。経験のある行動に関する抵抗は小さく、経験のない行動の抵抗は高い。経験のない行動に関しては行動実行後の結果が不確かであるため、慣れた行動の優先順位は高く、優先的に選択される。行動選択の優先順位付けには行動の好みや習慣も影響を与える。行動の優先順位が均衡する複数の行動候補が並列に用意されて、行動選択が混乱する状態が行動の迷いであり、行動候補が記憶から呼び出されるのに、時間がかかり実行できなかった状態が後悔である。
図2 人の行動評価
3. 行動遷移列
ある目的に向かう行動は微小時間で細分化された微小行動の連鎖である。本研究では微小行動とは微小時間で行動可能な行動とし、微小時間を3秒とする。人の行動は図3に示す様に微小行動から構成される行動連鎖であり、人は3秒後までの目的達成に向けた行動計画を組み立てて、行動を行っている5)。微小行動は現状認識に基づき、微小経験情報データベースから微小行動を検索して、行動を組み立てる。従って、基本的に行動経験のない行動は実行不可能である。
図 3 行動の遷移列
3.3秒ルールインテリジェンス
3.1 3秒ルールインテリジェンス
3秒ルールインテリジェンスは3秒後の状況予測に基づいて行動を決定する人工知能であり、行動候補検索部と行動選択部から構成される。 3秒ルールインテリジェンスは経験データベースと行動発現確率計算機能(ベイジアンネットワーク)及び、行動選択機能から構成される。3秒ルールインテリジェンスは行動選択トリガの発現を観察して、発現した行動選択トリガの組み合わせにより現状が認識され、現状認識に従った行動候補の発現確率が計算される。従って、発現が観測された行動選択トリガの種類と組み合わせが行動選択を左右する。行動選択トリガとは行動が選択される環境や行動状況の変化であり、行動選択トリガの出現を観察して、行動選択確率があるしきい値を超えると、行動候補が選択され、行動選択が行われる。
3.2 経験データベース
3秒ルールインテリジェンスは微小経験データベースから微小行動候補の検索を行い、行動を組み立てることにより行動選択を行う。従って3秒ルールインテリジェンスは機械操作に於いても、プログラムを必要としない経験ベースの駆動システムを構築出来る可能性がある。そこで、図5に示す機械操作のためのシステムを試作した。本試作システムでは、無線操作模型に対する操作量と模型の動作に関するデータを記録して、目的動作に向けて経験データを組み合わせて動作試行を行う。操作量と模型の動作に関するデータは経験データとして、経験データベースに登録される。経験データはデータ取得時の環境データを持っており、環境条件が異なれば操作量と模型の動作に関するデータは異なる。図4に取得した経験データの例を示す。
図 4 経験データの例
図6に模型を目的の位置に移動させるための経験データベースから操作量コマンドを得る例を示す。図6では目的位置のずれを許容ギャップ量として、検索を行っている。本件では模型の動作速度が速いため、操作コマンドの送信と模型の動作にタイムラグがあり、目的の位置に移動させることは困難であった。
図5 3秒ルールインテリジェンスによる機械操作システム
図6 模型への操作量検索例 
4.患者の様子見行動の実現にむけて
4.1 患者様子見行動
医療現場では、患者確認に於けるダブルチェックや手順の標準化が進められている1)2)。しかし、例外的な事象が起きた場合の対応は人の判断に頼らざるを得ず、現場では高度な判断できる熟練医療スタッフが求められている。そこで、本研究は3秒ルールインテリジェンスを用いて、患者支援の必要性の判断を試行した。患者支援の必要性判断は患者の状態や環境状況等の環境要因からなり、更に患者支援の必要性は医療スタッフの主観や経験にも依存しており、スタッフのスキルも考慮の必要がある。
図 4 3秒ルールインテリジェンス
4.2 患者様子見行動の意思決定
人は行動選択に当たって、微小時間周期で次に実行可能な行動候補から行動選択を行っている。行動候補は過去の経験と知識を反映する[3][4]。そこで、3秒ルールインテリジェンスでは、図4に示す様に現状認識に伴い、3秒後に実行可能な行動候補を選択して、行動選択確率値があるしきい値を越えた場合に、行動選択の意思決定が実行される。行動選択確率はベイジアンネットワークにより取得される。行動候補の選択確率が変動する過程は、人の意思決定がゆらいでいる状態に対応している。
図 7 リスクを得るベイジアンネットワーク
4.3 患者リスクの算出
本研究では、図7に示すベイジアンネットワークにより算出した患者リスクにより、患者への支援行動の発動判断を行う。患者リスクとは患者に拘わる事故発生確率のことであり、本研究ではベイジアンネットワークを用いて算出した患者リスクを患者への支援の必要性とみなす。従って、患者リスクが上昇すると患者への支援行動の必要性が増すこととなり、患者支援の必要性があるしきい値を越えると患者への支援が必要と判断する。
4. 4 患者支援行動の発現
患者様子見行動とは不安定な患者の事故防止のための、医療スタッフによる患者観察行動のことである。図 8は医療スタッフが患者の様子を観察している状況を示しており、縦軸は患者リスクを示し、横軸は時間軸である。図 8に示す、患者が安全範囲の領域にある場合には、医療スタッフは患者を観察する必要のない状況であることを示す、例えば患者が検査に行っている状態である。次に患者が様子見状態にある場合には医療スタッフが患者を観察する必要がある状況であり、更に、患者が事故発生確率の高い領域に入った場合には、患者リスクが高い状況であり、患者への支援が必要となる。例えば患者への支援行動として、患者への声掛けや治療中断がある。患者様子見行動は医療スタッフが患者への対応行動を保留して患者の様子を観察する行動であり、人工知能が患者を観察できれば、医療スタッフの業務軽減が図れる。そこで、本研究は医療スタッフの患者様子見行動の模擬を目指して、3秒ルールインテリジェンスの放射線治療への適応を試みた。図5に本研究で作成した患者リスク算出用ベイジアンネットワークを示す。ベイジアンネットワークの親ノード(RISK)が示す確率値は医療スタッフ経験に基づく患者リスク値を示しており、3秒後の患者支援行動の必要性度合いを示している。本試行では、表1に示す環境要因の変化に従い、ベイジアンネットワークの再計算を行い、患者リスクを算出する。ベイジアンネットワークが示す患者リスクは患者支援行動の必要度合いを示し、患者支援行動の必要度合いが図8に示す、あるしきい値を越えた場合には患者への支援行動が必要となる。
表 1 患者を取り巻く環境要因
図 8 患者状況判断(患者リスクとしきい値)
5.環境情報の自動取得
本件では、患者様子見行動の自動化に向けて図7に示すベイジアンネットワークを2層にして、ノードのエビデンスを更にベイジアンネットワークにより与えることにした。本研究では、図9に示す様に、各子ノードに更にベイジアンネットワークを設定している。患者リスク算出要因を更に細分化することにより、自動設定可能な行動選択トリガが増え、患者様子見の自動化の可能性が高まる。
図 9  登録したヒヤリハットデータの例
本研究では図9に示す様に医療スタッフからヒヤリハット情報のヒアリングを行い、患者の様子見行動に関する模擬を試行した。本研究では医療スタッフからヒアリングによりヒヤリハット情報をXMLにより記述してデータベース化の試行を行った。本研究では、ベイジアンネットワークにより算出した患者リスクにより、患者への支援行動の発動試行を行った。
図 10 患者観察の自動化に向けたベイジアンネットワーク
図11 リスク算出システム
図12 患者リスク算出システム試行状況
本研究では環境情報の自動取得に向けて音声と画像情報の自動取得を試行するシステムを作成した(図11参照)。本件で試行したシステム構成を図12に示し、システム構成を表2に示す、更に画像処理で認識した例を図13に示す。また音声処理をした例を図14に示す。今後、画像や音声の自動認識を行い、患者リスク算出システムに自動入力することにより、患者リスク算出システムによる自動監視実現の可能性が高まる。
表2 機器構成
図13 画像の検知例(人物を認識している)
図14 音声の認識例
6. 試行
図10のベイジアンネットワークAに於いて、放射線治療情報システムから治療内容の複雑さが標準であることを受信すると、図10に示す治療内容の特殊性(METH)には標準(Standard)が自動設定され、加えて、医療スタッフのスキル(SKIL)に標準(Standard)の場合には、患者リスク値(RISK)の初期値は0.7を示し、患者様子見の判断を示す。次に、患者リスク算出システムが患者の蛇行であるふらつきを自動検知すると、図10のBに示す患者状態(PAT)モデルの患者ふらつきのエビデンスに、患者蛇行(Mend)にYesが設定される。しかし、患者搬送状態(Trstus)がWalkの場合には、患者状態(PAT)がLowである確率値は約0.54となり、しきい値が0.7を越えないので、図10の患者リスク(RISK)算出モデルのPATにLowは設定されず、患者への支援の必要性は不明のままとなる。しかし、患者情報から図10の患者パフォーマンスステータス(Pstus)にLowが自動設定されると、患者状態(PAT)が低 (Low)である確率値は約0.88となり、図10のAのベイジアンネットワークのPATにLowが設定されると、患者リスク(RISK)値は0.88となり、しきい値の0.7を越えるため、3秒ルールインテリジェンスは患者支援実施発現の意思決定を行う。ただし、本例では、医療スタッフのスキルは人の主観的判断により設定されている。以上の試行結果により、患者リスクを算出するための要因を更に細分化することにより、ベイジアンネットワークのエビデンスを自動設定することが可能となり、患者様子見の自動化の可能性が高まることが明らかになった。
6. まとめ
本研究は放射線治療現場に於ける患者様子見行動の模擬と人の行動選択が揺らぐ様子の模擬を3秒ルールインテリジェンスにより試行した。3秒ルールインテリジェンスはベイジアンネットワークを使用して、人の行動選択の揺らぎを模擬する。本研究では、2層ベイジアンネットワークを提案して、カメラ、マイクやセンサーを使用した患者及び、環境監視の自動化の可能性を示した。本研究は本研究では、ベイジアンネットワークのエビデンスとして自動的にセットされる。行動選択トリガとは、患者の状態や環境情報であり、カメラ、マイクやセンサーを使用した、行動選択トリガの自動監視により、人と同じ視点で行動選択トリガの監視を行い、人の感覚に近い環境監視を行うことが可能となる。本研究で、試行した意思決定は患者様子見行動のみであった。そこで、今後、環境監視の自動化に向けて意思決定を行う行動の追加が期待される。
謝辞
本研究はJSPS科研費 基盤研究(C) 20K11983の助成を受けた。更に本研究に助言と貴重な情報を頂いた広島国際大学 保健医療学部 診療放射線学科の橘昌幸教授と九州大学病院 医療技術部 放射線部門の福永淳一先生に感謝申し上げる。
参考文献
[1]持田 信治, 池添 律代,矢鳴 虎夫,バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 6 巻 1 号、10-16、2004
[2] 持田 信治,橘 昌幸:人の観点から見た環境評価に関する研究,BMFSA学会誌 VOL11, pp. 25‐31.
[3]リンゼイ/ノーマン:情報処理心理学入門Ⅰ(言語と思考), サイエンス社, 1984.
[4] リンゼイ/ノーマン:情報処理心理学入門Ⅲ(言語と思考), サイエンス社, 1984.甘利 俊一(監修),田中 啓治(編):認識と行動
[5] 山下昇:車間距離より車間時間を取ろう,セイフティエクスプレス企業開発センター, 6月号, 2008.

無線操作模型を用いた機械操作システムの試作
ヒット: 1 開く 保存
状況
プログラムを必要としない経験ベースの駆動システムを構築する必要があった。
行動
無線操作模型の操作量と動作データを経験データとしてデータベースに登録し、目的の位置へ移動させるための操作量コマンドを検索・実行するシステムを試作した。
結果
模型の動作速度によるタイムラグのため目的位置への移動は困難であったが、経験データを用いた駆動システムの可能性が示された。
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【分析:状況】
プログラムを必要としない経験ベースの駆動システムを構築する必要があった。
【分析:行動】
無線操作模型の操作量と動作データを経験データとしてデータベースに登録し、目的の位置へ移動させるための操作量コマンドを検索・実行するシステムを試作した。
【分析:結果】
模型の動作速度によるタイムラグのため目的位置への移動は困難であったが、経験データを用いた駆動システムの可能性が示された。
----------------------------------------
【本文】
1. はじめに
3秒ルールインテリジェンスは3秒後の状況予測に基づいて行動選択を行う人工知能であり、状況判断に基づき、行動候補の検索を行い、行動選択を行う。そこで本研究では、3秒ルールインテリジェンスの試行システムを構築して、放射線治療における患者支援行動の意思決定に関する試行を実施した1)2)。 試行の結果、3秒ルールインテリジェンスによる行動選択支援の可能性が示された。図1に示す様に3秒ルールインテリジェンスは行動発現トリガにより状況を監視する。行動の発現トリガとは特定な行動の発現契機となる状況変化を検知する心理的ルールのことであり3)4)、行動目的に沿った行動発現トリガが観察されることにより、行動の行動選択がなされる。
図1 3秒ルールインテリジェンス
2. 行動評価と行動選択
2.1 行動評価
行動選択には目的達成に向けた現状認識が必要である。現在の状況下で行動不可能な行動は選択できない。従って、行動選択では、まず行動目的が認識され、次に目的達成に沿う、行動候補の選択がなされ、そして優先順位を付けされた行動候補から最適な行動が選択される。最適な行動とは現在の環境状況下で実行可能な行動であり、しかも優先順位の高い行動である。行動の優先順位は価値観により決定され、価値観の揺らぎに伴い、優先順位も揺らぐ。そして価値観が揺らぐことにより、行動目的そのものが変化して行動候補も変化する。人の価値観は状況の変化や記憶と経験が思いおこされることにより揺らぐ。3秒ルールインテリジェンスでは目的が変化すると、情報マトリクスが検索され、行動発現トリガが変化する。
2.2 行動選択
人は複数の評価軸で行動を評価しており、行動の評価項目として行動実行時後の結果の期待値や行動頻度(抵抗)や慣れがある(図2参照)。経験のある行動に関する抵抗は小さく、経験のない行動の抵抗は高い。経験のない行動に関しては行動実行後の結果が不確かであるため、慣れた行動の優先順位は高く、優先的に選択される。行動選択の優先順位付けには行動の好みや習慣も影響を与える。行動の優先順位が均衡する複数の行動候補が並列に用意されて、行動選択が混乱する状態が行動の迷いであり、行動候補が記憶から呼び出されるのに、時間がかかり実行できなかった状態が後悔である。
図2 人の行動評価
3. 行動遷移列
ある目的に向かう行動は微小時間で細分化された微小行動の連鎖である。本研究では微小行動とは微小時間で行動可能な行動とし、微小時間を3秒とする。人の行動は図3に示す様に微小行動から構成される行動連鎖であり、人は3秒後までの目的達成に向けた行動計画を組み立てて、行動を行っている5)。微小行動は現状認識に基づき、微小経験情報データベースから微小行動を検索して、行動を組み立てる。従って、基本的に行動経験のない行動は実行不可能である。
図 3 行動の遷移列
3.3秒ルールインテリジェンス
3.1 3秒ルールインテリジェンス
3秒ルールインテリジェンスは3秒後の状況予測に基づいて行動を決定する人工知能であり、行動候補検索部と行動選択部から構成される。 3秒ルールインテリジェンスは経験データベースと行動発現確率計算機能(ベイジアンネットワーク)及び、行動選択機能から構成される。3秒ルールインテリジェンスは行動選択トリガの発現を観察して、発現した行動選択トリガの組み合わせにより現状が認識され、現状認識に従った行動候補の発現確率が計算される。従って、発現が観測された行動選択トリガの種類と組み合わせが行動選択を左右する。行動選択トリガとは行動が選択される環境や行動状況の変化であり、行動選択トリガの出現を観察して、行動選択確率があるしきい値を超えると、行動候補が選択され、行動選択が行われる。
3.2 経験データベース
3秒ルールインテリジェンスは微小経験データベースから微小行動候補の検索を行い、行動を組み立てることにより行動選択を行う。従って3秒ルールインテリジェンスは機械操作に於いても、プログラムを必要としない経験ベースの駆動システムを構築出来る可能性がある。そこで、図5に示す機械操作のためのシステムを試作した。本試作システムでは、無線操作模型に対する操作量と模型の動作に関するデータを記録して、目的動作に向けて経験データを組み合わせて動作試行を行う。操作量と模型の動作に関するデータは経験データとして、経験データベースに登録される。経験データはデータ取得時の環境データを持っており、環境条件が異なれば操作量と模型の動作に関するデータは異なる。図4に取得した経験データの例を示す。
図 4 経験データの例
図6に模型を目的の位置に移動させるための経験データベースから操作量コマンドを得る例を示す。図6では目的位置のずれを許容ギャップ量として、検索を行っている。本件では模型の動作速度が速いため、操作コマンドの送信と模型の動作にタイムラグがあり、目的の位置に移動させることは困難であった。
図5 3秒ルールインテリジェンスによる機械操作システム
図6 模型への操作量検索例 
4.患者の様子見行動の実現にむけて
4.1 患者様子見行動
医療現場では、患者確認に於けるダブルチェックや手順の標準化が進められている1)2)。しかし、例外的な事象が起きた場合の対応は人の判断に頼らざるを得ず、現場では高度な判断できる熟練医療スタッフが求められている。そこで、本研究は3秒ルールインテリジェンスを用いて、患者支援の必要性の判断を試行した。患者支援の必要性判断は患者の状態や環境状況等の環境要因からなり、更に患者支援の必要性は医療スタッフの主観や経験にも依存しており、スタッフのスキルも考慮の必要がある。
図 4 3秒ルールインテリジェンス
4.2 患者様子見行動の意思決定
人は行動選択に当たって、微小時間周期で次に実行可能な行動候補から行動選択を行っている。行動候補は過去の経験と知識を反映する[3][4]。そこで、3秒ルールインテリジェンスでは、図4に示す様に現状認識に伴い、3秒後に実行可能な行動候補を選択して、行動選択確率値があるしきい値を越えた場合に、行動選択の意思決定が実行される。行動選択確率はベイジアンネットワークにより取得される。行動候補の選択確率が変動する過程は、人の意思決定がゆらいでいる状態に対応している。
図 7 リスクを得るベイジアンネットワーク
4.3 患者リスクの算出
本研究では、図7に示すベイジアンネットワークにより算出した患者リスクにより、患者への支援行動の発動判断を行う。患者リスクとは患者に拘わる事故発生確率のことであり、本研究ではベイジアンネットワークを用いて算出した患者リスクを患者への支援の必要性とみなす。従って、患者リスクが上昇すると患者への支援行動の必要性が増すこととなり、患者支援の必要性があるしきい値を越えると患者への支援が必要と判断する。
4. 4 患者支援行動の発現
患者様子見行動とは不安定な患者の事故防止のための、医療スタッフによる患者観察行動のことである。図 8は医療スタッフが患者の様子を観察している状況を示しており、縦軸は患者リスクを示し、横軸は時間軸である。図 8に示す、患者が安全範囲の領域にある場合には、医療スタッフは患者を観察する必要のない状況であることを示す、例えば患者が検査に行っている状態である。次に患者が様子見状態にある場合には医療スタッフが患者を観察する必要がある状況であり、更に、患者が事故発生確率の高い領域に入った場合には、患者リスクが高い状況であり、患者への支援が必要となる。例えば患者への支援行動として、患者への声掛けや治療中断がある。患者様子見行動は医療スタッフが患者への対応行動を保留して患者の様子を観察する行動であり、人工知能が患者を観察できれば、医療スタッフの業務軽減が図れる。そこで、本研究は医療スタッフの患者様子見行動の模擬を目指して、3秒ルールインテリジェンスの放射線治療への適応を試みた。図5に本研究で作成した患者リスク算出用ベイジアンネットワークを示す。ベイジアンネットワークの親ノード(RISK)が示す確率値は医療スタッフ経験に基づく患者リスク値を示しており、3秒後の患者支援行動の必要性度合いを示している。本試行では、表1に示す環境要因の変化に従い、ベイジアンネットワークの再計算を行い、患者リスクを算出する。ベイジアンネットワークが示す患者リスクは患者支援行動の必要度合いを示し、患者支援行動の必要度合いが図8に示す、あるしきい値を越えた場合には患者への支援行動が必要となる。
表 1 患者を取り巻く環境要因
図 8 患者状況判断(患者リスクとしきい値)
5.環境情報の自動取得
本件では、患者様子見行動の自動化に向けて図7に示すベイジアンネットワークを2層にして、ノードのエビデンスを更にベイジアンネットワークにより与えることにした。本研究では、図9に示す様に、各子ノードに更にベイジアンネットワークを設定している。患者リスク算出要因を更に細分化することにより、自動設定可能な行動選択トリガが増え、患者様子見の自動化の可能性が高まる。
図 9  登録したヒヤリハットデータの例
本研究では図9に示す様に医療スタッフからヒヤリハット情報のヒアリングを行い、患者の様子見行動に関する模擬を試行した。本研究では医療スタッフからヒアリングによりヒヤリハット情報をXMLにより記述してデータベース化の試行を行った。本研究では、ベイジアンネットワークにより算出した患者リスクにより、患者への支援行動の発動試行を行った。
図 10 患者観察の自動化に向けたベイジアンネットワーク
図11 リスク算出システム
図12 患者リスク算出システム試行状況
本研究では環境情報の自動取得に向けて音声と画像情報の自動取得を試行するシステムを作成した(図11参照)。本件で試行したシステム構成を図12に示し、システム構成を表2に示す、更に画像処理で認識した例を図13に示す。また音声処理をした例を図14に示す。今後、画像や音声の自動認識を行い、患者リスク算出システムに自動入力することにより、患者リスク算出システムによる自動監視実現の可能性が高まる。
表2 機器構成
図13 画像の検知例(人物を認識している)
図14 音声の認識例
6. 試行
図10のベイジアンネットワークAに於いて、放射線治療情報システムから治療内容の複雑さが標準であることを受信すると、図10に示す治療内容の特殊性(METH)には標準(Standard)が自動設定され、加えて、医療スタッフのスキル(SKIL)に標準(Standard)の場合には、患者リスク値(RISK)の初期値は0.7を示し、患者様子見の判断を示す。次に、患者リスク算出システムが患者の蛇行であるふらつきを自動検知すると、図10のBに示す患者状態(PAT)モデルの患者ふらつきのエビデンスに、患者蛇行(Mend)にYesが設定される。しかし、患者搬送状態(Trstus)がWalkの場合には、患者状態(PAT)がLowである確率値は約0.54となり、しきい値が0.7を越えないので、図10の患者リスク(RISK)算出モデルのPATにLowは設定されず、患者への支援の必要性は不明のままとなる。しかし、患者情報から図10の患者パフォーマンスステータス(Pstus)にLowが自動設定されると、患者状態(PAT)が低 (Low)である確率値は約0.88となり、図10のAのベイジアンネットワークのPATにLowが設定されると、患者リスク(RISK)値は0.88となり、しきい値の0.7を越えるため、3秒ルールインテリジェンスは患者支援実施発現の意思決定を行う。ただし、本例では、医療スタッフのスキルは人の主観的判断により設定されている。以上の試行結果により、患者リスクを算出するための要因を更に細分化することにより、ベイジアンネットワークのエビデンスを自動設定することが可能となり、患者様子見の自動化の可能性が高まることが明らかになった。
6. まとめ
本研究は放射線治療現場に於ける患者様子見行動の模擬と人の行動選択が揺らぐ様子の模擬を3秒ルールインテリジェンスにより試行した。3秒ルールインテリジェンスはベイジアンネットワークを使用して、人の行動選択の揺らぎを模擬する。本研究では、2層ベイジアンネットワークを提案して、カメラ、マイクやセンサーを使用した患者及び、環境監視の自動化の可能性を示した。本研究は本研究では、ベイジアンネットワークのエビデンスとして自動的にセットされる。行動選択トリガとは、患者の状態や環境情報であり、カメラ、マイクやセンサーを使用した、行動選択トリガの自動監視により、人と同じ視点で行動選択トリガの監視を行い、人の感覚に近い環境監視を行うことが可能となる。本研究で、試行した意思決定は患者様子見行動のみであった。そこで、今後、環境監視の自動化に向けて意思決定を行う行動の追加が期待される。
謝辞
本研究はJSPS科研費 基盤研究(C) 20K11983の助成を受けた。更に本研究に助言と貴重な情報を頂いた広島国際大学 保健医療学部 診療放射線学科の橘昌幸教授と九州大学病院 医療技術部 放射線部門の福永淳一先生に感謝申し上げる。
参考文献
[1]持田 信治, 池添 律代,矢鳴 虎夫,バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 6 巻 1 号、10-16、2004
[2] 持田 信治,橘 昌幸:人の観点から見た環境評価に関する研究,BMFSA学会誌 VOL11, pp. 25‐31.
[3]リンゼイ/ノーマン:情報処理心理学入門Ⅰ(言語と思考), サイエンス社, 1984.
[4] リンゼイ/ノーマン:情報処理心理学入門Ⅲ(言語と思考), サイエンス社, 1984.甘利 俊一(監修),田中 啓治(編):認識と行動
[5] 山下昇:車間距離より車間時間を取ろう,セイフティエクスプレス企業開発センター, 6月号, 2008.

ヒヤリハット情報に基づく患者様子見行動の模擬
ヒット: 1 開く 保存
状況
患者様子見行動の自動化に向けて、より詳細な環境情報の取得が必要であった。
行動
医療スタッフへのヒアリングからヒヤリハット情報を収集・XML化してデータベース化し、2層のベイジアンネットワークを用いて患者リスクを算出するシステムを構築した。
結果
音声や画像情報の自動取得と組み合わせることで、患者リスク算出の自動化と、人と同じ視点での環境監視の可能性が示された。
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【分析:状況】
患者様子見行動の自動化に向けて、より詳細な環境情報の取得が必要であった。
【分析:行動】
医療スタッフへのヒアリングからヒヤリハット情報を収集・XML化してデータベース化し、2層のベイジアンネットワークを用いて患者リスクを算出するシステムを構築した。
【分析:結果】
音声や画像情報の自動取得と組み合わせることで、患者リスク算出の自動化と、人と同じ視点での環境監視の可能性が示された。
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【本文】
1. はじめに
3秒ルールインテリジェンスは3秒後の状況予測に基づいて行動選択を行う人工知能であり、状況判断に基づき、行動候補の検索を行い、行動選択を行う。そこで本研究では、3秒ルールインテリジェンスの試行システムを構築して、放射線治療における患者支援行動の意思決定に関する試行を実施した1)2)。 試行の結果、3秒ルールインテリジェンスによる行動選択支援の可能性が示された。図1に示す様に3秒ルールインテリジェンスは行動発現トリガにより状況を監視する。行動の発現トリガとは特定な行動の発現契機となる状況変化を検知する心理的ルールのことであり3)4)、行動目的に沿った行動発現トリガが観察されることにより、行動の行動選択がなされる。
図1 3秒ルールインテリジェンス
2. 行動評価と行動選択
2.1 行動評価
行動選択には目的達成に向けた現状認識が必要である。現在の状況下で行動不可能な行動は選択できない。従って、行動選択では、まず行動目的が認識され、次に目的達成に沿う、行動候補の選択がなされ、そして優先順位を付けされた行動候補から最適な行動が選択される。最適な行動とは現在の環境状況下で実行可能な行動であり、しかも優先順位の高い行動である。行動の優先順位は価値観により決定され、価値観の揺らぎに伴い、優先順位も揺らぐ。そして価値観が揺らぐことにより、行動目的そのものが変化して行動候補も変化する。人の価値観は状況の変化や記憶と経験が思いおこされることにより揺らぐ。3秒ルールインテリジェンスでは目的が変化すると、情報マトリクスが検索され、行動発現トリガが変化する。
2.2 行動選択
人は複数の評価軸で行動を評価しており、行動の評価項目として行動実行時後の結果の期待値や行動頻度(抵抗)や慣れがある(図2参照)。経験のある行動に関する抵抗は小さく、経験のない行動の抵抗は高い。経験のない行動に関しては行動実行後の結果が不確かであるため、慣れた行動の優先順位は高く、優先的に選択される。行動選択の優先順位付けには行動の好みや習慣も影響を与える。行動の優先順位が均衡する複数の行動候補が並列に用意されて、行動選択が混乱する状態が行動の迷いであり、行動候補が記憶から呼び出されるのに、時間がかかり実行できなかった状態が後悔である。
図2 人の行動評価
3. 行動遷移列
ある目的に向かう行動は微小時間で細分化された微小行動の連鎖である。本研究では微小行動とは微小時間で行動可能な行動とし、微小時間を3秒とする。人の行動は図3に示す様に微小行動から構成される行動連鎖であり、人は3秒後までの目的達成に向けた行動計画を組み立てて、行動を行っている5)。微小行動は現状認識に基づき、微小経験情報データベースから微小行動を検索して、行動を組み立てる。従って、基本的に行動経験のない行動は実行不可能である。
図 3 行動の遷移列
3.3秒ルールインテリジェンス
3.1 3秒ルールインテリジェンス
3秒ルールインテリジェンスは3秒後の状況予測に基づいて行動を決定する人工知能であり、行動候補検索部と行動選択部から構成される。 3秒ルールインテリジェンスは経験データベースと行動発現確率計算機能(ベイジアンネットワーク)及び、行動選択機能から構成される。3秒ルールインテリジェンスは行動選択トリガの発現を観察して、発現した行動選択トリガの組み合わせにより現状が認識され、現状認識に従った行動候補の発現確率が計算される。従って、発現が観測された行動選択トリガの種類と組み合わせが行動選択を左右する。行動選択トリガとは行動が選択される環境や行動状況の変化であり、行動選択トリガの出現を観察して、行動選択確率があるしきい値を超えると、行動候補が選択され、行動選択が行われる。
3.2 経験データベース
3秒ルールインテリジェンスは微小経験データベースから微小行動候補の検索を行い、行動を組み立てることにより行動選択を行う。従って3秒ルールインテリジェンスは機械操作に於いても、プログラムを必要としない経験ベースの駆動システムを構築出来る可能性がある。そこで、図5に示す機械操作のためのシステムを試作した。本試作システムでは、無線操作模型に対する操作量と模型の動作に関するデータを記録して、目的動作に向けて経験データを組み合わせて動作試行を行う。操作量と模型の動作に関するデータは経験データとして、経験データベースに登録される。経験データはデータ取得時の環境データを持っており、環境条件が異なれば操作量と模型の動作に関するデータは異なる。図4に取得した経験データの例を示す。
図 4 経験データの例
図6に模型を目的の位置に移動させるための経験データベースから操作量コマンドを得る例を示す。図6では目的位置のずれを許容ギャップ量として、検索を行っている。本件では模型の動作速度が速いため、操作コマンドの送信と模型の動作にタイムラグがあり、目的の位置に移動させることは困難であった。
図5 3秒ルールインテリジェンスによる機械操作システム
図6 模型への操作量検索例 
4.患者の様子見行動の実現にむけて
4.1 患者様子見行動
医療現場では、患者確認に於けるダブルチェックや手順の標準化が進められている1)2)。しかし、例外的な事象が起きた場合の対応は人の判断に頼らざるを得ず、現場では高度な判断できる熟練医療スタッフが求められている。そこで、本研究は3秒ルールインテリジェンスを用いて、患者支援の必要性の判断を試行した。患者支援の必要性判断は患者の状態や環境状況等の環境要因からなり、更に患者支援の必要性は医療スタッフの主観や経験にも依存しており、スタッフのスキルも考慮の必要がある。
図 4 3秒ルールインテリジェンス
4.2 患者様子見行動の意思決定
人は行動選択に当たって、微小時間周期で次に実行可能な行動候補から行動選択を行っている。行動候補は過去の経験と知識を反映する[3][4]。そこで、3秒ルールインテリジェンスでは、図4に示す様に現状認識に伴い、3秒後に実行可能な行動候補を選択して、行動選択確率値があるしきい値を越えた場合に、行動選択の意思決定が実行される。行動選択確率はベイジアンネットワークにより取得される。行動候補の選択確率が変動する過程は、人の意思決定がゆらいでいる状態に対応している。
図 7 リスクを得るベイジアンネットワーク
4.3 患者リスクの算出
本研究では、図7に示すベイジアンネットワークにより算出した患者リスクにより、患者への支援行動の発動判断を行う。患者リスクとは患者に拘わる事故発生確率のことであり、本研究ではベイジアンネットワークを用いて算出した患者リスクを患者への支援の必要性とみなす。従って、患者リスクが上昇すると患者への支援行動の必要性が増すこととなり、患者支援の必要性があるしきい値を越えると患者への支援が必要と判断する。
4. 4 患者支援行動の発現
患者様子見行動とは不安定な患者の事故防止のための、医療スタッフによる患者観察行動のことである。図 8は医療スタッフが患者の様子を観察している状況を示しており、縦軸は患者リスクを示し、横軸は時間軸である。図 8に示す、患者が安全範囲の領域にある場合には、医療スタッフは患者を観察する必要のない状況であることを示す、例えば患者が検査に行っている状態である。次に患者が様子見状態にある場合には医療スタッフが患者を観察する必要がある状況であり、更に、患者が事故発生確率の高い領域に入った場合には、患者リスクが高い状況であり、患者への支援が必要となる。例えば患者への支援行動として、患者への声掛けや治療中断がある。患者様子見行動は医療スタッフが患者への対応行動を保留して患者の様子を観察する行動であり、人工知能が患者を観察できれば、医療スタッフの業務軽減が図れる。そこで、本研究は医療スタッフの患者様子見行動の模擬を目指して、3秒ルールインテリジェンスの放射線治療への適応を試みた。図5に本研究で作成した患者リスク算出用ベイジアンネットワークを示す。ベイジアンネットワークの親ノード(RISK)が示す確率値は医療スタッフ経験に基づく患者リスク値を示しており、3秒後の患者支援行動の必要性度合いを示している。本試行では、表1に示す環境要因の変化に従い、ベイジアンネットワークの再計算を行い、患者リスクを算出する。ベイジアンネットワークが示す患者リスクは患者支援行動の必要度合いを示し、患者支援行動の必要度合いが図8に示す、あるしきい値を越えた場合には患者への支援行動が必要となる。
表 1 患者を取り巻く環境要因
図 8 患者状況判断(患者リスクとしきい値)
5.環境情報の自動取得
本件では、患者様子見行動の自動化に向けて図7に示すベイジアンネットワークを2層にして、ノードのエビデンスを更にベイジアンネットワークにより与えることにした。本研究では、図9に示す様に、各子ノードに更にベイジアンネットワークを設定している。患者リスク算出要因を更に細分化することにより、自動設定可能な行動選択トリガが増え、患者様子見の自動化の可能性が高まる。
図 9  登録したヒヤリハットデータの例
本研究では図9に示す様に医療スタッフからヒヤリハット情報のヒアリングを行い、患者の様子見行動に関する模擬を試行した。本研究では医療スタッフからヒアリングによりヒヤリハット情報をXMLにより記述してデータベース化の試行を行った。本研究では、ベイジアンネットワークにより算出した患者リスクにより、患者への支援行動の発動試行を行った。
図 10 患者観察の自動化に向けたベイジアンネットワーク
図11 リスク算出システム
図12 患者リスク算出システム試行状況
本研究では環境情報の自動取得に向けて音声と画像情報の自動取得を試行するシステムを作成した(図11参照)。本件で試行したシステム構成を図12に示し、システム構成を表2に示す、更に画像処理で認識した例を図13に示す。また音声処理をした例を図14に示す。今後、画像や音声の自動認識を行い、患者リスク算出システムに自動入力することにより、患者リスク算出システムによる自動監視実現の可能性が高まる。
表2 機器構成
図13 画像の検知例(人物を認識している)
図14 音声の認識例
6. 試行
図10のベイジアンネットワークAに於いて、放射線治療情報システムから治療内容の複雑さが標準であることを受信すると、図10に示す治療内容の特殊性(METH)には標準(Standard)が自動設定され、加えて、医療スタッフのスキル(SKIL)に標準(Standard)の場合には、患者リスク値(RISK)の初期値は0.7を示し、患者様子見の判断を示す。次に、患者リスク算出システムが患者の蛇行であるふらつきを自動検知すると、図10のBに示す患者状態(PAT)モデルの患者ふらつきのエビデンスに、患者蛇行(Mend)にYesが設定される。しかし、患者搬送状態(Trstus)がWalkの場合には、患者状態(PAT)がLowである確率値は約0.54となり、しきい値が0.7を越えないので、図10の患者リスク(RISK)算出モデルのPATにLowは設定されず、患者への支援の必要性は不明のままとなる。しかし、患者情報から図10の患者パフォーマンスステータス(Pstus)にLowが自動設定されると、患者状態(PAT)が低 (Low)である確率値は約0.88となり、図10のAのベイジアンネットワークのPATにLowが設定されると、患者リスク(RISK)値は0.88となり、しきい値の0.7を越えるため、3秒ルールインテリジェンスは患者支援実施発現の意思決定を行う。ただし、本例では、医療スタッフのスキルは人の主観的判断により設定されている。以上の試行結果により、患者リスクを算出するための要因を更に細分化することにより、ベイジアンネットワークのエビデンスを自動設定することが可能となり、患者様子見の自動化の可能性が高まることが明らかになった。
6. まとめ
本研究は放射線治療現場に於ける患者様子見行動の模擬と人の行動選択が揺らぐ様子の模擬を3秒ルールインテリジェンスにより試行した。3秒ルールインテリジェンスはベイジアンネットワークを使用して、人の行動選択の揺らぎを模擬する。本研究では、2層ベイジアンネットワークを提案して、カメラ、マイクやセンサーを使用した患者及び、環境監視の自動化の可能性を示した。本研究は本研究では、ベイジアンネットワークのエビデンスとして自動的にセットされる。行動選択トリガとは、患者の状態や環境情報であり、カメラ、マイクやセンサーを使用した、行動選択トリガの自動監視により、人と同じ視点で行動選択トリガの監視を行い、人の感覚に近い環境監視を行うことが可能となる。本研究で、試行した意思決定は患者様子見行動のみであった。そこで、今後、環境監視の自動化に向けて意思決定を行う行動の追加が期待される。
謝辞
本研究はJSPS科研費 基盤研究(C) 20K11983の助成を受けた。更に本研究に助言と貴重な情報を頂いた広島国際大学 保健医療学部 診療放射線学科の橘昌幸教授と九州大学病院 医療技術部 放射線部門の福永淳一先生に感謝申し上げる。
参考文献
[1]持田 信治, 池添 律代,矢鳴 虎夫,バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 6 巻 1 号、10-16、2004
[2] 持田 信治,橘 昌幸:人の観点から見た環境評価に関する研究,BMFSA学会誌 VOL11, pp. 25‐31.
[3]リンゼイ/ノーマン:情報処理心理学入門Ⅰ(言語と思考), サイエンス社, 1984.
[4] リンゼイ/ノーマン:情報処理心理学入門Ⅲ(言語と思考), サイエンス社, 1984.甘利 俊一(監修),田中 啓治(編):認識と行動
[5] 山下昇:車間距離より車間時間を取ろう,セイフティエクスプレス企業開発センター, 6月号, 2008.

放射線治療における患者様子見行動の模擬
ヒット: 1 開く 保存
状況
医療現場において、不安定な患者の事故防止のため、医療スタッフが患者を監視し、必要に応じて支援を行う「患者様子見行動」が必要とされている。
行動
3秒ルールインテリジェンス(3秒後までの状況予測に基づくAI)とベイジアンネットワークを組み合わせ、患者のふらつき等の環境変化をトリガーとして患者リスクを算出するシステムを構築した。
結果
患者リスクがしきい値を超えた場合に支援行動を決定する仕組みが実現し、医療スタッフの判断に近い行動選択が可能であることが示された。
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【分析:状況】
医療現場において、不安定な患者の事故防止のため、医療スタッフが患者を監視し、必要に応じて支援を行う「患者様子見行動」が必要とされている。
【分析:行動】
3秒ルールインテリジェンス(3秒後までの状況予測に基づくAI)とベイジアンネットワークを組み合わせ、患者のふらつき等の環境変化をトリガーとして患者リスクを算出するシステムを構築した。
【分析:結果】
患者リスクがしきい値を超えた場合に支援行動を決定する仕組みが実現し、医療スタッフの判断に近い行動選択が可能であることが示された。
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【本文】
3秒ルールインテリジェンスを用いた人の行動選択の模擬
Simulation of human action selection using Three-Second rule Intelligence
持田 信治*
Shinji Mochida
本研究は3秒ルールインテリジェンスによる人の行動選択の模擬を提案する。3秒ルールインテリジェンスは3秒後までの状況予測に基づいて行動選択を行う人工知能であり、行動可能な行動検索部と行動選択部から構成される。本研究は放射線治療に於ける、患者支援行動の発動決定についてWEB試行システムを作成して試行を行った。そして、試行の結果、3秒ルールインテリジェンスによる行動選択の可能性が示されたので報告する。
キーワード:3秒ルールインテリジェンス、ベイジアンネットワーク、患者様子見、人工知能
Ⅰ.はじめに
研究の目的
人の意思決定とは行動選択であり、意思決定のプロセスではまず、行動目的に沿う行動候補の選択を行い、次に行動候補に優先順位を付けた後に行動選択を行う。行動候補は現在の環境状況下で実行可能な行動であり、行動候補の優先順位は価値観により決まる。しかし、価値観は常に揺らいでいるため、行動候補の優先順位も揺らいでいる。従って、人の行動選択を模擬するためには価値観の揺らぎの模擬が必要である。価値観が揺らぐ理由の1つには行動の難易度、つまり行動実行時の抵抗の大きさがあり、目的に向かう行動は微小時間で細分化された微小行動の連鎖であるため、行動実行の難易度は微小行動の難度の合計となる。本研究では微小時間を3秒として微小行動とは3秒間で実行可能な行動とする。人の行動は図1に示す様に微小行動から構成される行動連鎖であり、経験のある行動は行動抵抗が小さいのに対して、経験のない行動は行動抵抗が高い、行動抵抗が高い理由の1つは準備時間が必要なことである。そして、経験のない行動は行動実行後の結果が不確かであるため、慣れた行動が優先的に選択される、この行動選択の優先順位が行動の好みや習慣である。また、行動の優先順位が均衡する複数の行動候補が並列に用意されて、行動選択が混乱する状態が行動の迷いであり、行動候補が記憶から呼び出されるのに、時間がかかり実行できなかった状態が後悔である。そこで、本研究は3秒ルールインテリジェンスによる、人の行動選択に於ける行動選択の揺らぎの模擬を提案する。
図1 行動遷
移列(著者作成)
2.人の行動選択と3秒ルールインテリジェンス
人は微小時間周期で行動候補の選び出しと行動選択を行っている。本研究は3秒ルールインテリジェンスを提案する。3秒ルールインテリジェンスは人の行動選択を模擬する。図2に示す様に3秒ルールインテリジェンスは3秒後に実行可能な行動候補の準備を行い、行動選択トリガを監視することにより行動選択を行う。行動選択トリガと行動は一対であり、行動選択トリガが検知されると対応する行動が選択される1)2)。行動選択トリガの監視の優先順位は心理的な重み付けにより決定され、心理的な重み付けは過去の経験の有無や環境状況により変化する。例えば慣れた行動の心理的重みは大きく、優先順位は高い。人は行動経験のない行動は思いつかず、行動できない3)4)。3秒ルールインテリジェンスは人と行動候補を共有することにより、人と同等な行動選択が可能となる。3秒ルールインテリジェンスは経験データベースに行動候補を格納している。そして、3秒ルールインテリジェンスは、図2に示す経験データベースから現状認識情報をキーにして、3秒後に実行可能な行動候補を選択した後、行動候補の優先順位付けを行い、行動選択トリガの監視を行う。そこで、本研究では放射線治療に於ける、ヒヤリハット報告やインシデントレポートから行動候補を収集して、患者への支援行動の発現の意思決定の模擬を行う。意思決定はベイジアンネットワークにより行う。
図2 3秒ルールインテリジェンス(著者作成)
3. 人の行動予測
人は微小時間後までの行動遷移空間を構築して行動選択を行っている。微小時間とは3秒である。例えば車両運転に於ける、先行車との安全な推奨車間距離は速度計の示す値から15を減じた距離であると言われており、時速60km/h の場合の推奨車間距離は45mである。時速60km/hの車の速度は約17m/秒であるため、45m/17m≒3秒となり、推奨される車間距離を時間的に表すと約3秒となる2)。一方、車両運転に於ける安全な車間距離を時間で表すと、2秒から3秒と言われており、車間距離が1.8秒を切ると人は不安を感じる。人は予測可能な空間が3秒より短くなると不安を感じる5)6)。また、筆者のビジネスシステム開発の経験から、エンターキーを押した後のシステム応答時間が3秒以内であればシステム利用者は概ね良好な操作感を得る。しかしシステム応答時間が6秒を超えるとシステム利用者は不満を感じ、システム応答時間が10秒を超えるとシステム利用者はシステムに対する改善を要求するという状況からも、人は現時点から3秒後までの行動予測空間を構築して行動選択を行っている。また、人の短期記憶は5秒程度と言われており、人の記憶は3秒から5秒サイクルで更新されている7)。更に、人は3回Yesと言うことにより、行動が決まると言われているように3回のYes、つまり3手順で行動につながる可能性が高い、例えば人の購買行動でも3回もYESで購買行動が起こるとされている9)。
Ⅱ. ベイジアンネットワーク
1.ベイジアンネットワーク
ベイジアンネットワークとはある事象(親)と事象に関係する要因(子)との因果関係を有効グラフで表現したものであり、親ノードと子ノードの因果関係を確率的な関係で表現している。ベイジアンネットワークの親ノードは親(世界)が取りうる状況が発現する確率を表しており10)、ベイジアンネットワークは信念ネットワークとも呼ばれ、条件付き確率テーブル上の確率値を主観的に設定することにより、人の主観を確率計算に反映できる。従って、条件付き確率テーブルに設定する確率値を主観的に設定することにより、ベイジアンネットワークは不確実な状況を表現することが可能である。ベイジアンネットワークの子ノードの条件が確定することにより、親(世界)が取りうる状況の確率が計算される。子ノードの条件が確定することを、エビデンスをセットすると呼び、事実や状況が判明した場合には、子ノードにエビデンスが設定され、子ノードが親ノードに与える確率が決定する。
2.ベイジアンネットワークを用いた計算例
以下にベイジアンネットワークを用いた計算例を示す。本例はプロジェクトの実行において、プロジェクトが計画通りに終了する確率計算の例を示す。本例ではベイズ推定の式(1)を使用してプロジェクトリスクを推定する。
(1)
プロジェクトリスクとは、プロジェクトが計画通りに終了しない確率、つまりプロジェクトの遅延確率である。以降、プロジェクトリスクとはプロジェクトの遅延確率とする。プロジェクトの遅延が発生すると費用超過や契約違反となり、費用的な損害が発生する。図3はP(A):親(世界)の確率とP(B):子供(世界を説明する条件)の確率を示す。本例ではプロジェクトが計画通りに終了する確率がP(A)であり、スタッフからのプロジェクトの進捗に関するレポートの信頼性を示す確率であるP(B)との関係を考える。ここで、P(A)=0.9、P(B)=0.7とすると、プロジェクトが実行される世界の初期の確率は図3となる。ベイジアンネットワークはある事象が取りうる世界の確率的関係を示し、エビデンスが設定されると世界が変化する。
図3 報告を受ける前の世界確率の図(著者作成)
次に機械学習システムのWeka (Waikato Environment for Knowledge Analysis) 10)を使用してプロジェクトが実行される世界の確率状況を表現した様子を図4に示す。図4と表1、表2はWeka上のProjectノードとReportノードに確率を与えている様子を示す。一般的にプロジェクトは10%程度遅延することが知られているため、表1と図4ではプロジェクトが計画通りに終わる確率を0.9に設定している。ただし、図4に示す様にWekaのベイジアンネットワーク表示では確率0.9は9000、そして確率0.7は6599と表示されている。
表1 Weka上のProjectノードの条件付き確率(著者作成)
表2 Weka上のReportノードの条件付き確率(著者作成)
図4プロジェクトのベイジアンネットワーク表示(著者作成)
次に、表3と図5はスタッフがプロジェクトの進捗は計画通りと報告した後のプロジェクトが実行される世界を示しており、P(A|B)は式(2)に示す通り0.95となる。図6はWekaで確率を計算した様子を示す。本例でのエビデンスはプロジェクトの進捗は計画通りとのスタッフのからの報告である。ベイズ推定ではエビデンスと呼ばれる状況報告を与えることにより、確率世界が変化する。
表3 報告を受けた後の世界確率(抹消線の世界が削除された) (著者作成)
図5 報告を受けた後の世界確率の図(網掛けの部分の世界が消えた) (著者作成)
(2)
図6 報告を受けた後のWekaでのベイジアンネットワーク表示(著者作成)
Ⅲ. 患者様子見行動と患者対応
1.患者様子見行動支援の必要性
医療現場では、患者確認に於けるダブルチェックや手順の標準化が進められている11)。しかし、例外的な事象が起きた場合の対応は人の判断に頼らざるを得ず、現場では高度な判断できる熟練医療スタッフが求められている。そこで、本研究は3秒ルールインテリジェンスを用いた人的感覚を持つ環境評価機能を提案する。環境評価機能とは患者支援の必要性の判断である、患者支援の必要性判断は患者の状態や環境状況等の複数の要因からなり、更に患者支援の必要性は医療スタッフの主観や経験にも依存しており、患者様子見行動に於ける患者支援行動の発現の必要性は状況変化に伴い揺らいでいる11)12)。患者様子見行動とは不安定な患者の事故防止のための、医療スタッフによる患者監視行動であり、患者様子見行動はスタッフがある一定時間、患者への対応行動を保留して、患者リスクの発現を監視する行動である。患者様子見行動は患者が治療室に移動する場合や、治療中は患者の動作は限定的であるため、人工知能が患者を監視できれば、スタッフの業務軽減が図れる。更に人工知能に患者監視を任せることにより、スタッフは次の業務の準備作業等が可能となり業務に余裕が生まれる。患者様子見行動は患者監視を含む状況判断とスタッフの経験により行われる行動であり、人工知能による患者様子見行動の実現のためには医療スタッフの経験情報のデータベース化が必要である。
2.患者リスクの評価
本研究は熟練医療スタッフに近い状況判断機能の実現を目指して、3秒ルールインテリジェンスを放射線治療現場に応用した。表4に放射線治療に於ける環境要因と要因の略称を示す。環境要因は医療スタッフからのヒアリングにより取得した、ヒアリングは広島国際大学 保健医療学部 診療放射線学科と九州大学病院 医療技術部 放射線部門のお二人の方に行った。そして、本研究では医療スタッフからヒアリングによりヒヤリハット報告を収集して表5に示すXMLにより記述してデータベース化の試行を行った。本研究では、ベイジアンネットワークにより算出した患者リスクにより、患者への支援行動の発動判断を行う。患者リスクとは患者支援行動発現確率のことであり、本研究ではベイジアンネットワークを用いて算出した患者リスクを患者への支援の必要性とみなす。従って、患者リスクが上昇すると患者への支援行動の必要性が増すこととなり、患者支援の必要性があるしきい値を越えると患者への支援が必要と判断する。
表4 患者を取り巻く環境とベイジアンネットワークの要素(著者作成)
表5 ヒヤリハット報告の記述タグ一覧(著者作成)
3.患者様子見行動の分析
患者様子見行動とは不安定な患者の事故防止のための、医療スタッフによる患者監視行動のことである。図7は医療スタッフが患者の様子を監視している状況を示しており、縦軸は患者リスクを示し、横軸は時間軸である。図7に示す、患者が問題無しの領域にある場合には、医療スタッフは患者を監視する必要のない状況であることを示す、例えば患者が検査に行っている状態である。
図7 患者状況判断(患者リスクとしきい値) (著者作成)
次に患者が様子見状態にある場合には医療スタッフが患者を監視する必要がある状況であり、更に、患者が事故発生確率大の領域に入った場合には、患者リスクが高い状況であり、患者への支援が必要となる。例えば患者への支援行動として、患者への声掛けや治療中断がある。患者様子見行動は医療スタッフが患者への対応行動を保留して患者の様子を監視する行動であり、人工知能が患者を監視できれば、医療スタッフの業務軽減が図れる。そこで、本研究は医療スタッフの患者様子見行動の模擬を目指して、3秒ルールインテリジェンスの放射線治療への適用を試みた。図8に本研究で作成した患者リスク算出用ベイジアンネットワークを示す。ベイジアンネットワークの親ノード(RISK)が示す確率値は医療スタッフ経験に基づく患者リスク値を示しており、3秒後の患者支援行動の必要性度合いを示している。図9に本研究で、Wekaに設定したベイジアンネットワークを示す。図9のベイジアンネットワーク中の略称とベイジアンネットワークに設定した条件付き確率テーブルは表6の通りである。表6に示す条件付き確率テーブルの各数値は医療スタッフからのヒアリングにより取得しており、医療スタッフの経験値を反映している。本試行では、環境要因の変化に従い、ベイジアンネットワークの再計算を行い、患者リスクを算出する。ベイジアンネットワークが示す患者リスクは患者支援行動の必要度合いを示し、患者支援行動の必要度合いが図7に示す、あるしきい値を越えた場合には患者への支援行動が必要となる。
図8 治療環境のベイジアンネットワーク(著者作成)
図9 治療環境のベイジアンネットワークと条件付き確率テーブル(初期状態) (著者作成)
表6 患者支援モデルのテーブル例(著者作成)
親テーブル(RISK)
条件付き確率子テーブル(SKIL,PAT,METH,ENV)
表6 患者支援モデルのテーブル例(著者作成) 続き
4.患者様子見の評価
3秒ルールインテリジェンスは行動選択トリガの発現状況を監視することにより患者リスクの発現を認識する。本研究ではヒヤリハット報告から抽出した、患者様子見に於ける環境の時間的変化を経験ルールとして、XML形式で登録される(図10参照)。経験ルールは3秒間の状態遷移情報であり、環境変化が検知されると関連した経験ルールが選択される(表7参照)。本研究では行動発動のきっかけとなる特定な要因を行動選択トリガと呼び、行動選択トリガは医療スタッフからのヒアリングにより収集した。行動選択トリガが検知されると該当する経験ルールが選択され、ベイジアンネットワーク中の指定されたノードにエビデンスが設定され、患者支援行動の選択確率が変化する。例えば患者のふらつきが検知された場合には、患者の状態判断を行う経験ルールが選択され、患者の状態が悪いことを示すエビデンスがベイジアンネットワークに設定される。初期状態での患者への支援必要性値は図9に示す通り、患者支援が必要と不必要の確率は共に0.5であり、患者様子見の状態である。そして、患者のふらつきが検知されると、患者の状態が悪いことを示すエビデンスがベイジアンネットワークに設定され、図11に示す通り、患者への支援の必要性を示す値が0.83となる。図7に示す様に患者支援行動の発現しきい値を0.7とすると、患者への支援行動が必要となる。従って本結果は、3秒ルールインテリジェンスは医療スタッフの判断に近い行動選択が可能である。本研究では、行動選択トリガに記述された環境要因を監視する、本例では患者の動きを監視して、手動でエビデンスを与えた。しかし、行動選択トリガの自動監視ができれば、患者様子見行動の自動化が実現する。
表7 エビデンス設定の行動選択トリガ(著者作成)
図10 登録したヒヤリハット報告の例(著者作成)
図11 治療環境のベイジアンネットワーク(エビデンスの設定後) (著者作成)
Ⅳ. 患者様子見行動の自動化
1.ベイジアンネットワークの細分化
前章で3秒ルールインテリジェンスによる患者様子見行動における患者支援行動発現判断の自動化の可能性を示した。本研究では患者支援行動発現判断の自動化を進めるために、前章で示したベイジアンネットワークを更に2層にして、患者と環境情報の自動取得を検討した(図12参照)。本研究では、図8に示す子ノードのエビデンスへの自動設定を目指して、ベイジアンネットワークの各子ノードの状態に影響を与える要因を更に細分化した。具体的には表8に示す通り、各子ノードに更にベイジアンネットワークを設定した。患者リスク算出要因を更に細分化することにより、自動設定可能な行動選択トリガが増え、患者様子見の自動化の可能性が高まる。例えば、患者状態(PAT)の算出要因である、患者搬送状態(Trstus)の値は放射線治療情報システムから自動設定が可能である、具体的には患者情報から歩行か、車椅子かストレッチャーである。例えば、図13に示す患者の初期状態に放射線治療情報システムの患者情報から図14に示す様に患者搬送状態(Trstus)にWalkが設定されると、図14に示す通り、患者状態(PAT)は良好(Good)となり、図15に示す様に親のベイジアンネットワーク中の患者状態(PAT)に良好(Good)が設定される。図15では、SKL(医療スタッフのスキル)、METH(治療内容の特殊性)はSTANDARD(標準)でENV(医療スタッフの業務ストレス)の状態は不明である。
表8 患者リスク値を与えるベイジアンネットワークを更に細分化したテーブル構造(著者作成)
図12 2層のベイジアンネットワーク(著者作成)
図13 患者の状態(PAT)算出用ベイジアンネットワーク(初期状態) (著者作成)
図14 患者の状態(PAT)算出ベイジアンネットワーク(患者の歩行確認) (著者作成)
図15患者リスク(RISK)算出用ベイジアンネットワーク(著者作成)
2.患者リスク算出システムの試作
本研究は患者と環境情報の自動取得を試行するために図16に示す、患者リスク算出システムを試作した。試作した患者リスク算出システムは図2に於ける行動選択トリガの自動収集により患者支援行動発現確率を算出する。患者情報の自動入力としてはカメラ画像による患者状態の入力とマイクによる音声入力がある。カメラ画像の分析により患者のふらつきが検知や音声入力から患者の求めを検知することが可能となる。例えば、患者リスク算出システムは放射線治療情報システムから治療内容の複雑さが標準であることを受信すると、図15に示す治療内容の特殊性(METH)には標準(Standard)が自動設定され、加えて、医療スタッフのスキル(SKIL)に標準(Standard)の場合には、患者リスク値(RISK)は図15に示す通り、患者様子見の確率値は0.7を示し、患者様子見の判断を示す。次に、患者リスク算出システムが患者の蛇行であるふらつきを自動検知すると、図17に示す患者状態(PAT)モデルの患者ふらつきのエビデンスに、患者の蛇行(Mend)にYesが設定される。しかし、患者搬送状態(Trstus)がWalkなので、患者状態(PAT)がLowである確率値は約0.54となり、しきい値が0.7を越えないので、図17の患者リスク(RISK)算出モデルのPATにLowは設定されず、患者への支援の必要性は不明のままとなる。しかし、患者情報から図17の患者パフォーマンスステータス(Pstus)にLowが自動設定されると、図18に示す通り患者状態(PAT)が低 (Low)である確率値は約0.88となり、図19に示す親のベイジアンネットワークのPATにLowが設定され、図19のRISK値は0.88となり、しきい値の0.7を越えるため、3秒ルールインテリジェンスは患者支援実施発現の意思決定を行う。以上の患者リスク算出システムの動作状況を図20に示す。ただし、本例では、医療スタッフのスキルは人の主観的判断により設定されている。以上の試行結果により、患者リスクを算出するための要因を更に細分化することにより、ベイジアンネットワークのエビデンスを自動設定することが可能となり、患者様子見の自動化の可能性が高まることが明らかになった。
図16 患者リスク算出WEBシステム(著者作成)
図17 患者の状態(PAT)算出用ベイジアンネットワーク(患者の蛇行(Mend)確認) (著者作成)
図18 患者の状態(PAT)算出用ベイジアンネットワーク(患者のふらつき(Mend)YESとパフォーマンスステータス(Pstus)のLowを確認) (著者作成)
図19 患者リスク(RISK)算出用ベイジアンネットワーク(患者状態はLow) (著者作成)
図20 患者リスク算出システム動作状況(著者作成)
3.環境情報の自動取得
本研究では環境情報の自動取得に向けて音声と画像情報の自動取得を試行した(図21参照)。本件で試行したシステム構成を表9に示し、画像処理で認識した例を図22に示す。また音声処理をした例を図23に示す。今後、画像や音声の自動認識を行い、患者リスク算出システムに自動入力することにより、患者リスク算出システムによる自動監視実現の可能性が高まる。
表9 機器構成(著者作成)
図21 環境情報の自動収集(著者作成)
図22 画像の検知例(人物を認識している) (著者作成)
図23 音声の自動認識の例(著者作成)
Ⅴ. まとめ
本研究は放射線治療現場に於ける患者様子見行動の模擬を3秒ルールインテリジェンスにより試みた。患者様子見行動とは患者の様子を監視して、支援が必要な場合には患者支援を行い、支援が不要な場合には、引き続き患者の監視を行う行動である。3秒ルールインテリジェンスはベイジアンネットワークを使用して、人の行動選択を模擬する。具体的には、3秒ルールインテリジェンスは、行動選択トリガを監視しており、行動選択トリガが検知されると、ベイジアンネットワークのエビデンスをセットして、患者リスクを計算する。そして、患者リスクがあるしきい値を超えると、患者支援行動の選択を行う。行動選択トリガとは患者支援行動に先立って検知される環境情報である、例えば、患者のふらつきや蛇行がある。そして、本研究はベイジアンネットワークを2層にすることにより、行動選択トリガを細分化することが可能となることを示した。行動選択トリガの細分化により、行動選択トリガの自動検知が可能となり、ベイジアンネットワークへのエビデンスの自動セットが可能となる。例えば、カメラやマイクやセンサーから自動取得した情報から、人と同じ視点で行動選択トリガを自動監視することにより、人の感覚に近い環境監視を行うことが可能となる。3秒ルールインテリジェンスによる人的感覚を持つ患者様子見機能が実現すれば、患者対応の緊急度を自動的に判断することが可能となり、経験の少ない医療スタッフでも対応の優先順位を即時に知ることができ、余裕のある患者対応が実現する。3秒ルールインテリジェンスはエビデンスの設定経過を示すことが可能であり、意思決定の根拠を明確に示すことができるため、今後、信頼できる汎用人工知能(AGI: Artificial General Intelligence)への展開が期待できる。
謝辞
本研究はJSPS科研費 JP20K11983の助成を受けた。また、本研究に助言と貴重な情報を頂いた広島国際大学 保健医療学部 診療放射線学科の橘昌幸教授と九州大学病院 医療技術部 放射線部門の福永淳一先生に感謝申し上げる。
引用文献
1) 持田 信治:「3秒ルールインテリジェンスを用いた患者様子見の模擬」, バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌,VOL 24 NO1 pp.37-46,2022
2) 持田 信治:「3秒ルールインテリジェンスによる意思決定」, 流通科学大学論集-経済・情報・政策編,第30巻 第2号pp.13-31,2022
3) P.H.リンゼイ/ D.A.ノーマン,中溝 幸夫(訳):「情報処理心理学入門Ⅰ(感覚と知覚)」,サイエンス社,1983
4) P.H.リンゼイ/ D.A.ノーマン,中溝 幸夫(訳):「情報処理心理学入門Ⅱ(注意と記憶)」,サイエンス社,1984
5) 山下昇:「車間距離より車間時間を取ろう」,セイフティエクスプレス企業開発センター,6月号,2008
6) 持田 信治:「3秒ルールAI実現に関する研究」,日本経営システム学会第62回全国研究発表大会講演論文集,138-139, 2019
8) 甘利 俊一,田中 啓治:「認識と行動の脳科学」, 東京大学出版会,2008
9) D.カーネギー,山口博(訳):「人を動かす」,創元社,1981
10)藤田一弥:「見えないものをさぐる それがベイズ」,オーム社, 2015.
11) 持田 信治,橘 昌幸:「人の観点から見た環境評価に関する研究」,BMFSA学会誌 VOL11 NO.2 PP.25‐31
12) 持田 信治,池添 律代,矢鳴 虎夫:「判断マトリクスを使用した内部状態モデル構築に関する研究」,バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 6 巻 1 号,10-16,2004

プロジェクトリスクの推定
ヒット: 1 開く 保存
状況
プロジェクトが計画通りに終了するかどうかの不確実な状況下で、スタッフからの進捗報告というエビデンスを用いてリスクを評価する必要があった。
行動
ベイジアンネットワークを用い、プロジェクトの遅延確率を親ノード、スタッフの報告信頼性を子ノードとして設定し、報告内容をエビデンスとして入力した。
結果
エビデンスの入力により確率世界が変化し、プロジェクトの遅延確率を客観的かつ確率的に算出することができた。
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【分析:状況】
プロジェクトが計画通りに終了するかどうかの不確実な状況下で、スタッフからの進捗報告というエビデンスを用いてリスクを評価する必要があった。
【分析:行動】
ベイジアンネットワークを用い、プロジェクトの遅延確率を親ノード、スタッフの報告信頼性を子ノードとして設定し、報告内容をエビデンスとして入力した。
【分析:結果】
エビデンスの入力により確率世界が変化し、プロジェクトの遅延確率を客観的かつ確率的に算出することができた。
----------------------------------------
【本文】
3秒ルールインテリジェンスを用いた人の行動選択の模擬
Simulation of human action selection using Three-Second rule Intelligence
持田 信治*
Shinji Mochida
本研究は3秒ルールインテリジェンスによる人の行動選択の模擬を提案する。3秒ルールインテリジェンスは3秒後までの状況予測に基づいて行動選択を行う人工知能であり、行動可能な行動検索部と行動選択部から構成される。本研究は放射線治療に於ける、患者支援行動の発動決定についてWEB試行システムを作成して試行を行った。そして、試行の結果、3秒ルールインテリジェンスによる行動選択の可能性が示されたので報告する。
キーワード:3秒ルールインテリジェンス、ベイジアンネットワーク、患者様子見、人工知能
Ⅰ.はじめに
研究の目的
人の意思決定とは行動選択であり、意思決定のプロセスではまず、行動目的に沿う行動候補の選択を行い、次に行動候補に優先順位を付けた後に行動選択を行う。行動候補は現在の環境状況下で実行可能な行動であり、行動候補の優先順位は価値観により決まる。しかし、価値観は常に揺らいでいるため、行動候補の優先順位も揺らいでいる。従って、人の行動選択を模擬するためには価値観の揺らぎの模擬が必要である。価値観が揺らぐ理由の1つには行動の難易度、つまり行動実行時の抵抗の大きさがあり、目的に向かう行動は微小時間で細分化された微小行動の連鎖であるため、行動実行の難易度は微小行動の難度の合計となる。本研究では微小時間を3秒として微小行動とは3秒間で実行可能な行動とする。人の行動は図1に示す様に微小行動から構成される行動連鎖であり、経験のある行動は行動抵抗が小さいのに対して、経験のない行動は行動抵抗が高い、行動抵抗が高い理由の1つは準備時間が必要なことである。そして、経験のない行動は行動実行後の結果が不確かであるため、慣れた行動が優先的に選択される、この行動選択の優先順位が行動の好みや習慣である。また、行動の優先順位が均衡する複数の行動候補が並列に用意されて、行動選択が混乱する状態が行動の迷いであり、行動候補が記憶から呼び出されるのに、時間がかかり実行できなかった状態が後悔である。そこで、本研究は3秒ルールインテリジェンスによる、人の行動選択に於ける行動選択の揺らぎの模擬を提案する。
図1 行動遷
移列(著者作成)
2.人の行動選択と3秒ルールインテリジェンス
人は微小時間周期で行動候補の選び出しと行動選択を行っている。本研究は3秒ルールインテリジェンスを提案する。3秒ルールインテリジェンスは人の行動選択を模擬する。図2に示す様に3秒ルールインテリジェンスは3秒後に実行可能な行動候補の準備を行い、行動選択トリガを監視することにより行動選択を行う。行動選択トリガと行動は一対であり、行動選択トリガが検知されると対応する行動が選択される1)2)。行動選択トリガの監視の優先順位は心理的な重み付けにより決定され、心理的な重み付けは過去の経験の有無や環境状況により変化する。例えば慣れた行動の心理的重みは大きく、優先順位は高い。人は行動経験のない行動は思いつかず、行動できない3)4)。3秒ルールインテリジェンスは人と行動候補を共有することにより、人と同等な行動選択が可能となる。3秒ルールインテリジェンスは経験データベースに行動候補を格納している。そして、3秒ルールインテリジェンスは、図2に示す経験データベースから現状認識情報をキーにして、3秒後に実行可能な行動候補を選択した後、行動候補の優先順位付けを行い、行動選択トリガの監視を行う。そこで、本研究では放射線治療に於ける、ヒヤリハット報告やインシデントレポートから行動候補を収集して、患者への支援行動の発現の意思決定の模擬を行う。意思決定はベイジアンネットワークにより行う。
図2 3秒ルールインテリジェンス(著者作成)
3. 人の行動予測
人は微小時間後までの行動遷移空間を構築して行動選択を行っている。微小時間とは3秒である。例えば車両運転に於ける、先行車との安全な推奨車間距離は速度計の示す値から15を減じた距離であると言われており、時速60km/h の場合の推奨車間距離は45mである。時速60km/hの車の速度は約17m/秒であるため、45m/17m≒3秒となり、推奨される車間距離を時間的に表すと約3秒となる2)。一方、車両運転に於ける安全な車間距離を時間で表すと、2秒から3秒と言われており、車間距離が1.8秒を切ると人は不安を感じる。人は予測可能な空間が3秒より短くなると不安を感じる5)6)。また、筆者のビジネスシステム開発の経験から、エンターキーを押した後のシステム応答時間が3秒以内であればシステム利用者は概ね良好な操作感を得る。しかしシステム応答時間が6秒を超えるとシステム利用者は不満を感じ、システム応答時間が10秒を超えるとシステム利用者はシステムに対する改善を要求するという状況からも、人は現時点から3秒後までの行動予測空間を構築して行動選択を行っている。また、人の短期記憶は5秒程度と言われており、人の記憶は3秒から5秒サイクルで更新されている7)。更に、人は3回Yesと言うことにより、行動が決まると言われているように3回のYes、つまり3手順で行動につながる可能性が高い、例えば人の購買行動でも3回もYESで購買行動が起こるとされている9)。
Ⅱ. ベイジアンネットワーク
1.ベイジアンネットワーク
ベイジアンネットワークとはある事象(親)と事象に関係する要因(子)との因果関係を有効グラフで表現したものであり、親ノードと子ノードの因果関係を確率的な関係で表現している。ベイジアンネットワークの親ノードは親(世界)が取りうる状況が発現する確率を表しており10)、ベイジアンネットワークは信念ネットワークとも呼ばれ、条件付き確率テーブル上の確率値を主観的に設定することにより、人の主観を確率計算に反映できる。従って、条件付き確率テーブルに設定する確率値を主観的に設定することにより、ベイジアンネットワークは不確実な状況を表現することが可能である。ベイジアンネットワークの子ノードの条件が確定することにより、親(世界)が取りうる状況の確率が計算される。子ノードの条件が確定することを、エビデンスをセットすると呼び、事実や状況が判明した場合には、子ノードにエビデンスが設定され、子ノードが親ノードに与える確率が決定する。
2.ベイジアンネットワークを用いた計算例
以下にベイジアンネットワークを用いた計算例を示す。本例はプロジェクトの実行において、プロジェクトが計画通りに終了する確率計算の例を示す。本例ではベイズ推定の式(1)を使用してプロジェクトリスクを推定する。
(1)
プロジェクトリスクとは、プロジェクトが計画通りに終了しない確率、つまりプロジェクトの遅延確率である。以降、プロジェクトリスクとはプロジェクトの遅延確率とする。プロジェクトの遅延が発生すると費用超過や契約違反となり、費用的な損害が発生する。図3はP(A):親(世界)の確率とP(B):子供(世界を説明する条件)の確率を示す。本例ではプロジェクトが計画通りに終了する確率がP(A)であり、スタッフからのプロジェクトの進捗に関するレポートの信頼性を示す確率であるP(B)との関係を考える。ここで、P(A)=0.9、P(B)=0.7とすると、プロジェクトが実行される世界の初期の確率は図3となる。ベイジアンネットワークはある事象が取りうる世界の確率的関係を示し、エビデンスが設定されると世界が変化する。
図3 報告を受ける前の世界確率の図(著者作成)
次に機械学習システムのWeka (Waikato Environment for Knowledge Analysis) 10)を使用してプロジェクトが実行される世界の確率状況を表現した様子を図4に示す。図4と表1、表2はWeka上のProjectノードとReportノードに確率を与えている様子を示す。一般的にプロジェクトは10%程度遅延することが知られているため、表1と図4ではプロジェクトが計画通りに終わる確率を0.9に設定している。ただし、図4に示す様にWekaのベイジアンネットワーク表示では確率0.9は9000、そして確率0.7は6599と表示されている。
表1 Weka上のProjectノードの条件付き確率(著者作成)
表2 Weka上のReportノードの条件付き確率(著者作成)
図4プロジェクトのベイジアンネットワーク表示(著者作成)
次に、表3と図5はスタッフがプロジェクトの進捗は計画通りと報告した後のプロジェクトが実行される世界を示しており、P(A|B)は式(2)に示す通り0.95となる。図6はWekaで確率を計算した様子を示す。本例でのエビデンスはプロジェクトの進捗は計画通りとのスタッフのからの報告である。ベイズ推定ではエビデンスと呼ばれる状況報告を与えることにより、確率世界が変化する。
表3 報告を受けた後の世界確率(抹消線の世界が削除された) (著者作成)
図5 報告を受けた後の世界確率の図(網掛けの部分の世界が消えた) (著者作成)
(2)
図6 報告を受けた後のWekaでのベイジアンネットワーク表示(著者作成)
Ⅲ. 患者様子見行動と患者対応
1.患者様子見行動支援の必要性
医療現場では、患者確認に於けるダブルチェックや手順の標準化が進められている11)。しかし、例外的な事象が起きた場合の対応は人の判断に頼らざるを得ず、現場では高度な判断できる熟練医療スタッフが求められている。そこで、本研究は3秒ルールインテリジェンスを用いた人的感覚を持つ環境評価機能を提案する。環境評価機能とは患者支援の必要性の判断である、患者支援の必要性判断は患者の状態や環境状況等の複数の要因からなり、更に患者支援の必要性は医療スタッフの主観や経験にも依存しており、患者様子見行動に於ける患者支援行動の発現の必要性は状況変化に伴い揺らいでいる11)12)。患者様子見行動とは不安定な患者の事故防止のための、医療スタッフによる患者監視行動であり、患者様子見行動はスタッフがある一定時間、患者への対応行動を保留して、患者リスクの発現を監視する行動である。患者様子見行動は患者が治療室に移動する場合や、治療中は患者の動作は限定的であるため、人工知能が患者を監視できれば、スタッフの業務軽減が図れる。更に人工知能に患者監視を任せることにより、スタッフは次の業務の準備作業等が可能となり業務に余裕が生まれる。患者様子見行動は患者監視を含む状況判断とスタッフの経験により行われる行動であり、人工知能による患者様子見行動の実現のためには医療スタッフの経験情報のデータベース化が必要である。
2.患者リスクの評価
本研究は熟練医療スタッフに近い状況判断機能の実現を目指して、3秒ルールインテリジェンスを放射線治療現場に応用した。表4に放射線治療に於ける環境要因と要因の略称を示す。環境要因は医療スタッフからのヒアリングにより取得した、ヒアリングは広島国際大学 保健医療学部 診療放射線学科と九州大学病院 医療技術部 放射線部門のお二人の方に行った。そして、本研究では医療スタッフからヒアリングによりヒヤリハット報告を収集して表5に示すXMLにより記述してデータベース化の試行を行った。本研究では、ベイジアンネットワークにより算出した患者リスクにより、患者への支援行動の発動判断を行う。患者リスクとは患者支援行動発現確率のことであり、本研究ではベイジアンネットワークを用いて算出した患者リスクを患者への支援の必要性とみなす。従って、患者リスクが上昇すると患者への支援行動の必要性が増すこととなり、患者支援の必要性があるしきい値を越えると患者への支援が必要と判断する。
表4 患者を取り巻く環境とベイジアンネットワークの要素(著者作成)
表5 ヒヤリハット報告の記述タグ一覧(著者作成)
3.患者様子見行動の分析
患者様子見行動とは不安定な患者の事故防止のための、医療スタッフによる患者監視行動のことである。図7は医療スタッフが患者の様子を監視している状況を示しており、縦軸は患者リスクを示し、横軸は時間軸である。図7に示す、患者が問題無しの領域にある場合には、医療スタッフは患者を監視する必要のない状況であることを示す、例えば患者が検査に行っている状態である。
図7 患者状況判断(患者リスクとしきい値) (著者作成)
次に患者が様子見状態にある場合には医療スタッフが患者を監視する必要がある状況であり、更に、患者が事故発生確率大の領域に入った場合には、患者リスクが高い状況であり、患者への支援が必要となる。例えば患者への支援行動として、患者への声掛けや治療中断がある。患者様子見行動は医療スタッフが患者への対応行動を保留して患者の様子を監視する行動であり、人工知能が患者を監視できれば、医療スタッフの業務軽減が図れる。そこで、本研究は医療スタッフの患者様子見行動の模擬を目指して、3秒ルールインテリジェンスの放射線治療への適用を試みた。図8に本研究で作成した患者リスク算出用ベイジアンネットワークを示す。ベイジアンネットワークの親ノード(RISK)が示す確率値は医療スタッフ経験に基づく患者リスク値を示しており、3秒後の患者支援行動の必要性度合いを示している。図9に本研究で、Wekaに設定したベイジアンネットワークを示す。図9のベイジアンネットワーク中の略称とベイジアンネットワークに設定した条件付き確率テーブルは表6の通りである。表6に示す条件付き確率テーブルの各数値は医療スタッフからのヒアリングにより取得しており、医療スタッフの経験値を反映している。本試行では、環境要因の変化に従い、ベイジアンネットワークの再計算を行い、患者リスクを算出する。ベイジアンネットワークが示す患者リスクは患者支援行動の必要度合いを示し、患者支援行動の必要度合いが図7に示す、あるしきい値を越えた場合には患者への支援行動が必要となる。
図8 治療環境のベイジアンネットワーク(著者作成)
図9 治療環境のベイジアンネットワークと条件付き確率テーブル(初期状態) (著者作成)
表6 患者支援モデルのテーブル例(著者作成)
親テーブル(RISK)
条件付き確率子テーブル(SKIL,PAT,METH,ENV)
表6 患者支援モデルのテーブル例(著者作成) 続き
4.患者様子見の評価
3秒ルールインテリジェンスは行動選択トリガの発現状況を監視することにより患者リスクの発現を認識する。本研究ではヒヤリハット報告から抽出した、患者様子見に於ける環境の時間的変化を経験ルールとして、XML形式で登録される(図10参照)。経験ルールは3秒間の状態遷移情報であり、環境変化が検知されると関連した経験ルールが選択される(表7参照)。本研究では行動発動のきっかけとなる特定な要因を行動選択トリガと呼び、行動選択トリガは医療スタッフからのヒアリングにより収集した。行動選択トリガが検知されると該当する経験ルールが選択され、ベイジアンネットワーク中の指定されたノードにエビデンスが設定され、患者支援行動の選択確率が変化する。例えば患者のふらつきが検知された場合には、患者の状態判断を行う経験ルールが選択され、患者の状態が悪いことを示すエビデンスがベイジアンネットワークに設定される。初期状態での患者への支援必要性値は図9に示す通り、患者支援が必要と不必要の確率は共に0.5であり、患者様子見の状態である。そして、患者のふらつきが検知されると、患者の状態が悪いことを示すエビデンスがベイジアンネットワークに設定され、図11に示す通り、患者への支援の必要性を示す値が0.83となる。図7に示す様に患者支援行動の発現しきい値を0.7とすると、患者への支援行動が必要となる。従って本結果は、3秒ルールインテリジェンスは医療スタッフの判断に近い行動選択が可能である。本研究では、行動選択トリガに記述された環境要因を監視する、本例では患者の動きを監視して、手動でエビデンスを与えた。しかし、行動選択トリガの自動監視ができれば、患者様子見行動の自動化が実現する。
表7 エビデンス設定の行動選択トリガ(著者作成)
図10 登録したヒヤリハット報告の例(著者作成)
図11 治療環境のベイジアンネットワーク(エビデンスの設定後) (著者作成)
Ⅳ. 患者様子見行動の自動化
1.ベイジアンネットワークの細分化
前章で3秒ルールインテリジェンスによる患者様子見行動における患者支援行動発現判断の自動化の可能性を示した。本研究では患者支援行動発現判断の自動化を進めるために、前章で示したベイジアンネットワークを更に2層にして、患者と環境情報の自動取得を検討した(図12参照)。本研究では、図8に示す子ノードのエビデンスへの自動設定を目指して、ベイジアンネットワークの各子ノードの状態に影響を与える要因を更に細分化した。具体的には表8に示す通り、各子ノードに更にベイジアンネットワークを設定した。患者リスク算出要因を更に細分化することにより、自動設定可能な行動選択トリガが増え、患者様子見の自動化の可能性が高まる。例えば、患者状態(PAT)の算出要因である、患者搬送状態(Trstus)の値は放射線治療情報システムから自動設定が可能である、具体的には患者情報から歩行か、車椅子かストレッチャーである。例えば、図13に示す患者の初期状態に放射線治療情報システムの患者情報から図14に示す様に患者搬送状態(Trstus)にWalkが設定されると、図14に示す通り、患者状態(PAT)は良好(Good)となり、図15に示す様に親のベイジアンネットワーク中の患者状態(PAT)に良好(Good)が設定される。図15では、SKL(医療スタッフのスキル)、METH(治療内容の特殊性)はSTANDARD(標準)でENV(医療スタッフの業務ストレス)の状態は不明である。
表8 患者リスク値を与えるベイジアンネットワークを更に細分化したテーブル構造(著者作成)
図12 2層のベイジアンネットワーク(著者作成)
図13 患者の状態(PAT)算出用ベイジアンネットワーク(初期状態) (著者作成)
図14 患者の状態(PAT)算出ベイジアンネットワーク(患者の歩行確認) (著者作成)
図15患者リスク(RISK)算出用ベイジアンネットワーク(著者作成)
2.患者リスク算出システムの試作
本研究は患者と環境情報の自動取得を試行するために図16に示す、患者リスク算出システムを試作した。試作した患者リスク算出システムは図2に於ける行動選択トリガの自動収集により患者支援行動発現確率を算出する。患者情報の自動入力としてはカメラ画像による患者状態の入力とマイクによる音声入力がある。カメラ画像の分析により患者のふらつきが検知や音声入力から患者の求めを検知することが可能となる。例えば、患者リスク算出システムは放射線治療情報システムから治療内容の複雑さが標準であることを受信すると、図15に示す治療内容の特殊性(METH)には標準(Standard)が自動設定され、加えて、医療スタッフのスキル(SKIL)に標準(Standard)の場合には、患者リスク値(RISK)は図15に示す通り、患者様子見の確率値は0.7を示し、患者様子見の判断を示す。次に、患者リスク算出システムが患者の蛇行であるふらつきを自動検知すると、図17に示す患者状態(PAT)モデルの患者ふらつきのエビデンスに、患者の蛇行(Mend)にYesが設定される。しかし、患者搬送状態(Trstus)がWalkなので、患者状態(PAT)がLowである確率値は約0.54となり、しきい値が0.7を越えないので、図17の患者リスク(RISK)算出モデルのPATにLowは設定されず、患者への支援の必要性は不明のままとなる。しかし、患者情報から図17の患者パフォーマンスステータス(Pstus)にLowが自動設定されると、図18に示す通り患者状態(PAT)が低 (Low)である確率値は約0.88となり、図19に示す親のベイジアンネットワークのPATにLowが設定され、図19のRISK値は0.88となり、しきい値の0.7を越えるため、3秒ルールインテリジェンスは患者支援実施発現の意思決定を行う。以上の患者リスク算出システムの動作状況を図20に示す。ただし、本例では、医療スタッフのスキルは人の主観的判断により設定されている。以上の試行結果により、患者リスクを算出するための要因を更に細分化することにより、ベイジアンネットワークのエビデンスを自動設定することが可能となり、患者様子見の自動化の可能性が高まることが明らかになった。
図16 患者リスク算出WEBシステム(著者作成)
図17 患者の状態(PAT)算出用ベイジアンネットワーク(患者の蛇行(Mend)確認) (著者作成)
図18 患者の状態(PAT)算出用ベイジアンネットワーク(患者のふらつき(Mend)YESとパフォーマンスステータス(Pstus)のLowを確認) (著者作成)
図19 患者リスク(RISK)算出用ベイジアンネットワーク(患者状態はLow) (著者作成)
図20 患者リスク算出システム動作状況(著者作成)
3.環境情報の自動取得
本研究では環境情報の自動取得に向けて音声と画像情報の自動取得を試行した(図21参照)。本件で試行したシステム構成を表9に示し、画像処理で認識した例を図22に示す。また音声処理をした例を図23に示す。今後、画像や音声の自動認識を行い、患者リスク算出システムに自動入力することにより、患者リスク算出システムによる自動監視実現の可能性が高まる。
表9 機器構成(著者作成)
図21 環境情報の自動収集(著者作成)
図22 画像の検知例(人物を認識している) (著者作成)
図23 音声の自動認識の例(著者作成)
Ⅴ. まとめ
本研究は放射線治療現場に於ける患者様子見行動の模擬を3秒ルールインテリジェンスにより試みた。患者様子見行動とは患者の様子を監視して、支援が必要な場合には患者支援を行い、支援が不要な場合には、引き続き患者の監視を行う行動である。3秒ルールインテリジェンスはベイジアンネットワークを使用して、人の行動選択を模擬する。具体的には、3秒ルールインテリジェンスは、行動選択トリガを監視しており、行動選択トリガが検知されると、ベイジアンネットワークのエビデンスをセットして、患者リスクを計算する。そして、患者リスクがあるしきい値を超えると、患者支援行動の選択を行う。行動選択トリガとは患者支援行動に先立って検知される環境情報である、例えば、患者のふらつきや蛇行がある。そして、本研究はベイジアンネットワークを2層にすることにより、行動選択トリガを細分化することが可能となることを示した。行動選択トリガの細分化により、行動選択トリガの自動検知が可能となり、ベイジアンネットワークへのエビデンスの自動セットが可能となる。例えば、カメラやマイクやセンサーから自動取得した情報から、人と同じ視点で行動選択トリガを自動監視することにより、人の感覚に近い環境監視を行うことが可能となる。3秒ルールインテリジェンスによる人的感覚を持つ患者様子見機能が実現すれば、患者対応の緊急度を自動的に判断することが可能となり、経験の少ない医療スタッフでも対応の優先順位を即時に知ることができ、余裕のある患者対応が実現する。3秒ルールインテリジェンスはエビデンスの設定経過を示すことが可能であり、意思決定の根拠を明確に示すことができるため、今後、信頼できる汎用人工知能(AGI: Artificial General Intelligence)への展開が期待できる。
謝辞
本研究はJSPS科研費 JP20K11983の助成を受けた。また、本研究に助言と貴重な情報を頂いた広島国際大学 保健医療学部 診療放射線学科の橘昌幸教授と九州大学病院 医療技術部 放射線部門の福永淳一先生に感謝申し上げる。
引用文献
1) 持田 信治:「3秒ルールインテリジェンスを用いた患者様子見の模擬」, バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌,VOL 24 NO1 pp.37-46,2022
2) 持田 信治:「3秒ルールインテリジェンスによる意思決定」, 流通科学大学論集-経済・情報・政策編,第30巻 第2号pp.13-31,2022
3) P.H.リンゼイ/ D.A.ノーマン,中溝 幸夫(訳):「情報処理心理学入門Ⅰ(感覚と知覚)」,サイエンス社,1983
4) P.H.リンゼイ/ D.A.ノーマン,中溝 幸夫(訳):「情報処理心理学入門Ⅱ(注意と記憶)」,サイエンス社,1984
5) 山下昇:「車間距離より車間時間を取ろう」,セイフティエクスプレス企業開発センター,6月号,2008
6) 持田 信治:「3秒ルールAI実現に関する研究」,日本経営システム学会第62回全国研究発表大会講演論文集,138-139, 2019
8) 甘利 俊一,田中 啓治:「認識と行動の脳科学」, 東京大学出版会,2008
9) D.カーネギー,山口博(訳):「人を動かす」,創元社,1981
10)藤田一弥:「見えないものをさぐる それがベイズ」,オーム社, 2015.
11) 持田 信治,橘 昌幸:「人の観点から見た環境評価に関する研究」,BMFSA学会誌 VOL11 NO.2 PP.25‐31
12) 持田 信治,池添 律代,矢鳴 虎夫:「判断マトリクスを使用した内部状態モデル構築に関する研究」,バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 6 巻 1 号,10-16,2004

患者リスク算出システムの自動化試行
ヒット: 1 開く 保存
状況
患者様子見行動の自動化を目指し、手動でのエビデンス設定ではなく、環境情報から自動的に患者リスクを判断する必要があった。
行動
ベイジアンネットワークを2層構造に細分化し、放射線治療情報システムからの患者情報や、カメラ・マイクによる自動検知情報をエビデンスとして組み込んだ。
結果
患者のふらつきやパフォーマンスステータス等の情報を自動取得することで、患者支援の必要性を自動的に判断できる可能性が示された。
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【分析:状況】
患者様子見行動の自動化を目指し、手動でのエビデンス設定ではなく、環境情報から自動的に患者リスクを判断する必要があった。
【分析:行動】
ベイジアンネットワークを2層構造に細分化し、放射線治療情報システムからの患者情報や、カメラ・マイクによる自動検知情報をエビデンスとして組み込んだ。
【分析:結果】
患者のふらつきやパフォーマンスステータス等の情報を自動取得することで、患者支援の必要性を自動的に判断できる可能性が示された。
----------------------------------------
【本文】
3秒ルールインテリジェンスを用いた人の行動選択の模擬
Simulation of human action selection using Three-Second rule Intelligence
持田 信治*
Shinji Mochida
本研究は3秒ルールインテリジェンスによる人の行動選択の模擬を提案する。3秒ルールインテリジェンスは3秒後までの状況予測に基づいて行動選択を行う人工知能であり、行動可能な行動検索部と行動選択部から構成される。本研究は放射線治療に於ける、患者支援行動の発動決定についてWEB試行システムを作成して試行を行った。そして、試行の結果、3秒ルールインテリジェンスによる行動選択の可能性が示されたので報告する。
キーワード:3秒ルールインテリジェンス、ベイジアンネットワーク、患者様子見、人工知能
Ⅰ.はじめに
研究の目的
人の意思決定とは行動選択であり、意思決定のプロセスではまず、行動目的に沿う行動候補の選択を行い、次に行動候補に優先順位を付けた後に行動選択を行う。行動候補は現在の環境状況下で実行可能な行動であり、行動候補の優先順位は価値観により決まる。しかし、価値観は常に揺らいでいるため、行動候補の優先順位も揺らいでいる。従って、人の行動選択を模擬するためには価値観の揺らぎの模擬が必要である。価値観が揺らぐ理由の1つには行動の難易度、つまり行動実行時の抵抗の大きさがあり、目的に向かう行動は微小時間で細分化された微小行動の連鎖であるため、行動実行の難易度は微小行動の難度の合計となる。本研究では微小時間を3秒として微小行動とは3秒間で実行可能な行動とする。人の行動は図1に示す様に微小行動から構成される行動連鎖であり、経験のある行動は行動抵抗が小さいのに対して、経験のない行動は行動抵抗が高い、行動抵抗が高い理由の1つは準備時間が必要なことである。そして、経験のない行動は行動実行後の結果が不確かであるため、慣れた行動が優先的に選択される、この行動選択の優先順位が行動の好みや習慣である。また、行動の優先順位が均衡する複数の行動候補が並列に用意されて、行動選択が混乱する状態が行動の迷いであり、行動候補が記憶から呼び出されるのに、時間がかかり実行できなかった状態が後悔である。そこで、本研究は3秒ルールインテリジェンスによる、人の行動選択に於ける行動選択の揺らぎの模擬を提案する。
図1 行動遷
移列(著者作成)
2.人の行動選択と3秒ルールインテリジェンス
人は微小時間周期で行動候補の選び出しと行動選択を行っている。本研究は3秒ルールインテリジェンスを提案する。3秒ルールインテリジェンスは人の行動選択を模擬する。図2に示す様に3秒ルールインテリジェンスは3秒後に実行可能な行動候補の準備を行い、行動選択トリガを監視することにより行動選択を行う。行動選択トリガと行動は一対であり、行動選択トリガが検知されると対応する行動が選択される1)2)。行動選択トリガの監視の優先順位は心理的な重み付けにより決定され、心理的な重み付けは過去の経験の有無や環境状況により変化する。例えば慣れた行動の心理的重みは大きく、優先順位は高い。人は行動経験のない行動は思いつかず、行動できない3)4)。3秒ルールインテリジェンスは人と行動候補を共有することにより、人と同等な行動選択が可能となる。3秒ルールインテリジェンスは経験データベースに行動候補を格納している。そして、3秒ルールインテリジェンスは、図2に示す経験データベースから現状認識情報をキーにして、3秒後に実行可能な行動候補を選択した後、行動候補の優先順位付けを行い、行動選択トリガの監視を行う。そこで、本研究では放射線治療に於ける、ヒヤリハット報告やインシデントレポートから行動候補を収集して、患者への支援行動の発現の意思決定の模擬を行う。意思決定はベイジアンネットワークにより行う。
図2 3秒ルールインテリジェンス(著者作成)
3. 人の行動予測
人は微小時間後までの行動遷移空間を構築して行動選択を行っている。微小時間とは3秒である。例えば車両運転に於ける、先行車との安全な推奨車間距離は速度計の示す値から15を減じた距離であると言われており、時速60km/h の場合の推奨車間距離は45mである。時速60km/hの車の速度は約17m/秒であるため、45m/17m≒3秒となり、推奨される車間距離を時間的に表すと約3秒となる2)。一方、車両運転に於ける安全な車間距離を時間で表すと、2秒から3秒と言われており、車間距離が1.8秒を切ると人は不安を感じる。人は予測可能な空間が3秒より短くなると不安を感じる5)6)。また、筆者のビジネスシステム開発の経験から、エンターキーを押した後のシステム応答時間が3秒以内であればシステム利用者は概ね良好な操作感を得る。しかしシステム応答時間が6秒を超えるとシステム利用者は不満を感じ、システム応答時間が10秒を超えるとシステム利用者はシステムに対する改善を要求するという状況からも、人は現時点から3秒後までの行動予測空間を構築して行動選択を行っている。また、人の短期記憶は5秒程度と言われており、人の記憶は3秒から5秒サイクルで更新されている7)。更に、人は3回Yesと言うことにより、行動が決まると言われているように3回のYes、つまり3手順で行動につながる可能性が高い、例えば人の購買行動でも3回もYESで購買行動が起こるとされている9)。
Ⅱ. ベイジアンネットワーク
1.ベイジアンネットワーク
ベイジアンネットワークとはある事象(親)と事象に関係する要因(子)との因果関係を有効グラフで表現したものであり、親ノードと子ノードの因果関係を確率的な関係で表現している。ベイジアンネットワークの親ノードは親(世界)が取りうる状況が発現する確率を表しており10)、ベイジアンネットワークは信念ネットワークとも呼ばれ、条件付き確率テーブル上の確率値を主観的に設定することにより、人の主観を確率計算に反映できる。従って、条件付き確率テーブルに設定する確率値を主観的に設定することにより、ベイジアンネットワークは不確実な状況を表現することが可能である。ベイジアンネットワークの子ノードの条件が確定することにより、親(世界)が取りうる状況の確率が計算される。子ノードの条件が確定することを、エビデンスをセットすると呼び、事実や状況が判明した場合には、子ノードにエビデンスが設定され、子ノードが親ノードに与える確率が決定する。
2.ベイジアンネットワークを用いた計算例
以下にベイジアンネットワークを用いた計算例を示す。本例はプロジェクトの実行において、プロジェクトが計画通りに終了する確率計算の例を示す。本例ではベイズ推定の式(1)を使用してプロジェクトリスクを推定する。
(1)
プロジェクトリスクとは、プロジェクトが計画通りに終了しない確率、つまりプロジェクトの遅延確率である。以降、プロジェクトリスクとはプロジェクトの遅延確率とする。プロジェクトの遅延が発生すると費用超過や契約違反となり、費用的な損害が発生する。図3はP(A):親(世界)の確率とP(B):子供(世界を説明する条件)の確率を示す。本例ではプロジェクトが計画通りに終了する確率がP(A)であり、スタッフからのプロジェクトの進捗に関するレポートの信頼性を示す確率であるP(B)との関係を考える。ここで、P(A)=0.9、P(B)=0.7とすると、プロジェクトが実行される世界の初期の確率は図3となる。ベイジアンネットワークはある事象が取りうる世界の確率的関係を示し、エビデンスが設定されると世界が変化する。
図3 報告を受ける前の世界確率の図(著者作成)
次に機械学習システムのWeka (Waikato Environment for Knowledge Analysis) 10)を使用してプロジェクトが実行される世界の確率状況を表現した様子を図4に示す。図4と表1、表2はWeka上のProjectノードとReportノードに確率を与えている様子を示す。一般的にプロジェクトは10%程度遅延することが知られているため、表1と図4ではプロジェクトが計画通りに終わる確率を0.9に設定している。ただし、図4に示す様にWekaのベイジアンネットワーク表示では確率0.9は9000、そして確率0.7は6599と表示されている。
表1 Weka上のProjectノードの条件付き確率(著者作成)
表2 Weka上のReportノードの条件付き確率(著者作成)
図4プロジェクトのベイジアンネットワーク表示(著者作成)
次に、表3と図5はスタッフがプロジェクトの進捗は計画通りと報告した後のプロジェクトが実行される世界を示しており、P(A|B)は式(2)に示す通り0.95となる。図6はWekaで確率を計算した様子を示す。本例でのエビデンスはプロジェクトの進捗は計画通りとのスタッフのからの報告である。ベイズ推定ではエビデンスと呼ばれる状況報告を与えることにより、確率世界が変化する。
表3 報告を受けた後の世界確率(抹消線の世界が削除された) (著者作成)
図5 報告を受けた後の世界確率の図(網掛けの部分の世界が消えた) (著者作成)
(2)
図6 報告を受けた後のWekaでのベイジアンネットワーク表示(著者作成)
Ⅲ. 患者様子見行動と患者対応
1.患者様子見行動支援の必要性
医療現場では、患者確認に於けるダブルチェックや手順の標準化が進められている11)。しかし、例外的な事象が起きた場合の対応は人の判断に頼らざるを得ず、現場では高度な判断できる熟練医療スタッフが求められている。そこで、本研究は3秒ルールインテリジェンスを用いた人的感覚を持つ環境評価機能を提案する。環境評価機能とは患者支援の必要性の判断である、患者支援の必要性判断は患者の状態や環境状況等の複数の要因からなり、更に患者支援の必要性は医療スタッフの主観や経験にも依存しており、患者様子見行動に於ける患者支援行動の発現の必要性は状況変化に伴い揺らいでいる11)12)。患者様子見行動とは不安定な患者の事故防止のための、医療スタッフによる患者監視行動であり、患者様子見行動はスタッフがある一定時間、患者への対応行動を保留して、患者リスクの発現を監視する行動である。患者様子見行動は患者が治療室に移動する場合や、治療中は患者の動作は限定的であるため、人工知能が患者を監視できれば、スタッフの業務軽減が図れる。更に人工知能に患者監視を任せることにより、スタッフは次の業務の準備作業等が可能となり業務に余裕が生まれる。患者様子見行動は患者監視を含む状況判断とスタッフの経験により行われる行動であり、人工知能による患者様子見行動の実現のためには医療スタッフの経験情報のデータベース化が必要である。
2.患者リスクの評価
本研究は熟練医療スタッフに近い状況判断機能の実現を目指して、3秒ルールインテリジェンスを放射線治療現場に応用した。表4に放射線治療に於ける環境要因と要因の略称を示す。環境要因は医療スタッフからのヒアリングにより取得した、ヒアリングは広島国際大学 保健医療学部 診療放射線学科と九州大学病院 医療技術部 放射線部門のお二人の方に行った。そして、本研究では医療スタッフからヒアリングによりヒヤリハット報告を収集して表5に示すXMLにより記述してデータベース化の試行を行った。本研究では、ベイジアンネットワークにより算出した患者リスクにより、患者への支援行動の発動判断を行う。患者リスクとは患者支援行動発現確率のことであり、本研究ではベイジアンネットワークを用いて算出した患者リスクを患者への支援の必要性とみなす。従って、患者リスクが上昇すると患者への支援行動の必要性が増すこととなり、患者支援の必要性があるしきい値を越えると患者への支援が必要と判断する。
表4 患者を取り巻く環境とベイジアンネットワークの要素(著者作成)
表5 ヒヤリハット報告の記述タグ一覧(著者作成)
3.患者様子見行動の分析
患者様子見行動とは不安定な患者の事故防止のための、医療スタッフによる患者監視行動のことである。図7は医療スタッフが患者の様子を監視している状況を示しており、縦軸は患者リスクを示し、横軸は時間軸である。図7に示す、患者が問題無しの領域にある場合には、医療スタッフは患者を監視する必要のない状況であることを示す、例えば患者が検査に行っている状態である。
図7 患者状況判断(患者リスクとしきい値) (著者作成)
次に患者が様子見状態にある場合には医療スタッフが患者を監視する必要がある状況であり、更に、患者が事故発生確率大の領域に入った場合には、患者リスクが高い状況であり、患者への支援が必要となる。例えば患者への支援行動として、患者への声掛けや治療中断がある。患者様子見行動は医療スタッフが患者への対応行動を保留して患者の様子を監視する行動であり、人工知能が患者を監視できれば、医療スタッフの業務軽減が図れる。そこで、本研究は医療スタッフの患者様子見行動の模擬を目指して、3秒ルールインテリジェンスの放射線治療への適用を試みた。図8に本研究で作成した患者リスク算出用ベイジアンネットワークを示す。ベイジアンネットワークの親ノード(RISK)が示す確率値は医療スタッフ経験に基づく患者リスク値を示しており、3秒後の患者支援行動の必要性度合いを示している。図9に本研究で、Wekaに設定したベイジアンネットワークを示す。図9のベイジアンネットワーク中の略称とベイジアンネットワークに設定した条件付き確率テーブルは表6の通りである。表6に示す条件付き確率テーブルの各数値は医療スタッフからのヒアリングにより取得しており、医療スタッフの経験値を反映している。本試行では、環境要因の変化に従い、ベイジアンネットワークの再計算を行い、患者リスクを算出する。ベイジアンネットワークが示す患者リスクは患者支援行動の必要度合いを示し、患者支援行動の必要度合いが図7に示す、あるしきい値を越えた場合には患者への支援行動が必要となる。
図8 治療環境のベイジアンネットワーク(著者作成)
図9 治療環境のベイジアンネットワークと条件付き確率テーブル(初期状態) (著者作成)
表6 患者支援モデルのテーブル例(著者作成)
親テーブル(RISK)
条件付き確率子テーブル(SKIL,PAT,METH,ENV)
表6 患者支援モデルのテーブル例(著者作成) 続き
4.患者様子見の評価
3秒ルールインテリジェンスは行動選択トリガの発現状況を監視することにより患者リスクの発現を認識する。本研究ではヒヤリハット報告から抽出した、患者様子見に於ける環境の時間的変化を経験ルールとして、XML形式で登録される(図10参照)。経験ルールは3秒間の状態遷移情報であり、環境変化が検知されると関連した経験ルールが選択される(表7参照)。本研究では行動発動のきっかけとなる特定な要因を行動選択トリガと呼び、行動選択トリガは医療スタッフからのヒアリングにより収集した。行動選択トリガが検知されると該当する経験ルールが選択され、ベイジアンネットワーク中の指定されたノードにエビデンスが設定され、患者支援行動の選択確率が変化する。例えば患者のふらつきが検知された場合には、患者の状態判断を行う経験ルールが選択され、患者の状態が悪いことを示すエビデンスがベイジアンネットワークに設定される。初期状態での患者への支援必要性値は図9に示す通り、患者支援が必要と不必要の確率は共に0.5であり、患者様子見の状態である。そして、患者のふらつきが検知されると、患者の状態が悪いことを示すエビデンスがベイジアンネットワークに設定され、図11に示す通り、患者への支援の必要性を示す値が0.83となる。図7に示す様に患者支援行動の発現しきい値を0.7とすると、患者への支援行動が必要となる。従って本結果は、3秒ルールインテリジェンスは医療スタッフの判断に近い行動選択が可能である。本研究では、行動選択トリガに記述された環境要因を監視する、本例では患者の動きを監視して、手動でエビデンスを与えた。しかし、行動選択トリガの自動監視ができれば、患者様子見行動の自動化が実現する。
表7 エビデンス設定の行動選択トリガ(著者作成)
図10 登録したヒヤリハット報告の例(著者作成)
図11 治療環境のベイジアンネットワーク(エビデンスの設定後) (著者作成)
Ⅳ. 患者様子見行動の自動化
1.ベイジアンネットワークの細分化
前章で3秒ルールインテリジェンスによる患者様子見行動における患者支援行動発現判断の自動化の可能性を示した。本研究では患者支援行動発現判断の自動化を進めるために、前章で示したベイジアンネットワークを更に2層にして、患者と環境情報の自動取得を検討した(図12参照)。本研究では、図8に示す子ノードのエビデンスへの自動設定を目指して、ベイジアンネットワークの各子ノードの状態に影響を与える要因を更に細分化した。具体的には表8に示す通り、各子ノードに更にベイジアンネットワークを設定した。患者リスク算出要因を更に細分化することにより、自動設定可能な行動選択トリガが増え、患者様子見の自動化の可能性が高まる。例えば、患者状態(PAT)の算出要因である、患者搬送状態(Trstus)の値は放射線治療情報システムから自動設定が可能である、具体的には患者情報から歩行か、車椅子かストレッチャーである。例えば、図13に示す患者の初期状態に放射線治療情報システムの患者情報から図14に示す様に患者搬送状態(Trstus)にWalkが設定されると、図14に示す通り、患者状態(PAT)は良好(Good)となり、図15に示す様に親のベイジアンネットワーク中の患者状態(PAT)に良好(Good)が設定される。図15では、SKL(医療スタッフのスキル)、METH(治療内容の特殊性)はSTANDARD(標準)でENV(医療スタッフの業務ストレス)の状態は不明である。
表8 患者リスク値を与えるベイジアンネットワークを更に細分化したテーブル構造(著者作成)
図12 2層のベイジアンネットワーク(著者作成)
図13 患者の状態(PAT)算出用ベイジアンネットワーク(初期状態) (著者作成)
図14 患者の状態(PAT)算出ベイジアンネットワーク(患者の歩行確認) (著者作成)
図15患者リスク(RISK)算出用ベイジアンネットワーク(著者作成)
2.患者リスク算出システムの試作
本研究は患者と環境情報の自動取得を試行するために図16に示す、患者リスク算出システムを試作した。試作した患者リスク算出システムは図2に於ける行動選択トリガの自動収集により患者支援行動発現確率を算出する。患者情報の自動入力としてはカメラ画像による患者状態の入力とマイクによる音声入力がある。カメラ画像の分析により患者のふらつきが検知や音声入力から患者の求めを検知することが可能となる。例えば、患者リスク算出システムは放射線治療情報システムから治療内容の複雑さが標準であることを受信すると、図15に示す治療内容の特殊性(METH)には標準(Standard)が自動設定され、加えて、医療スタッフのスキル(SKIL)に標準(Standard)の場合には、患者リスク値(RISK)は図15に示す通り、患者様子見の確率値は0.7を示し、患者様子見の判断を示す。次に、患者リスク算出システムが患者の蛇行であるふらつきを自動検知すると、図17に示す患者状態(PAT)モデルの患者ふらつきのエビデンスに、患者の蛇行(Mend)にYesが設定される。しかし、患者搬送状態(Trstus)がWalkなので、患者状態(PAT)がLowである確率値は約0.54となり、しきい値が0.7を越えないので、図17の患者リスク(RISK)算出モデルのPATにLowは設定されず、患者への支援の必要性は不明のままとなる。しかし、患者情報から図17の患者パフォーマンスステータス(Pstus)にLowが自動設定されると、図18に示す通り患者状態(PAT)が低 (Low)である確率値は約0.88となり、図19に示す親のベイジアンネットワークのPATにLowが設定され、図19のRISK値は0.88となり、しきい値の0.7を越えるため、3秒ルールインテリジェンスは患者支援実施発現の意思決定を行う。以上の患者リスク算出システムの動作状況を図20に示す。ただし、本例では、医療スタッフのスキルは人の主観的判断により設定されている。以上の試行結果により、患者リスクを算出するための要因を更に細分化することにより、ベイジアンネットワークのエビデンスを自動設定することが可能となり、患者様子見の自動化の可能性が高まることが明らかになった。
図16 患者リスク算出WEBシステム(著者作成)
図17 患者の状態(PAT)算出用ベイジアンネットワーク(患者の蛇行(Mend)確認) (著者作成)
図18 患者の状態(PAT)算出用ベイジアンネットワーク(患者のふらつき(Mend)YESとパフォーマンスステータス(Pstus)のLowを確認) (著者作成)
図19 患者リスク(RISK)算出用ベイジアンネットワーク(患者状態はLow) (著者作成)
図20 患者リスク算出システム動作状況(著者作成)
3.環境情報の自動取得
本研究では環境情報の自動取得に向けて音声と画像情報の自動取得を試行した(図21参照)。本件で試行したシステム構成を表9に示し、画像処理で認識した例を図22に示す。また音声処理をした例を図23に示す。今後、画像や音声の自動認識を行い、患者リスク算出システムに自動入力することにより、患者リスク算出システムによる自動監視実現の可能性が高まる。
表9 機器構成(著者作成)
図21 環境情報の自動収集(著者作成)
図22 画像の検知例(人物を認識している) (著者作成)
図23 音声の自動認識の例(著者作成)
Ⅴ. まとめ
本研究は放射線治療現場に於ける患者様子見行動の模擬を3秒ルールインテリジェンスにより試みた。患者様子見行動とは患者の様子を監視して、支援が必要な場合には患者支援を行い、支援が不要な場合には、引き続き患者の監視を行う行動である。3秒ルールインテリジェンスはベイジアンネットワークを使用して、人の行動選択を模擬する。具体的には、3秒ルールインテリジェンスは、行動選択トリガを監視しており、行動選択トリガが検知されると、ベイジアンネットワークのエビデンスをセットして、患者リスクを計算する。そして、患者リスクがあるしきい値を超えると、患者支援行動の選択を行う。行動選択トリガとは患者支援行動に先立って検知される環境情報である、例えば、患者のふらつきや蛇行がある。そして、本研究はベイジアンネットワークを2層にすることにより、行動選択トリガを細分化することが可能となることを示した。行動選択トリガの細分化により、行動選択トリガの自動検知が可能となり、ベイジアンネットワークへのエビデンスの自動セットが可能となる。例えば、カメラやマイクやセンサーから自動取得した情報から、人と同じ視点で行動選択トリガを自動監視することにより、人の感覚に近い環境監視を行うことが可能となる。3秒ルールインテリジェンスによる人的感覚を持つ患者様子見機能が実現すれば、患者対応の緊急度を自動的に判断することが可能となり、経験の少ない医療スタッフでも対応の優先順位を即時に知ることができ、余裕のある患者対応が実現する。3秒ルールインテリジェンスはエビデンスの設定経過を示すことが可能であり、意思決定の根拠を明確に示すことができるため、今後、信頼できる汎用人工知能(AGI: Artificial General Intelligence)への展開が期待できる。
謝辞
本研究はJSPS科研費 JP20K11983の助成を受けた。また、本研究に助言と貴重な情報を頂いた広島国際大学 保健医療学部 診療放射線学科の橘昌幸教授と九州大学病院 医療技術部 放射線部門の福永淳一先生に感謝申し上げる。
引用文献
1) 持田 信治:「3秒ルールインテリジェンスを用いた患者様子見の模擬」, バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌,VOL 24 NO1 pp.37-46,2022
2) 持田 信治:「3秒ルールインテリジェンスによる意思決定」, 流通科学大学論集-経済・情報・政策編,第30巻 第2号pp.13-31,2022
3) P.H.リンゼイ/ D.A.ノーマン,中溝 幸夫(訳):「情報処理心理学入門Ⅰ(感覚と知覚)」,サイエンス社,1983
4) P.H.リンゼイ/ D.A.ノーマン,中溝 幸夫(訳):「情報処理心理学入門Ⅱ(注意と記憶)」,サイエンス社,1984
5) 山下昇:「車間距離より車間時間を取ろう」,セイフティエクスプレス企業開発センター,6月号,2008
6) 持田 信治:「3秒ルールAI実現に関する研究」,日本経営システム学会第62回全国研究発表大会講演論文集,138-139, 2019
8) 甘利 俊一,田中 啓治:「認識と行動の脳科学」, 東京大学出版会,2008
9) D.カーネギー,山口博(訳):「人を動かす」,創元社,1981
10)藤田一弥:「見えないものをさぐる それがベイズ」,オーム社, 2015.
11) 持田 信治,橘 昌幸:「人の観点から見た環境評価に関する研究」,BMFSA学会誌 VOL11 NO.2 PP.25‐31
12) 持田 信治,池添 律代,矢鳴 虎夫:「判断マトリクスを使用した内部状態モデル構築に関する研究」,バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 6 巻 1 号,10-16,2004