結果: 21 件

生産性の変化を用いた作業区切りの検知と知識登録
主要項目ヒット ヒット: 32 開く 保存
状況
プロジェクトにおいて、担当者の主観的な進捗申告と実際の出来高に乖離があり、正確な進捗管理や知識の記録・伝承が困難であった。
行動
生産性(行数/日)の推移を分析し、生産性が大きく変化する箇所を作業の区切りとして特定した。また、そのタイミングで担当者に知識登録を促す仕組みを検討した。
関連ルール: A-34: 生産
結果
生産性の変化点から作業の区切りを正確に検知できる可能性が示され、適切なタイミングでの知識登録が可能となった。
関連ルール: A-34: 生産
このエピソード全体の関連ルール: A-34: 生産 E-1: 明
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詳細コンテキスト
【分析:状況】
プロジェクトにおいて、担当者の主観的な進捗申告と実際の出来高に乖離があり、正確な進捗管理や知識の記録・伝承が困難であった。
【分析:行動】
生産性(行数/日)の推移を分析し、生産性が大きく変化する箇所を作業の区切りとして特定した。また、そのタイミングで担当者に知識登録を促す仕組みを検討した。
【分析:結果】
生産性の変化点から作業の区切りを正確に検知できる可能性が示され、適切なタイミングでの知識登録が可能となった。
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【本文】
はじめに
世の中には様々な課題解決のためにプロジェクトが進められている。そして進捗管理が難しいプロジェクトの1つに情報システムの構築がある。情報システムは計画段階で最終成果物の仕様、機能が明確でないため、プロジェクトの途中で仕様追加や修正が多発する。仕様変更が発生すると管理計画も変更となる。仕様が大規模化すれば仕様変更も多発するため、情報システム開発には確実な進捗管理が求められる。加えて通常は図1に示す様に複数のプロジェクト間で、人員や設備に関する調整が必要である。特に人員の生産性が最も不確実な要素である。しかし人員の配置と生産性管理はプロジェクトマネージャの知識と経験に依存している。そこで、プロジェクト管理の効率化を進めるためにはプロジェクトマネージャが持つ知識の共有が望まれる。またプロジェクトの遂行状況を順調と判断するか、あるいは問題ありと判断するかには人の感覚が大きく関与している。例えば、プロジェクトの進捗管理における進捗測定は担当者に対するヒアリングにより行う、しかし担当者の進捗に対する感覚と実際の物の出来には差が存在するため、プロジェクトマネージャはその他の情報と過去の経験を用いて進捗状況を判断する。従って、正確なプロジェクト管理には以下の2点が必要である。
(1)正確な進捗測定方法の確立。
(2)プロジェクトを円滑に進めるための知識の共有。
そこで、本研究では人の感覚を排除した進捗測定方法と知識を記録するための知識登録のジャストタイミングを得る方法を検討したので報告する。
2. プロジェクトの遂行と知識登録
プロジェクト現場の進捗管理はプロジェクトマネージャの知識や経験に依存しているにも拘わらず、プロジェクトマネージャが持つ知識の記録と伝承は進んでいない。その理由の1つにプロジェクトマネージャは多忙であるため、知識を登録するタイミングを失っている事がある。加えてプロジェクトの置かれた状況は複雑であり知識利用の前提条件も複雑であるため知識の登録は容易ではない事が挙げられる。例えば現場では図1に示す様に複数のプロジェクトが並行実施されているため、知識登録を行うには複数のプロジェクトに関する環境情報の登録も必要である、
図 1 開発資源の取り合い
また、複数のプロジェクトを統合したスケジュリングも熟練のマネージャの知識に依存している、その理由の1つにプロジェクトを円滑に遂行するための知識には図2に示す通り開発フェーズに沿って階層があり、複数のプロジェクトを統合的にスケジュリングするためには各プロジェクトのフェーズを考慮した複雑な調整が必要であるためである。よってスケジュリングに必要な知識も階層別に記録して利用できるように整備しておく必要がある。
図 2 知識の階層
3. プロジェクトの計画と進捗管理
プロジェクトには正確な予算計画とスケジュリングが必要である。予算とスケジュリングが適切でなければ進捗管理は成り立たない。プロジェクトの計画では通常、過去のプロジェクトとの比較を行い、類似のものがあれば過去の計画を基本計画として利用する。なければ、作業を工程や作業に分解した後、予想工数を積算したものを基本計画とする。次に要求項目に実現が困難なものがないかをチェックシートで確認を行い、リスクがあればリスク分の余裕を考慮することによりプロジェクトの予算とスケジュールの立案を行う。
そして、要求スペックと実現方法の対比を行い、開発リスクを洗い出す。そして図3に示す様なガントチャートを作成して工程の順序を確認した後、プロジェクトの実行に移る。そしてプロジェクトの進捗管理はガントチャートの消し込みと計画予算の消化状況を計画と比較することにより行なわれる。しかし進捗測定は一般的に、担当者にヒアリングを行うことにより行うため、担当者の感覚的な誤差を含む。そこで、進捗管理に於いては科学的な進捗管理法が求められる[1] [2]。
図 3 ガントチャート
4.  EVM
科学的なプロジェクトの管理手法としてEVMがある。EVMはプロジェクトの進捗管理を定量的に行う手法として今後の利用が期待されている。図4に示す様に従来のプロジェクト管理は費用計画(PV:Planned Value)と実コスト(AC:Actual Cost)の差異を管理するコストマネジメントであった、例えば従来のプロジェクト管理では図4のACとPVが乖離しない様に管理をする。一方、EVMでは図5に示す通り、従来のコストマネジメントに加えて、現在の成果物を金額的に換算した出来高(EV:Earned Value)を管理項目に加える。つまりEVMでは費用計画(PV)、実コスト(AC)と出来高(EV)を測定してプロジェクトをマネジメントする[3] [4] 。
EVMではCPI(Cost Performance Index)と呼ばれるコスト効率指数とSPIと呼ばれるスケジュール効率指数(Schedule Performance Index)を用いてプロジェクトの進捗を管理する。CPIとSPIの計算式は以下の通り。
プロジェクト完了時点の予算超過額は15%進捗時の予算超過額より小さくなることはないと言われており、プロジェクトの早期段階でのEVの測定は重要である[5] [6] [7]。従来のコストマネジメントでは実コストと費用計画を比較するだけであり、現時点での実際の成果物の出来高(成果物の金額換算)を計測しないので現時点での実際のプロジェクトの遅れを検知することが出来ない、しかしEVMでは図5のBに示すコスト差異に加えて、図5のAに示すスケジュール差異を知ることが可能になるため、より正確なプロジェクトの進捗管理が可能となる。若しEVがACを上回ればスケジュールは予定より進んでいることになる。図5の例では現時点ではスケジュールがA遅れており、費用的には予算をB超過している。従ってこのままの状況が続くならば、最終的には計画上の完了予算(BAC: Budget At Completion)に対して図5のD示す費用超過分を足したコスト予測(EAC:Estimate At Completion)となることが予測される。
図 4 従来のコストマネジメント
図 5  EVM
EVMではプロジェクトの出来高を金額で測定する。そこで出来高を正確に測定するための算出方法として出来高パーセント見積もり法+マイルストーン法が用いられる(以降見積もり法と呼ぶ)。見積もり法の目的は担当者の感覚と実際の出来高を等しくすることである。見積もり法では図3のガントチャートにあるマイルストーンに作業が達した場合にマイルストーンに設定してある出来高を計上する。出来高(EV)は費用で得られるため計画費用(PV)との比較が可能となる。作業がマイルストーンに達成しない場合には出来高は計上されない。作業がマイルストーンに達しない期間に於いてはマイルストーンに設定した費用を上限としてマイルストーンまでに要した作業時間に比例して出来高を計上する。若し、マイルストーン達成後に仕様変更や不具合の発生により、手戻りが発生した場合にはCPIとSPIを算出する①式又は②式の分母に手戻り分の費用を追加することにより補正を行う。追加となった費用は計画予算を圧迫するので、今後の工程削減や工程の融合による費用削減が必要となる。
5. EVMの課題
EVMでは正確な進捗管理測定が前提となる。しかし、出来高(成果物の金額換算)測定の元となる進捗率はスタッフの主観的な申告値であるため、正確な測定は困難である。実コスト(AC)と出来高(EV)の測定が正確でない場合には工程遅れや障害の発生を検知することが難しい。一方、ACはコスト集計システムを利用することにより自動的に収集することが可能である。しかしACと出来高は連動していない。例えば図6に実際のプロジェクトに於いて実コストと進捗を測定した結果を示す。図6に示す通り、実際のプロジェクトでは社内作業に加えて、設備の購入や外注への依頼作業があり、発注品の納品や外注への依頼作業の納品時に費用が計上されるため、実コストと進捗(出来高)は同期しない。特に外注へ発注した作業に関する実コストの計上は成果物の納品時期とは異なるので、実コストの計上時期を知るだけでプロジェクトの進捗を測定することは困難である。図6のプロジェクトの例では内部設計費:設備費:外注費の費用の比率は1:9:7である。タイムリーに管理できる出来高は社内設計費のみであり、費用計画全体の5%に過ぎない。実際にEVMを利用するに際しては外注発注分も含め、タイムリーかつ正確な進捗測定が課題である。企業によっては社内設計費を大きくして、管理可能な範囲を広げようとする動きも見られる。また、正確な出来高を算出する方法として、作業がマイルストーンに達していなくても作業過程で作成された報告書等の知的生産物を金額換算して出来高に加えることが考えられる。知的成果物も成果物である。ただし、知的成果物の金額換算方法は今後の課題である。[8]
図 6  出来高と予算の消化度合
6.コンカレントエンジニアリング
 プロジェクトを効率的に進める方法としてコンカレントエンジニアリング(CE:Concurrent Engineering)がある。コンカレントエンジニアリングとは図7に示す様に順番に作業を進めて行くのではなく、作業を平行して進めることにより、プロジェクトの工期を短縮する手法である。作業を並行して実行することにより人員が遊ぶことも少なくなる。
図 7 コンカレントエンジニアリング
コンカレントエンジニアリングでは一般的に3D-CADモデル等の共通のデータベースの設定を行い、担当者が設計、解析、検討情報を書き込むことにより、全ての担当者で情報を共有する。そして課題や問題点を共有することにより、工期の短縮を実現する。またコンカレントエンジニアリングでは最初にフロントローデイングと呼ばれる作業を実施する。フロントローデイングでは作業全体のボトルネックや作業の難易度を分析する、そして平行に実行可能な作業を平行して実行する作業計画を立てる。プロジェクトの実施に於いては計画の変更や問題の発生が工期遅延の原因となるため、コンカレントエンジニアリングでは計画段階で課題の洗い出しを行う。表1に企業にコンカレントエンジニアリングの実施状況を調査した結果を示す。
表1 コンカレントエンジニアリングの実施状況
CE:コンカレントエンジニアリング
7.プロジェクトの実行
プロジェクトを計画通り進めるためには効率的なプロジェクトの実行と速やかな課題解決が必要である。正確な進捗測定がなされない場合、進捗遅れの兆候を逃すことになり、打ち手が後手となり、進捗遅れを回復することが困難となる。一般的に進捗測定は担当者にヒアリングを行うことにより行われる。従来のプロジェクトに於いて、進捗遅れに対する打ち手の実施が遅れる原因の多くは担当者の感覚と実際の出来高との差異が原因である。出来高を感覚的に捉えてしまうため、進捗遅れの報告が遅れる。従って、正確に進捗を測定するためには担当者の感覚を排除することが課題である。加えて図1に示す様にプロジェクトは同時に複数実行されているため、計画から運用までの全ての段階に於いて、プロジェクト間で人や物、または資源の取り合いとなっているため、1つのプロジェクトで工程遅延、再製作、大幅な仕様の変更や追加の問題が発生した場合には他のプロジェクトから資源を融通することが必要となり、あるプロジェクトに於いて発生した遅れの影響は他のプロジェクトにも及ぶ。例えばあるプロジェクトから別のプロジェクトに要員を融通した場合、要員を応援に出したプロジェクトは工程が遅延するので、短縮できる工程の検討や要員不足を補うための対策が必要となる。また表1に示す通り、多くの企業でコンカレントエンジニアリングが実施されているため障害発生対策は複雑であり、対策立案には高度な知識を必要とする。
8. 生産性と知識登録
作業進捗の測定に当たっては作業の区切りを検知することが必要である。正確に作業の区切りが検知できれば作業時間と実コスト(AC)を関連付けすることが出来、正確なCPIとSPIを得ることが出来る。そこで作業の区切りを検出するために実コスト(AC)と出来高(EV)に加えて生産性を調べた。図8はあるプロジェクトで開発したプログラムの累積行数を示す。図8のAでは元々ある雛形をカスタマイズしたため、プログラム行数が減少し、Bでは仕様の変更により手戻りが発生してプログラム行数が減少した。そしてCでは外注からプログラムを受け入れたためプログラム行数が増加した状況を示している。
図8 プログラムの累積行数
そして図9は1日当りの生産性(行数/日)をグラフ化したものである。例えば生産性の高い部分は外注先から成果物の受け入れがあった箇所であり、生産性の低い部分は問題が発生したか、あるいは外注先のコントロールに時間が取られ、内部の開発が止まっている状態である。生産性が変化する点では作業が変化しているため、作業能率が変化する点を作業の区切りとすることが可能である。
図9 生産性の変化(全体)
図10に500日目から550日までの生産性の変化を示す。生産性がプラスの所では再利用可能な部品を利用して生産性が上がっており、マイナスの部分は製作ミスがあり、手戻りが発生して成果物がマイナスとなっている。実際に生産性が変化した時点で発生した事象を表2に示す。
図10 生産性の変化
図10に示した通り、生産性が上下する箇所には有効な知識が存在する可能性がある。このように生産性の変化を見ることにより内部や外注先で起きた事象の発生時刻を知ることができる可能性が高い。
表2 図10に於いて発生した事象
図11に示す様にEVに大きな変化がある場所にも何らかの出来事が発生して有効な知識が利用されている可能性が高い。有用な知識をジャストタイミングで登録出来れば、類似のプロジェクトにおいて問題が発生した場合に知識を流用することが出来る、そしてプロジェクトの円滑な進捗に寄与することが期待できる。
一方、プロジェクトは図12に示すように同時に複数実行されており、1つのプロジェクト中、あるいは複数のプロジェクト間で類似の作業が存在する[9] [10]。またプロジェクトの遂行中に仕様変更あるいは障害が発生した場合には工程追加となり、費用と工期が増大する。しかしプロジェクト管理では消化費用と工程を元の計画に戻すことが要求されるため、工程の削減または工程の短縮が必要となる。そこで類似の工程を時間的近傍に集めて実行することができれば、複数のプロジェクト間での工程の短縮や削除が可能となり、費用の増大を回避できる。複数のプロジェクトから統合的に類似工程を検索する機能が実現すればプロジェクト計画時ばかりではなく、障害発生時にも役立つことが期待される。
図11 EVの変化と知識
類似作業を時間的な近傍に集めるためには知識登録時に利用技術に関するキーワードを同時に登録することが考えられる。作業情報にキーワードを付加できれば、キーワードを元に類似作業の検索が可能となる。
図12 平行実施プロジェクト内の類似作業
     図13 類似作業の集約
類似作業の実行では類似の知識と資源を必要とする。そこで、プロジェクトの円滑な遂行に有効な知識の蓄積が進めば、図13の類似作業の集約に示す通り、知識に含まれるキーワードから類似工程を検索してスケジュリングすることが可能となる。すると業務遂行に必要な資源を集中することができ、効率的なプロジェクトの実行が期待できる。
図14 キーワード付き知識登録
図14に知識にキーワードを付加して登録する流れを示す。本件ではマイルストーン登録機能を持つ工程管理システムを試作した。本システムでは工程とマイルストーンを一元管理することが可能である。マイルストーンには外部仕様書承認のように具体的な成果物の登録が可能である、そして、マイルストーン達成時に成果物に割り付けられた費用を積算することにより、正確なEVの算出が可能となる。本システムでのEVの算出は以下のようになる。
EV=EV1+EV2
EV1:工程遂行のための作業時間(費用)
EV2:作成した図書や報告書を費用換算したもの
また、図15に示す様に試作したシステムでは工程に資料を対応付けすることが可能である。資料とはその工程作業で得られた知識や情報を記述したものである。
図15 試作した工程管理システム
図16に過去のプロジェクトで収集した知識の例を示す。図16に示す様に知識が利用された作業名とキーワードを同時に記録することにより、知識の再利用の可能性が高まる。
拡大
 図16 知識の収集例
9.  まとめ
本研究ではプロジェクトの進捗管手法としてEVMに生産性の計測を加えることを提案した。次に生産性の変化から検知した知識登録のタイミングを用いた知識登録の可能性を検討した。その結果、生産性が変化する箇所は作業の区切りである可能性が高く、生産性の変化を検知することにより作業の正確な進捗を測定できる可能が高いことが解った。そして生産性が変化するタイミングで知識を登録する事により、有効な知識の登録が可能であることが明らかになった。今後、生産性の変化を自動的に検知して、生産性が変化するタイミングで知識を登録する機能が実現すれば、知識登録を業務手順に組み込むことが可能となる。具体的には生産性が変化した時点で担当者にメッセージを自動発行することが考えられる。メッセージにより担当者に作業状況と知識の登録を促す。現状の進捗測定は管理担当者が各担当者に逐一、進捗状況と問題点をヒアリングして行っているため、知識の自動登録機能が実現すれば、ヒアリング作業が自動化されることにより、進捗測定作業の効率化も進む。また、キーワード付きの知識の蓄積が進めば、知識中に含まれるキーワードから類似作業を検索することが可能となる。そして類似の作業を時間的近傍に集めた工程計画が可能となる。複数のプロジェクトに於いて類似作業が集約できれば、作業実行に必要な知識と資源を集中した効率的なプロジェクトの実施が期待できる。すると従来は熟練のプロジェクトマネージャが各自のノウハウを使用してマネジメントしていた高度なプロジェクトマネジメントを経験の少ないプロジェクトマネージャでも行うことが可能となる。
謝辞
本研究はJSPS科研費24500266の助成を受けたものである。
参考文献
[1]木野 泰伸、成果物の量に基づいた進捗マネジメントとEVM、プロジェクトマネジメント学会誌 VOL.5 No.3, PP.11-15、2003
[2] 箱嶋 俊哉, モダンPM時代のPMツールと組織における展開, プロジェクトマネジメント学会研究発表大会予稿集 2005(春季), PP.84-88、2005
[3] プロジェクトマネジメント研究会編、政府のITサービス調達の運用に関する提言、2002
[4] 金子則彦、プロジェクトマネージャ完全教本、日本経済新聞出版社、2010
[5] クオンティン・フレミング、PMI東京訳監修、アーンド・バリューによるプロジェクトマネジメント、日本能率協会マネージメントセンター、2004
[6] M. Jeffery Tyler,Practical Project Evm: The Application of Earned Value Managment to Project Management,Springer,2011
[7] Paul S, Ralph ,Performance-Based Earned Value,IEEE、
2006
[8] S.Mochida,Knowledge Mining for Project Management and Execution,Journal of Advanced Computational Intelligence and Intelligent Informatics,VOL.15 NO.4 , Fuji Technology
Press,pp 454-459,2011
[9]持田 信治、行動手順スクリプトを使用した知識抽出に関する研究、 バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌VOL.9 No.1、PP. 19‐26、2007
[10] 持田信治、プロジェクト管理の観点から見たノウハウの数量化と評価、バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌VOL11 No2 PP.1‐6 、2009

プロジェクト管理におけるノウハウ・不適合情報の数値化と可視化
主要項目ヒット ヒット: 19 開く 保存
状況
プロジェクト遂行中、複雑な課題が発生するが、その解決手法は個人の能力に依存しており、ノウハウの共有や伝授が進んでいない。
行動
ノウハウや不適合情報をコストの増減効果や工期の短縮・遅延効果として数値化し、それらを登録・検索・可視化できるシステムを開発した。
結果
工夫やノウハウを費用換算することで担当者の意識が向上し、チームワークの改善とプロジェクト生産性向上に寄与する可能性が示された。
関連ルール: A-34: 生産
このエピソード全体の関連ルール: A-34: 生産 E-1: 明
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詳細コンテキスト
【分析:状況】
プロジェクト遂行中、複雑な課題が発生するが、その解決手法は個人の能力に依存しており、ノウハウの共有や伝授が進んでいない。
【分析:行動】
ノウハウや不適合情報をコストの増減効果や工期の短縮・遅延効果として数値化し、それらを登録・検索・可視化できるシステムを開発した。
【分析:結果】
工夫やノウハウを費用換算することで担当者の意識が向上し、チームワークの改善とプロジェクト生産性向上に寄与する可能性が示された。
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【本文】
経験駆動型人工知能による発想の可能性に関する基礎研究
(3秒ルールインテリジェンスとマルチモーダルAI実現に向け基礎研究)
Knowledge Collection System for Project management
Abstract: This Paper describes a trial of Knowledge Collection System for Project management. This system can record the know-how knowledge consisting of the several personal chips of knowledge. Environment and effect is important to use knowledge which is collected by this system. And it is a problem to measure the effect of use of knowhow knowledge in future.
1. はじめに
近年の人工知能の発展に伴い、コンピュータによる創造の可能性への期待が高まっている。しかし、そもそも人間はどのように創造的な活動を行うのかと言う疑問が生じる。そこで、本研究は人の経験情報を蓄積して評価する能力の模擬を行い、次ぎに、人が新しい価値を創造するメカニズムの解明と人工知能による創造の可能性を解明する基礎研究を提案する。
コンピュータによる創造又は創造のサポート
近年、甚大な災害や事故が発生しており、災害現場や極限作業現場では複雑な条件下での迅速な意思決定が求められる。そこで本研究は災害現場や極限作業現場において、人を支援できるマルチモーダルAIを提案する。マルチモーダルAIは環境条件と目的に沿って自律的に意思決定のできるAIであり、経験情報に基づく判断を行う。人の経験情報は様々な属性のデータと情報から構成される。マルチモーダルAIの実現に向けてはまず、マルチモーダルデータを扱うデータベースの実現が必要であり、マルチモーダルデータとは音声、画像、テキストと各種環境情報である
2. 3秒ルールインテリジェンス
2.1 3秒ルールインテリジェンス
3秒ルールインテリジェンスとは
2.2 経験情報の登録に向けて
2.3マルチモーダルデータベースについて
2.4環境情報の統合と取り扱い
様々な情報を統合した情報の近い情報を検索する、または取り扱う。
2.5予測機能について
現状にあえあせて、予測するためには、予測される状況が複数存在することにより、迷いが生じる。また、予測結果の評価が悪い場合には不安が生じる。現状に基づく、行動結果が明確になれば、人は不安から開放される。
製造業とノウハウ伝授
本研究では推奨行動を生成する。推奨行動は図9に示す3秒ルールインテリジェンスにより行動遷移列として生成される。3秒ルールインテリジェンスは環境観測空間に配置された経験情報から行動遷移列を生成して推奨行動とする。
図9 3秒ルールインテリジェンス
ノウハウとは通常、製品の製作または製造技術と
ある。プロジェクトの遂行において、コスト管理や工程管理の効率化は進んでいる、しかし現場作業における、ノウハウの測定、記録、蓄積は進んでいない(図 1参照)。
* 財務会計,販売管理,在庫管理,生産管理,人事給与管理を取り扱うシステム
**資材手配等、資材調達を計画するシステム
図 1 プロジェクト管理の構造
加えて、担当者別には複数の作業が錯綜する環境をうまく調整するためのノウハウを所有しているにも拘わらず、ノウハウの共用や伝授は進んでいない(図 1参照)。
一方、製造方法には組み合わせとすり合わせ方法があり、高い生産性を維持しながら、プロジェクトの目標を達成するためにはすり合わせと組み合わせノウハウを効果的に組み合わせて利用することが必要である。
すり合わせとは客先の要求仕様に合わせて自社の技術を使って設計、製作することで、自社の強みや製品の特徴点を生み出す製造方法である、
一方、組み合わせは基本的には購入品や汎用部品を組み合わせて製造する製造方法のことで、工期の短縮と費用削減を図り、単純に要求仕様を満たすための製造方法である。
すり合わせと組み合わせをどのように組み合わせてプロジェクトを成功に導くかは組織の強み、弱みそして、所有する製造技術や製造方針が背景となる。製造方針がノウハウ収集方針の柱となり、特にすり合わせについては細かな製作技術の伝承が必要である。
2.2 プロジェクト管理とノウハウの関係
プロジェクト管理においてはコスト、工期、品質管理が目的となる。しかし、計画時にはコスト、工期設定に関して不明な要素があるため、コスト、工期には余裕コストと余裕工程を設定する、この余裕が利用されるのは材料費、工賃の変動や工程遅延対応に加えて、客先仕様の変更に伴う設計費用の増加や製造ミスによる再製作等が発生した場合である。
しかし、後者の人的なミス等による費用追加や工程遅延は担当者の能力に大きく左右され、優秀な担当者が担当する場合には余裕幅の消化も少ない。        
そこで、担当者の能力により左右される余裕部分については担当者の持つノウハウや工夫点を有効に利用することにより、プロジェクトの計画精度を高めることができる(図 2のAの余裕部分)。
図 2 プロジェクトの計画
プロジェクトの実施における生産性の向上には費用、工程等の計画精度の向上が必須であり、そのためには組織が過去に蓄積したノウハウや不適合情報の効果を数値化して評価を行い、計画に織り込むことによりプロジェクトの計画精度向上が期待できる。
通常のプロジェクト計画においては基本コストに加えて、追加費用となる余裕は設定されている、しかしコスト、工期が減少する方向の期待余裕は想定されていない(図 3の赤枠の部分)。
図 3 コストの組み立て
 ただし、上記に示す様に数値化して効果の期待度を評価する必要のあるノウハウは、一品生産(個別受注生産)に関するものであり、ライン生産の場合には効果的な工夫やノウハウは作業者個人の能力ではなく、製造ラインの標準工程として組み込まれる。
図 4 リスクと工夫
従来から、プロジェクトの計画や遂行においても、リスクの算出や管理は実施されている(図 4参照)、しかし工夫点やノウハウの数値化を行い、プロジェクト計画に反映することはなされていない。
プロジェクト計画においてノウハウ・工夫の利用を期待することは担当者の能力開発を重視することとなり、ノウハウの記録と伝授の必要性の基礎となる。
プロジェクトの規模と生産
 プロジェクトの生産性は規模に反比例して悪化する、その理由はプロジェクト規模が大きくなるとプロジェクト内容は当然、複雑となり、参加人員の数が増加するためである、プロジェクト規模が大きくなると情報伝達や作業手順に関する打ち合わせ時間や管理業務時間が増加して生産性が低下する(図 5参照)。
図 5 プロジェクト参加人員と生産
そこで、プロジェクトの生産性低下防止として以下の3つの対策がある。
情報伝達の効率向上を図り、各人員の作業の見通しを良くする。
これまでに蓄積したノウハウや不適合情報を効果的に利用して、生産性の向上を図る。
並行して実行されるプロジェクト間で競合する資源利用に関して効率的な利用スケジュールを立案する。
通常、プロジェクトは複数実行されているため、担当者や資源が競合する状態になっており、担当者や資源を含むプロジェクト実行環境の管理が必要となる。組織が高い競争力と生産性を維持するためにはプロジェクトの規模が拡大した場合でも、生産性を低下させないノウハウ・工夫の利用が必要となる。
ノウハウの数値化
プロジェクト管理の目的は品質、工期、コストの確保と工期遅延、品質低下、予算超過を防止することである。プロジェクトを適切に管理することは組織運営に寄与する。そこで、プロジェクトの計画段階において、組織が過去に蓄積した不適合情報やノウハウ情報を数値化してプロジェクト計画に織り込むことにより、プロジェクトの計画精度の向上と管理目標の数値設定が可能となる。そこで、本件では以下のようなプロジェクトのコスト目標設定式を提案する。以下の式中のマイナス部分はコストと工期が減少する項目である。
(1)プロジェクトコスト見積もり=
基本コスト+追加余裕コスト+外部要因追加コスト-外部要因コスト減効果-ノウハウ利用効果―①式(2)プロジェクト工期見積もり=
基本工期+追加工期余裕+外部要因遅延工期-外部要因工期減効果-ノウハウ利用工期減効果――②式
プロジェクト目標の数設定が可能になれば、次にプロジェクト進行状態の数値的評価が可能となる。
プロジェクトの進捗評価を以下のように設定する。
(3)プロジェクト現状評価=
基本消化コスト+追加コスト+外部要因追加コスト+追加工期コスト換算-ノウハウ利用コスト減効果-外部要因コスト減効果-ノウハウ利用工期短縮効果コスト換算-外部要因工期減効果コスト換算
3.目的
3.1プロジェクト目標の数値化
プロジェクト遂行中には、多くの課題が発生して、その度に課題解決の必要性に迫られる、しかし、発生する課題は複雑であり、課題解決手法の立案は個人の問題解決能力や製造能力に左右されることが多い。個人の問題解決能力を高めるためには、問題を解決しようとする高いモチベーションを維持することが重要である。高いモチベーションの維持にはチームワークとチームが共有できる数値目標が必須である、そこで、必要な数値目標とノウハウや不適合の効果、損失を数値に変換することを提案する。プロジェクトで設定するべき数値目標を以下に示す(表 1参照)。
表 1 プロジェクトの数値目標
本件では上記中のノウハウ、不適合情報の数値化とプロジェクト進行状況の可視化方法について検討した。
プロジェクトにおいて、適切な計画を立てるためには自社の設計、製造の力を正しく把握することと、客先の評価点に対して適切な結果を提示することが重要であり、現場の強さ、弱さを理解してプロジェクトの計画、管理を行うことにより、リスクの排除と目的達成が期待できる。
自社の強さ、弱さの数値化とプロジェクト目標への反映そして、プロジェクト進捗の数値管理は今後の課題である。
3.2ノウハウの数値化とモチベーションの維持
製造技術の伝承においては単なる製造技術だけではなく、材料手配、段取り等の見通しが必要である、更に顧客の要求や製品の利用方法を理解して始めてノウハウ・工夫を生かした良い製品ができる。
ノウハウ伝授を支援するためにはプロジェクト進行中に発生する課題を共有して、作業者の見通しを良くすることが必要であり、モチベーションの維持には不適合の発生やノウハウの利用を数値化して担当者が認識できるようにすることが必要である。
工夫やノウハウ利用による改善効果を費用に対する評価ポイントを設定して実際の状況を幾つか測定した(表 2参照)、その結果、実際の費用的貢献度よりも担当者の貢献度感覚は低いことが示された(図 6参照)。
表 2 改善効果の評価
図 6 効果金額と担当者の感覚
また、不適合発生による損失費用に対する評価ポイントを設定して実際の状況を測定したところ(表 3参照)、実際の費用的損失よりも担当者の感覚は高いことが示された(図 7参照)。
担当者のモチベーションを維持するためには工夫点やノウハウの利用が適切に評価され、担当者も貢献度を理解することが重要である。
そして発生する課題を数値化、文字化して可視化することにより、遂行状況の把握とチーム内の情報共有が期待できる。
表 3 損失金額の評価
図 7 損失額と担当者感覚
4.環境情報と状況情報の共有
4.1環境状況の言語化
プロジェクトの進行において、環境変化への対応やリソース(人員や機械等)の競合を避けることが必要となる。そこで、環境情報を言語化して、現在の状況を把握することが考えられる。更に環境情報を言語化したデータに必要な対応行動データを同時に持たせることにより、環境状況の把握と行動支持が可能となる。例えば製作状況が単に製作遅れというだけでは、状況の把握と次に取るべき対応について理解があいまいとなる、しかし現在状況と予想される状態と発生する対応行動を全て言語表現して可視化することにより、現在と将来状況の把握と行動予測が可能となる。表 4に環境条件と選択するべき作業の例を示す、状況、条件によって作業方法が絞り込まれる。
また、表 5の製作遅れ状況に関しても、複数のプロジェクトが実行されている場合、以下のように表現することにより、資源の分配や工期の重なりを理解することが容易となる。本例の状態を図式化したものを示す(図 9参照)。
A 製作遅れ Bとの調整必要
B 製作遅れ Cとの調整必要
D 飛び込み作業 A、Bとの調整必要
表 4 作業と環境情報の例状況例
図 9では工程が輻輳して工程遅延が発生する場合、工程遅延を費用に換算して表現している。
表 5 環境情報の文字化
図 8 行動の連鎖
図 9 状況、対応行動と費用
状況情報を用いて微小作業情報を検索できれば言語化された環境状況に合わせて、対応行動一覧の可視化が可能となる(図 8参照)。
5.情報の記録
5.1ノウハウ・不適合登録システム
 ノウハウ、不適合を同一に評価するためにノウハウと不適合情報にコストの増減効果、工期の短縮、遅延効果を追加して登録可能なシステムを開発した。
登録可能な資料は不適合、ノウハウ・工夫情報である。管理情報としてノウハウ、不適合の内容に加えて、工期影響度、費用影響度、作業の難度(いづれも担当者の感覚)実際の効果、損失額の登録が可能である(図 10参照)。管理情報は同一のため、ノウハウ、不適合を同一に扱うことが可能である
図 10 不適合情報登録画面
検索では詳細検索画面と単純なフリーワード検索が可能である(図 11参照)。
図 11 情報検索画面(詳細)
検索結果は一覧表示され、詳細表示の指示を行うことにより、内容の確認が可能である(図 13参照)。
図 12 情報検索画面(簡易)
図 13 情報検索結果
検索結果(図 13参照)、詳細表示の例を(図 14参照)に示す。
図 14 内容の詳細表示例
6. まとめ
プロジェクト遂行では高い生産性を持って目標を達成することが求められる。しかしプロジェクト遂行中には、多くの課題が発生して、その度に課題解決の必要性に迫られる、しかし、発生する課題は複雑であり、課題解決手法の立案は個人の問題解決能力や組織が持つ製造能力に左右される、従って組織が高いプロジェクト遂行能力を持つためには個人の問題解決能力を高め、問題を解決しようとする高いモチベーションを維持することが必要となる。
高いモチベーションの維持には組織が蓄積したノウハウの利用と担当者の作業に対する見通しが重要であり、ノウハウを共有するためにはチームワークとノウハウを検索するための数値的評価が必要である。そこで本件ではプロジェクト管理の観点からノウハウの数量化と評価方法の検討を行い、ノウハウの利用効果を費用に換算してプロジェクトの進捗評価に加える試行を行った。その結果、工夫やノウハウを費用に換算することにより担当者のノウハウ共有に関する意識の向上が図れ、チームワークの向上とプロジェクトの生産性向上に寄与する可能性の高いことが認められた。
また、通常は幾つかのプロジェクトが平行して実施されており、あるプロジェクトの障害を解決するためには他のプロジェクトに影響を与えることが想定される、この場合、解決方法は複雑であり、課題解決には過去のノウハウを利用して、プロジェクトの生産性を維持することが必須となる。
そこで本件では環境情報や状況情報を言語化して、現在状況と今後の行動をコストと時間を測定軸として可視化することを提案した。本手法の有効性の検討は今後の課題である。 
更に、今後の課題はノウハウ・工夫情報と不適合情報に費用と工程影響を加えた情報の収集と対応行動情報の収集である。 
環境情報と行動情報を分離して扱い、環境が異なっても適切なノウハウ・行動検索が可能となることによりノウハウ伝授システムが実現する。
謝辞
 本研究の遂行において、適切な御助言並びにデータのご提供を頂いた、東條浩和氏(東亜機械工業株式会社)と古田陽介氏(株式会社アクシス)には心から感謝申し上げる。
参考文献
[1]人工知能学会、人工知能ハンドブック
オーム社、1990
[2] 持田 信治、行動手順スクリプトを使用した知識抽出に関する研究、 バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 vol.9  No.1(2007)
[3]H・ウイリアム・デトマー、論理試行プロセス、 同友社 
連絡先:
〒751-8503 下関市一宮学園町2-1
東亜大学 医療工学部 医療工学科
持田 信冶
電話  :0832-57-5061
Eメール:mochida@toua-u.ac.jp
リーン生産方式と改善に関する工場長への回答
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状況
2016年夏、チェコの精密機械製造工場を見学した際、工場長から「リーン生産方式と改善は同じか」と質問された。
行動
当時は両者を別物と理解していたため、明確に答えられず窮した。
関連ルール: E-1: 明
結果
欧米の「KAIZEN(コストダウン手法)」と日本古来の「改善(理想製品を目指す挑戦)」の違いを再定義し、本稿の執筆に至った。
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詳細コンテキスト
【分析:状況】
2016年夏、チェコの精密機械製造工場を見学した際、工場長から「リーン生産方式と改善は同じか」と質問された。
【分析:行動】
当時は両者を別物と理解していたため、明確に答えられず窮した。
【分析:結果】
欧米の「KAIZEN(コストダウン手法)」と日本古来の「改善(理想製品を目指す挑戦)」の違いを再定義し、本稿の執筆に至った。
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【本文】
整理、整頓、清掃と改善の起源といざ鎌倉
The origins of the Sort, Tidy, Cleaning, Kaizen and Kamakura
持田 信治*
Shinji Mochida
「整理、整頓、清掃」は「改善」と共に日本の製造業の基本姿勢である。しかし、最近の製造業の「5S」と「改善」は単なるコストダウンの手法として理解されている。そこで、本書は「整理、整頓、清掃、改善」の起源が「いざ鎌倉と職人気質」にあることを述べた後、古来の「整理、整頓、清掃、改善」と近年の「5Sと改善」とを比較する。そして、「いざ鎌倉と職人気質」から今後のイノベーション推進のヒントを得たので報告する。
キーワード:5S、改善、リーン生産システム、イノベーション
Ⅰ.はじめに
概要
 筆者は2016年の夏にチェコのビンペルクにある精密機械製造工場を見学する機会があり、見学の最後に工場長から「リーン生産方式と改善は同じか」との質問を受けた。筆者は当時、「リーン生産方式」と「改善」は別ものであると理解しており、答えに窮した。「リーン生産方法」は代表的な生産方法の一つで、仕様を満たす範囲でコストダウンを計り利益を得る生産方法である。製造方法には漢字の「物つくり」とひらがなの「ものつくり」があり、漢字の「物つくり」は仕様が決まった「有体物」を作る方法であり、仕様を満たす範囲で安く作ることが求められる。欧米での生産方法の基本的な考え方は「リーン生産方法」に代表される「物つくり」である。「リーン生産方法」は仕様を満たす範囲で安く作る仕様第一主義である。欧米では「リーン生産方法」と「KAIZEN」は同じであり、「KAIZEN」はコストダウンの手法として理解されている。一方、ひらがなの「ものつくり」は辞書には「物」以外のものを作ることとある1)。「ものつくり」は仕様が決まっていない理想製品を作る、挑戦的な「ものつくり」である。「ものつくり」は理想製品作りを目指す終わりのない挑戦的な創作活動であり、最高の「改善」とアイデアが必要である。従って、日本古来の「改善」や「ものつくり」は、仕様第一主義の欧米の「物つくり」とは対局に位置する。「物つくり」は安い部品で、なるべく簡単に組み立てられる安い製造方法を目指している。日本古来の「改善」は職人言葉「細工は流々仕上げを御覧じろ」に代表される行動様式であり、アイデアを生かすためには、アイデアが浮かべば直ぐに試行錯誤を行うことが必要であり、直ぐに作業に取りかかるためには「整理、整頓、清掃」による整えられた作業環境と常に作業に取りかかれる姿勢が必要である。常に作業に取りかかれる姿勢は「いざ鎌倉」である。「いざ鎌倉」は謡曲「鉢の木」に出てくる言葉で室町時代から戦国時代を経て現代まで伝わっている言葉である。「整理、整頓、清掃」と「改善」は戦国時代から平和な江戸時代に入ると職人の精神となった。そこで、本書は「整理、整頓、清掃」と「いざ鎌倉」の起源を探りつつ、欧米に広がる有体物を作る「KAIZEN」と日本の理想目標を目指す「改善」の違いを述べる。そして、今後のイノベーション推進に向けた「整理、整頓、清掃」と「改善」に沿ったアプローチ方法を考察する。「整理、整頓、清掃」の略称は「3S」であり、「整理、整頓、清掃、清潔、躾」の略称は「5S」である。一般的には「5S」は「3S」を拡張したものと理解されている。しかし本書では日本古来の何時でも行動を起こす準備をしておく姿勢を「改善」と「整理、整頓、清掃」として記述する。一方、欧米の製造業に於ける効率化を目指す姿勢を「KAIZEN」と「5S」と記述する。
Ⅱ.整理、整頓、清掃と武士道そして改善へ
1.武士道と整理、整頓、清掃
筆者の記憶では小学校の教室の正面に「整理、整頓、清掃」と書かれた額があり、先生から「整理、整頓、清掃」とは何時でも勉強が出来る様に環境を整えておくことだとの説明があった。つまり「整理、整頓、清掃」とは自分の作業道具を常に「整理、整頓」しておき、「清掃」によりワークスペースを確保しておき、何時でも勉強が出来るようにしておくとのことであった。何時でも作業に取りかかれる様に準備をしておく「整理、整頓、清掃」の考えは「いざ、鎌倉」の精神に始まる。「整理、整頓、清掃」は昼夜いつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかるという精神で、日本の創意・工夫とアイデアを重視する考えの基礎となっている。また、「源義経の鵯越の逆落し」に由来する「夜討ち、朝駆け」もビジネス好機を逃さない精神であり「いざ、鎌倉」と共に日本のビジネス精神の基礎をなしている。「整理、整頓、清掃」の精神は侍が各自の得物を常に手入れと鍛錬を怠らず「いざ」に備える姿勢で、安土桃山時代から戦国時代、江戸を経て、武士から職人の精神に反映されて、現在に至っている。常に「いざ」に備える姿勢が「いざ鎌倉」であり、「いざ鎌倉」は鎌倉時代の謡曲「鉢木」に出てくる言葉である。大正時代の尋常小學國語讀本にも「鉢木」は登場しており2)、明治から大正時代にかけても常に「いざ」に備えることの必要性は語られていたことが解る。いつでも一大事への準備ができていることは近代の「出船の精神」にも受け継がれている。武士は奈良時代の743年(天平15年)に「墾田永年私財法」が制定されたことにより始まった。私有地が認められたことにより、有力な荘園主や貴族は荘園を守るために武装集団が必要となり、荘園を守るための専門武装集団が発生した。そして、「貴人の傍らにさぶらふ人」から、「侍」つまり「武士」ができた3)。平安時代に入り、源氏や平家の武将と武士団が出来た。更に鎌倉時代に至って、武家政権が誕生することとなり、鎌倉幕府は禅宗に傾倒して、武道、礼儀を重んじる「武士道」が確立された。武士道の中心的精神は以下の3点である。まず、いつでも一大事への準備ができていること。次ぎに自分を改善するために鍛錬を欠かさないこと。そしてコンディションをきちんと保つ「摂生」「 節制」「 礼節」を守ることである。そして、「武士道」では常に一大事に備える準備と得物の手入れが求められた。例えば、得物の手入れについては北条重時(1198-1261)が作成した『六波羅殿御家訓』に「腰刀の錆びたる持つべからず、~不断に心用心あるべしとある」4)。得物の手入れと鍛錬を怠らず、一大事に備えることは武士道の中心的精神であった。武士が武道を重んじて、武器の手入れと鍛錬に余念がなかった理由として、武士は戦闘集団であったことと、武士には警備の役目があったことがある。具体的には、貞永元年(1232年)に北条泰時が「御成敗式目」(ごせいばいしきもく)を制定して武家の基本法典が定まり、守護の職務が「大犯三箇条」(だいぼんさんかじょう)として定められたことによる。大犯三箇条では、守護の職務は、まず鎌倉・京都での大番役(おおばんやく:警固のこと)の招集と指揮監督を行うこと、そして謀反人の捜索と逮捕、殺害人の捜索することであった。つまり守護の職務には警備の役割があり、日頃の鍛錬と武器の手入れが必要であった。また、天文年間(1532年から1555年)に吾川郡弘岡城主であった吉良宣経(1514-1550頃)の定目(ていもく)にも武士のたしなみとして武具を整備し、武芸の修練に心がけて軍役に精励することと記載されている4)。そして、守護大名が戦国大名に代わるにつれ、武士道に於ける武勇の必要性が高まって行った。武勇の高まりに合わせて、日頃の得物の手入れと鍛錬を怠らず、常にいざに備える「整理、整頓、清掃」の武士道の姿勢が確立された。
2. 「ものつくり」と「物つくり」に於ける利益の考え方
武士道は自分を高め、精進することが基本であり、「整理、整頓、清掃」は武士道に由来している。時代が平和な江戸時代になり、自分を高め、精進する「整理、整頓、清掃」の精神は職人に広がって行った。職人の利益は各自の技術とアイデアに基づいていた。例えば、一般的な製品の価格は製品に要求される基本機能(図1のG)に顧客からの高度な要求(図1のH)を加えた製品の妥当な仕様(図1のD)に応じて設定される。そこで、製造者はコストダウン手法、例えばLean production system手法等を使用して得た製品コスト(図1のE)と製品の妥当な価格(図1のG)との差を得て利益(図1のH)を確保する。つまり、妥当な製品仕様(図1のD)を維持する範囲で製作時間(図1のJ)が進むに沿ってコストダウンを図ることが「KAIZEN」であり、「KAIZEN」はより安く製品を作る方法を追求する。具体的には「KAIZEN」は作業の単純化と作業の一律化を進め、製作マニュアルを作成して、人件費の安い作業者を使用できるようにしたり、製品をより簡単な作りにしたりして、コストダウンを追求する。一方、古来の職人は顧客の視界にある製品は顧客が価格を決めてしまうので、類似品との価格競争となり、利益が得にくいこと、そして自分の持つ技術を発揮し難いことを知っており、より自分の技術が生かせる創造的な仕事を目指した。例えば、職人言葉にある「簡単な仕事はしない」が職人の利益に対する考え方を物語っている。また「細工は流々、仕上げをご覧じろ」は、作品の製作技術は職人別であり、仕上げで勝負することを示している。職人は製品ではなく、職人は自らの技術とアイデアを用いて、顧客の視界を超えた作品を製作して、顧客の所有欲を満足させることにより高い利益を得ていた(図1のF)。図2にM・ロジャースのイノベータ理論を示す。図2は顧客全体を100%として、客層別の割合を模式的に示している。職人は、図2に示すイノベータを相手にすると利益が得られることを知っていた。画期的な製品、つまりイノベーティブな製品はまず、新しい物好きなイノベータが購入する。イノベータは価格を気にしないので、売り手は自由に価格設定ができ、利益を得る。いわゆる先駆者利益である。そして製品が成熟して一般化すると客層は最終的には図2の4層目にあるレイトマジョリティに変化する。レイトマジョリティは高度な機能には感心がなく、基本機能がありさえすれば、より安いものを購入する。
図1 職人の利益の考え方
図2 エベレト・M・ロジャースのイノベータ理論 (理論に基づき筆者作成)
3.「整理、整頓、清掃」と「改善」の広がり
日本古来の「整理、整頓、清掃」と「改善」は理想目標を目指す。例えば、「整理、整頓、清掃」の「整」は古典に「整は正なり」とあり、ゆがんだ形を真っ直ぐにすることが「整」であり「正」である。更に「整」は真っ直ぐにする、不純物を取り除くという語源から5)、「整理」は乱れたものを整える、または不必要なものを取り除くとの意味である6)。一方、「改」の語源は誤りを改めて正しくすることであり、「改善」は「改良」などと同様にreformやimproveの訳語として明治時代に作られた和製漢語である3)。つまり、「整理、整頓、清掃」や「改善」はよい方向へ改めることであり、終わりのない活動である1)。ただし、「改善」は先に述べた様に明治時代に作られた言葉であるため、武士道では精進などと呼ばれたと思われる。精進は大乗仏教の六波羅蜜修行の4番目の修行であり、悟りを目指す終わりのない活動である3)。一方、海外で使われている「5S」と「KAIZEN」は利益創出のためのコスト最適化手法であり、バリュー(金銭的価値)を高めることを求めており、明確に目標利益の創出を目指す活動である。筆者は図3に示すチェコの計測機械メーカの工場を見学する機会があり、工場長の話から海外では「改善」はコスト最適化手法として知られていることが理解できた。また、チェコのプラハ経済大学(Prague University of Economics and Business)にて5Sゲームという講義を見学した(図4参照)。講義では「改善」と「無駄」どちらも生産性向上の手法として説明されており、目標は明確であった。具体的には5Sゲームではレゴの飛行機模型を教材にして、数人でチームを組み効果的な組み立て方法を考え、どのチームがある制限時間内に多く組み立てるかを競う講義であった。
図3 チェコのビンペルクにあるローデ・シュワルツの工場(筆者撮影)
図45Sゲーム講義の様子 その1(筆者撮影)   5Sゲーム講義の様子 その2(筆者撮影)
海外では「5S」も広く知られており、「5S」の最後の2つの「S」は「躾」と「清潔」である。筆者がHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)に係わる食品関係の業務に従事している時には、「躾」とは作業着、エプロン、マスク、帽子を付けてほこりを落としてから食品工場に入ることであり、白線を踏まないなどの職場のルールを守る習慣を身に付けることが「躾」であった。そして、食品工場の「清潔」とは手を石けんで洗い、更にアルコールで消毒を行う、いわゆる化学的な清掃であった。「清潔」を改善活動の本で調べると「5S」を維持することとある。また、「清掃」と「清潔」の英語訳は同じ「Cleaning」であり区別がない。日本の「整理、整頓、清掃」はいつでも作業に取りかかるための心構えであるのに対して、海外で広がる「5S」は製造現場のルールとなっている。心構えは個人の行動指針であるのに対して、ルールは業務の規則である。例えば、チェコのある工場で「5S」を実践するとのことで、始業前に出社して作業準備するよう要請した所、作業準備は業務の一部であり、対価が支払らわれない作業はできないと作業者に断られたそうである。理想を求める「改善」と「整理、整頓、清掃」の自主的心構えは、明確な額の利益を追求する「KAIZEN」と対価が必要な「5S」とは全く別である。
4.整理、整頓、清掃」といざ鎌倉
「整理、整頓、清掃」とはいつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかる心構えであり、「いざ鎌倉」の精神に由来する。「いざ鎌倉」は室町時代に成立した謡曲「鉢木」に出てくる言葉で、鎌倉に何かあればすぐに鎌倉に駆け付けるというものである。当時、すべての武士が鎌倉に住んでいたわけではないため、常に鎌倉での争いへの準備が必要であったことが「いざ鎌倉」であった。ただ、鎌倉に駆けつけるのは恩賞、つまり利益を得るためであり、「いざ鎌倉」は利益のためであった。謡曲「鉢木」の主人公の佐野源左衛門常世が、宿を貸した旅僧(諸国行脚中の執権北条時頼(最明寺入道))に対して語った言葉に「今にても鎌倉に一大事あらば、千切れたりとも具足を着け、錆びたりとも長刀を持ち、痩せたりとも馬に乗り、一番に馳せ参じ、合戦始らば一番に敵と討合ひて死なん覚悟なれど」がある。この有名な言葉は当時の御家人は、鎌倉で何か騒動が起こったときには、すぐに鎌倉にはせ参じる体勢であったことを現している6)7)8)。「いざ鎌倉」の言葉が登場する「鉢木」は室町時代の観阿弥(1334~1384)作又は世阿弥の作と言われており、2度の元寇の後の作品である。元軍侵攻の頃、武士は一大事に備えて、得物の手入れと鍛錬に余念の無い状況であった。当時、鎌倉幕府は刀鍛冶を鎌倉に集める等、日本刀の製造を支援した。そして、太刀と槍は2度の元寇の後、めざましい性能向上があり、名刀「正宗」が登場するのもこの時代である。
5.「鉢木」成立の時代背景
「鉢木」からわかるのは、まず鎌倉では騒動が頻発したことと、次ぎに鎌倉に一大事ありと聞けば、諸国の御家人は先を争って馳せ参じ、幕府の着到状(出席簿)に姓名を記録して恩賞を期待していたことである。このようなことは鎌倉時代特有のことで、他の時代にはあまりみられないため、一大事に備える言葉として、「いざ鎌倉」という言葉は現在まで残ったとも考えられる。一大事ありと聞いて、御家人たちが鎌倉に駆けつけたという記述は、鎌倉幕府の歴史書である『吾妻鏡』4)に散見される。例えば吾妻鏡の元久2年(1205)にある「畠山重忠、討たれるの」項には「軍勢が由比ヶ浜の辺りを先を争って走った」とあり、先駆けの様子が表現されている。しかし、争いが最も多いのは、源頼朝の時代ではなく、鎌倉中期の北条時頼(1227-1263)の時代であった。北条時頼は摂家将軍を追放した上、三浦氏を滅ぼし、北条氏専制政治への道を開いた。「時頼」の時代は、いつ何が起こるかわからない不安定な社会状況であった。謡曲「鉢の木」には北条時頼が登場することから「いざ鎌倉」は、当時の不安定な史実を反映している。「鎌倉幕府の歴史を記載した「吾妻鏡」には、源頼朝が挙兵した治承4年(1180)から六代将軍宗尊親王が鎌倉から京都に送還された文永3年(1266)までの歴史を記載している。一方、「鉢木」は観阿弥(1334~1384)の作と言われており、「鉢の木」は「吾妻鏡」の後の作であるため、鎌倉武士の精神の全体像を反映していると言える。また、北条幕府に起きた2度に渡る元寇の役も、常に戦闘に備える精神である「いざ鎌倉」が維持された理由と考えられる。2度に渡る元寇とは文永の役(1274)と弘安の役(1281)であり、当時、北条時宗(1251-1284)は2度の元の軍を退けた。元寇の役に於ける勝利は北条武士の大きな働きと神風によるものとされている4) 。福岡市の東公園には元寇を退けたとされる日蓮聖人の像(図5参照)があり、日蓮聖人の神風は現在まで語り継がれている。日蓮聖人は「立正安国論(1260)」を北条時頼(1227-1263)に宛てに送り、外的の襲来を警告したとされており、「立正安国論」も当時が不安定な情勢であったことを示している。2度の元寇は日本の武士の装備にも変化をもたらした。元軍の鎧は真綿を何層も重ねた構造であり、当時の軟鉄で作られた武士の太刀では切ることが出来なかった。そこで、鎌倉幕府は各地から刀匠を集めて太刀作りを奨励した。そして刀匠、五郎入道正宗がついに日本刀の製造方法を完成させた。日本刀の製造方法は軟鉄の鉄に鋼鉄を巻いて、鍛えた後、焼き入れをする工程を繰り返す方法であり、良く切れるが、折れない日本刀が完成した。名刀正宗の完成である(元寇記念館資料より)。鎌倉幕府後の武士にも一大事に備える心意気があったことは土佐の「一領具足」にも見られる。「一領具足」は半農の武士であり、長宗我部元親(1539-1599)が安芸国虎攻めにあたり、兵力増強のために思いついた武士の身分である。「一領具足」は耕作時に槍の柄に草鞋(わらじ)と兵糧をくくりつけて田の畦(あぜ)に立てておき、有事の時には武装して直ぐさま、駆け付けるという生活であり、土佐物語には「一領具足と申すは、僅かの田地を領して、常には守護へ動仕(きんし)もなく役もなく、己が領地に引き籠り、自らたがやし、くさぎり、諸士の交はりもせされば、礼儀もなく作法もなく、明け暮れ武勇のみを事として、田に出づるにも、鎗の柄に草桂・兵糧を括り付け、田の畔に立て置き、すはと言へば鎌鍬を投げ捨て走り行く。鎧一領にて着替への領もなく、馬一疋にて乗り替へもなく、自身走り廻りければ一領具足と名付けたり。弓・鉄胞・太刀打ちに調練して、死生知らずの野武士なり」とある9)。「一領具足」は有事の際には戦場に馳せ向い、弓、鉄砲、大刀打に鍛錬をして、勇猛かつ命知らずの野武士であった。「いざ鎌倉」の「いざ」と「一領具足」の「すは」は一大事に備える鎌倉幕府から戦国時代の武士の共通の心意気であった。
6.鎌倉幕府の「いざ鎌倉」はどこに
鎌倉幕府に始まる武家政治は、源頼朝が1192年(建久3年)に朝廷から「征夷大将軍」に任命され、鎌倉幕府を開いたことから始まる(*所説あり)。源頼朝は治承4年(1180年)、伊豆で反平氏の軍を挙げた頼朝を討つため京からやってきた平家軍を富士川の戦いで破った。そして源頼朝は図6にある鎌倉の大蔵(雪ノ下)の屋敷に入り、鎌倉が武家政権の政治の中心地となった。更に源頼朝は図7に示す元八幡を現在の鶴岡八幡宮の地に移して町づくりの中心とした。最初の幕府は大倉幕府(1180-1225)であり、次に幕府は宇都宮辻子幕府(1225-1236)となり、更に幕府は若宮大路幕府(1236-1333)へと変わった。また頼朝は図8の永福寺(ようふくじ)を建立して、合戦で亡くなった将兵の鎮魂のために建立した。鎌倉幕府では禅宗が奨励され、「武士道」の精進の精神が成立した。そして、「武士道」は「鉢木」に描かれている様に常に得物を手入れと鍛錬を怠らず、一大事に備えることが基本姿勢となった。  
図6幕府跡(左から大倉幕府、宇都宮辻子幕府、若宮大路幕府)(筆者撮影)
図7元八幡 (筆者撮影)         図8永福寺跡 (筆者撮影)
7.職人気質
「整理、整頓、清掃」はアイデアが浮かんだ時に直ぐに作業に取りかかる精神であり、「改善」と共に、唯一の作品を求める日本古来の職人の精神である。一方、イノベーティブな商品も顧客の視界にない、唯一の製品である。21世紀最大のイノベーティブな製品の一つにスマートフォンがある。現在のスマートフォンの原型は2007年にスティーブ・ジョブズ氏が発表したiPhoneである。iPhoneはタッチパネルとグラフィカルインターフェースを備えていた。初期のスマートフォンは図9に示す様に下や横に小さなキーボードを備えた物で、使い勝手は良くなかった。また当時の多くの携帯電話は折りたたみ型の電話であり、iPhoneは多くのユーザにとって見たことのない電話であった。しかし、iPhoneのグラフィカルインターフェースは1984年にAppleが発表したマッキントッシュで採用されており、更にマッキントッシュはパーソナルコンピュータでは初めて、ポインティングデバイスとしてマウスを採用していた。そして、スティーブ・ジョブズ氏はグラフィカルインターフェース技術を電話に転用することによりiPhoneを完成させた。iPhone発表時にスティーブ・ジョブズ氏は「電話を再発明した」と語った様に当時の電話のイメージは一変してスマートフォンとなった。イノベーティブな製品とはiPhoneの様に各自の固有技術と他の何かを組み合わせることにより生まれる。従ってイノベーティブな製品開発には各自の固有技術を基礎にして、理想目標を実現することが求められる。例えば、続江戸職人綺譚10)に登場する江戸時代の職人の道具自慢話では、「腕のいい大工が道具に凝って稼ぎのほとんどを道具につぎこみ年がら年中素寒貧で・・」や、「荒仕工鉋(かんな)・・こちとら大工の肝玉をふるい立たせてくれなくちゃいけね」にある通り、職人は理想の作品を製作するために、己の技能の修練と技術を発揮するための道具の手入れに余念がなかった。また職人は、「自分の仕事に自分で値段をつけて、それが売れるようになりまして」11)とある通り、稼げる製品には技術とアイデアが必要であり、お客が求めるものだけを作っていたのでは稼げないことを知っていた。つまり、古来の職人はイノベーティブな製品を目指していた。イノベーションやイノベーティブな製品の創造には古来の職人気質と「整理、整頓、清掃」と「いざ鎌倉」の精神が必要である。
図9 キー付スマートフォン (筆者撮影)
8.製品の魅力の変化とイノベーション
ドラッカー氏やシュンペーター氏によるイノベーションの定義では、画期的な製品やサービスの導入により経済に新たな好況局面を創り出すこととある。つまり、イノベーションとは必ずしも製品を生み出すことではなく、販売方法やサービスも含まれる。しかしイノベーティブな製品に限ると、イノベーティブな製品の定義は次の2つである。一つは開発者が価格を設定できること、そして2つめは顧客の視界に無い製品であり、顧客は自分の財布からお金をやりくりしても捻出するほど、魅力ある製品であること。例えば顧客が食費を節約してでも欲しくなるくらい魅力ある製品がイノベーティブな製品である。本カテゴリに入る例は、初期のiPhoneである。しかし、製品は次第に一般化して、差別化することが難しくなる。製品の差別化が難しくなると価格競争になり、利益を得づらくなっていく。つまり製品の一般化(コモディティ化)が進む。一方、製品の成熟度が進むに従い、客層も変化する。図2のレイトマジョリティが製品を購入する状況になると、製品の差別化は難しく、価格競争となる。するとメーカは大量生産による薄利多売となり、大規模な生産設備の投資が必要となる。しかし、設備投資の時期を見誤ると経営的な大打撃を受ける。例えば液晶ディスプレイが成熟段階の製品であり、画面が精細度であったり、高品質なスピーカを搭載したりしていても、レイトマジョリティには製品の魅力が届かず、差別化にはならない。最近では、車が成熟段階に入っている。ビジネスとは、物やサービスの流れと対価がループを形成することである。対価は金額で評価されバリューとも呼ばれる。しかし、バリューは物の機能や性能だけで決まるものではなく、感覚的な要素にも左右される。バリューを左右する要因として、例えば、ネームバリューや希少性やコラボレーションがある。製品のバリューには顧客の主観が大きく影響する。筆者が商品に対する価値観の調査から、顧客の主観とは客の評価軸のことで製品が持つ評価軸が多いほど、バリューは高まることが解った11)。例えば、図10に元の製品と野球チーム名を冠したコラボ製品と他社の製品のバリューを示す。野球チーム名を冠したコラボ製品は価格が上がる分、価格の評価は下がる。しかしコラボ製品は満足性や楽しさ・記念度が上がるため、価値の大きさを示すグラフの大きさは元の製品を上回り、結果的に販売増が期待できる。最近の製造業で主流となっているリーン生産方式は無駄を省いてコストダウンを図る。また製造業で採用されているシックスシグマは作業を平準化して、むりとむらのないマニュアル主義による製造を実現して、コストダウンと歩留まりの向上を図る。リーン生産方式では仕様に対するオーバースペックも無駄となる。しかし、オーバースペックはイノベータに対する製品の魅力の1つであり、イノベーティブな製品に必要なものである。仕様第一主義、コスト第一主義ではイノベーティブな製品は生まれない。理由は仕様第一主義、コスト第一主義では顧客の主観に響かないからである。顧客の主観を刺激するイノベーティブな製品は理想目標を掲げることによりイメージが浮かぶ、そして、アイデアが浮かんだ時に直ぐに試作に取りかかるためには「整理、整頓、清掃」が必要である。イノベーティブな製品を生みだす姿勢を表現したものが日本の「整理、整頓、清掃」と「改善」である。
図10 製品の評価軸と評価の様子 (筆者作成)
謝辞
本書の作成あたり、助言と貴重な情報を頂いた鎌倉市鎌倉歴史文化交流館殿とオーテピア高知図書館の横山 有弐氏に感謝申し上げる。
引用文献
1) 岩波国語辞典、岩波書店、2019
2)尋常小學國語讀本1918(大正7年)卷1,文部省、国立国会図書館デジタルコレクション
3) 小松寿雄,新明解語源辞典,三省堂,2011
4) 西田友広,吾妻鏡,角川文庫,2021
5) 加納喜光,漢字語源語義辞典,1940
6) 平泉澄,明治の源流,時事通信社、国立国会図書館 デジタルコレクション,1970
7) 鉢木,国立国会図書館デジタルコレクション
8) 森延哉,駒とめて袖うちはらう-謡曲「鉢木」考,(株)文芸社,2010
9) 山本大(やまもと たけし),長宗我部元親 その謎と生涯,新人物往来社,2010
10) 佐江衆,続江戸職人綺譚,新潮文庫,2003
11) 永六輔,職人,岩波書店,1996
12) 持田信治,心理的価値評価によるパッケージデザイン,第67回 日本経営システム学会 全国研究発表大会予稿集,pp148-149,2021
チェコの工場長からの問いかけ
主要項目ヒット ヒット: 18 開く 保存
状況
2016年夏、チェコの精密機械製造工場を見学した際、工場長から「リーン生産方法と改善は同じか」と質問された。
行動
当時の自分には答えられなかったため、帰国後に「改善」と「整理・整頓・清掃(3S)」、「いざ鎌倉」の起源について調査を開始した。
結果
「リーン生産方法(コスト最適化)」と「日本の改善(理想目標を目指す行動様式)」の違いを明確にし、イノベーション推進に向けたアプローチを体系化した。
関連ルール: A-34: 生産 E-1: 明
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詳細コンテキスト
【分析:状況】
2016年夏、チェコの精密機械製造工場を見学した際、工場長から「リーン生産方法と改善は同じか」と質問された。
【分析:行動】
当時の自分には答えられなかったため、帰国後に「改善」と「整理・整頓・清掃(3S)」、「いざ鎌倉」の起源について調査を開始した。
【分析:結果】
「リーン生産方法(コスト最適化)」と「日本の改善(理想目標を目指す行動様式)」の違いを明確にし、イノベーション推進に向けたアプローチを体系化した。
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【本文】
整理、整頓、清掃(3S)の起源といざ鎌倉
明専会 神戸支部長 持田 信治
はじめに
2016年の夏にチェコに暫く滞在していました。この時、チェコのビンペルクにある精密機械製造工場を見学する機会があり、見学の最後に工場長さんから「リーン生産方法と改善は同じですか」と質問を受けました。当時、「リーン生産方法」と「改善」については知っていましたが、なんと答えて良いのか解らず、答えられませんでした。この時の工場さんからの質問が本書で述べる「改善」と「整理、整頓、清掃」そして「いざ鎌倉」の起源を調べるきっかけになりました。「リーン生産方法」は代表的な生産方法の一つで、仕様を満たす範囲でコストダウンを計る生産方法です。製造方法には漢字の「物つくり」とひらがなの「ものつくり」があり、漢字の「物つくり」は仕様が決まった有体物を作る方法であり、仕様を満たす範囲で安く作ることが求められます。欧米では仕様を満たす範囲で安く作るための手法として「5S」と「KAIZEN」が広がっており、「リーン生産方法」と「KAIZEN」は同じであると考えられます。一方、ひらがなの「物つくり」は辞書には「物」以外のものを作ることとあります[1]。「物つくり」は仕様が決まっていない理想製品を作ることを含み、理想目標を目指す「改善」が必要です。「改善」は職人言葉「細工は流々仕上げを御覧じろ」に代表される様に、個人の技術とアイデアを駆使して理想の「ものつくり」を目指す行動様式です。アイデア駆使するためには、アイデアが浮かべば直ぐに試行錯誤を行うことが必要です。直ぐに作業に取りかかるためには「整理、整頓、清掃」による整えられた作業環境と常に作業に取りかかれる姿勢、つまり「いざ、鎌倉」が必要です。「いざ、鎌倉」は謡曲「鉢の木」に出てくるセリフで室町時代から戦国時代を経て現代まで伝わっている言葉です。「整理、整頓、清掃」と「改善」は戦国時代から平和な江戸時代に入ると職人の精神として伝わって来ました。そこで、本書は「整理、整頓、清掃」と「いざ鎌倉」の起源を探りつつ、欧米に広がる有体物を作る「KAIZEN」と日本の理想目標を目指す「改善」の違いを述べたいと思います。そして、今後のイノベーション推進に向けた「整理、整頓、清掃」と「改善」に沿ったアプローチ方法を述べたいと思います。
整理、整頓、清掃と武士道そして改善へ
私の小学校の時の記憶では教室の正面に「整理、整頓、清掃」と書かれた額があり、先生から「整理、整頓、清掃」とは何時でも勉強が出来る様に環境を整えておくことだと説明がありました。つまり「整理、整頓、清掃」とは自分の作業道具を常に「整理、整頓」しておき、「清掃」によりワークスペースの確保しておき、何時でも勉強が出来るようにしておくとのことでした。小学校では始業のベルが鳴ったら、直ぐに机について、勉強できるようにしておくように指導されていました。何時でも作業に取りかかれる様に準備しておく「整理、整頓、清掃」の考えは「いざ、鎌倉」の精神に始まると思われます。「整理、整頓、清掃」をビジネスに当てはめると24時間いつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかれるようにという精神で、日本の創意・工夫を含むアイデアを重視する考えです。また、「源義経の鵯越の逆落し」に由来する「夜討ち、朝駆け」もビジネス好機を逃さない精神であり「いざ、鎌倉」と共に日本のビジネス精神の基礎をなしています。「整理、整頓、清掃」は侍が各自の得物を常に手入れをして「いざ」に備える姿勢で、安土桃山時代から戦国時代、江戸を経て、平和な時代になり、武士から職人精神に反映されて、現在まで続いています。大正時代の尋常小學國語讀本にも「鉢木」は登場しており[2]、常に「いざ」に備えることの必要性は語られて来ています。侍の精神である武士道の始まりは奈良時代の743年(天平15年)に「墾田永年私財法」の制定によります。専門武装集団は有力な荘園主や貴族の荘園を守るために出来ました。そして武士とは「貴人の傍らにさぶらふ人から、「侍」つまり「武士」ができたとされています[3]。平安時代に入り、源氏や平家の武将と武士団が出来、更に鎌倉時代に至って、武家政権が誕生することとなりました。そして鎌倉幕府は禅宗に傾倒して、武道、礼儀を重んじる「武士道」が確立されたと考えられます。武士道には以下の3つのポイントがあります。まず、いつでも一大事への準備ができていること。次ぎに自分で改善する、トレーニングを欠かさないこと。そしてコンディションをきちんと保つ摂生 節制 礼節を守ることです。「武士道」では常に一大事に備える準備と得物の手入れが求められました。得物の手入れについては北条重時(1198-1261)が作成した『六波羅殿御家訓』に「腰刀の錆びたる持つべからず~不断に心用心あるべしとあり[4]、得物の手入れと一大事に備えることは武士道の1つであると示されています。貞永元年(1232年)に北条泰時が「御成敗式目」(ごせいばいしきもく)を制定して武家の基本法典が定まりました。「御成敗式目」には守護の職務が「大犯三箇条」(だいぼんさんかじょう)として定められました。大犯三箇条では、守護の職務はまず鎌倉・京都での大番役(おおばんやくとは警固のこと)の招集と指揮監督を行うこと、そして謀反人の捜索と逮捕、殺害人の捜索することでした。つまり守護の職務には警察的な役割があり、日頃の鍛錬と武器の手入れが必要だったと思われます。天文年間(1532年から1555)吾川郡弘岡城主であった吉良宣経(151-1550頃室町時代)の定目(ていもく)にも武士のたしなみとして武具を整備し、武芸の修練に心がけて軍役に精励することと記載されています[4]。そして、守護大名が戦国大名に代わるにつれ、武士道に於ける武勇の必要性が高まって行ったと思われます。
図1 職人の利益の考え方
2.「ものつくり」と「物つくり」に於ける利益の考え方
江戸時代の職人の利益は図1の利益1にあたる部分です。利益1は客の視界にない商品の魅力又は所有欲から得られます。一方、現代のリーン生産システムによる利益は図1の利益2です。利益2はターゲットプライスに対して生産コストを下げることにより得られます。職人は顧客の視界にある製品は顧客が価格を決めてしまうので、利益が得にくいこと、そして自分だけの技術を発揮しにくいことを知っていました。職人言葉にある「簡単な仕事はしない」が職人の利益に対する考え方を物語っています。また、職人は顧客についても、新しいものが好きな顧客を相手にすることを知っていました。今風ですと図2に示すイノベータを相手にすると利益が得られることを職人は知っており、利益を得るために顧客の視界外の製品を作るためにアイデアと「改善」を重視していました。図2に示すM・ロジャースのイノベータ理論によると画期的な新製品、つまりイノベーティブな製品はまず、新しい物好きなイノベータが購入します。イノベータは価格を気にしませんので、売り手は自由に価格設定ができ、利益を得ることができます。いわゆる先駆者利益です。そして製品が成熟して一般化すると客層は最終的には図2の4層目にあるレイトマジョリティに変化します。レイトマジョリティは高度な機能には感心がなく、基本機能がありさえすれば、安いものを購入します。「整理、整頓、清掃」の「整」は古典に「整は正なり」とあり、ゆがんだ形を真っ直ぐにすることが「整」であり「正」とあります。「整」は真っ直ぐにする、不純物を取り除くという語源から[5]、「整理」は乱れたものを整えること、不必要なものを取り除くこととの意味で使われています[1]。一方、「改」の語源は誤りを改めて正しくすることであり、「改善」は「改良」などと同様にreformやimproveの訳語として明治時代に作られた和製漢語であると思われます[3]。「改善」はよい方向へ改めることとして使われています[1]。
図2 エベレト・M・ロジャースのイノベータ理論
3.「3S」と「改善」の広がり
世界の「3S(整理、整頓、清掃)」と「KAIZEN」は利益創出のためのコスト最適化手法であり、利益に関してはバリュー(金銭的価値)を高めることが求められています。
私が図3にあるチェコの計測機械メーカの工場を見学することがあり、見学時に工場長さんから「改善」とリーン生産方式は同じですかと聞かれたことがあります。このことからも海外では「3S」と「改善」はコスト最適化手法として知られているようです。また、チェコのPrague University of Economics and Business大学では図4や図5に示す様に5Sゲームという講義で「改善」や「無駄」を説明しており、「改善」と「無駄」どちらも生産性向上の手法として説明されていました。5Sゲームではレゴの飛行機模型を教材にして、数人でチームを組み効果的な組み立て方法を考え、どのチームが多く組み立てるかを競う講義でした。「整理、整頓、清掃」を略した「3S」は製造現場に限らず、多くの場所で言われている言葉です。一方、「5S」も良く聞く言葉です。「5S」の最後の2つの「S」は「躾」と「清潔」であり、私がHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)に代表される食品関係の仕事をしている時には「躾」とは作業着、エプロン、マスク、帽子を付けてほこりを落としてから食品工場に入ることであり、白線を踏まないなどの職場のルールを守る習慣を身に付けることが「躾」でした。食品工場の「清潔」とは手を石けんで洗い、更にアルコールで消毒すると言う、いわゆる化学的な清掃でした。「清潔」を「5S」を説明する本で調べると「5S」を維持することとあります。また、「清掃」と「清潔」の英語訳は同じ「Cleaning」であり区別がありません。「3S」はいつでも作業に取りかかるための心構えであるのに対して、「5S」は製造現場の心構えに特化しているようです。しかし、海外での「5S」の普及は苦労があるようです。例えば、チェコの友人から次の様な話を聞きました。チェコのある工場で「5S」を実践するとのことで、始業前に出社して作業準備するように指示した所、作業準備は業務の一部であり、対価が支払らわれない作業は作業者に断られたそうです。
4.「整理、整頓、清掃」といざ鎌倉
「整理、整頓、清掃」とはいつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかる心構えであり、「整理、整頓、清掃」は「いざ、鎌倉」の精神に始まると思われます。「いざ、鎌倉」は室町時代に成立した謡曲「鉢木」に出てくる言葉で、鎌倉に何かあればすぐに鎌倉に駆け付けるというものです。当時、すべての武士が鎌倉に住んでいたわけではないので、常に鎌倉での争いへの準備が必要あったことに由来しています。ただ、鎌倉に掛け着けるのは恩賞、つまり利益を得るためであり、「いざ鎌倉」は、主人公の佐野源左衛門常世が、宿を貸した旅僧(旅僧は諸国行脚中の執権北条時頼(最明寺入道)に対して語った「今にても鎌倉に一大事あらば、千切れたりとも具足を着け、錆びたりとも長刀を持ち、痩せたりとも馬に乗り、一番に馳せ参じ、合戦始らば一番に敵と討合ひて死なん覚悟なれど」のセリフが有名な謡曲で、鎌倉で何か騒動が起こったとき御家人たちがすぐに鎌倉に、はせ参じる様子を描いています[6][7][8]。「いざ、鎌倉」が出てくる「鉢木」は室町時代の観阿弥(1334~1384)作又は世阿弥の作と言われており、2度の元寇の後の作です。当時、武士は得物の手入れに余念の無い状況であったと思われます。また、太刀と槍は2度の元寇の後、めざましい性能向上がありました。名刀「正宗」が登場するのもこの時代です。
5.「鉢木」成立の時代背景
「鉢木」からわかるのは、まず鎌倉では騒動が頻発したことと、次ぎに鎌倉に一大事ありと聞けば、諸国の御家人は先を争って馳せ参じ、幕府の着到状(出席簿)に姓名を記録して恩賞を期待していたことです。このようなことは鎌倉時代特有のことで、他の時代にはあまりみられないため、「いざ鎌倉」という言葉は現在まで残ったと考えられます。一大事ありと聞いて、御家人たちが鎌倉に駆けつけたという記述は、鎌倉幕府の歴史書である『吾妻鏡』[4]に散見されます。例えば吾妻鏡の元久2年(1205)にある「畠山重忠、討たれるの」項には「軍勢が由比ヶ浜の辺りを先を争って走った」とあり、先駆けの心がけが表現されています。争いが最も多いのは、源頼朝の時代ではなく、鎌倉中期の北条時頼(1227-1263)の時代です。摂家将軍を追放した上、三浦氏を滅ぼし、北条氏専制政治への道を開いた「時頼」の時代は、いつ何が起こるかわからない不安定な社会状況でした。「時頼」と「いざ鎌倉」には深い関わりがあり、謡曲「鉢の木」は、その史実を反映しているといえます。「鎌倉幕府の歴史を記載した「吾妻鏡」には、源頼朝が挙兵した治承4年(1180)から六代将軍宗尊親王が鎌倉から京都に送還された文永3年(1266)までの歴史を記載しています。「鉢の木」は観阿弥(1334~1384)の作と言われており、「吾妻鏡」の鎌倉武士の精神を反映していると思われます。また、北条幕府に起きた2度に渡る元寇の役も、常に戦闘に備える精神が維持された理由であると思われます。2度に渡る元寇の役とは文永の役(1274)と弘安の役(1281)です。当時、北条時宗(1251-1284)は2度の元の軍を退けました[4]。元寇の役に於ける勝利は北条武士の大きな働きと神風によるものとされています。福岡市の東公園には図6に示す巨大な日蓮聖人の像があり、日蓮聖人がお題目を唱えて2回の元寇を退けた姿があり、神風についても語り継がれています。日蓮聖人は「立正安国論(1260)」を北条時頼(1227-1263)に宛てに送り、外的の襲来を警告したとされており、当時が不安な情勢であったことを示しています。山梨県身延町にある久遠寺宝物館に「立正安国論」は展示されています。2度の元寇は日本の武士の装備にも変化をもたらしました。元軍の真綿を何層も重ねた鎧を当時の軟鉄で作られた太刀では切ることが出来ませんでした。そこで、鎌倉幕府は各地から刀匠を集めて太刀作りを奨励しました。そして刀匠、五郎入道正宗が太刀の製造方法を完成させました。新しい製造方法は軟鉄の鉄に鋼鉄を巻いて、鍛えた後、焼き入れをする工程を繰り返す方法で、良く切れる太刀ができました。名刀正宗です(元寇記念館資料より)。鎌倉幕府後の武士も一大事に備える心意気であったことは土佐の「一領具足」にも見られます。「一領具足」は耕作時に槍の柄に草鞋(わらじ)と兵糧をくくりつけて田の畦(あぜ)に立てておき、有事の時には武装して直ぐさま、駆け付けるという生活でした。「一領具足」に関して土佐物語には「一領具足と申すは、僅かの田地を領して、常には守護へ動仕(きんし)もなく役もなく、己が領地に引き籠り、自らたがやし、くさぎり、諸士の交はりもせされば、礼儀もなく作法もなく、明け暮れ武勇のみを事として、田に出づるにも、鎗の柄に草桂・兵糧を括り付け、田の畔に立て置き、すはと言へば鎌鍬を投げ捨て走り行く。鎧一領にて着替への領もなく、馬一疋にて乗り替へもなく、自身走り廻りければ一領具足と名付けたり。弓・鉄胞・太刀打ちに調練して、死生知らずの野武士なり」とあり[9]、土佐武士は有事の際には戦場に馳せ向い、弓、鉄砲、大刀打に鍛錬をして、勇猛かつ命知らずの野武士であったとあります。「一領具足」は長宗我部元親(1539-1599)が安芸国虎攻めにあたり、兵力増強のために思いついたとされています。「いざ鎌倉」の「いざ」と「一領具足」の「いさ」は一大事に備える鎌倉幕府から戦国時代の武士の共通の心意気でした。
5.鎌倉幕府の「いざ鎌倉」はどこ
「いざ鎌倉」にある鎌倉幕府に始まる、武家政治については、源頼朝が1192年(建久3年)に朝廷から「征夷大将軍」に任命され、鎌倉幕府による鎌倉幕府が始まります。源頼朝は治承4年(1180年)、伊豆で反平氏の軍を挙げた頼朝を討つため京からやってきた平家軍を富士川の戦いで破った後、図7にある鎌倉の大蔵(雪ノ下)の屋敷に入り、鎌倉が武家政権の政治の中心地となりました。頼朝はまず元八幡を現在の鶴岡八幡宮の地に移して町づくりの中心にしました。また頼朝は図8の永福寺(ようふくじ)を建立して、合戦で亡くなった将兵の鎮魂のために建立しました。鎌倉幕府では禅宗が奨励され、「武士道」が成立しました。「武士道」では「鉢木」に描かれた様に常に得物を手入れして、一大事に備えることが必要となりました。
6.職人気質
アイデアが浮かんだ時に直ぐに作業に取りかかるための「整理、整頓、清掃」と理想目標を求める「改善」は日本の職人の精神です。そして、職人はオリジナルな作品を作ることを誇りにしていました。職人は自分の技術を基礎に唯一のもの作りを目指しており、製作した品は商品ではなく、作品です。一方、今日、求められるイノベーティブな商品とはお客の視界にない製品です。21世紀最大のイノベーティブな製品の一つにスマートフォンがあります。スマートフォンの始まりは2007年にスティーブジョブズ氏が発表したiPhoneです。iPhoneは画期的なインターフェースとポインティングデバイスを備えていました。当時のスマートフォンは図9に示すスマートフォンの様に下や横に小さなキーボードを備えた物で、使い勝手は良くありませんでした。また当時の多くの携帯電話は折りたたみ型の電話機であり、俗に言うガラケー電話であり、iPhoneは多くのユーザにとって見たことのない電話でした。しかし、スティーブジョブズ氏にしてみれば、1984年に発表したマッキントッシュでグラフィカルインターフェースとマウスによるポインティングデバイスに関する技術を取得しており、更に、その後のネクスト・ソフトウエアにより優れたグラフィカルインターフェース技術を所有していましたので、スティーブジョブズ氏は自分の持つ技術を用いて電話を進化させることによりiPhoneを開発しました。スティーブジョブズ氏は2007年のiPhone発表時に「電話を再発明した」と語っています。
イノベーティブな製品とはiPhoneからも解る様に自分の持つ技術と他の何かを組み合わせることにより生まれます。イノベーティブな製品開発には自分の持つ技術や道具を明確にすることが必要です。例えば、職人の道具自慢では、「腕のいい大工が道具に凝って稼ぎのほとんどを道具につぎこみ年がら年中素寒貧で..」や、「荒仕工鉋(かんな)...こちとら大工の肝玉をふるい立たせてくれなくちゃいけね」[10]にある通り、職人はいい仕事には自分の技術と良い道具が必要だと知っていました。また職人は、自分の作事の価値について「自分の仕事に自分で値段をつけて、それが売れるようになりまして」[11]とある通り、稼げる製品(作品)には技術とアイデアが必要であり、お客が求めるものだけを作っていたのでは稼げないということは、昔から「日本の職人精神」として伝わってきています。現在、イノベーションやイノベーティブな製品が求められていますが、イノベーティブな製品の創造には職人の「整理、整頓、清掃」と「いざ、鎌倉」の精神が必要です。
7. 製品の魅力の変化とイノベーション
最近、イノベーションと言うことばを良く聞きます。例えば、イノベーションセンターやイノベーション人材養成です。イノベーションとはドラッカー氏やシュンペーター氏の定義では、画期的な製品やサービスの導入により経済に新たな好況局面を創り出すこととあります。従いまして、イノベーションとは必ずしも製品を生み出すことではありません。しかし、イノベーションとはイノベーティブな製品やサービスの創造と考えることが一般的であると思われます。イノベーティブな製品とは、顧客の視界に無い製品であり、定義は次の2つと考えられます。一つは開発者が価格を設定できること、そして2つめはお客さんの財布からお金を捻出してもらうほど、魅力ある製品であることです。例えばお客さんが食費を節約してでも欲しくなるくらい魅力ある製品がイノベーティブな製品です。このカテゴリに入る例は、初期のiPhoneです。しかし、製品はだんだん一般化して、差別化することが難しくなります。製品の差別化が難しくなると価格競争になり、利益を得づらくなっていきます。製品の一般化(コモディティ化)、つまり製品の成熟度が進むに従い、客層も変化します。レイトマジョリティが製品を購入する状況になると、製品の差別化は難しく、価格競争となります。するとメーカは大量生産による薄利多売となり、大規模な生産設備の投資が必要となります。若し、設備投資の時期が失敗すると経営が大変なことになります。例えば液晶ディスプレイが成熟段階の製品だと思われます。仮に画面の精細度が4Kや8Kであって、しかも高品質なスピーカを搭載してもレイトマジョリティには製品の魅力が届かず、差別化にはなりません。最近では、自動車が成熟段階に入っていると思われます。ビジネスとはお金の流れのことであり、お金の流れとは物(もの)やサービスと対価(お金)がループを形成することです。対価とはバリューとも呼ばれ、対価は金額で評価されます。しかし、バリューとは物の機能や性能だけで決まるものではなく、感覚的な要素もあります。例えば、ネームバリューや希少性や野球チーム名を加えるコラボ等があります。「もの」や「物」のバリューは顧客の客層や顧客の主観が大きく影響します。顧客の主観とは客の評価軸のことで製品が持つ評価軸が多いほど、バリューは高まります。リーン生産方式は無駄を省き、シックスシグマは作業を平準化してむりとむらのないマニュアル主義による製造を実現するものです。リーン生産方式では仕様に対するオーバースペックも無駄となります。オーバースペックがイノベータに対する製品の魅力の1つであり、イノベーティブな製品に必要なものですので、仕様主義、コスト主義ではイノベーティブな製品は生まれません。イノベーティブな製品は理想目標を掲げることによりイメージが浮かんできます。そしてアイデアが浮かんだ時に直ぐに試作に取りかかるためには「整理、整頓、清掃」が必要です。そして、より良いものを作るには良い道具が必要です。そしてアイデアを試すためのワークスペースの確保が必要です。この精神を簡単にしたものが日本の「整理、整頓、清掃」と「改善」です。
謝辞
本書の作成あたり、助言と貴重な情報を頂いた鎌倉市鎌倉歴史文化交流館殿とオーテピア高知図書館の横山 有弐氏に感謝申し上げます。
参考文献
[1] 岩波国語辞典、岩波書店、2019
[2] 尋常小學國語讀本 卷1、文部省、1918(大正7年)国立国会図書館デジタルコレクション
[3] 新明解語源辞典、小松寿雄, 三省堂、2011
[4] 吾妻鏡 西田友広、角川文庫、2021
[5] 漢字語源語義辞典、加納喜光、1940
[6] 明治の源流, 平泉澄、時事通信社、1970 国立国会図書館 デジタルコレクション
[7] 鉢木 国立国会図書館デジタルコレクション
[8] 駒とめて袖うちはらう-謡曲「鉢木」考 森延哉 (株)文芸社 2010
[9] 長宗我部元親 その謎と生涯、山本大(やまもと たけし)、新人物往来社、2010
[10] 続江戸職人綺譚、佐江衆、新潮文庫、2003
[11]職人、永六輔、岩波書店、1996
チェコでの「5Sゲーム」講義見学
主要項目ヒット ヒット: 17 開く 保存
状況
チェコのプラハ経済大学にて、レゴの飛行機模型を用いた「5Sゲーム」の講義を見学した。
行動
制限時間内にどれだけ多く組み立てられるかを競う生産性向上の手法として、明確な目標設定がなされている様子を観察した。
関連ルール: A-34: 生産 E-1: 明
結果
海外における「5S」や「KAIZEN」が、対価を伴う業務規則やコスト最適化手法として定着していることを確認した。
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【分析:状況】
チェコのプラハ経済大学にて、レゴの飛行機模型を用いた「5Sゲーム」の講義を見学した。
【分析:行動】
制限時間内にどれだけ多く組み立てられるかを競う生産性向上の手法として、明確な目標設定がなされている様子を観察した。
【分析:結果】
海外における「5S」や「KAIZEN」が、対価を伴う業務規則やコスト最適化手法として定着していることを確認した。
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【本文】
整理、整頓、清掃と改善の起源といざ鎌倉
The origins of the Sort, Tidy, Cleaning, Kaizen and Kamakura
持田 信治*
Shinji Mochida
「整理、整頓、清掃」は「改善」と共に日本の製造業の基本姿勢である。しかし、最近の製造業の「5S」と「改善」は単なるコストダウンの手法として理解されている。そこで、本書は「整理、整頓、清掃、改善」の起源が「いざ鎌倉と職人気質」にあることを述べた後、古来の「整理、整頓、清掃、改善」と近年の「5Sと改善」とを比較する。そして、「いざ鎌倉と職人気質」から今後のイノベーション推進のヒントを得たので報告する。
キーワード:5S、改善、リーン生産システム、イノベーション
Ⅰ.はじめに
概要
 筆者は2016年の夏にチェコのビンペルクにある精密機械製造工場を見学する機会があり、見学の最後に工場長から「リーン生産方式と改善は同じか」との質問を受けた。筆者は当時、「リーン生産方式」と「改善」は別ものであると理解しており、答えに窮した。「リーン生産方法」は代表的な生産方法の一つで、仕様を満たす範囲でコストダウンを計り利益を得る生産方法である。製造方法には漢字の「物つくり」とひらがなの「ものつくり」があり、漢字の「物つくり」は仕様が決まった「有体物」を作る方法であり、仕様を満たす範囲で安く作ることが求められる。欧米での生産方法の基本的な考え方は「リーン生産方法」に代表される「物つくり」である。「リーン生産方法」は仕様を満たす範囲で安く作る仕様第一主義である。欧米では「リーン生産方法」と「KAIZEN」は同じであり、「KAIZEN」はコストダウンの手法として理解されている。一方、ひらがなの「ものつくり」は辞書には「物」以外のものを作ることとある1)。「ものつくり」は仕様が決まっていない理想製品を作る、挑戦的な「ものつくり」である。「ものつくり」は理想製品作りを目指す終わりのない挑戦的な創作活動であり、最高の「改善」とアイデアが必要である。従って、日本古来の「改善」や「ものつくり」は、仕様第一主義の欧米の「物つくり」とは対局に位置する。「物つくり」は安い部品で、なるべく簡単に組み立てられる安い製造方法を目指している。日本古来の「改善」は職人言葉「細工は流々仕上げを御覧じろ」に代表される行動様式であり、アイデアを生かすためには、アイデアが浮かべば直ぐに試行錯誤を行うことが必要であり、直ぐに作業に取りかかるためには「整理、整頓、清掃」による整えられた作業環境と常に作業に取りかかれる姿勢が必要である。常に作業に取りかかれる姿勢は「いざ鎌倉」である。「いざ鎌倉」は謡曲「鉢の木」に出てくる言葉で室町時代から戦国時代を経て現代まで伝わっている言葉である。「整理、整頓、清掃」と「改善」は戦国時代から平和な江戸時代に入ると職人の精神となった。そこで、本書は「整理、整頓、清掃」と「いざ鎌倉」の起源を探りつつ、欧米に広がる有体物を作る「KAIZEN」と日本の理想目標を目指す「改善」の違いを述べる。そして、今後のイノベーション推進に向けた「整理、整頓、清掃」と「改善」に沿ったアプローチ方法を考察する。「整理、整頓、清掃」の略称は「3S」であり、「整理、整頓、清掃、清潔、躾」の略称は「5S」である。一般的には「5S」は「3S」を拡張したものと理解されている。しかし本書では日本古来の何時でも行動を起こす準備をしておく姿勢を「改善」と「整理、整頓、清掃」として記述する。一方、欧米の製造業に於ける効率化を目指す姿勢を「KAIZEN」と「5S」と記述する。
Ⅱ.整理、整頓、清掃と武士道そして改善へ
1.武士道と整理、整頓、清掃
筆者の記憶では小学校の教室の正面に「整理、整頓、清掃」と書かれた額があり、先生から「整理、整頓、清掃」とは何時でも勉強が出来る様に環境を整えておくことだとの説明があった。つまり「整理、整頓、清掃」とは自分の作業道具を常に「整理、整頓」しておき、「清掃」によりワークスペースを確保しておき、何時でも勉強が出来るようにしておくとのことであった。何時でも作業に取りかかれる様に準備をしておく「整理、整頓、清掃」の考えは「いざ、鎌倉」の精神に始まる。「整理、整頓、清掃」は昼夜いつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかるという精神で、日本の創意・工夫とアイデアを重視する考えの基礎となっている。また、「源義経の鵯越の逆落し」に由来する「夜討ち、朝駆け」もビジネス好機を逃さない精神であり「いざ、鎌倉」と共に日本のビジネス精神の基礎をなしている。「整理、整頓、清掃」の精神は侍が各自の得物を常に手入れと鍛錬を怠らず「いざ」に備える姿勢で、安土桃山時代から戦国時代、江戸を経て、武士から職人の精神に反映されて、現在に至っている。常に「いざ」に備える姿勢が「いざ鎌倉」であり、「いざ鎌倉」は鎌倉時代の謡曲「鉢木」に出てくる言葉である。大正時代の尋常小學國語讀本にも「鉢木」は登場しており2)、明治から大正時代にかけても常に「いざ」に備えることの必要性は語られていたことが解る。いつでも一大事への準備ができていることは近代の「出船の精神」にも受け継がれている。武士は奈良時代の743年(天平15年)に「墾田永年私財法」が制定されたことにより始まった。私有地が認められたことにより、有力な荘園主や貴族は荘園を守るために武装集団が必要となり、荘園を守るための専門武装集団が発生した。そして、「貴人の傍らにさぶらふ人」から、「侍」つまり「武士」ができた3)。平安時代に入り、源氏や平家の武将と武士団が出来た。更に鎌倉時代に至って、武家政権が誕生することとなり、鎌倉幕府は禅宗に傾倒して、武道、礼儀を重んじる「武士道」が確立された。武士道の中心的精神は以下の3点である。まず、いつでも一大事への準備ができていること。次ぎに自分を改善するために鍛錬を欠かさないこと。そしてコンディションをきちんと保つ「摂生」「 節制」「 礼節」を守ることである。そして、「武士道」では常に一大事に備える準備と得物の手入れが求められた。例えば、得物の手入れについては北条重時(1198-1261)が作成した『六波羅殿御家訓』に「腰刀の錆びたる持つべからず、~不断に心用心あるべしとある」4)。得物の手入れと鍛錬を怠らず、一大事に備えることは武士道の中心的精神であった。武士が武道を重んじて、武器の手入れと鍛錬に余念がなかった理由として、武士は戦闘集団であったことと、武士には警備の役目があったことがある。具体的には、貞永元年(1232年)に北条泰時が「御成敗式目」(ごせいばいしきもく)を制定して武家の基本法典が定まり、守護の職務が「大犯三箇条」(だいぼんさんかじょう)として定められたことによる。大犯三箇条では、守護の職務は、まず鎌倉・京都での大番役(おおばんやく:警固のこと)の招集と指揮監督を行うこと、そして謀反人の捜索と逮捕、殺害人の捜索することであった。つまり守護の職務には警備の役割があり、日頃の鍛錬と武器の手入れが必要であった。また、天文年間(1532年から1555年)に吾川郡弘岡城主であった吉良宣経(1514-1550頃)の定目(ていもく)にも武士のたしなみとして武具を整備し、武芸の修練に心がけて軍役に精励することと記載されている4)。そして、守護大名が戦国大名に代わるにつれ、武士道に於ける武勇の必要性が高まって行った。武勇の高まりに合わせて、日頃の得物の手入れと鍛錬を怠らず、常にいざに備える「整理、整頓、清掃」の武士道の姿勢が確立された。
2. 「ものつくり」と「物つくり」に於ける利益の考え方
武士道は自分を高め、精進することが基本であり、「整理、整頓、清掃」は武士道に由来している。時代が平和な江戸時代になり、自分を高め、精進する「整理、整頓、清掃」の精神は職人に広がって行った。職人の利益は各自の技術とアイデアに基づいていた。例えば、一般的な製品の価格は製品に要求される基本機能(図1のG)に顧客からの高度な要求(図1のH)を加えた製品の妥当な仕様(図1のD)に応じて設定される。そこで、製造者はコストダウン手法、例えばLean production system手法等を使用して得た製品コスト(図1のE)と製品の妥当な価格(図1のG)との差を得て利益(図1のH)を確保する。つまり、妥当な製品仕様(図1のD)を維持する範囲で製作時間(図1のJ)が進むに沿ってコストダウンを図ることが「KAIZEN」であり、「KAIZEN」はより安く製品を作る方法を追求する。具体的には「KAIZEN」は作業の単純化と作業の一律化を進め、製作マニュアルを作成して、人件費の安い作業者を使用できるようにしたり、製品をより簡単な作りにしたりして、コストダウンを追求する。一方、古来の職人は顧客の視界にある製品は顧客が価格を決めてしまうので、類似品との価格競争となり、利益が得にくいこと、そして自分の持つ技術を発揮し難いことを知っており、より自分の技術が生かせる創造的な仕事を目指した。例えば、職人言葉にある「簡単な仕事はしない」が職人の利益に対する考え方を物語っている。また「細工は流々、仕上げをご覧じろ」は、作品の製作技術は職人別であり、仕上げで勝負することを示している。職人は製品ではなく、職人は自らの技術とアイデアを用いて、顧客の視界を超えた作品を製作して、顧客の所有欲を満足させることにより高い利益を得ていた(図1のF)。図2にM・ロジャースのイノベータ理論を示す。図2は顧客全体を100%として、客層別の割合を模式的に示している。職人は、図2に示すイノベータを相手にすると利益が得られることを知っていた。画期的な製品、つまりイノベーティブな製品はまず、新しい物好きなイノベータが購入する。イノベータは価格を気にしないので、売り手は自由に価格設定ができ、利益を得る。いわゆる先駆者利益である。そして製品が成熟して一般化すると客層は最終的には図2の4層目にあるレイトマジョリティに変化する。レイトマジョリティは高度な機能には感心がなく、基本機能がありさえすれば、より安いものを購入する。
図1 職人の利益の考え方
図2 エベレト・M・ロジャースのイノベータ理論 (理論に基づき筆者作成)
3.「整理、整頓、清掃」と「改善」の広がり
日本古来の「整理、整頓、清掃」と「改善」は理想目標を目指す。例えば、「整理、整頓、清掃」の「整」は古典に「整は正なり」とあり、ゆがんだ形を真っ直ぐにすることが「整」であり「正」である。更に「整」は真っ直ぐにする、不純物を取り除くという語源から5)、「整理」は乱れたものを整える、または不必要なものを取り除くとの意味である6)。一方、「改」の語源は誤りを改めて正しくすることであり、「改善」は「改良」などと同様にreformやimproveの訳語として明治時代に作られた和製漢語である3)。つまり、「整理、整頓、清掃」や「改善」はよい方向へ改めることであり、終わりのない活動である1)。ただし、「改善」は先に述べた様に明治時代に作られた言葉であるため、武士道では精進などと呼ばれたと思われる。精進は大乗仏教の六波羅蜜修行の4番目の修行であり、悟りを目指す終わりのない活動である3)。一方、海外で使われている「5S」と「KAIZEN」は利益創出のためのコスト最適化手法であり、バリュー(金銭的価値)を高めることを求めており、明確に目標利益の創出を目指す活動である。筆者は図3に示すチェコの計測機械メーカの工場を見学する機会があり、工場長の話から海外では「改善」はコスト最適化手法として知られていることが理解できた。また、チェコのプラハ経済大学(Prague University of Economics and Business)にて5Sゲームという講義を見学した(図4参照)。講義では「改善」と「無駄」どちらも生産性向上の手法として説明されており、目標は明確であった。具体的には5Sゲームではレゴの飛行機模型を教材にして、数人でチームを組み効果的な組み立て方法を考え、どのチームがある制限時間内に多く組み立てるかを競う講義であった。
図3 チェコのビンペルクにあるローデ・シュワルツの工場(筆者撮影)
図45Sゲーム講義の様子 その1(筆者撮影)   5Sゲーム講義の様子 その2(筆者撮影)
海外では「5S」も広く知られており、「5S」の最後の2つの「S」は「躾」と「清潔」である。筆者がHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)に係わる食品関係の業務に従事している時には、「躾」とは作業着、エプロン、マスク、帽子を付けてほこりを落としてから食品工場に入ることであり、白線を踏まないなどの職場のルールを守る習慣を身に付けることが「躾」であった。そして、食品工場の「清潔」とは手を石けんで洗い、更にアルコールで消毒を行う、いわゆる化学的な清掃であった。「清潔」を改善活動の本で調べると「5S」を維持することとある。また、「清掃」と「清潔」の英語訳は同じ「Cleaning」であり区別がない。日本の「整理、整頓、清掃」はいつでも作業に取りかかるための心構えであるのに対して、海外で広がる「5S」は製造現場のルールとなっている。心構えは個人の行動指針であるのに対して、ルールは業務の規則である。例えば、チェコのある工場で「5S」を実践するとのことで、始業前に出社して作業準備するよう要請した所、作業準備は業務の一部であり、対価が支払らわれない作業はできないと作業者に断られたそうである。理想を求める「改善」と「整理、整頓、清掃」の自主的心構えは、明確な額の利益を追求する「KAIZEN」と対価が必要な「5S」とは全く別である。
4.整理、整頓、清掃」といざ鎌倉
「整理、整頓、清掃」とはいつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかる心構えであり、「いざ鎌倉」の精神に由来する。「いざ鎌倉」は室町時代に成立した謡曲「鉢木」に出てくる言葉で、鎌倉に何かあればすぐに鎌倉に駆け付けるというものである。当時、すべての武士が鎌倉に住んでいたわけではないため、常に鎌倉での争いへの準備が必要であったことが「いざ鎌倉」であった。ただ、鎌倉に駆けつけるのは恩賞、つまり利益を得るためであり、「いざ鎌倉」は利益のためであった。謡曲「鉢木」の主人公の佐野源左衛門常世が、宿を貸した旅僧(諸国行脚中の執権北条時頼(最明寺入道))に対して語った言葉に「今にても鎌倉に一大事あらば、千切れたりとも具足を着け、錆びたりとも長刀を持ち、痩せたりとも馬に乗り、一番に馳せ参じ、合戦始らば一番に敵と討合ひて死なん覚悟なれど」がある。この有名な言葉は当時の御家人は、鎌倉で何か騒動が起こったときには、すぐに鎌倉にはせ参じる体勢であったことを現している6)7)8)。「いざ鎌倉」の言葉が登場する「鉢木」は室町時代の観阿弥(1334~1384)作又は世阿弥の作と言われており、2度の元寇の後の作品である。元軍侵攻の頃、武士は一大事に備えて、得物の手入れと鍛錬に余念の無い状況であった。当時、鎌倉幕府は刀鍛冶を鎌倉に集める等、日本刀の製造を支援した。そして、太刀と槍は2度の元寇の後、めざましい性能向上があり、名刀「正宗」が登場するのもこの時代である。
5.「鉢木」成立の時代背景
「鉢木」からわかるのは、まず鎌倉では騒動が頻発したことと、次ぎに鎌倉に一大事ありと聞けば、諸国の御家人は先を争って馳せ参じ、幕府の着到状(出席簿)に姓名を記録して恩賞を期待していたことである。このようなことは鎌倉時代特有のことで、他の時代にはあまりみられないため、一大事に備える言葉として、「いざ鎌倉」という言葉は現在まで残ったとも考えられる。一大事ありと聞いて、御家人たちが鎌倉に駆けつけたという記述は、鎌倉幕府の歴史書である『吾妻鏡』4)に散見される。例えば吾妻鏡の元久2年(1205)にある「畠山重忠、討たれるの」項には「軍勢が由比ヶ浜の辺りを先を争って走った」とあり、先駆けの様子が表現されている。しかし、争いが最も多いのは、源頼朝の時代ではなく、鎌倉中期の北条時頼(1227-1263)の時代であった。北条時頼は摂家将軍を追放した上、三浦氏を滅ぼし、北条氏専制政治への道を開いた。「時頼」の時代は、いつ何が起こるかわからない不安定な社会状況であった。謡曲「鉢の木」には北条時頼が登場することから「いざ鎌倉」は、当時の不安定な史実を反映している。「鎌倉幕府の歴史を記載した「吾妻鏡」には、源頼朝が挙兵した治承4年(1180)から六代将軍宗尊親王が鎌倉から京都に送還された文永3年(1266)までの歴史を記載している。一方、「鉢木」は観阿弥(1334~1384)の作と言われており、「鉢の木」は「吾妻鏡」の後の作であるため、鎌倉武士の精神の全体像を反映していると言える。また、北条幕府に起きた2度に渡る元寇の役も、常に戦闘に備える精神である「いざ鎌倉」が維持された理由と考えられる。2度に渡る元寇とは文永の役(1274)と弘安の役(1281)であり、当時、北条時宗(1251-1284)は2度の元の軍を退けた。元寇の役に於ける勝利は北条武士の大きな働きと神風によるものとされている4) 。福岡市の東公園には元寇を退けたとされる日蓮聖人の像(図5参照)があり、日蓮聖人の神風は現在まで語り継がれている。日蓮聖人は「立正安国論(1260)」を北条時頼(1227-1263)に宛てに送り、外的の襲来を警告したとされており、「立正安国論」も当時が不安定な情勢であったことを示している。2度の元寇は日本の武士の装備にも変化をもたらした。元軍の鎧は真綿を何層も重ねた構造であり、当時の軟鉄で作られた武士の太刀では切ることが出来なかった。そこで、鎌倉幕府は各地から刀匠を集めて太刀作りを奨励した。そして刀匠、五郎入道正宗がついに日本刀の製造方法を完成させた。日本刀の製造方法は軟鉄の鉄に鋼鉄を巻いて、鍛えた後、焼き入れをする工程を繰り返す方法であり、良く切れるが、折れない日本刀が完成した。名刀正宗の完成である(元寇記念館資料より)。鎌倉幕府後の武士にも一大事に備える心意気があったことは土佐の「一領具足」にも見られる。「一領具足」は半農の武士であり、長宗我部元親(1539-1599)が安芸国虎攻めにあたり、兵力増強のために思いついた武士の身分である。「一領具足」は耕作時に槍の柄に草鞋(わらじ)と兵糧をくくりつけて田の畦(あぜ)に立てておき、有事の時には武装して直ぐさま、駆け付けるという生活であり、土佐物語には「一領具足と申すは、僅かの田地を領して、常には守護へ動仕(きんし)もなく役もなく、己が領地に引き籠り、自らたがやし、くさぎり、諸士の交はりもせされば、礼儀もなく作法もなく、明け暮れ武勇のみを事として、田に出づるにも、鎗の柄に草桂・兵糧を括り付け、田の畔に立て置き、すはと言へば鎌鍬を投げ捨て走り行く。鎧一領にて着替への領もなく、馬一疋にて乗り替へもなく、自身走り廻りければ一領具足と名付けたり。弓・鉄胞・太刀打ちに調練して、死生知らずの野武士なり」とある9)。「一領具足」は有事の際には戦場に馳せ向い、弓、鉄砲、大刀打に鍛錬をして、勇猛かつ命知らずの野武士であった。「いざ鎌倉」の「いざ」と「一領具足」の「すは」は一大事に備える鎌倉幕府から戦国時代の武士の共通の心意気であった。
6.鎌倉幕府の「いざ鎌倉」はどこに
鎌倉幕府に始まる武家政治は、源頼朝が1192年(建久3年)に朝廷から「征夷大将軍」に任命され、鎌倉幕府を開いたことから始まる(*所説あり)。源頼朝は治承4年(1180年)、伊豆で反平氏の軍を挙げた頼朝を討つため京からやってきた平家軍を富士川の戦いで破った。そして源頼朝は図6にある鎌倉の大蔵(雪ノ下)の屋敷に入り、鎌倉が武家政権の政治の中心地となった。更に源頼朝は図7に示す元八幡を現在の鶴岡八幡宮の地に移して町づくりの中心とした。最初の幕府は大倉幕府(1180-1225)であり、次に幕府は宇都宮辻子幕府(1225-1236)となり、更に幕府は若宮大路幕府(1236-1333)へと変わった。また頼朝は図8の永福寺(ようふくじ)を建立して、合戦で亡くなった将兵の鎮魂のために建立した。鎌倉幕府では禅宗が奨励され、「武士道」の精進の精神が成立した。そして、「武士道」は「鉢木」に描かれている様に常に得物を手入れと鍛錬を怠らず、一大事に備えることが基本姿勢となった。  
図6幕府跡(左から大倉幕府、宇都宮辻子幕府、若宮大路幕府)(筆者撮影)
図7元八幡 (筆者撮影)         図8永福寺跡 (筆者撮影)
7.職人気質
「整理、整頓、清掃」はアイデアが浮かんだ時に直ぐに作業に取りかかる精神であり、「改善」と共に、唯一の作品を求める日本古来の職人の精神である。一方、イノベーティブな商品も顧客の視界にない、唯一の製品である。21世紀最大のイノベーティブな製品の一つにスマートフォンがある。現在のスマートフォンの原型は2007年にスティーブ・ジョブズ氏が発表したiPhoneである。iPhoneはタッチパネルとグラフィカルインターフェースを備えていた。初期のスマートフォンは図9に示す様に下や横に小さなキーボードを備えた物で、使い勝手は良くなかった。また当時の多くの携帯電話は折りたたみ型の電話であり、iPhoneは多くのユーザにとって見たことのない電話であった。しかし、iPhoneのグラフィカルインターフェースは1984年にAppleが発表したマッキントッシュで採用されており、更にマッキントッシュはパーソナルコンピュータでは初めて、ポインティングデバイスとしてマウスを採用していた。そして、スティーブ・ジョブズ氏はグラフィカルインターフェース技術を電話に転用することによりiPhoneを完成させた。iPhone発表時にスティーブ・ジョブズ氏は「電話を再発明した」と語った様に当時の電話のイメージは一変してスマートフォンとなった。イノベーティブな製品とはiPhoneの様に各自の固有技術と他の何かを組み合わせることにより生まれる。従ってイノベーティブな製品開発には各自の固有技術を基礎にして、理想目標を実現することが求められる。例えば、続江戸職人綺譚10)に登場する江戸時代の職人の道具自慢話では、「腕のいい大工が道具に凝って稼ぎのほとんどを道具につぎこみ年がら年中素寒貧で・・」や、「荒仕工鉋(かんな)・・こちとら大工の肝玉をふるい立たせてくれなくちゃいけね」にある通り、職人は理想の作品を製作するために、己の技能の修練と技術を発揮するための道具の手入れに余念がなかった。また職人は、「自分の仕事に自分で値段をつけて、それが売れるようになりまして」11)とある通り、稼げる製品には技術とアイデアが必要であり、お客が求めるものだけを作っていたのでは稼げないことを知っていた。つまり、古来の職人はイノベーティブな製品を目指していた。イノベーションやイノベーティブな製品の創造には古来の職人気質と「整理、整頓、清掃」と「いざ鎌倉」の精神が必要である。
図9 キー付スマートフォン (筆者撮影)
8.製品の魅力の変化とイノベーション
ドラッカー氏やシュンペーター氏によるイノベーションの定義では、画期的な製品やサービスの導入により経済に新たな好況局面を創り出すこととある。つまり、イノベーションとは必ずしも製品を生み出すことではなく、販売方法やサービスも含まれる。しかしイノベーティブな製品に限ると、イノベーティブな製品の定義は次の2つである。一つは開発者が価格を設定できること、そして2つめは顧客の視界に無い製品であり、顧客は自分の財布からお金をやりくりしても捻出するほど、魅力ある製品であること。例えば顧客が食費を節約してでも欲しくなるくらい魅力ある製品がイノベーティブな製品である。本カテゴリに入る例は、初期のiPhoneである。しかし、製品は次第に一般化して、差別化することが難しくなる。製品の差別化が難しくなると価格競争になり、利益を得づらくなっていく。つまり製品の一般化(コモディティ化)が進む。一方、製品の成熟度が進むに従い、客層も変化する。図2のレイトマジョリティが製品を購入する状況になると、製品の差別化は難しく、価格競争となる。するとメーカは大量生産による薄利多売となり、大規模な生産設備の投資が必要となる。しかし、設備投資の時期を見誤ると経営的な大打撃を受ける。例えば液晶ディスプレイが成熟段階の製品であり、画面が精細度であったり、高品質なスピーカを搭載したりしていても、レイトマジョリティには製品の魅力が届かず、差別化にはならない。最近では、車が成熟段階に入っている。ビジネスとは、物やサービスの流れと対価がループを形成することである。対価は金額で評価されバリューとも呼ばれる。しかし、バリューは物の機能や性能だけで決まるものではなく、感覚的な要素にも左右される。バリューを左右する要因として、例えば、ネームバリューや希少性やコラボレーションがある。製品のバリューには顧客の主観が大きく影響する。筆者が商品に対する価値観の調査から、顧客の主観とは客の評価軸のことで製品が持つ評価軸が多いほど、バリューは高まることが解った11)。例えば、図10に元の製品と野球チーム名を冠したコラボ製品と他社の製品のバリューを示す。野球チーム名を冠したコラボ製品は価格が上がる分、価格の評価は下がる。しかしコラボ製品は満足性や楽しさ・記念度が上がるため、価値の大きさを示すグラフの大きさは元の製品を上回り、結果的に販売増が期待できる。最近の製造業で主流となっているリーン生産方式は無駄を省いてコストダウンを図る。また製造業で採用されているシックスシグマは作業を平準化して、むりとむらのないマニュアル主義による製造を実現して、コストダウンと歩留まりの向上を図る。リーン生産方式では仕様に対するオーバースペックも無駄となる。しかし、オーバースペックはイノベータに対する製品の魅力の1つであり、イノベーティブな製品に必要なものである。仕様第一主義、コスト第一主義ではイノベーティブな製品は生まれない。理由は仕様第一主義、コスト第一主義では顧客の主観に響かないからである。顧客の主観を刺激するイノベーティブな製品は理想目標を掲げることによりイメージが浮かぶ、そして、アイデアが浮かんだ時に直ぐに試作に取りかかるためには「整理、整頓、清掃」が必要である。イノベーティブな製品を生みだす姿勢を表現したものが日本の「整理、整頓、清掃」と「改善」である。
図10 製品の評価軸と評価の様子 (筆者作成)
謝辞
本書の作成あたり、助言と貴重な情報を頂いた鎌倉市鎌倉歴史文化交流館殿とオーテピア高知図書館の横山 有弐氏に感謝申し上げる。
引用文献
1) 岩波国語辞典、岩波書店、2019
2)尋常小學國語讀本1918(大正7年)卷1,文部省、国立国会図書館デジタルコレクション
3) 小松寿雄,新明解語源辞典,三省堂,2011
4) 西田友広,吾妻鏡,角川文庫,2021
5) 加納喜光,漢字語源語義辞典,1940
6) 平泉澄,明治の源流,時事通信社、国立国会図書館 デジタルコレクション,1970
7) 鉢木,国立国会図書館デジタルコレクション
8) 森延哉,駒とめて袖うちはらう-謡曲「鉢木」考,(株)文芸社,2010
9) 山本大(やまもと たけし),長宗我部元親 その謎と生涯,新人物往来社,2010
10) 佐江衆,続江戸職人綺譚,新潮文庫,2003
11) 永六輔,職人,岩波書店,1996
12) 持田信治,心理的価値評価によるパッケージデザイン,第67回 日本経営システム学会 全国研究発表大会予稿集,pp148-149,2021
トヨタ自動車のジャスト・イン・タイム導入
主要項目ヒット ヒット: 11 開く 保存
状況
織機工場の組立ラインにおける流れ作業の経験を、自動車製造に応用する必要があった。
関連ルール: N-1: 工場
行動
豊田喜一郎が挙母工場にて流れ作業を導入し、各工程の同期化を目指す「ジャスト・イン・タイム」の考えを提唱した。
関連ルール: N-1: 工場
結果
生産システムにおけるムダ・ムラ・ムリを排除するトヨタ生産方式の基礎が築かれた。
関連ルール: A-34: 生産
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詳細コンテキスト
【分析:状況】
織機工場の組立ラインにおける流れ作業の経験を、自動車製造に応用する必要があった。
【分析:行動】
豊田喜一郎が挙母工場にて流れ作業を導入し、各工程の同期化を目指す「ジャスト・イン・タイム」の考えを提唱した。
【分析:結果】
生産システムにおけるムダ・ムラ・ムリを排除するトヨタ生産方式の基礎が築かれた。
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【本文】
令和7年6月28日
戦国の世に生きる武士として軍務に精進する、が、かれらは法によって規制されており、武具を整備し、武芸の修練に心がけて軍役に精励しなけれなければならなかった。このような傾向はすでに早く、天文ころ吾川郡弘岡城主であった吉良宣経(151-1550頃:室町時代)の定目にあり。すなわち、 田地二町以上耕作する百姓には武具を与が、かれらは法によって規制されており、武具を整備し、武芸の修練に心がけて軍役に精励しなけれならかった。
山本大(やまもと たけし). 長宗我部元親 その謎と生涯
山本大. 長宗我部元親 (新人物文庫) . KADOKAWA / 中経出版. Kindle 版. (新人物文庫) . KADOKAWA / 中経出版. Kindle 版. 2014 新人物往来社 2010
室町時代(1932―1573)天文年間(1532年から1555).
令和7年6月26日
鉄と鋼の違いは、主に炭素含有量によって分類されます。 刃物に使用される鋼(ハガネ)は炭素含有量が0.08〜2.0%で、それ以下の材料は鍛鉄または軟鉄と呼ばれ、柔らかく、焼き入れしても硬化しない材料です。 鋼(ハガネ)以上に炭素(C)を含む材料は銑鉄または鋳鉄で、硬く脆いので鋳物の材料などに使用されます。
正宗は、1264年(弘長4年/文永元年)、鎌倉鍛冶の名工「藤三郎行光」(とうさぶろうゆきみつ)の子として生まれました。1280年(弘安3年)に17歳で父親と別れ、「新藤五国光」(しんとうごくにみつ)の門下に入ります。ここで作刀秘術を習得。その後、山城国(現在の京都府南部)、備前国(現在の岡山県東南部)、伯耆国(現在の鳥取県中西部)など、刀の生産地を行脚して、各地の技術を研究。ついに「相州伝」(そうしゅうでん)を完成させます。相州伝の刀は、薄いながらも強度抜群の刀身が特徴であり、これは、刀の常識を一変させる革新的な鍛法でした。
正宗による相州伝の完成は、時代背景と密接に関係しています。正宗が刀工としての道を歩み始めた時期は、いわゆる「元寇[蒙古襲来]」(げんこう[もうこしゅうらい])の時期と重なっています。外国からの侵略という未曽有の事態となった日本では、これまでになく自国の防衛意識が上昇。これを受けて武を貴ぶ気風が盛り上がり、併せて刀のあり方が問われるようになったのです。
武士達が求めたのは豪壮にして実用に耐え、武運を強くしてくれる1振でした。こうした動向の中、五郎入道正宗が相州伝を完成させるのです。相州伝は硬軟の「地鉄」(じがね)を組み合わせ、「地景」(ちけい)や「金筋」(きんすじ)など刃中の働きと、「湾れ刃」(のたれば)を基調とした大模様の刃文による「沸」(にえ)の美しさを強調する作風です。これにより、刀身の強度向上はさることながら、刃文の躍動感が一気に増しました。「山城伝」(やましろでん)の「粟田口派」(あわたぐちは)による伝統を継承した、整った「直刃」(すぐは)ではなく、荒々しい波濤(はとう:大きな波)のような刃文を刀身に表現したのです。この雄渾(ゆうこん:雄大で勢いが良いこと)さが、武運長久を希求する鎌倉武士達の琴線に触れ、正宗は、一躍著名な刀工となったのです。
以後、正宗の作風は全国に影響を及ぼし、後世に言う「正宗十哲」(まさむねじってつ)が生まれます。これは、正宗の影響を強く受けた10人の刀工のこと。正宗十哲のすべてを正宗門下と認めるのは困難ですが、「沸出来」(にえでき)を強調している点は共通しています。正宗十哲によって新しい作刀技術は日本全国に拡大し、のちに「新刀」や「新々刀」(しんしんとう)が誕生する原動力となるのです。
このように、五郎入道正宗の登場により、日本における刀の歴史は大きく転換しました。このため正宗は、「日本刀中興の祖」と位置付けられています。正宗はその後、行光に学んだ相州伝の技法をもとに、さらに品質を高めた刀を作刀するために研究を重ねます。
その動機のひとつとなったのが、1274年(文永11年)と1281年(弘安4年)の2度に亘り、「元」(げん)と称する旧モンゴル帝国から軍勢が襲来した「元寇」(げんこう)です。
このとき元軍は、その当時、一騎打ちが主流であった日本とは異なる集団戦であったり、火薬を使った武器で攻撃したりするなど、それまでの日本では見ることがなかった戦法を用いていました。元寇では最終的に、鎌倉幕府軍が勝利を収めましたが、さらなる外国からの侵攻に備えて、美しいだけでなく、より強靭である実用華美な刀が求められるようになったのです。
正宗は苦心の末、「折れず、曲がらず、良く切れる」と評される刀を作刀することに成功。地刃ともに強い相州伝の伝法を完成させました。
そこで、鎌倉幕府5代執権「北条時頼」(ほうじょうときより)が、全国から刀工達を呼び寄せます。その刀工とは、建長年間(1249~1256年)に、山城国の「粟田口国綱」(あわたぐちくにつな)、及び備前国(現在の岡山県東南部)の「備前三郎国宗」(びぜんさぶろうくにむね)の2名。
五箇伝から輩出された日本刀の名工は、数多くの名刀を鍛え上げました。しかし、江戸時代になると日本刀の需要が激減。刀工達は、「打ち刃物」(うちはもの:高温に熱した軟鉄と鋼などを打って形にする製法)と呼ばれる包丁や鎌、ノコギリ、ナタなどの農業用刃物の需要を求め、地方に広がっていきます。さらに、明治時代の「廃刀令」によって、ほとんどの刀工が日本刀から業務用、及び家庭で使われる刃物づくりに転業しました。
気候に恵まれた高知県は、県民ひとりあたりの森林占有率が日本一で、全国屈指の木材の産出地。そのため、山林伐採用の打ち刃物づくりが古くから行なわれてきました。
江戸時代に入ると、森林資源の確保や新田開発の振興政策が採られ、農業や林業用の刃物への需要がますます高まり、それに伴って「土佐打刃物」のクオリティが向上。土佐には、もともと多くの鍛冶職人が存在し、堺で学んだことをもとに技術革新に取り組んだ結果、包丁づくりが飛躍的な発展を遂げたと言われています。
林業から発展した土佐打刃物は、庶民の生活に添う機能を最優先としているため、その性能と丈夫さは折紙つき。また、野鍛冶の伝統をくみ、注文に応じて様々な刃物を作る「自由鋳造」の技術も魅力で、高知県は日本を代表する包丁産地のひとつとなっているのです。
包丁の作り方
地金(鉄)に鋼(はがね)を貼り合わせる。
令和7年6月24日
横山さん 高知図書館より
長宗我部元親 その謎と生涯
山本 大(たけし)
新人物往来社P39
令和7年5月25日
オーテピア高知 横山氏
長宗我部元親 考
 1両具足は、譜代にあらず、 山内家と関係なし。
令和7年5月12日
元寇記念館調査
1986年 長崎清国水兵事件
元寇記念館の場所は千代の松原の古戦場
中国の真綿の鎧は刀や槍は通らない
鍛刀の改革 準備が必要
昔の刀は馬上から切りつけるためにそりの入った身幅の広い平肉月猪首切先長寸の太刀
真綿の鎧に通用しない
刀匠 五郎正宗 父行光 太刀作り
高度の高い皮鉄と半鍛の硬度の低い鉄
面綿の鎧は太宰府に保管
文永の役 鹿原高地激戦
令和7年5月5日
鎌倉調査
元八幡
https://www.trip-kamakura.com/place/9.html
この社は相模守であった源頼義が奥羽(東北)での戦に勝利し京に帰る途中、1063年(康平6)に鎌倉に立ち寄り、この地に源氏の守り神である石清水八幡宮の祭神を移しまつったといわれる。源氏と鎌倉とのつながりができた初めである。その後、源頼朝が現在の鶴岡八幡宮がある場所に社殿を移してから、ここは元八幡と呼ばれるようになったといわれる。
行き方
鎌倉市材木座1-7
1.JR鎌倉駅東口バス乗り場から九品寺方面行きで「元八幡」下車徒歩1分
2.JR鎌倉駅東口から徒歩15分
2.鶴岡八幡宮
JR横須賀線 JR湘南新宿ライン
「JR鎌倉駅」東口から徒歩10分
3.大倉幕府(1180-1225)
鎌倉市雪ノ下三丁目
https://www.trip-kamakura.com/place/ookurabakufu.html
4.宇都宮辻子幕府(1225-1236)
https://www.trip-kamakura.com/place/utsunomiya.html
5.若宮大路幕府(1236-1333)
https://www.trip-kamakura.com/place/wakamiya.html
6.永福寺
https://www.city.kamakura.kanagawa.jp/treasury/yohukuji_cg.html#youhukujiato-access
令和7年5月3日
始めまして、流通科学大の持田と申します。 
お教え頂きたいことがありまして、メールをお送りしています。
私は、製造業に関する講義を担当しており、
「改善」と「3S」を正しく学生に伝えたいと考えています。
「3S」とは「整理、整頓、清掃」の頭文字を取ったもので、
「改善」と共に日本の製造業での常識となっている言葉です。
しかし、製造現場では3Sは単なる合い言葉の様に使われており、
3Sの精神が伝わっていないのではと感じています。
私は、3Sの精神は鎌倉武士に由来するもので、「整理、整頓、清掃」とは
鎌倉武士が必要な刀、槍、馬を常に整備、準備して、何時でも出撃できる
ような状態でいたことに由来すると私は思っており、関連資料を探している次第です。
私がそう考える理由は、小学生の時の社会見学にあります。
見学は福岡の東公園で、日蓮上人像の前で教員から
「整理、整頓、清掃」の精神は鎌倉幕府の「いざ、鎌倉」に由来する
もので、24時間いつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかる
精神である。一方、「夜討ち、朝駆け」はビジネスチャンスを逃さない
精神であり、「整理、整頓、清掃」と共に日本のビジネス精神の基礎をなしている。
と教わりました。そこで、「整理、整頓、清掃」といざ、鎌倉」に関する
資料をお持ちでしたら、ご紹介頂きたく存じます。
お忙しい所、誠にお手数ですが、本件、ご教授頂けますと幸いです。
今後とも宜しくお願いします。
令和7年5月1日
1937年 トヨタ自動車設立 
1938年(昭和13年) ジャストインタイム開始 
豊田喜一郎の「ジャスト・イン・タイム」の考え
豊田喜一郎は、1927年(昭和2年)に完成した月産能力300台の織機工場の組立ラインに、チェーンコンベアを用いた流れ作業を導入した。さらにその経験を生かして、1938年(昭和13年)に完成させたトヨタ自動車の挙母(ころも)工場(現 トヨタ自動車本社工場)でも流れ作業を導入した。その工場において「ジャスト・イン・タイム」の考えを提唱し、各工程の同期化を目指した。
https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/data/automotive_business/production/system/explanation02.html
よく使われる単語
アンドン(特定の問題をフロアの監督者に警告するために使用される大きな照明付きボード。英語:Signboard)
着々(英語:Load-Load)
現場(英語:On site)
現地現物(英語:Go and see for yourself)
反省(英語:Self-reflection)
平準化(英語: Production Smoothing)
自働化(英語:automation with human intelligence)
ジャストインタイム(英語:Just-in-Time)
改善(英語: Continuous Improvement)
カンバン(英語:Sign, Index Card)
Manufacturing supermarket
ムダ(英語:Waste)
ムラ(英語:Unevenness)
ムリ(無理)(英語:Overburden)
根回し(英語:building consensus)
大部屋(英語:Manager's meeting)
ポカヨケ(英語:fail-safing)
整備(英語:To Prepare)
整理(英語:Sort, removing whatever isn't necessary.)
整頓(英語: Tidy)
清掃(英語:Cleaning)
清潔(英語:Clean)
躾(英語:Discipline)
秋田県立金足農業高等
学校教育方針(校是)
「自主 勤労 感謝」
生活信条(金農三生活信条)
「時間厳守 挨拶励行 整理整頓」
2025/4/9
irst, the 3S method.  I have not find any notice on 3S, but there is a lot of them on 5S (Seiri, Seiton, Seiso, Seiketsu, Shitsuke). It is frequently presented as the typical  first step to introduce lean management. In my opinion, it came to Europe with Japanese companies and was applied in their affiliates here. But I heard stories about problems with their Czech employees. In one company, for example, they demanded that employees come half an hour early and get everything ready, but this caused a storm of resistance and a revolt by the unions. After all, it was against Czech law.  But there must be ways in which it is applied in Czech companies, there is a lot of talk about lean management. I think Josef used it in restructuring his department in Vimperk. Josef now works in Pasau, Germany, so I will ask him about it. But it will take some time, he is very busy and does not write often.
ジャストインタイムは豊田喜一郎が提唱
大野耐一
現場の人間を中心としたボトムアップの改善運動に依存した生産システムを作ろうと考えた。
日本の生産システムは現状に満足せず、創造的なアイデアや創造、工夫により常に変化に挑戦してより高い目標を実現しようとする。従って、変化に強く柔軟性のある生産システムである。(P52)
NHKヒューマニエンス「“整理整頓” それはヒトの本能なのか」を観て
持田 信治さま
鎌倉歴史文化交流館でございます。
「整理、整頓、清掃」が鎌倉武士の精神に由来するのではないか、とのことですが、
そうした考え方は初めて知りました。
中世の東国は自力救済の世界、かつ鎌倉の町は狭く、本拠地の所領経営もありますので、すべての武士が鎌倉に住んでいたわけではありません。
ゆえに、何かあればすぐに鎌倉に駆け付ける必要があります。これは恩賞を得るためです。
「整理、整頓、清掃」に関連する資料はわかりません。
当館は、市内の出土品を所蔵・展示する博物館であるため、関係する所蔵資料もございません。
「いざ鎌倉」に関する資料ですが、これはご存じの通り、室町時代に成立した謡曲「鉢の木」に由来することばです。
当館に「鉢の木」に関する資料はございませんが、以下謡曲の内容と参考文献をご紹介します。
「いざ鎌倉」は、主人公の佐野源左衛門常世が、宿を貸した旅僧(正体は諸国行脚中の執権北条時頼)に対して語った
「鎌倉におん大事出(い)で来(きた)るならば…一番に馳せ参じ着到に付き」を典拠とします。
したがって、「鉢の木」では何か騒動が起こったとき御家人たちがすぐに鎌倉にはせ参じる様子を描いています。
「鉢の木」からわかるのは、次の2点です。
すなわち、鎌倉では騒動が頻発したこと、また鎌倉に一大事ありと聞けば、諸国の御家人は先を争って馳せ参じ、
幕府の着到状(出席簿)に姓名を記録して恩賞を期待したということです。
このようなことは鎌倉時代特有のことで、他の時代にはあまりみられず、だからこそ、
「いざ鎌倉」という言葉は現在まで残ったと考えられます。
一大事ありと聞いて、御家人たちが鎌倉に駆けつけたという記述は、鎌倉幕府の歴史書
『吾妻鏡』に散見します。もっとも多いのは、源頼朝の時代ではなく、鎌倉中期の北条時頼の時代です。
摂家将軍を追放した上、三浦氏を滅ぼし、北条氏専制政治への道を開いた時頼の時代は、
いつ何が起こるかわからない不安定な社会状況でした。
ですので、時頼と「いざ鎌倉」には深い関わりがあり、謡曲「鉢の木」は、その史実を反映しているといえるでしょう。
以上の内容は、平泉澄『明治の源流』(時事通信社、1970年)を参考にしています。
武士たちが鎌倉に馳せ参じたときの『吾妻鏡』の記事も具体的に示されておりますので、よろしければご覧ください。
また、鎌倉武士については、石井進『鎌倉武士の実像』(平凡社、1987年)が参考になると思います。
「いざ鎌倉」の際に、武士たちが馬を走らせた鎌倉街道についても言及しています。
以上がご質問への回答となります。
よろしくお願いいたします。
....................................
鎌倉歴史文化交流館
〒248-0011 神奈川県鎌倉市扇ガ谷1-5-1
TEL:0467-73-8501 FAX:0467-73-8545
rekibun@city.kamakura.kanagawa.jp
....................................
----- Original Message -----
>> From: 持田 信治 <Shinji_Mochida@red.umds.ac.jp>
>> To: "rekibun@city.kamakura.kanagawa.jp" <rekibun@city.kamakura.kanagawa.jp>
>> Date: 2025-03-28 11:08:54
>> Subject: お教え頂きたいことがあります。 流通科学大の持田
>>
>> 鎌倉歴史文化交流館
>> ご担当様
>>
>> 始めまして、流通科学大の持田と申します。 
>> お教え頂きたいことがありまして、メールをお送りしています。
>>
>> 私は、製造業に関する講義を担当しており、
>> 「改善」と「3S」を正しく学生に伝えたいと考えています。
>> 「3S」とは「整理、整頓、清掃」の頭文字を取ったもので、
>> 「改善」と共に日本の製造業での常識となっている言葉です。
>> しかし、製造現場では3Sは単なる合い言葉の様に使われており、
>> 3Sの精神が伝わっていないのではと感じています。
>> 私は、3Sの精神は鎌倉武士に由来するもので、「整理、整頓、清掃」とは
>> 鎌倉武士が必要な刀、槍、馬を常に整備、準備して、何時でも出撃できる
>> ような状態でいたことに由来すると私は思っており、関連資料を探している次第です。
>>
>> 私がそう考える理由は、小学生の時の社会見学にあります。
>> 見学は福岡の東公園で、日蓮上人像の前で教員から
>> 「整理、整頓、清掃」の精神は鎌倉幕府の「いざ、鎌倉」に由来する
>> もので、24時間いつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかる
>> 精神である。一方、「夜討ち、朝駆け」はビジネスチャンスを逃さない
>> 精神であり、「整理、整頓、清掃」と共に日本のビジネス精神の基礎をなしている。
>> と教わりました。そこで、「整理、整頓、清掃」といざ、鎌倉」に関する
>> 資料をお持ちでしたら、ご紹介頂きたく存じます。
>>
>> お忙しい所、誠にお手数ですが、本件、ご教授頂けますと幸いです。
>> 今後とも宜しくお願いします。
Hi Shinji,
this is it:
* Utridit -separate (in the sense necessary from unnecessary)
* Usporadat -organize (in the meaning of organizing things e.g. in order)
* Udrzovat poradek - keep clean (keep the area clean)
* Urcit pravidla -define rules/procedures
* Upevnovat a zlepsovat - strengthen (maybe maintain) and improve
Yes, Kaizen and 5U are like one thing. If I understand it well, Kaizen
is a philosophy, 5U is how to do it - to be "Kaizen"....
V.
Dear Vaclav,
Thank you for your prompt reply so much.
Please tell me, what does 5U stand for?
Are Kaizen and 5S used in pairs?
Thank you.
Shinji Mochida
Dear Shinji,
I have never heard of it, but I am not a good person to ask. So I
asked my daughter Lada who is studying economy and she knows it very
well. Just, instead of 3S she knows 5S - in Czech it is knows as 5U -
they have 5 words beginning with U letter with the similar meaning as
you wrote.
Vaclav
Dear Vaclav,
Thank you for your prompt reply.
I have a question.
Kaizen and 3S are very famous in the manufacturing industry in Japan.
3s stands for Sort, Tify, Clearning.
Have you heard the 3S and Kaizen?
I would like to know if the 3S is known in Europe.
I am researching the origin of the 3S in manufacturing.
I believe 3S was born from the behavior of the Kamakura samurai of ancient Japan.
If you know anything about the 3S in Europe, please let me know.
Thank you.
Shinji Mochida
Dear Shinji,
That's unfortunate news, but thank you for letting me know.
Hopefully, we’ll see each other in September during the Czech-Japan
seminar. I’m also trying to secure some funding.
Enjoy your visit to Izumo Taisha Shrine!
Here in the Czech Republic, we’re finally enjoying spring ? lots of
sunshine and beautiful weather after a long winter.
In the meantime, I’m busy with grant proposals ? we’re working on two,
though the chances of success are rather low. Still, hope never dies.
:-)
See you soon!
Vaclav
Dear Vaclav,
How are you. I and my wife are fine.
In early April, I will be visiting Izumo Taisha Shrine in Shimane Prefecture.
Izumo Taisha Shrine is one of the most famous shrines in Japan.
I am sorry,
I didin't get the budget for going to your Conference.
I am not able to go to your Conference.
Best regards,
Shinji Mochida
ドラッカー  P74
企業の目的は顧客である。
マーケットの創出(コンピュータ、コピー機の登場でマーケットと顧客が造られた)。
イノベーション、信用供与、広告、販売活動により要求が創造された。
IBMのマーケティング
顧客はだれか、顧客にとっての価値とは、顧客はどのように買うか、顧客に必要なものはなにか
イノベーションには技術的、製品的なイノベーションと経済的イノベーションがある。
イヌイットに凍結防止のために冷蔵庫を売るのは経済的なイノベーションであり、技術的、製品的なイノベーションではない。農民が分割払いにより、高価な脳機械を手に入れ、農業生産物を低コストで大量生産することが可能になった。
利益とは目的ではなく、結果である。マーケティング、イノベーション、生産性向上の結果手にするのが利益である。
第51回 「一領具足」の実像
高知市広報「あかるいまち」2016年8月号より
浦戸城明け渡しを拒み、討ち取られた一領具足供養のために建立された六体地蔵(浦戸)
●浦戸城明け渡しを拒み、討ち取られた一領具足供養のために建立された六体地蔵(浦戸)。
  戦国時代の土佐を治めた大名・長宗我部氏の主たる兵力が、いわゆる「一領具足」である。軍記物語『土佐物語』には「死生知らずの野武士なり」と記されるなど、勇猛果敢な土佐武士の代名詞として聞いたこともあるだろう。彼らは平時、農民的な生活を送り、戦時には武装して駆け付ける半士半農の存在とされる。そして、一領具足の名称は、彼らが具足(よろい)を一領しか持っていないという質素さに由来すると考えられてきた。
 しかし近年、長宗我部氏の研究者の中でその由来が疑問視されつつある。最新の研究によると、古文書など歴史資料から一領具足の用例を網羅的に分析した結果、「具足を一領しか持たない武士」ではなく、「具足一領分の軍役を負担する武士」がその実態であるという(平井上総「一領具足考」(『花園史学』三十六号、二〇一六年))。軍役とは武士が主君に対して負う軍事上の負担である。つまり、戦が発生した際に一人分の兵力を負担する下級武士が一領具足の実像というのだ。
 具足一領分の軍役しか負担しない下級武士は、戦国の世においてどこの大名家でも一般的で、長宗我部氏特有のものではない。しかし、長宗我部氏の家臣にはそのような下級武士が他の大名家より圧倒的に多かったのは事実である。
 慶長五(一六〇〇)年の関ケ原合戦を経て、土佐の国主が山内氏になった江戸時代。三代藩主・山内忠豊が親類大名から受け取った書状には「土佐国之儀ハ余国ニ違、長曽我部代より一領具足とて余多有之儀ハ隠れもなき事候」(『山内家史料第三代忠豊公紀』一巻)とある。この事例からも、長宗我部氏の時代から一領具足が土佐に多くいたことは、他国でも有名な話であったことがうかがえる。
 戦国の世、下級武士は一般的だったが、長宗我部氏にとっては主な兵力であったことは間違いない。彼らのような名もなき武士の活躍があったからこそ、「土佐の出来人」長宗我部元親が大名として四国を席巻したということを忘れてはなるまい。
こうちミュージアムネットワーク 高知県立歴史民俗資料館 学芸員 石畑匡基(こくはたまさき)
福田先生
持田です。 
大変、ご無沙汰しております。
お元気でしょうか。
わたしは、現在、横浜のみなとみらい地区に住んでおりますので、
是非、先生にお会いしたく、思っています。
ところで、今、「3Sの起源といざかまくら」を調べており、
海外での「3S」の理解について、先生のお考えをお聞きしたいと
思っています。
「3S」と「改善」は共に日本の製造業での常識となっている言葉です。しかし、製造現場では「3S」はコストダウンの手法として使われており、「3S」の精神が間違って伝わっていないのではと感じています。私は、「3S」の精神は鎌倉武士の「いざ鎌倉」に由来するもので、「整理、整頓、清掃」とは鎌倉武士が必要な刀、槍、馬を常に整備、準備して、何時でも出撃できるような状態でいたことに由来すると私は考えています。そこで、特に海外での理解について調査したいと考えている次第です。「いざ鎌倉」と同様な考えは土佐武士の「一領具足」にもあり、同じく戦時には武装して直ぐさま、駆け付けるという精神です。
私が「3S」の精神は鎌倉武士に由来すると考える理由は、
小学生の時の社会見学にあります。見学は福岡の東公園でした。東公園には巨大な日蓮聖人の像があり、日蓮聖人がお題目を唱えて2回の元寇を退けた姿となっています。見学では、日蓮上人像の前で教員から「整理、整頓、清掃」の精神は鎌倉幕府の「いざ、鎌倉」に由来するもので、24時間いつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかる精神であり、君らは何時でも学習ができる状態になければならないと教わりました(多少脚色がありますが)。同じく、鎌倉武士に由来する「夜討ち、朝駆け」はビジネスチャンスを逃さない精神であり、「整理、整頓、清掃」と共に日本のビジネス精神の基礎をなしていると思われます。そこで、「整理、整頓、清掃」の海外での理解について先生にご教授願いたく、御願い申し上げる次第です。
余談ですが、最近は「3S」に2つの「S」を付けて「5S」として広がっているようです。しかし、2つのSは蛇足であり、全く「いざ鎌倉」の精神ではなく、何時でも働ける精神ではありません。「5S」の最後の2つの「S」は「躾」と「清潔」であり、私が食品関係の仕事をしている時には「躾」とは作業着、エプロン、マスク、帽子を付けてほこりを落としてから食品工場に入るというルールや白線を踏まないと言うルールを守ることであり、「清潔」とは手を石けんで洗い、更にアルコールで消毒すると言う、いわゆる化学的な清掃でした。実際、「清掃」と「清潔」の英語訳は同じ「Cleaning」であり区別がありません。「5S」の解説を見ると「清潔」とは職場環境の維持とあり、全くトンチンカンな理解であると思われ、「3S」の起源は「いざかまくら」であることを製造現場に示したいと思っています。そこで、是非、海外での「3S」の理解について、先生のお考えをお聞きしたいと思っています。
またまた、余談ですが、チェコの友人に「5S」の広がりを聞いた所
「5S」と「改善」はコストダウンの手法として、広がっているようです。ある企業で「5S」に基づき、始業前に準備するように従業員に指示したところ、無給の業務指示は違法であるとされたそうです。
相州伝の完成
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状況
元寇による外国からの侵略という未曽有の事態に直面し、従来の太刀では真綿の鎧に通用しないなど、実戦的な強靭さが求められた。
関連ルール: A-33: 侵略
行動
五郎入道正宗が各地の刀生産地を行脚して技術を研究し、硬軟の地鉄を組み合わせる「相州伝」を完成させた。
関連ルール: A-34: 生産
結果
「折れず、曲がらず、良く切れる」という革新的な刀が生まれ、日本刀中興の祖として全国の刀工に多大な影響を与えた。
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詳細コンテキスト
【分析:状況】
元寇による外国からの侵略という未曽有の事態に直面し、従来の太刀では真綿の鎧に通用しないなど、実戦的な強靭さが求められた。
【分析:行動】
五郎入道正宗が各地の刀生産地を行脚して技術を研究し、硬軟の地鉄を組み合わせる「相州伝」を完成させた。
【分析:結果】
「折れず、曲がらず、良く切れる」という革新的な刀が生まれ、日本刀中興の祖として全国の刀工に多大な影響を与えた。
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【本文】
令和7年6月28日
戦国の世に生きる武士として軍務に精進する、が、かれらは法によって規制されており、武具を整備し、武芸の修練に心がけて軍役に精励しなけれなければならなかった。このような傾向はすでに早く、天文ころ吾川郡弘岡城主であった吉良宣経(151-1550頃:室町時代)の定目にあり。すなわち、 田地二町以上耕作する百姓には武具を与が、かれらは法によって規制されており、武具を整備し、武芸の修練に心がけて軍役に精励しなけれならかった。
山本大(やまもと たけし). 長宗我部元親 その謎と生涯
山本大. 長宗我部元親 (新人物文庫) . KADOKAWA / 中経出版. Kindle 版. (新人物文庫) . KADOKAWA / 中経出版. Kindle 版. 2014 新人物往来社 2010
室町時代(1932―1573)天文年間(1532年から1555).
令和7年6月26日
鉄と鋼の違いは、主に炭素含有量によって分類されます。 刃物に使用される鋼(ハガネ)は炭素含有量が0.08〜2.0%で、それ以下の材料は鍛鉄または軟鉄と呼ばれ、柔らかく、焼き入れしても硬化しない材料です。 鋼(ハガネ)以上に炭素(C)を含む材料は銑鉄または鋳鉄で、硬く脆いので鋳物の材料などに使用されます。
正宗は、1264年(弘長4年/文永元年)、鎌倉鍛冶の名工「藤三郎行光」(とうさぶろうゆきみつ)の子として生まれました。1280年(弘安3年)に17歳で父親と別れ、「新藤五国光」(しんとうごくにみつ)の門下に入ります。ここで作刀秘術を習得。その後、山城国(現在の京都府南部)、備前国(現在の岡山県東南部)、伯耆国(現在の鳥取県中西部)など、刀の生産地を行脚して、各地の技術を研究。ついに「相州伝」(そうしゅうでん)を完成させます。相州伝の刀は、薄いながらも強度抜群の刀身が特徴であり、これは、刀の常識を一変させる革新的な鍛法でした。
正宗による相州伝の完成は、時代背景と密接に関係しています。正宗が刀工としての道を歩み始めた時期は、いわゆる「元寇[蒙古襲来]」(げんこう[もうこしゅうらい])の時期と重なっています。外国からの侵略という未曽有の事態となった日本では、これまでになく自国の防衛意識が上昇。これを受けて武を貴ぶ気風が盛り上がり、併せて刀のあり方が問われるようになったのです。
武士達が求めたのは豪壮にして実用に耐え、武運を強くしてくれる1振でした。こうした動向の中、五郎入道正宗が相州伝を完成させるのです。相州伝は硬軟の「地鉄」(じがね)を組み合わせ、「地景」(ちけい)や「金筋」(きんすじ)など刃中の働きと、「湾れ刃」(のたれば)を基調とした大模様の刃文による「沸」(にえ)の美しさを強調する作風です。これにより、刀身の強度向上はさることながら、刃文の躍動感が一気に増しました。「山城伝」(やましろでん)の「粟田口派」(あわたぐちは)による伝統を継承した、整った「直刃」(すぐは)ではなく、荒々しい波濤(はとう:大きな波)のような刃文を刀身に表現したのです。この雄渾(ゆうこん:雄大で勢いが良いこと)さが、武運長久を希求する鎌倉武士達の琴線に触れ、正宗は、一躍著名な刀工となったのです。
以後、正宗の作風は全国に影響を及ぼし、後世に言う「正宗十哲」(まさむねじってつ)が生まれます。これは、正宗の影響を強く受けた10人の刀工のこと。正宗十哲のすべてを正宗門下と認めるのは困難ですが、「沸出来」(にえでき)を強調している点は共通しています。正宗十哲によって新しい作刀技術は日本全国に拡大し、のちに「新刀」や「新々刀」(しんしんとう)が誕生する原動力となるのです。
このように、五郎入道正宗の登場により、日本における刀の歴史は大きく転換しました。このため正宗は、「日本刀中興の祖」と位置付けられています。正宗はその後、行光に学んだ相州伝の技法をもとに、さらに品質を高めた刀を作刀するために研究を重ねます。
その動機のひとつとなったのが、1274年(文永11年)と1281年(弘安4年)の2度に亘り、「元」(げん)と称する旧モンゴル帝国から軍勢が襲来した「元寇」(げんこう)です。
このとき元軍は、その当時、一騎打ちが主流であった日本とは異なる集団戦であったり、火薬を使った武器で攻撃したりするなど、それまでの日本では見ることがなかった戦法を用いていました。元寇では最終的に、鎌倉幕府軍が勝利を収めましたが、さらなる外国からの侵攻に備えて、美しいだけでなく、より強靭である実用華美な刀が求められるようになったのです。
正宗は苦心の末、「折れず、曲がらず、良く切れる」と評される刀を作刀することに成功。地刃ともに強い相州伝の伝法を完成させました。
そこで、鎌倉幕府5代執権「北条時頼」(ほうじょうときより)が、全国から刀工達を呼び寄せます。その刀工とは、建長年間(1249~1256年)に、山城国の「粟田口国綱」(あわたぐちくにつな)、及び備前国(現在の岡山県東南部)の「備前三郎国宗」(びぜんさぶろうくにむね)の2名。
五箇伝から輩出された日本刀の名工は、数多くの名刀を鍛え上げました。しかし、江戸時代になると日本刀の需要が激減。刀工達は、「打ち刃物」(うちはもの:高温に熱した軟鉄と鋼などを打って形にする製法)と呼ばれる包丁や鎌、ノコギリ、ナタなどの農業用刃物の需要を求め、地方に広がっていきます。さらに、明治時代の「廃刀令」によって、ほとんどの刀工が日本刀から業務用、及び家庭で使われる刃物づくりに転業しました。
気候に恵まれた高知県は、県民ひとりあたりの森林占有率が日本一で、全国屈指の木材の産出地。そのため、山林伐採用の打ち刃物づくりが古くから行なわれてきました。
江戸時代に入ると、森林資源の確保や新田開発の振興政策が採られ、農業や林業用の刃物への需要がますます高まり、それに伴って「土佐打刃物」のクオリティが向上。土佐には、もともと多くの鍛冶職人が存在し、堺で学んだことをもとに技術革新に取り組んだ結果、包丁づくりが飛躍的な発展を遂げたと言われています。
林業から発展した土佐打刃物は、庶民の生活に添う機能を最優先としているため、その性能と丈夫さは折紙つき。また、野鍛冶の伝統をくみ、注文に応じて様々な刃物を作る「自由鋳造」の技術も魅力で、高知県は日本を代表する包丁産地のひとつとなっているのです。
包丁の作り方
地金(鉄)に鋼(はがね)を貼り合わせる。
令和7年6月24日
横山さん 高知図書館より
長宗我部元親 その謎と生涯
山本 大(たけし)
新人物往来社P39
令和7年5月25日
オーテピア高知 横山氏
長宗我部元親 考
 1両具足は、譜代にあらず、 山内家と関係なし。
令和7年5月12日
元寇記念館調査
1986年 長崎清国水兵事件
元寇記念館の場所は千代の松原の古戦場
中国の真綿の鎧は刀や槍は通らない
鍛刀の改革 準備が必要
昔の刀は馬上から切りつけるためにそりの入った身幅の広い平肉月猪首切先長寸の太刀
真綿の鎧に通用しない
刀匠 五郎正宗 父行光 太刀作り
高度の高い皮鉄と半鍛の硬度の低い鉄
面綿の鎧は太宰府に保管
文永の役 鹿原高地激戦
令和7年5月5日
鎌倉調査
元八幡
https://www.trip-kamakura.com/place/9.html
この社は相模守であった源頼義が奥羽(東北)での戦に勝利し京に帰る途中、1063年(康平6)に鎌倉に立ち寄り、この地に源氏の守り神である石清水八幡宮の祭神を移しまつったといわれる。源氏と鎌倉とのつながりができた初めである。その後、源頼朝が現在の鶴岡八幡宮がある場所に社殿を移してから、ここは元八幡と呼ばれるようになったといわれる。
行き方
鎌倉市材木座1-7
1.JR鎌倉駅東口バス乗り場から九品寺方面行きで「元八幡」下車徒歩1分
2.JR鎌倉駅東口から徒歩15分
2.鶴岡八幡宮
JR横須賀線 JR湘南新宿ライン
「JR鎌倉駅」東口から徒歩10分
3.大倉幕府(1180-1225)
鎌倉市雪ノ下三丁目
https://www.trip-kamakura.com/place/ookurabakufu.html
4.宇都宮辻子幕府(1225-1236)
https://www.trip-kamakura.com/place/utsunomiya.html
5.若宮大路幕府(1236-1333)
https://www.trip-kamakura.com/place/wakamiya.html
6.永福寺
https://www.city.kamakura.kanagawa.jp/treasury/yohukuji_cg.html#youhukujiato-access
令和7年5月3日
始めまして、流通科学大の持田と申します。 
お教え頂きたいことがありまして、メールをお送りしています。
私は、製造業に関する講義を担当しており、
「改善」と「3S」を正しく学生に伝えたいと考えています。
「3S」とは「整理、整頓、清掃」の頭文字を取ったもので、
「改善」と共に日本の製造業での常識となっている言葉です。
しかし、製造現場では3Sは単なる合い言葉の様に使われており、
3Sの精神が伝わっていないのではと感じています。
私は、3Sの精神は鎌倉武士に由来するもので、「整理、整頓、清掃」とは
鎌倉武士が必要な刀、槍、馬を常に整備、準備して、何時でも出撃できる
ような状態でいたことに由来すると私は思っており、関連資料を探している次第です。
私がそう考える理由は、小学生の時の社会見学にあります。
見学は福岡の東公園で、日蓮上人像の前で教員から
「整理、整頓、清掃」の精神は鎌倉幕府の「いざ、鎌倉」に由来する
もので、24時間いつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかる
精神である。一方、「夜討ち、朝駆け」はビジネスチャンスを逃さない
精神であり、「整理、整頓、清掃」と共に日本のビジネス精神の基礎をなしている。
と教わりました。そこで、「整理、整頓、清掃」といざ、鎌倉」に関する
資料をお持ちでしたら、ご紹介頂きたく存じます。
お忙しい所、誠にお手数ですが、本件、ご教授頂けますと幸いです。
今後とも宜しくお願いします。
令和7年5月1日
1937年 トヨタ自動車設立 
1938年(昭和13年) ジャストインタイム開始 
豊田喜一郎の「ジャスト・イン・タイム」の考え
豊田喜一郎は、1927年(昭和2年)に完成した月産能力300台の織機工場の組立ラインに、チェーンコンベアを用いた流れ作業を導入した。さらにその経験を生かして、1938年(昭和13年)に完成させたトヨタ自動車の挙母(ころも)工場(現 トヨタ自動車本社工場)でも流れ作業を導入した。その工場において「ジャスト・イン・タイム」の考えを提唱し、各工程の同期化を目指した。
https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/data/automotive_business/production/system/explanation02.html
よく使われる単語
アンドン(特定の問題をフロアの監督者に警告するために使用される大きな照明付きボード。英語:Signboard)
着々(英語:Load-Load)
現場(英語:On site)
現地現物(英語:Go and see for yourself)
反省(英語:Self-reflection)
平準化(英語: Production Smoothing)
自働化(英語:automation with human intelligence)
ジャストインタイム(英語:Just-in-Time)
改善(英語: Continuous Improvement)
カンバン(英語:Sign, Index Card)
Manufacturing supermarket
ムダ(英語:Waste)
ムラ(英語:Unevenness)
ムリ(無理)(英語:Overburden)
根回し(英語:building consensus)
大部屋(英語:Manager's meeting)
ポカヨケ(英語:fail-safing)
整備(英語:To Prepare)
整理(英語:Sort, removing whatever isn't necessary.)
整頓(英語: Tidy)
清掃(英語:Cleaning)
清潔(英語:Clean)
躾(英語:Discipline)
秋田県立金足農業高等
学校教育方針(校是)
「自主 勤労 感謝」
生活信条(金農三生活信条)
「時間厳守 挨拶励行 整理整頓」
2025/4/9
irst, the 3S method.  I have not find any notice on 3S, but there is a lot of them on 5S (Seiri, Seiton, Seiso, Seiketsu, Shitsuke). It is frequently presented as the typical  first step to introduce lean management. In my opinion, it came to Europe with Japanese companies and was applied in their affiliates here. But I heard stories about problems with their Czech employees. In one company, for example, they demanded that employees come half an hour early and get everything ready, but this caused a storm of resistance and a revolt by the unions. After all, it was against Czech law.  But there must be ways in which it is applied in Czech companies, there is a lot of talk about lean management. I think Josef used it in restructuring his department in Vimperk. Josef now works in Pasau, Germany, so I will ask him about it. But it will take some time, he is very busy and does not write often.
ジャストインタイムは豊田喜一郎が提唱
大野耐一
現場の人間を中心としたボトムアップの改善運動に依存した生産システムを作ろうと考えた。
日本の生産システムは現状に満足せず、創造的なアイデアや創造、工夫により常に変化に挑戦してより高い目標を実現しようとする。従って、変化に強く柔軟性のある生産システムである。(P52)
NHKヒューマニエンス「“整理整頓” それはヒトの本能なのか」を観て
持田 信治さま
鎌倉歴史文化交流館でございます。
「整理、整頓、清掃」が鎌倉武士の精神に由来するのではないか、とのことですが、
そうした考え方は初めて知りました。
中世の東国は自力救済の世界、かつ鎌倉の町は狭く、本拠地の所領経営もありますので、すべての武士が鎌倉に住んでいたわけではありません。
ゆえに、何かあればすぐに鎌倉に駆け付ける必要があります。これは恩賞を得るためです。
「整理、整頓、清掃」に関連する資料はわかりません。
当館は、市内の出土品を所蔵・展示する博物館であるため、関係する所蔵資料もございません。
「いざ鎌倉」に関する資料ですが、これはご存じの通り、室町時代に成立した謡曲「鉢の木」に由来することばです。
当館に「鉢の木」に関する資料はございませんが、以下謡曲の内容と参考文献をご紹介します。
「いざ鎌倉」は、主人公の佐野源左衛門常世が、宿を貸した旅僧(正体は諸国行脚中の執権北条時頼)に対して語った
「鎌倉におん大事出(い)で来(きた)るならば…一番に馳せ参じ着到に付き」を典拠とします。
したがって、「鉢の木」では何か騒動が起こったとき御家人たちがすぐに鎌倉にはせ参じる様子を描いています。
「鉢の木」からわかるのは、次の2点です。
すなわち、鎌倉では騒動が頻発したこと、また鎌倉に一大事ありと聞けば、諸国の御家人は先を争って馳せ参じ、
幕府の着到状(出席簿)に姓名を記録して恩賞を期待したということです。
このようなことは鎌倉時代特有のことで、他の時代にはあまりみられず、だからこそ、
「いざ鎌倉」という言葉は現在まで残ったと考えられます。
一大事ありと聞いて、御家人たちが鎌倉に駆けつけたという記述は、鎌倉幕府の歴史書
『吾妻鏡』に散見します。もっとも多いのは、源頼朝の時代ではなく、鎌倉中期の北条時頼の時代です。
摂家将軍を追放した上、三浦氏を滅ぼし、北条氏専制政治への道を開いた時頼の時代は、
いつ何が起こるかわからない不安定な社会状況でした。
ですので、時頼と「いざ鎌倉」には深い関わりがあり、謡曲「鉢の木」は、その史実を反映しているといえるでしょう。
以上の内容は、平泉澄『明治の源流』(時事通信社、1970年)を参考にしています。
武士たちが鎌倉に馳せ参じたときの『吾妻鏡』の記事も具体的に示されておりますので、よろしければご覧ください。
また、鎌倉武士については、石井進『鎌倉武士の実像』(平凡社、1987年)が参考になると思います。
「いざ鎌倉」の際に、武士たちが馬を走らせた鎌倉街道についても言及しています。
以上がご質問への回答となります。
よろしくお願いいたします。
....................................
鎌倉歴史文化交流館
〒248-0011 神奈川県鎌倉市扇ガ谷1-5-1
TEL:0467-73-8501 FAX:0467-73-8545
rekibun@city.kamakura.kanagawa.jp
....................................
----- Original Message -----
>> From: 持田 信治 <Shinji_Mochida@red.umds.ac.jp>
>> To: "rekibun@city.kamakura.kanagawa.jp" <rekibun@city.kamakura.kanagawa.jp>
>> Date: 2025-03-28 11:08:54
>> Subject: お教え頂きたいことがあります。 流通科学大の持田
>>
>> 鎌倉歴史文化交流館
>> ご担当様
>>
>> 始めまして、流通科学大の持田と申します。 
>> お教え頂きたいことがありまして、メールをお送りしています。
>>
>> 私は、製造業に関する講義を担当しており、
>> 「改善」と「3S」を正しく学生に伝えたいと考えています。
>> 「3S」とは「整理、整頓、清掃」の頭文字を取ったもので、
>> 「改善」と共に日本の製造業での常識となっている言葉です。
>> しかし、製造現場では3Sは単なる合い言葉の様に使われており、
>> 3Sの精神が伝わっていないのではと感じています。
>> 私は、3Sの精神は鎌倉武士に由来するもので、「整理、整頓、清掃」とは
>> 鎌倉武士が必要な刀、槍、馬を常に整備、準備して、何時でも出撃できる
>> ような状態でいたことに由来すると私は思っており、関連資料を探している次第です。
>>
>> 私がそう考える理由は、小学生の時の社会見学にあります。
>> 見学は福岡の東公園で、日蓮上人像の前で教員から
>> 「整理、整頓、清掃」の精神は鎌倉幕府の「いざ、鎌倉」に由来する
>> もので、24時間いつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかる
>> 精神である。一方、「夜討ち、朝駆け」はビジネスチャンスを逃さない
>> 精神であり、「整理、整頓、清掃」と共に日本のビジネス精神の基礎をなしている。
>> と教わりました。そこで、「整理、整頓、清掃」といざ、鎌倉」に関する
>> 資料をお持ちでしたら、ご紹介頂きたく存じます。
>>
>> お忙しい所、誠にお手数ですが、本件、ご教授頂けますと幸いです。
>> 今後とも宜しくお願いします。
Hi Shinji,
this is it:
* Utridit -separate (in the sense necessary from unnecessary)
* Usporadat -organize (in the meaning of organizing things e.g. in order)
* Udrzovat poradek - keep clean (keep the area clean)
* Urcit pravidla -define rules/procedures
* Upevnovat a zlepsovat - strengthen (maybe maintain) and improve
Yes, Kaizen and 5U are like one thing. If I understand it well, Kaizen
is a philosophy, 5U is how to do it - to be "Kaizen"....
V.
Dear Vaclav,
Thank you for your prompt reply so much.
Please tell me, what does 5U stand for?
Are Kaizen and 5S used in pairs?
Thank you.
Shinji Mochida
Dear Shinji,
I have never heard of it, but I am not a good person to ask. So I
asked my daughter Lada who is studying economy and she knows it very
well. Just, instead of 3S she knows 5S - in Czech it is knows as 5U -
they have 5 words beginning with U letter with the similar meaning as
you wrote.
Vaclav
Dear Vaclav,
Thank you for your prompt reply.
I have a question.
Kaizen and 3S are very famous in the manufacturing industry in Japan.
3s stands for Sort, Tify, Clearning.
Have you heard the 3S and Kaizen?
I would like to know if the 3S is known in Europe.
I am researching the origin of the 3S in manufacturing.
I believe 3S was born from the behavior of the Kamakura samurai of ancient Japan.
If you know anything about the 3S in Europe, please let me know.
Thank you.
Shinji Mochida
Dear Shinji,
That's unfortunate news, but thank you for letting me know.
Hopefully, we’ll see each other in September during the Czech-Japan
seminar. I’m also trying to secure some funding.
Enjoy your visit to Izumo Taisha Shrine!
Here in the Czech Republic, we’re finally enjoying spring ? lots of
sunshine and beautiful weather after a long winter.
In the meantime, I’m busy with grant proposals ? we’re working on two,
though the chances of success are rather low. Still, hope never dies.
:-)
See you soon!
Vaclav
Dear Vaclav,
How are you. I and my wife are fine.
In early April, I will be visiting Izumo Taisha Shrine in Shimane Prefecture.
Izumo Taisha Shrine is one of the most famous shrines in Japan.
I am sorry,
I didin't get the budget for going to your Conference.
I am not able to go to your Conference.
Best regards,
Shinji Mochida
ドラッカー  P74
企業の目的は顧客である。
マーケットの創出(コンピュータ、コピー機の登場でマーケットと顧客が造られた)。
イノベーション、信用供与、広告、販売活動により要求が創造された。
IBMのマーケティング
顧客はだれか、顧客にとっての価値とは、顧客はどのように買うか、顧客に必要なものはなにか
イノベーションには技術的、製品的なイノベーションと経済的イノベーションがある。
イヌイットに凍結防止のために冷蔵庫を売るのは経済的なイノベーションであり、技術的、製品的なイノベーションではない。農民が分割払いにより、高価な脳機械を手に入れ、農業生産物を低コストで大量生産することが可能になった。
利益とは目的ではなく、結果である。マーケティング、イノベーション、生産性向上の結果手にするのが利益である。
第51回 「一領具足」の実像
高知市広報「あかるいまち」2016年8月号より
浦戸城明け渡しを拒み、討ち取られた一領具足供養のために建立された六体地蔵(浦戸)
●浦戸城明け渡しを拒み、討ち取られた一領具足供養のために建立された六体地蔵(浦戸)。
  戦国時代の土佐を治めた大名・長宗我部氏の主たる兵力が、いわゆる「一領具足」である。軍記物語『土佐物語』には「死生知らずの野武士なり」と記されるなど、勇猛果敢な土佐武士の代名詞として聞いたこともあるだろう。彼らは平時、農民的な生活を送り、戦時には武装して駆け付ける半士半農の存在とされる。そして、一領具足の名称は、彼らが具足(よろい)を一領しか持っていないという質素さに由来すると考えられてきた。
 しかし近年、長宗我部氏の研究者の中でその由来が疑問視されつつある。最新の研究によると、古文書など歴史資料から一領具足の用例を網羅的に分析した結果、「具足を一領しか持たない武士」ではなく、「具足一領分の軍役を負担する武士」がその実態であるという(平井上総「一領具足考」(『花園史学』三十六号、二〇一六年))。軍役とは武士が主君に対して負う軍事上の負担である。つまり、戦が発生した際に一人分の兵力を負担する下級武士が一領具足の実像というのだ。
 具足一領分の軍役しか負担しない下級武士は、戦国の世においてどこの大名家でも一般的で、長宗我部氏特有のものではない。しかし、長宗我部氏の家臣にはそのような下級武士が他の大名家より圧倒的に多かったのは事実である。
 慶長五(一六〇〇)年の関ケ原合戦を経て、土佐の国主が山内氏になった江戸時代。三代藩主・山内忠豊が親類大名から受け取った書状には「土佐国之儀ハ余国ニ違、長曽我部代より一領具足とて余多有之儀ハ隠れもなき事候」(『山内家史料第三代忠豊公紀』一巻)とある。この事例からも、長宗我部氏の時代から一領具足が土佐に多くいたことは、他国でも有名な話であったことがうかがえる。
 戦国の世、下級武士は一般的だったが、長宗我部氏にとっては主な兵力であったことは間違いない。彼らのような名もなき武士の活躍があったからこそ、「土佐の出来人」長宗我部元親が大名として四国を席巻したということを忘れてはなるまい。
こうちミュージアムネットワーク 高知県立歴史民俗資料館 学芸員 石畑匡基(こくはたまさき)
福田先生
持田です。 
大変、ご無沙汰しております。
お元気でしょうか。
わたしは、現在、横浜のみなとみらい地区に住んでおりますので、
是非、先生にお会いしたく、思っています。
ところで、今、「3Sの起源といざかまくら」を調べており、
海外での「3S」の理解について、先生のお考えをお聞きしたいと
思っています。
「3S」と「改善」は共に日本の製造業での常識となっている言葉です。しかし、製造現場では「3S」はコストダウンの手法として使われており、「3S」の精神が間違って伝わっていないのではと感じています。私は、「3S」の精神は鎌倉武士の「いざ鎌倉」に由来するもので、「整理、整頓、清掃」とは鎌倉武士が必要な刀、槍、馬を常に整備、準備して、何時でも出撃できるような状態でいたことに由来すると私は考えています。そこで、特に海外での理解について調査したいと考えている次第です。「いざ鎌倉」と同様な考えは土佐武士の「一領具足」にもあり、同じく戦時には武装して直ぐさま、駆け付けるという精神です。
私が「3S」の精神は鎌倉武士に由来すると考える理由は、
小学生の時の社会見学にあります。見学は福岡の東公園でした。東公園には巨大な日蓮聖人の像があり、日蓮聖人がお題目を唱えて2回の元寇を退けた姿となっています。見学では、日蓮上人像の前で教員から「整理、整頓、清掃」の精神は鎌倉幕府の「いざ、鎌倉」に由来するもので、24時間いつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかる精神であり、君らは何時でも学習ができる状態になければならないと教わりました(多少脚色がありますが)。同じく、鎌倉武士に由来する「夜討ち、朝駆け」はビジネスチャンスを逃さない精神であり、「整理、整頓、清掃」と共に日本のビジネス精神の基礎をなしていると思われます。そこで、「整理、整頓、清掃」の海外での理解について先生にご教授願いたく、御願い申し上げる次第です。
余談ですが、最近は「3S」に2つの「S」を付けて「5S」として広がっているようです。しかし、2つのSは蛇足であり、全く「いざ鎌倉」の精神ではなく、何時でも働ける精神ではありません。「5S」の最後の2つの「S」は「躾」と「清潔」であり、私が食品関係の仕事をしている時には「躾」とは作業着、エプロン、マスク、帽子を付けてほこりを落としてから食品工場に入るというルールや白線を踏まないと言うルールを守ることであり、「清潔」とは手を石けんで洗い、更にアルコールで消毒すると言う、いわゆる化学的な清掃でした。実際、「清掃」と「清潔」の英語訳は同じ「Cleaning」であり区別がありません。「5S」の解説を見ると「清潔」とは職場環境の維持とあり、全くトンチンカンな理解であると思われ、「3S」の起源は「いざかまくら」であることを製造現場に示したいと思っています。そこで、是非、海外での「3S」の理解について、先生のお考えをお聞きしたいと思っています。
またまた、余談ですが、チェコの友人に「5S」の広がりを聞いた所
「5S」と「改善」はコストダウンの手法として、広がっているようです。ある企業で「5S」に基づき、始業前に準備するように従業員に指示したところ、無給の業務指示は違法であるとされたそうです。
問い詰めることは生産的ではない
主要項目ヒット ヒット: 6 開く 保存
状況
問い詰めることは生産的ではない
関連ルール: A-34: 生産
行動
結果
このエピソード全体の関連ルール: A-34: 生産
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【状況】
問い詰めることは生産的ではない
【行動】
【結果】
【詳細事例】
トラブルの原因を人のせいにしてもいつまでもやりとりは続くだけで、生産的でない。
----------------------------------------
【本文】
【状況】
問い詰めることは生産的ではない
【行動】
【結果】
【詳細事例】
トラブルの原因を人のせいにしてもいつまでもやりとりは続くだけで、生産的でない。
競争心をあおるのが効果的
主要項目ヒット ヒット: 3 開く 保存
状況
競争心をあおるのが効果的
行動
黒板にチーム別の現状の生産性を示す
関連ルール: A-34: 生産
結果
このエピソード全体の関連ルール: A-34: 生産
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【状況】
競争心をあおるのが効果的
【行動】
黒板にチーム別の現状の生産性を示す
【結果】
【ポイント】
賃金を上げる、叱るより、状況の可視化を行い、向上心をあおる
----------------------------------------
【本文】
【状況】
競争心をあおるのが効果的
【行動】
黒板にチーム別の現状の生産性を示す
【結果】
【ポイント】
賃金を上げる、叱るより、状況の可視化を行い、向上心をあおる
生産性向上のための着手日管理
主要項目ヒット ヒット: 3 開く 保存
状況
要員へのヒアリングによる進捗測定は困難であり、プロジェクトの生産性把握が不正確であった。
関連ルール: A-34: 生産
行動
完了判断の難しさを回避するため、ガントチャート上の「着手日」を管理指標として設定。
結果
作業の着手日を管理することで、生産性の立ち上がりを可視化し、遅延予測の精度を向上させた。
関連ルール: A-34: 生産
このエピソード全体の関連ルール: A-34: 生産
プロジェクト管理における知識登録のジャストタイミング検知
主要項目ヒット ヒット: 3 開く 保存
状況
プロジェクト現場では進捗管理や知識共有がマネージャの経験に依存しており、多忙なマネージャが知識を登録するタイミングを逸している。
行動
EVM(Earned Value Management)に生産性測定を組み合わせ、生産性が変化する点を作業の区切りとして検知する手法を提案した。
関連ルール: A-34: 生産
結果
生産性が変化するタイミングで知識登録を促すことで、有用な知識を効果的に蓄積し、プロジェクト管理の効率化と自動化の可能性を見出した。
関連ルール: A-34: 生産
このエピソード全体の関連ルール: A-34: 生産
ノウハウ・工夫の数値化とモチベーション管理
主要項目ヒット ヒット: 1 開く 保存
状況
プロジェクト遂行中、担当者の能力に依存する工夫やノウハウが適切に評価されず、担当者の貢献度感覚と実際の費用的貢献度に乖離が生じていた。
行動
工夫やノウハウの利用効果を費用に換算し、評価ポイントを設定して可視化するシステムを導入した。
結果
担当者のノウハウ共有に対する意識が向上し、チームワークとプロジェクトの生産性向上に寄与する可能性が示された。
関連ルール: A-34: 生産
このエピソード全体の関連ルール: A-34: 生産
キーワード付与による類似作業の集約と効率化
ヒット: 25 開く 保存
状況
複数のプロジェクトが並行して進む中で、類似の作業が散在し、資源の取り合いや工程管理の複雑化が課題となっていた。
行動
知識登録時に利用技術に関するキーワードを付与し、類似作業を検索・抽出できるシステムを試作した。
結果
類似作業を時間的に近傍へ集約してスケジューリングすることが可能となり、資源の集中と効率的なプロジェクト遂行への道筋が立った。
このエピソード全体の関連ルール: A-34: 生産 E-1: 明
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詳細コンテキスト
【分析:状況】
複数のプロジェクトが並行して進む中で、類似の作業が散在し、資源の取り合いや工程管理の複雑化が課題となっていた。
【分析:行動】
知識登録時に利用技術に関するキーワードを付与し、類似作業を検索・抽出できるシステムを試作した。
【分析:結果】
類似作業を時間的に近傍へ集約してスケジューリングすることが可能となり、資源の集中と効率的なプロジェクト遂行への道筋が立った。
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【本文】
はじめに
世の中には様々な課題解決のためにプロジェクトが進められている。そして進捗管理が難しいプロジェクトの1つに情報システムの構築がある。情報システムは計画段階で最終成果物の仕様、機能が明確でないため、プロジェクトの途中で仕様追加や修正が多発する。仕様変更が発生すると管理計画も変更となる。仕様が大規模化すれば仕様変更も多発するため、情報システム開発には確実な進捗管理が求められる。加えて通常は図1に示す様に複数のプロジェクト間で、人員や設備に関する調整が必要である。特に人員の生産性が最も不確実な要素である。しかし人員の配置と生産性管理はプロジェクトマネージャの知識と経験に依存している。そこで、プロジェクト管理の効率化を進めるためにはプロジェクトマネージャが持つ知識の共有が望まれる。またプロジェクトの遂行状況を順調と判断するか、あるいは問題ありと判断するかには人の感覚が大きく関与している。例えば、プロジェクトの進捗管理における進捗測定は担当者に対するヒアリングにより行う、しかし担当者の進捗に対する感覚と実際の物の出来には差が存在するため、プロジェクトマネージャはその他の情報と過去の経験を用いて進捗状況を判断する。従って、正確なプロジェクト管理には以下の2点が必要である。
(1)正確な進捗測定方法の確立。
(2)プロジェクトを円滑に進めるための知識の共有。
そこで、本研究では人の感覚を排除した進捗測定方法と知識を記録するための知識登録のジャストタイミングを得る方法を検討したので報告する。
2. プロジェクトの遂行と知識登録
プロジェクト現場の進捗管理はプロジェクトマネージャの知識や経験に依存しているにも拘わらず、プロジェクトマネージャが持つ知識の記録と伝承は進んでいない。その理由の1つにプロジェクトマネージャは多忙であるため、知識を登録するタイミングを失っている事がある。加えてプロジェクトの置かれた状況は複雑であり知識利用の前提条件も複雑であるため知識の登録は容易ではない事が挙げられる。例えば現場では図1に示す様に複数のプロジェクトが並行実施されているため、知識登録を行うには複数のプロジェクトに関する環境情報の登録も必要である、
図 1 開発資源の取り合い
また、複数のプロジェクトを統合したスケジュリングも熟練のマネージャの知識に依存している、その理由の1つにプロジェクトを円滑に遂行するための知識には図2に示す通り開発フェーズに沿って階層があり、複数のプロジェクトを統合的にスケジュリングするためには各プロジェクトのフェーズを考慮した複雑な調整が必要であるためである。よってスケジュリングに必要な知識も階層別に記録して利用できるように整備しておく必要がある。
図 2 知識の階層
3. プロジェクトの計画と進捗管理
プロジェクトには正確な予算計画とスケジュリングが必要である。予算とスケジュリングが適切でなければ進捗管理は成り立たない。プロジェクトの計画では通常、過去のプロジェクトとの比較を行い、類似のものがあれば過去の計画を基本計画として利用する。なければ、作業を工程や作業に分解した後、予想工数を積算したものを基本計画とする。次に要求項目に実現が困難なものがないかをチェックシートで確認を行い、リスクがあればリスク分の余裕を考慮することによりプロジェクトの予算とスケジュールの立案を行う。
そして、要求スペックと実現方法の対比を行い、開発リスクを洗い出す。そして図3に示す様なガントチャートを作成して工程の順序を確認した後、プロジェクトの実行に移る。そしてプロジェクトの進捗管理はガントチャートの消し込みと計画予算の消化状況を計画と比較することにより行なわれる。しかし進捗測定は一般的に、担当者にヒアリングを行うことにより行うため、担当者の感覚的な誤差を含む。そこで、進捗管理に於いては科学的な進捗管理法が求められる[1] [2]。
図 3 ガントチャート
4.  EVM
科学的なプロジェクトの管理手法としてEVMがある。EVMはプロジェクトの進捗管理を定量的に行う手法として今後の利用が期待されている。図4に示す様に従来のプロジェクト管理は費用計画(PV:Planned Value)と実コスト(AC:Actual Cost)の差異を管理するコストマネジメントであった、例えば従来のプロジェクト管理では図4のACとPVが乖離しない様に管理をする。一方、EVMでは図5に示す通り、従来のコストマネジメントに加えて、現在の成果物を金額的に換算した出来高(EV:Earned Value)を管理項目に加える。つまりEVMでは費用計画(PV)、実コスト(AC)と出来高(EV)を測定してプロジェクトをマネジメントする[3] [4] 。
EVMではCPI(Cost Performance Index)と呼ばれるコスト効率指数とSPIと呼ばれるスケジュール効率指数(Schedule Performance Index)を用いてプロジェクトの進捗を管理する。CPIとSPIの計算式は以下の通り。
プロジェクト完了時点の予算超過額は15%進捗時の予算超過額より小さくなることはないと言われており、プロジェクトの早期段階でのEVの測定は重要である[5] [6] [7]。従来のコストマネジメントでは実コストと費用計画を比較するだけであり、現時点での実際の成果物の出来高(成果物の金額換算)を計測しないので現時点での実際のプロジェクトの遅れを検知することが出来ない、しかしEVMでは図5のBに示すコスト差異に加えて、図5のAに示すスケジュール差異を知ることが可能になるため、より正確なプロジェクトの進捗管理が可能となる。若しEVがACを上回ればスケジュールは予定より進んでいることになる。図5の例では現時点ではスケジュールがA遅れており、費用的には予算をB超過している。従ってこのままの状況が続くならば、最終的には計画上の完了予算(BAC: Budget At Completion)に対して図5のD示す費用超過分を足したコスト予測(EAC:Estimate At Completion)となることが予測される。
図 4 従来のコストマネジメント
図 5  EVM
EVMではプロジェクトの出来高を金額で測定する。そこで出来高を正確に測定するための算出方法として出来高パーセント見積もり法+マイルストーン法が用いられる(以降見積もり法と呼ぶ)。見積もり法の目的は担当者の感覚と実際の出来高を等しくすることである。見積もり法では図3のガントチャートにあるマイルストーンに作業が達した場合にマイルストーンに設定してある出来高を計上する。出来高(EV)は費用で得られるため計画費用(PV)との比較が可能となる。作業がマイルストーンに達成しない場合には出来高は計上されない。作業がマイルストーンに達しない期間に於いてはマイルストーンに設定した費用を上限としてマイルストーンまでに要した作業時間に比例して出来高を計上する。若し、マイルストーン達成後に仕様変更や不具合の発生により、手戻りが発生した場合にはCPIとSPIを算出する①式又は②式の分母に手戻り分の費用を追加することにより補正を行う。追加となった費用は計画予算を圧迫するので、今後の工程削減や工程の融合による費用削減が必要となる。
5. EVMの課題
EVMでは正確な進捗管理測定が前提となる。しかし、出来高(成果物の金額換算)測定の元となる進捗率はスタッフの主観的な申告値であるため、正確な測定は困難である。実コスト(AC)と出来高(EV)の測定が正確でない場合には工程遅れや障害の発生を検知することが難しい。一方、ACはコスト集計システムを利用することにより自動的に収集することが可能である。しかしACと出来高は連動していない。例えば図6に実際のプロジェクトに於いて実コストと進捗を測定した結果を示す。図6に示す通り、実際のプロジェクトでは社内作業に加えて、設備の購入や外注への依頼作業があり、発注品の納品や外注への依頼作業の納品時に費用が計上されるため、実コストと進捗(出来高)は同期しない。特に外注へ発注した作業に関する実コストの計上は成果物の納品時期とは異なるので、実コストの計上時期を知るだけでプロジェクトの進捗を測定することは困難である。図6のプロジェクトの例では内部設計費:設備費:外注費の費用の比率は1:9:7である。タイムリーに管理できる出来高は社内設計費のみであり、費用計画全体の5%に過ぎない。実際にEVMを利用するに際しては外注発注分も含め、タイムリーかつ正確な進捗測定が課題である。企業によっては社内設計費を大きくして、管理可能な範囲を広げようとする動きも見られる。また、正確な出来高を算出する方法として、作業がマイルストーンに達していなくても作業過程で作成された報告書等の知的生産物を金額換算して出来高に加えることが考えられる。知的成果物も成果物である。ただし、知的成果物の金額換算方法は今後の課題である。[8]
図 6  出来高と予算の消化度合
6.コンカレントエンジニアリング
 プロジェクトを効率的に進める方法としてコンカレントエンジニアリング(CE:Concurrent Engineering)がある。コンカレントエンジニアリングとは図7に示す様に順番に作業を進めて行くのではなく、作業を平行して進めることにより、プロジェクトの工期を短縮する手法である。作業を並行して実行することにより人員が遊ぶことも少なくなる。
図 7 コンカレントエンジニアリング
コンカレントエンジニアリングでは一般的に3D-CADモデル等の共通のデータベースの設定を行い、担当者が設計、解析、検討情報を書き込むことにより、全ての担当者で情報を共有する。そして課題や問題点を共有することにより、工期の短縮を実現する。またコンカレントエンジニアリングでは最初にフロントローデイングと呼ばれる作業を実施する。フロントローデイングでは作業全体のボトルネックや作業の難易度を分析する、そして平行に実行可能な作業を平行して実行する作業計画を立てる。プロジェクトの実施に於いては計画の変更や問題の発生が工期遅延の原因となるため、コンカレントエンジニアリングでは計画段階で課題の洗い出しを行う。表1に企業にコンカレントエンジニアリングの実施状況を調査した結果を示す。
表1 コンカレントエンジニアリングの実施状況
CE:コンカレントエンジニアリング
7.プロジェクトの実行
プロジェクトを計画通り進めるためには効率的なプロジェクトの実行と速やかな課題解決が必要である。正確な進捗測定がなされない場合、進捗遅れの兆候を逃すことになり、打ち手が後手となり、進捗遅れを回復することが困難となる。一般的に進捗測定は担当者にヒアリングを行うことにより行われる。従来のプロジェクトに於いて、進捗遅れに対する打ち手の実施が遅れる原因の多くは担当者の感覚と実際の出来高との差異が原因である。出来高を感覚的に捉えてしまうため、進捗遅れの報告が遅れる。従って、正確に進捗を測定するためには担当者の感覚を排除することが課題である。加えて図1に示す様にプロジェクトは同時に複数実行されているため、計画から運用までの全ての段階に於いて、プロジェクト間で人や物、または資源の取り合いとなっているため、1つのプロジェクトで工程遅延、再製作、大幅な仕様の変更や追加の問題が発生した場合には他のプロジェクトから資源を融通することが必要となり、あるプロジェクトに於いて発生した遅れの影響は他のプロジェクトにも及ぶ。例えばあるプロジェクトから別のプロジェクトに要員を融通した場合、要員を応援に出したプロジェクトは工程が遅延するので、短縮できる工程の検討や要員不足を補うための対策が必要となる。また表1に示す通り、多くの企業でコンカレントエンジニアリングが実施されているため障害発生対策は複雑であり、対策立案には高度な知識を必要とする。
8. 生産性と知識登録
作業進捗の測定に当たっては作業の区切りを検知することが必要である。正確に作業の区切りが検知できれば作業時間と実コスト(AC)を関連付けすることが出来、正確なCPIとSPIを得ることが出来る。そこで作業の区切りを検出するために実コスト(AC)と出来高(EV)に加えて生産性を調べた。図8はあるプロジェクトで開発したプログラムの累積行数を示す。図8のAでは元々ある雛形をカスタマイズしたため、プログラム行数が減少し、Bでは仕様の変更により手戻りが発生してプログラム行数が減少した。そしてCでは外注からプログラムを受け入れたためプログラム行数が増加した状況を示している。
図8 プログラムの累積行数
そして図9は1日当りの生産性(行数/日)をグラフ化したものである。例えば生産性の高い部分は外注先から成果物の受け入れがあった箇所であり、生産性の低い部分は問題が発生したか、あるいは外注先のコントロールに時間が取られ、内部の開発が止まっている状態である。生産性が変化する点では作業が変化しているため、作業能率が変化する点を作業の区切りとすることが可能である。
図9 生産性の変化(全体)
図10に500日目から550日までの生産性の変化を示す。生産性がプラスの所では再利用可能な部品を利用して生産性が上がっており、マイナスの部分は製作ミスがあり、手戻りが発生して成果物がマイナスとなっている。実際に生産性が変化した時点で発生した事象を表2に示す。
図10 生産性の変化
図10に示した通り、生産性が上下する箇所には有効な知識が存在する可能性がある。このように生産性の変化を見ることにより内部や外注先で起きた事象の発生時刻を知ることができる可能性が高い。
表2 図10に於いて発生した事象
図11に示す様にEVに大きな変化がある場所にも何らかの出来事が発生して有効な知識が利用されている可能性が高い。有用な知識をジャストタイミングで登録出来れば、類似のプロジェクトにおいて問題が発生した場合に知識を流用することが出来る、そしてプロジェクトの円滑な進捗に寄与することが期待できる。
一方、プロジェクトは図12に示すように同時に複数実行されており、1つのプロジェクト中、あるいは複数のプロジェクト間で類似の作業が存在する[9] [10]。またプロジェクトの遂行中に仕様変更あるいは障害が発生した場合には工程追加となり、費用と工期が増大する。しかしプロジェクト管理では消化費用と工程を元の計画に戻すことが要求されるため、工程の削減または工程の短縮が必要となる。そこで類似の工程を時間的近傍に集めて実行することができれば、複数のプロジェクト間での工程の短縮や削除が可能となり、費用の増大を回避できる。複数のプロジェクトから統合的に類似工程を検索する機能が実現すればプロジェクト計画時ばかりではなく、障害発生時にも役立つことが期待される。
図11 EVの変化と知識
類似作業を時間的な近傍に集めるためには知識登録時に利用技術に関するキーワードを同時に登録することが考えられる。作業情報にキーワードを付加できれば、キーワードを元に類似作業の検索が可能となる。
図12 平行実施プロジェクト内の類似作業
     図13 類似作業の集約
類似作業の実行では類似の知識と資源を必要とする。そこで、プロジェクトの円滑な遂行に有効な知識の蓄積が進めば、図13の類似作業の集約に示す通り、知識に含まれるキーワードから類似工程を検索してスケジュリングすることが可能となる。すると業務遂行に必要な資源を集中することができ、効率的なプロジェクトの実行が期待できる。
図14 キーワード付き知識登録
図14に知識にキーワードを付加して登録する流れを示す。本件ではマイルストーン登録機能を持つ工程管理システムを試作した。本システムでは工程とマイルストーンを一元管理することが可能である。マイルストーンには外部仕様書承認のように具体的な成果物の登録が可能である、そして、マイルストーン達成時に成果物に割り付けられた費用を積算することにより、正確なEVの算出が可能となる。本システムでのEVの算出は以下のようになる。
EV=EV1+EV2
EV1:工程遂行のための作業時間(費用)
EV2:作成した図書や報告書を費用換算したもの
また、図15に示す様に試作したシステムでは工程に資料を対応付けすることが可能である。資料とはその工程作業で得られた知識や情報を記述したものである。
図15 試作した工程管理システム
図16に過去のプロジェクトで収集した知識の例を示す。図16に示す様に知識が利用された作業名とキーワードを同時に記録することにより、知識の再利用の可能性が高まる。
拡大
 図16 知識の収集例
9.  まとめ
本研究ではプロジェクトの進捗管手法としてEVMに生産性の計測を加えることを提案した。次に生産性の変化から検知した知識登録のタイミングを用いた知識登録の可能性を検討した。その結果、生産性が変化する箇所は作業の区切りである可能性が高く、生産性の変化を検知することにより作業の正確な進捗を測定できる可能が高いことが解った。そして生産性が変化するタイミングで知識を登録する事により、有効な知識の登録が可能であることが明らかになった。今後、生産性の変化を自動的に検知して、生産性が変化するタイミングで知識を登録する機能が実現すれば、知識登録を業務手順に組み込むことが可能となる。具体的には生産性が変化した時点で担当者にメッセージを自動発行することが考えられる。メッセージにより担当者に作業状況と知識の登録を促す。現状の進捗測定は管理担当者が各担当者に逐一、進捗状況と問題点をヒアリングして行っているため、知識の自動登録機能が実現すれば、ヒアリング作業が自動化されることにより、進捗測定作業の効率化も進む。また、キーワード付きの知識の蓄積が進めば、知識中に含まれるキーワードから類似作業を検索することが可能となる。そして類似の作業を時間的近傍に集めた工程計画が可能となる。複数のプロジェクトに於いて類似作業が集約できれば、作業実行に必要な知識と資源を集中した効率的なプロジェクトの実施が期待できる。すると従来は熟練のプロジェクトマネージャが各自のノウハウを使用してマネジメントしていた高度なプロジェクトマネジメントを経験の少ないプロジェクトマネージャでも行うことが可能となる。
謝辞
本研究はJSPS科研費24500266の助成を受けたものである。
参考文献
[1]木野 泰伸、成果物の量に基づいた進捗マネジメントとEVM、プロジェクトマネジメント学会誌 VOL.5 No.3, PP.11-15、2003
[2] 箱嶋 俊哉, モダンPM時代のPMツールと組織における展開, プロジェクトマネジメント学会研究発表大会予稿集 2005(春季), PP.84-88、2005
[3] プロジェクトマネジメント研究会編、政府のITサービス調達の運用に関する提言、2002
[4] 金子則彦、プロジェクトマネージャ完全教本、日本経済新聞出版社、2010
[5] クオンティン・フレミング、PMI東京訳監修、アーンド・バリューによるプロジェクトマネジメント、日本能率協会マネージメントセンター、2004
[6] M. Jeffery Tyler,Practical Project Evm: The Application of Earned Value Managment to Project Management,Springer,2011
[7] Paul S, Ralph ,Performance-Based Earned Value,IEEE、
2006
[8] S.Mochida,Knowledge Mining for Project Management and Execution,Journal of Advanced Computational Intelligence and Intelligent Informatics,VOL.15 NO.4 , Fuji Technology
Press,pp 454-459,2011
[9]持田 信治、行動手順スクリプトを使用した知識抽出に関する研究、 バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌VOL.9 No.1、PP. 19‐26、2007
[10] 持田信治、プロジェクト管理の観点から見たノウハウの数量化と評価、バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌VOL11 No2 PP.1‐6 、2009

環境情報の言語化による行動支援
ヒット: 17 開く 保存
状況
複数のプロジェクトが並行する環境下で、工程遅延やリソース競合が発生し、適切な対応行動の判断が困難になっている。
行動
環境情報や状況情報を言語化し、それに対応する行動データを紐付けて可視化する手法を提案した。
結果
現在状況と将来の予測、および取るべき対応行動が明確化され、資源分配や工期調整の判断が容易になることが期待される。
関連ルール: E-1: 明
このエピソード全体の関連ルール: E-1: 明 A-34: 生産
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詳細コンテキスト
【分析:状況】
複数のプロジェクトが並行する環境下で、工程遅延やリソース競合が発生し、適切な対応行動の判断が困難になっている。
【分析:行動】
環境情報や状況情報を言語化し、それに対応する行動データを紐付けて可視化する手法を提案した。
【分析:結果】
現在状況と将来の予測、および取るべき対応行動が明確化され、資源分配や工期調整の判断が容易になることが期待される。
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【本文】
経験駆動型人工知能による発想の可能性に関する基礎研究
(3秒ルールインテリジェンスとマルチモーダルAI実現に向け基礎研究)
Knowledge Collection System for Project management
Abstract: This Paper describes a trial of Knowledge Collection System for Project management. This system can record the know-how knowledge consisting of the several personal chips of knowledge. Environment and effect is important to use knowledge which is collected by this system. And it is a problem to measure the effect of use of knowhow knowledge in future.
1. はじめに
近年の人工知能の発展に伴い、コンピュータによる創造の可能性への期待が高まっている。しかし、そもそも人間はどのように創造的な活動を行うのかと言う疑問が生じる。そこで、本研究は人の経験情報を蓄積して評価する能力の模擬を行い、次ぎに、人が新しい価値を創造するメカニズムの解明と人工知能による創造の可能性を解明する基礎研究を提案する。
コンピュータによる創造又は創造のサポート
近年、甚大な災害や事故が発生しており、災害現場や極限作業現場では複雑な条件下での迅速な意思決定が求められる。そこで本研究は災害現場や極限作業現場において、人を支援できるマルチモーダルAIを提案する。マルチモーダルAIは環境条件と目的に沿って自律的に意思決定のできるAIであり、経験情報に基づく判断を行う。人の経験情報は様々な属性のデータと情報から構成される。マルチモーダルAIの実現に向けてはまず、マルチモーダルデータを扱うデータベースの実現が必要であり、マルチモーダルデータとは音声、画像、テキストと各種環境情報である
2. 3秒ルールインテリジェンス
2.1 3秒ルールインテリジェンス
3秒ルールインテリジェンスとは
2.2 経験情報の登録に向けて
2.3マルチモーダルデータベースについて
2.4環境情報の統合と取り扱い
様々な情報を統合した情報の近い情報を検索する、または取り扱う。
2.5予測機能について
現状にあえあせて、予測するためには、予測される状況が複数存在することにより、迷いが生じる。また、予測結果の評価が悪い場合には不安が生じる。現状に基づく、行動結果が明確になれば、人は不安から開放される。
製造業とノウハウ伝授
本研究では推奨行動を生成する。推奨行動は図9に示す3秒ルールインテリジェンスにより行動遷移列として生成される。3秒ルールインテリジェンスは環境観測空間に配置された経験情報から行動遷移列を生成して推奨行動とする。
図9 3秒ルールインテリジェンス
ノウハウとは通常、製品の製作または製造技術と
ある。プロジェクトの遂行において、コスト管理や工程管理の効率化は進んでいる、しかし現場作業における、ノウハウの測定、記録、蓄積は進んでいない(図 1参照)。
* 財務会計,販売管理,在庫管理,生産管理,人事給与管理を取り扱うシステム
**資材手配等、資材調達を計画するシステム
図 1 プロジェクト管理の構造
加えて、担当者別には複数の作業が錯綜する環境をうまく調整するためのノウハウを所有しているにも拘わらず、ノウハウの共用や伝授は進んでいない(図 1参照)。
一方、製造方法には組み合わせとすり合わせ方法があり、高い生産性を維持しながら、プロジェクトの目標を達成するためにはすり合わせと組み合わせノウハウを効果的に組み合わせて利用することが必要である。
すり合わせとは客先の要求仕様に合わせて自社の技術を使って設計、製作することで、自社の強みや製品の特徴点を生み出す製造方法である、
一方、組み合わせは基本的には購入品や汎用部品を組み合わせて製造する製造方法のことで、工期の短縮と費用削減を図り、単純に要求仕様を満たすための製造方法である。
すり合わせと組み合わせをどのように組み合わせてプロジェクトを成功に導くかは組織の強み、弱みそして、所有する製造技術や製造方針が背景となる。製造方針がノウハウ収集方針の柱となり、特にすり合わせについては細かな製作技術の伝承が必要である。
2.2 プロジェクト管理とノウハウの関係
プロジェクト管理においてはコスト、工期、品質管理が目的となる。しかし、計画時にはコスト、工期設定に関して不明な要素があるため、コスト、工期には余裕コストと余裕工程を設定する、この余裕が利用されるのは材料費、工賃の変動や工程遅延対応に加えて、客先仕様の変更に伴う設計費用の増加や製造ミスによる再製作等が発生した場合である。
しかし、後者の人的なミス等による費用追加や工程遅延は担当者の能力に大きく左右され、優秀な担当者が担当する場合には余裕幅の消化も少ない。        
そこで、担当者の能力により左右される余裕部分については担当者の持つノウハウや工夫点を有効に利用することにより、プロジェクトの計画精度を高めることができる(図 2のAの余裕部分)。
図 2 プロジェクトの計画
プロジェクトの実施における生産性の向上には費用、工程等の計画精度の向上が必須であり、そのためには組織が過去に蓄積したノウハウや不適合情報の効果を数値化して評価を行い、計画に織り込むことによりプロジェクトの計画精度向上が期待できる。
通常のプロジェクト計画においては基本コストに加えて、追加費用となる余裕は設定されている、しかしコスト、工期が減少する方向の期待余裕は想定されていない(図 3の赤枠の部分)。
図 3 コストの組み立て
 ただし、上記に示す様に数値化して効果の期待度を評価する必要のあるノウハウは、一品生産(個別受注生産)に関するものであり、ライン生産の場合には効果的な工夫やノウハウは作業者個人の能力ではなく、製造ラインの標準工程として組み込まれる。
図 4 リスクと工夫
従来から、プロジェクトの計画や遂行においても、リスクの算出や管理は実施されている(図 4参照)、しかし工夫点やノウハウの数値化を行い、プロジェクト計画に反映することはなされていない。
プロジェクト計画においてノウハウ・工夫の利用を期待することは担当者の能力開発を重視することとなり、ノウハウの記録と伝授の必要性の基礎となる。
プロジェクトの規模と生産
 プロジェクトの生産性は規模に反比例して悪化する、その理由はプロジェクト規模が大きくなるとプロジェクト内容は当然、複雑となり、参加人員の数が増加するためである、プロジェクト規模が大きくなると情報伝達や作業手順に関する打ち合わせ時間や管理業務時間が増加して生産性が低下する(図 5参照)。
図 5 プロジェクト参加人員と生産
そこで、プロジェクトの生産性低下防止として以下の3つの対策がある。
情報伝達の効率向上を図り、各人員の作業の見通しを良くする。
これまでに蓄積したノウハウや不適合情報を効果的に利用して、生産性の向上を図る。
並行して実行されるプロジェクト間で競合する資源利用に関して効率的な利用スケジュールを立案する。
通常、プロジェクトは複数実行されているため、担当者や資源が競合する状態になっており、担当者や資源を含むプロジェクト実行環境の管理が必要となる。組織が高い競争力と生産性を維持するためにはプロジェクトの規模が拡大した場合でも、生産性を低下させないノウハウ・工夫の利用が必要となる。
ノウハウの数値化
プロジェクト管理の目的は品質、工期、コストの確保と工期遅延、品質低下、予算超過を防止することである。プロジェクトを適切に管理することは組織運営に寄与する。そこで、プロジェクトの計画段階において、組織が過去に蓄積した不適合情報やノウハウ情報を数値化してプロジェクト計画に織り込むことにより、プロジェクトの計画精度の向上と管理目標の数値設定が可能となる。そこで、本件では以下のようなプロジェクトのコスト目標設定式を提案する。以下の式中のマイナス部分はコストと工期が減少する項目である。
(1)プロジェクトコスト見積もり=
基本コスト+追加余裕コスト+外部要因追加コスト-外部要因コスト減効果-ノウハウ利用効果―①式(2)プロジェクト工期見積もり=
基本工期+追加工期余裕+外部要因遅延工期-外部要因工期減効果-ノウハウ利用工期減効果――②式
プロジェクト目標の数設定が可能になれば、次にプロジェクト進行状態の数値的評価が可能となる。
プロジェクトの進捗評価を以下のように設定する。
(3)プロジェクト現状評価=
基本消化コスト+追加コスト+外部要因追加コスト+追加工期コスト換算-ノウハウ利用コスト減効果-外部要因コスト減効果-ノウハウ利用工期短縮効果コスト換算-外部要因工期減効果コスト換算
3.目的
3.1プロジェクト目標の数値化
プロジェクト遂行中には、多くの課題が発生して、その度に課題解決の必要性に迫られる、しかし、発生する課題は複雑であり、課題解決手法の立案は個人の問題解決能力や製造能力に左右されることが多い。個人の問題解決能力を高めるためには、問題を解決しようとする高いモチベーションを維持することが重要である。高いモチベーションの維持にはチームワークとチームが共有できる数値目標が必須である、そこで、必要な数値目標とノウハウや不適合の効果、損失を数値に変換することを提案する。プロジェクトで設定するべき数値目標を以下に示す(表 1参照)。
表 1 プロジェクトの数値目標
本件では上記中のノウハウ、不適合情報の数値化とプロジェクト進行状況の可視化方法について検討した。
プロジェクトにおいて、適切な計画を立てるためには自社の設計、製造の力を正しく把握することと、客先の評価点に対して適切な結果を提示することが重要であり、現場の強さ、弱さを理解してプロジェクトの計画、管理を行うことにより、リスクの排除と目的達成が期待できる。
自社の強さ、弱さの数値化とプロジェクト目標への反映そして、プロジェクト進捗の数値管理は今後の課題である。
3.2ノウハウの数値化とモチベーションの維持
製造技術の伝承においては単なる製造技術だけではなく、材料手配、段取り等の見通しが必要である、更に顧客の要求や製品の利用方法を理解して始めてノウハウ・工夫を生かした良い製品ができる。
ノウハウ伝授を支援するためにはプロジェクト進行中に発生する課題を共有して、作業者の見通しを良くすることが必要であり、モチベーションの維持には不適合の発生やノウハウの利用を数値化して担当者が認識できるようにすることが必要である。
工夫やノウハウ利用による改善効果を費用に対する評価ポイントを設定して実際の状況を幾つか測定した(表 2参照)、その結果、実際の費用的貢献度よりも担当者の貢献度感覚は低いことが示された(図 6参照)。
表 2 改善効果の評価
図 6 効果金額と担当者の感覚
また、不適合発生による損失費用に対する評価ポイントを設定して実際の状況を測定したところ(表 3参照)、実際の費用的損失よりも担当者の感覚は高いことが示された(図 7参照)。
担当者のモチベーションを維持するためには工夫点やノウハウの利用が適切に評価され、担当者も貢献度を理解することが重要である。
そして発生する課題を数値化、文字化して可視化することにより、遂行状況の把握とチーム内の情報共有が期待できる。
表 3 損失金額の評価
図 7 損失額と担当者感覚
4.環境情報と状況情報の共有
4.1環境状況の言語化
プロジェクトの進行において、環境変化への対応やリソース(人員や機械等)の競合を避けることが必要となる。そこで、環境情報を言語化して、現在の状況を把握することが考えられる。更に環境情報を言語化したデータに必要な対応行動データを同時に持たせることにより、環境状況の把握と行動支持が可能となる。例えば製作状況が単に製作遅れというだけでは、状況の把握と次に取るべき対応について理解があいまいとなる、しかし現在状況と予想される状態と発生する対応行動を全て言語表現して可視化することにより、現在と将来状況の把握と行動予測が可能となる。表 4に環境条件と選択するべき作業の例を示す、状況、条件によって作業方法が絞り込まれる。
また、表 5の製作遅れ状況に関しても、複数のプロジェクトが実行されている場合、以下のように表現することにより、資源の分配や工期の重なりを理解することが容易となる。本例の状態を図式化したものを示す(図 9参照)。
A 製作遅れ Bとの調整必要
B 製作遅れ Cとの調整必要
D 飛び込み作業 A、Bとの調整必要
表 4 作業と環境情報の例状況例
図 9では工程が輻輳して工程遅延が発生する場合、工程遅延を費用に換算して表現している。
表 5 環境情報の文字化
図 8 行動の連鎖
図 9 状況、対応行動と費用
状況情報を用いて微小作業情報を検索できれば言語化された環境状況に合わせて、対応行動一覧の可視化が可能となる(図 8参照)。
5.情報の記録
5.1ノウハウ・不適合登録システム
 ノウハウ、不適合を同一に評価するためにノウハウと不適合情報にコストの増減効果、工期の短縮、遅延効果を追加して登録可能なシステムを開発した。
登録可能な資料は不適合、ノウハウ・工夫情報である。管理情報としてノウハウ、不適合の内容に加えて、工期影響度、費用影響度、作業の難度(いづれも担当者の感覚)実際の効果、損失額の登録が可能である(図 10参照)。管理情報は同一のため、ノウハウ、不適合を同一に扱うことが可能である
図 10 不適合情報登録画面
検索では詳細検索画面と単純なフリーワード検索が可能である(図 11参照)。
図 11 情報検索画面(詳細)
検索結果は一覧表示され、詳細表示の指示を行うことにより、内容の確認が可能である(図 13参照)。
図 12 情報検索画面(簡易)
図 13 情報検索結果
検索結果(図 13参照)、詳細表示の例を(図 14参照)に示す。
図 14 内容の詳細表示例
6. まとめ
プロジェクト遂行では高い生産性を持って目標を達成することが求められる。しかしプロジェクト遂行中には、多くの課題が発生して、その度に課題解決の必要性に迫られる、しかし、発生する課題は複雑であり、課題解決手法の立案は個人の問題解決能力や組織が持つ製造能力に左右される、従って組織が高いプロジェクト遂行能力を持つためには個人の問題解決能力を高め、問題を解決しようとする高いモチベーションを維持することが必要となる。
高いモチベーションの維持には組織が蓄積したノウハウの利用と担当者の作業に対する見通しが重要であり、ノウハウを共有するためにはチームワークとノウハウを検索するための数値的評価が必要である。そこで本件ではプロジェクト管理の観点からノウハウの数量化と評価方法の検討を行い、ノウハウの利用効果を費用に換算してプロジェクトの進捗評価に加える試行を行った。その結果、工夫やノウハウを費用に換算することにより担当者のノウハウ共有に関する意識の向上が図れ、チームワークの向上とプロジェクトの生産性向上に寄与する可能性の高いことが認められた。
また、通常は幾つかのプロジェクトが平行して実施されており、あるプロジェクトの障害を解決するためには他のプロジェクトに影響を与えることが想定される、この場合、解決方法は複雑であり、課題解決には過去のノウハウを利用して、プロジェクトの生産性を維持することが必須となる。
そこで本件では環境情報や状況情報を言語化して、現在状況と今後の行動をコストと時間を測定軸として可視化することを提案した。本手法の有効性の検討は今後の課題である。 
更に、今後の課題はノウハウ・工夫情報と不適合情報に費用と工程影響を加えた情報の収集と対応行動情報の収集である。 
環境情報と行動情報を分離して扱い、環境が異なっても適切なノウハウ・行動検索が可能となることによりノウハウ伝授システムが実現する。
謝辞
 本研究の遂行において、適切な御助言並びにデータのご提供を頂いた、東條浩和氏(東亜機械工業株式会社)と古田陽介氏(株式会社アクシス)には心から感謝申し上げる。
参考文献
[1]人工知能学会、人工知能ハンドブック
オーム社、1990
[2] 持田 信治、行動手順スクリプトを使用した知識抽出に関する研究、 バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 vol.9  No.1(2007)
[3]H・ウイリアム・デトマー、論理試行プロセス、 同友社 
連絡先:
〒751-8503 下関市一宮学園町2-1
東亜大学 医療工学部 医療工学科
持田 信冶
電話  :0832-57-5061
Eメール:mochida@toua-u.ac.jp
海外工場での5S実践と対価の認識
ヒット: 15 開く 保存
状況
チェコの工場で「5S」を実践する際、始業前の作業準備を要請した。
関連ルール: N-1: 工場
行動
作業者に対し、始業前の準備を求めた。
結果
「作業準備は業務の一部であり、対価が支払われない作業はできない」と断られ、自主的な心構えとしての日本の「整理・整頓・清掃」との違いを痛感した。
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詳細コンテキスト
【分析:状況】
チェコの工場で「5S」を実践する際、始業前の作業準備を要請した。
【分析:行動】
作業者に対し、始業前の準備を求めた。
【分析:結果】
「作業準備は業務の一部であり、対価が支払われない作業はできない」と断られ、自主的な心構えとしての日本の「整理・整頓・清掃」との違いを痛感した。
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【本文】
整理、整頓、清掃と改善の起源といざ鎌倉
The origins of the Sort, Tidy, Cleaning, Kaizen and Kamakura
持田 信治*
Shinji Mochida
「整理、整頓、清掃」は「改善」と共に日本の製造業の基本姿勢である。しかし、最近の製造業の「5S」と「改善」は単なるコストダウンの手法として理解されている。そこで、本書は「整理、整頓、清掃、改善」の起源が「いざ鎌倉と職人気質」にあることを述べた後、古来の「整理、整頓、清掃、改善」と近年の「5Sと改善」とを比較する。そして、「いざ鎌倉と職人気質」から今後のイノベーション推進のヒントを得たので報告する。
キーワード:5S、改善、リーン生産システム、イノベーション
Ⅰ.はじめに
概要
 筆者は2016年の夏にチェコのビンペルクにある精密機械製造工場を見学する機会があり、見学の最後に工場長から「リーン生産方式と改善は同じか」との質問を受けた。筆者は当時、「リーン生産方式」と「改善」は別ものであると理解しており、答えに窮した。「リーン生産方法」は代表的な生産方法の一つで、仕様を満たす範囲でコストダウンを計り利益を得る生産方法である。製造方法には漢字の「物つくり」とひらがなの「ものつくり」があり、漢字の「物つくり」は仕様が決まった「有体物」を作る方法であり、仕様を満たす範囲で安く作ることが求められる。欧米での生産方法の基本的な考え方は「リーン生産方法」に代表される「物つくり」である。「リーン生産方法」は仕様を満たす範囲で安く作る仕様第一主義である。欧米では「リーン生産方法」と「KAIZEN」は同じであり、「KAIZEN」はコストダウンの手法として理解されている。一方、ひらがなの「ものつくり」は辞書には「物」以外のものを作ることとある1)。「ものつくり」は仕様が決まっていない理想製品を作る、挑戦的な「ものつくり」である。「ものつくり」は理想製品作りを目指す終わりのない挑戦的な創作活動であり、最高の「改善」とアイデアが必要である。従って、日本古来の「改善」や「ものつくり」は、仕様第一主義の欧米の「物つくり」とは対局に位置する。「物つくり」は安い部品で、なるべく簡単に組み立てられる安い製造方法を目指している。日本古来の「改善」は職人言葉「細工は流々仕上げを御覧じろ」に代表される行動様式であり、アイデアを生かすためには、アイデアが浮かべば直ぐに試行錯誤を行うことが必要であり、直ぐに作業に取りかかるためには「整理、整頓、清掃」による整えられた作業環境と常に作業に取りかかれる姿勢が必要である。常に作業に取りかかれる姿勢は「いざ鎌倉」である。「いざ鎌倉」は謡曲「鉢の木」に出てくる言葉で室町時代から戦国時代を経て現代まで伝わっている言葉である。「整理、整頓、清掃」と「改善」は戦国時代から平和な江戸時代に入ると職人の精神となった。そこで、本書は「整理、整頓、清掃」と「いざ鎌倉」の起源を探りつつ、欧米に広がる有体物を作る「KAIZEN」と日本の理想目標を目指す「改善」の違いを述べる。そして、今後のイノベーション推進に向けた「整理、整頓、清掃」と「改善」に沿ったアプローチ方法を考察する。「整理、整頓、清掃」の略称は「3S」であり、「整理、整頓、清掃、清潔、躾」の略称は「5S」である。一般的には「5S」は「3S」を拡張したものと理解されている。しかし本書では日本古来の何時でも行動を起こす準備をしておく姿勢を「改善」と「整理、整頓、清掃」として記述する。一方、欧米の製造業に於ける効率化を目指す姿勢を「KAIZEN」と「5S」と記述する。
Ⅱ.整理、整頓、清掃と武士道そして改善へ
1.武士道と整理、整頓、清掃
筆者の記憶では小学校の教室の正面に「整理、整頓、清掃」と書かれた額があり、先生から「整理、整頓、清掃」とは何時でも勉強が出来る様に環境を整えておくことだとの説明があった。つまり「整理、整頓、清掃」とは自分の作業道具を常に「整理、整頓」しておき、「清掃」によりワークスペースを確保しておき、何時でも勉強が出来るようにしておくとのことであった。何時でも作業に取りかかれる様に準備をしておく「整理、整頓、清掃」の考えは「いざ、鎌倉」の精神に始まる。「整理、整頓、清掃」は昼夜いつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかるという精神で、日本の創意・工夫とアイデアを重視する考えの基礎となっている。また、「源義経の鵯越の逆落し」に由来する「夜討ち、朝駆け」もビジネス好機を逃さない精神であり「いざ、鎌倉」と共に日本のビジネス精神の基礎をなしている。「整理、整頓、清掃」の精神は侍が各自の得物を常に手入れと鍛錬を怠らず「いざ」に備える姿勢で、安土桃山時代から戦国時代、江戸を経て、武士から職人の精神に反映されて、現在に至っている。常に「いざ」に備える姿勢が「いざ鎌倉」であり、「いざ鎌倉」は鎌倉時代の謡曲「鉢木」に出てくる言葉である。大正時代の尋常小學國語讀本にも「鉢木」は登場しており2)、明治から大正時代にかけても常に「いざ」に備えることの必要性は語られていたことが解る。いつでも一大事への準備ができていることは近代の「出船の精神」にも受け継がれている。武士は奈良時代の743年(天平15年)に「墾田永年私財法」が制定されたことにより始まった。私有地が認められたことにより、有力な荘園主や貴族は荘園を守るために武装集団が必要となり、荘園を守るための専門武装集団が発生した。そして、「貴人の傍らにさぶらふ人」から、「侍」つまり「武士」ができた3)。平安時代に入り、源氏や平家の武将と武士団が出来た。更に鎌倉時代に至って、武家政権が誕生することとなり、鎌倉幕府は禅宗に傾倒して、武道、礼儀を重んじる「武士道」が確立された。武士道の中心的精神は以下の3点である。まず、いつでも一大事への準備ができていること。次ぎに自分を改善するために鍛錬を欠かさないこと。そしてコンディションをきちんと保つ「摂生」「 節制」「 礼節」を守ることである。そして、「武士道」では常に一大事に備える準備と得物の手入れが求められた。例えば、得物の手入れについては北条重時(1198-1261)が作成した『六波羅殿御家訓』に「腰刀の錆びたる持つべからず、~不断に心用心あるべしとある」4)。得物の手入れと鍛錬を怠らず、一大事に備えることは武士道の中心的精神であった。武士が武道を重んじて、武器の手入れと鍛錬に余念がなかった理由として、武士は戦闘集団であったことと、武士には警備の役目があったことがある。具体的には、貞永元年(1232年)に北条泰時が「御成敗式目」(ごせいばいしきもく)を制定して武家の基本法典が定まり、守護の職務が「大犯三箇条」(だいぼんさんかじょう)として定められたことによる。大犯三箇条では、守護の職務は、まず鎌倉・京都での大番役(おおばんやく:警固のこと)の招集と指揮監督を行うこと、そして謀反人の捜索と逮捕、殺害人の捜索することであった。つまり守護の職務には警備の役割があり、日頃の鍛錬と武器の手入れが必要であった。また、天文年間(1532年から1555年)に吾川郡弘岡城主であった吉良宣経(1514-1550頃)の定目(ていもく)にも武士のたしなみとして武具を整備し、武芸の修練に心がけて軍役に精励することと記載されている4)。そして、守護大名が戦国大名に代わるにつれ、武士道に於ける武勇の必要性が高まって行った。武勇の高まりに合わせて、日頃の得物の手入れと鍛錬を怠らず、常にいざに備える「整理、整頓、清掃」の武士道の姿勢が確立された。
2. 「ものつくり」と「物つくり」に於ける利益の考え方
武士道は自分を高め、精進することが基本であり、「整理、整頓、清掃」は武士道に由来している。時代が平和な江戸時代になり、自分を高め、精進する「整理、整頓、清掃」の精神は職人に広がって行った。職人の利益は各自の技術とアイデアに基づいていた。例えば、一般的な製品の価格は製品に要求される基本機能(図1のG)に顧客からの高度な要求(図1のH)を加えた製品の妥当な仕様(図1のD)に応じて設定される。そこで、製造者はコストダウン手法、例えばLean production system手法等を使用して得た製品コスト(図1のE)と製品の妥当な価格(図1のG)との差を得て利益(図1のH)を確保する。つまり、妥当な製品仕様(図1のD)を維持する範囲で製作時間(図1のJ)が進むに沿ってコストダウンを図ることが「KAIZEN」であり、「KAIZEN」はより安く製品を作る方法を追求する。具体的には「KAIZEN」は作業の単純化と作業の一律化を進め、製作マニュアルを作成して、人件費の安い作業者を使用できるようにしたり、製品をより簡単な作りにしたりして、コストダウンを追求する。一方、古来の職人は顧客の視界にある製品は顧客が価格を決めてしまうので、類似品との価格競争となり、利益が得にくいこと、そして自分の持つ技術を発揮し難いことを知っており、より自分の技術が生かせる創造的な仕事を目指した。例えば、職人言葉にある「簡単な仕事はしない」が職人の利益に対する考え方を物語っている。また「細工は流々、仕上げをご覧じろ」は、作品の製作技術は職人別であり、仕上げで勝負することを示している。職人は製品ではなく、職人は自らの技術とアイデアを用いて、顧客の視界を超えた作品を製作して、顧客の所有欲を満足させることにより高い利益を得ていた(図1のF)。図2にM・ロジャースのイノベータ理論を示す。図2は顧客全体を100%として、客層別の割合を模式的に示している。職人は、図2に示すイノベータを相手にすると利益が得られることを知っていた。画期的な製品、つまりイノベーティブな製品はまず、新しい物好きなイノベータが購入する。イノベータは価格を気にしないので、売り手は自由に価格設定ができ、利益を得る。いわゆる先駆者利益である。そして製品が成熟して一般化すると客層は最終的には図2の4層目にあるレイトマジョリティに変化する。レイトマジョリティは高度な機能には感心がなく、基本機能がありさえすれば、より安いものを購入する。
図1 職人の利益の考え方
図2 エベレト・M・ロジャースのイノベータ理論 (理論に基づき筆者作成)
3.「整理、整頓、清掃」と「改善」の広がり
日本古来の「整理、整頓、清掃」と「改善」は理想目標を目指す。例えば、「整理、整頓、清掃」の「整」は古典に「整は正なり」とあり、ゆがんだ形を真っ直ぐにすることが「整」であり「正」である。更に「整」は真っ直ぐにする、不純物を取り除くという語源から5)、「整理」は乱れたものを整える、または不必要なものを取り除くとの意味である6)。一方、「改」の語源は誤りを改めて正しくすることであり、「改善」は「改良」などと同様にreformやimproveの訳語として明治時代に作られた和製漢語である3)。つまり、「整理、整頓、清掃」や「改善」はよい方向へ改めることであり、終わりのない活動である1)。ただし、「改善」は先に述べた様に明治時代に作られた言葉であるため、武士道では精進などと呼ばれたと思われる。精進は大乗仏教の六波羅蜜修行の4番目の修行であり、悟りを目指す終わりのない活動である3)。一方、海外で使われている「5S」と「KAIZEN」は利益創出のためのコスト最適化手法であり、バリュー(金銭的価値)を高めることを求めており、明確に目標利益の創出を目指す活動である。筆者は図3に示すチェコの計測機械メーカの工場を見学する機会があり、工場長の話から海外では「改善」はコスト最適化手法として知られていることが理解できた。また、チェコのプラハ経済大学(Prague University of Economics and Business)にて5Sゲームという講義を見学した(図4参照)。講義では「改善」と「無駄」どちらも生産性向上の手法として説明されており、目標は明確であった。具体的には5Sゲームではレゴの飛行機模型を教材にして、数人でチームを組み効果的な組み立て方法を考え、どのチームがある制限時間内に多く組み立てるかを競う講義であった。
図3 チェコのビンペルクにあるローデ・シュワルツの工場(筆者撮影)
図45Sゲーム講義の様子 その1(筆者撮影)   5Sゲーム講義の様子 その2(筆者撮影)
海外では「5S」も広く知られており、「5S」の最後の2つの「S」は「躾」と「清潔」である。筆者がHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)に係わる食品関係の業務に従事している時には、「躾」とは作業着、エプロン、マスク、帽子を付けてほこりを落としてから食品工場に入ることであり、白線を踏まないなどの職場のルールを守る習慣を身に付けることが「躾」であった。そして、食品工場の「清潔」とは手を石けんで洗い、更にアルコールで消毒を行う、いわゆる化学的な清掃であった。「清潔」を改善活動の本で調べると「5S」を維持することとある。また、「清掃」と「清潔」の英語訳は同じ「Cleaning」であり区別がない。日本の「整理、整頓、清掃」はいつでも作業に取りかかるための心構えであるのに対して、海外で広がる「5S」は製造現場のルールとなっている。心構えは個人の行動指針であるのに対して、ルールは業務の規則である。例えば、チェコのある工場で「5S」を実践するとのことで、始業前に出社して作業準備するよう要請した所、作業準備は業務の一部であり、対価が支払らわれない作業はできないと作業者に断られたそうである。理想を求める「改善」と「整理、整頓、清掃」の自主的心構えは、明確な額の利益を追求する「KAIZEN」と対価が必要な「5S」とは全く別である。
4.整理、整頓、清掃」といざ鎌倉
「整理、整頓、清掃」とはいつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかる心構えであり、「いざ鎌倉」の精神に由来する。「いざ鎌倉」は室町時代に成立した謡曲「鉢木」に出てくる言葉で、鎌倉に何かあればすぐに鎌倉に駆け付けるというものである。当時、すべての武士が鎌倉に住んでいたわけではないため、常に鎌倉での争いへの準備が必要であったことが「いざ鎌倉」であった。ただ、鎌倉に駆けつけるのは恩賞、つまり利益を得るためであり、「いざ鎌倉」は利益のためであった。謡曲「鉢木」の主人公の佐野源左衛門常世が、宿を貸した旅僧(諸国行脚中の執権北条時頼(最明寺入道))に対して語った言葉に「今にても鎌倉に一大事あらば、千切れたりとも具足を着け、錆びたりとも長刀を持ち、痩せたりとも馬に乗り、一番に馳せ参じ、合戦始らば一番に敵と討合ひて死なん覚悟なれど」がある。この有名な言葉は当時の御家人は、鎌倉で何か騒動が起こったときには、すぐに鎌倉にはせ参じる体勢であったことを現している6)7)8)。「いざ鎌倉」の言葉が登場する「鉢木」は室町時代の観阿弥(1334~1384)作又は世阿弥の作と言われており、2度の元寇の後の作品である。元軍侵攻の頃、武士は一大事に備えて、得物の手入れと鍛錬に余念の無い状況であった。当時、鎌倉幕府は刀鍛冶を鎌倉に集める等、日本刀の製造を支援した。そして、太刀と槍は2度の元寇の後、めざましい性能向上があり、名刀「正宗」が登場するのもこの時代である。
5.「鉢木」成立の時代背景
「鉢木」からわかるのは、まず鎌倉では騒動が頻発したことと、次ぎに鎌倉に一大事ありと聞けば、諸国の御家人は先を争って馳せ参じ、幕府の着到状(出席簿)に姓名を記録して恩賞を期待していたことである。このようなことは鎌倉時代特有のことで、他の時代にはあまりみられないため、一大事に備える言葉として、「いざ鎌倉」という言葉は現在まで残ったとも考えられる。一大事ありと聞いて、御家人たちが鎌倉に駆けつけたという記述は、鎌倉幕府の歴史書である『吾妻鏡』4)に散見される。例えば吾妻鏡の元久2年(1205)にある「畠山重忠、討たれるの」項には「軍勢が由比ヶ浜の辺りを先を争って走った」とあり、先駆けの様子が表現されている。しかし、争いが最も多いのは、源頼朝の時代ではなく、鎌倉中期の北条時頼(1227-1263)の時代であった。北条時頼は摂家将軍を追放した上、三浦氏を滅ぼし、北条氏専制政治への道を開いた。「時頼」の時代は、いつ何が起こるかわからない不安定な社会状況であった。謡曲「鉢の木」には北条時頼が登場することから「いざ鎌倉」は、当時の不安定な史実を反映している。「鎌倉幕府の歴史を記載した「吾妻鏡」には、源頼朝が挙兵した治承4年(1180)から六代将軍宗尊親王が鎌倉から京都に送還された文永3年(1266)までの歴史を記載している。一方、「鉢木」は観阿弥(1334~1384)の作と言われており、「鉢の木」は「吾妻鏡」の後の作であるため、鎌倉武士の精神の全体像を反映していると言える。また、北条幕府に起きた2度に渡る元寇の役も、常に戦闘に備える精神である「いざ鎌倉」が維持された理由と考えられる。2度に渡る元寇とは文永の役(1274)と弘安の役(1281)であり、当時、北条時宗(1251-1284)は2度の元の軍を退けた。元寇の役に於ける勝利は北条武士の大きな働きと神風によるものとされている4) 。福岡市の東公園には元寇を退けたとされる日蓮聖人の像(図5参照)があり、日蓮聖人の神風は現在まで語り継がれている。日蓮聖人は「立正安国論(1260)」を北条時頼(1227-1263)に宛てに送り、外的の襲来を警告したとされており、「立正安国論」も当時が不安定な情勢であったことを示している。2度の元寇は日本の武士の装備にも変化をもたらした。元軍の鎧は真綿を何層も重ねた構造であり、当時の軟鉄で作られた武士の太刀では切ることが出来なかった。そこで、鎌倉幕府は各地から刀匠を集めて太刀作りを奨励した。そして刀匠、五郎入道正宗がついに日本刀の製造方法を完成させた。日本刀の製造方法は軟鉄の鉄に鋼鉄を巻いて、鍛えた後、焼き入れをする工程を繰り返す方法であり、良く切れるが、折れない日本刀が完成した。名刀正宗の完成である(元寇記念館資料より)。鎌倉幕府後の武士にも一大事に備える心意気があったことは土佐の「一領具足」にも見られる。「一領具足」は半農の武士であり、長宗我部元親(1539-1599)が安芸国虎攻めにあたり、兵力増強のために思いついた武士の身分である。「一領具足」は耕作時に槍の柄に草鞋(わらじ)と兵糧をくくりつけて田の畦(あぜ)に立てておき、有事の時には武装して直ぐさま、駆け付けるという生活であり、土佐物語には「一領具足と申すは、僅かの田地を領して、常には守護へ動仕(きんし)もなく役もなく、己が領地に引き籠り、自らたがやし、くさぎり、諸士の交はりもせされば、礼儀もなく作法もなく、明け暮れ武勇のみを事として、田に出づるにも、鎗の柄に草桂・兵糧を括り付け、田の畔に立て置き、すはと言へば鎌鍬を投げ捨て走り行く。鎧一領にて着替への領もなく、馬一疋にて乗り替へもなく、自身走り廻りければ一領具足と名付けたり。弓・鉄胞・太刀打ちに調練して、死生知らずの野武士なり」とある9)。「一領具足」は有事の際には戦場に馳せ向い、弓、鉄砲、大刀打に鍛錬をして、勇猛かつ命知らずの野武士であった。「いざ鎌倉」の「いざ」と「一領具足」の「すは」は一大事に備える鎌倉幕府から戦国時代の武士の共通の心意気であった。
6.鎌倉幕府の「いざ鎌倉」はどこに
鎌倉幕府に始まる武家政治は、源頼朝が1192年(建久3年)に朝廷から「征夷大将軍」に任命され、鎌倉幕府を開いたことから始まる(*所説あり)。源頼朝は治承4年(1180年)、伊豆で反平氏の軍を挙げた頼朝を討つため京からやってきた平家軍を富士川の戦いで破った。そして源頼朝は図6にある鎌倉の大蔵(雪ノ下)の屋敷に入り、鎌倉が武家政権の政治の中心地となった。更に源頼朝は図7に示す元八幡を現在の鶴岡八幡宮の地に移して町づくりの中心とした。最初の幕府は大倉幕府(1180-1225)であり、次に幕府は宇都宮辻子幕府(1225-1236)となり、更に幕府は若宮大路幕府(1236-1333)へと変わった。また頼朝は図8の永福寺(ようふくじ)を建立して、合戦で亡くなった将兵の鎮魂のために建立した。鎌倉幕府では禅宗が奨励され、「武士道」の精進の精神が成立した。そして、「武士道」は「鉢木」に描かれている様に常に得物を手入れと鍛錬を怠らず、一大事に備えることが基本姿勢となった。  
図6幕府跡(左から大倉幕府、宇都宮辻子幕府、若宮大路幕府)(筆者撮影)
図7元八幡 (筆者撮影)         図8永福寺跡 (筆者撮影)
7.職人気質
「整理、整頓、清掃」はアイデアが浮かんだ時に直ぐに作業に取りかかる精神であり、「改善」と共に、唯一の作品を求める日本古来の職人の精神である。一方、イノベーティブな商品も顧客の視界にない、唯一の製品である。21世紀最大のイノベーティブな製品の一つにスマートフォンがある。現在のスマートフォンの原型は2007年にスティーブ・ジョブズ氏が発表したiPhoneである。iPhoneはタッチパネルとグラフィカルインターフェースを備えていた。初期のスマートフォンは図9に示す様に下や横に小さなキーボードを備えた物で、使い勝手は良くなかった。また当時の多くの携帯電話は折りたたみ型の電話であり、iPhoneは多くのユーザにとって見たことのない電話であった。しかし、iPhoneのグラフィカルインターフェースは1984年にAppleが発表したマッキントッシュで採用されており、更にマッキントッシュはパーソナルコンピュータでは初めて、ポインティングデバイスとしてマウスを採用していた。そして、スティーブ・ジョブズ氏はグラフィカルインターフェース技術を電話に転用することによりiPhoneを完成させた。iPhone発表時にスティーブ・ジョブズ氏は「電話を再発明した」と語った様に当時の電話のイメージは一変してスマートフォンとなった。イノベーティブな製品とはiPhoneの様に各自の固有技術と他の何かを組み合わせることにより生まれる。従ってイノベーティブな製品開発には各自の固有技術を基礎にして、理想目標を実現することが求められる。例えば、続江戸職人綺譚10)に登場する江戸時代の職人の道具自慢話では、「腕のいい大工が道具に凝って稼ぎのほとんどを道具につぎこみ年がら年中素寒貧で・・」や、「荒仕工鉋(かんな)・・こちとら大工の肝玉をふるい立たせてくれなくちゃいけね」にある通り、職人は理想の作品を製作するために、己の技能の修練と技術を発揮するための道具の手入れに余念がなかった。また職人は、「自分の仕事に自分で値段をつけて、それが売れるようになりまして」11)とある通り、稼げる製品には技術とアイデアが必要であり、お客が求めるものだけを作っていたのでは稼げないことを知っていた。つまり、古来の職人はイノベーティブな製品を目指していた。イノベーションやイノベーティブな製品の創造には古来の職人気質と「整理、整頓、清掃」と「いざ鎌倉」の精神が必要である。
図9 キー付スマートフォン (筆者撮影)
8.製品の魅力の変化とイノベーション
ドラッカー氏やシュンペーター氏によるイノベーションの定義では、画期的な製品やサービスの導入により経済に新たな好況局面を創り出すこととある。つまり、イノベーションとは必ずしも製品を生み出すことではなく、販売方法やサービスも含まれる。しかしイノベーティブな製品に限ると、イノベーティブな製品の定義は次の2つである。一つは開発者が価格を設定できること、そして2つめは顧客の視界に無い製品であり、顧客は自分の財布からお金をやりくりしても捻出するほど、魅力ある製品であること。例えば顧客が食費を節約してでも欲しくなるくらい魅力ある製品がイノベーティブな製品である。本カテゴリに入る例は、初期のiPhoneである。しかし、製品は次第に一般化して、差別化することが難しくなる。製品の差別化が難しくなると価格競争になり、利益を得づらくなっていく。つまり製品の一般化(コモディティ化)が進む。一方、製品の成熟度が進むに従い、客層も変化する。図2のレイトマジョリティが製品を購入する状況になると、製品の差別化は難しく、価格競争となる。するとメーカは大量生産による薄利多売となり、大規模な生産設備の投資が必要となる。しかし、設備投資の時期を見誤ると経営的な大打撃を受ける。例えば液晶ディスプレイが成熟段階の製品であり、画面が精細度であったり、高品質なスピーカを搭載したりしていても、レイトマジョリティには製品の魅力が届かず、差別化にはならない。最近では、車が成熟段階に入っている。ビジネスとは、物やサービスの流れと対価がループを形成することである。対価は金額で評価されバリューとも呼ばれる。しかし、バリューは物の機能や性能だけで決まるものではなく、感覚的な要素にも左右される。バリューを左右する要因として、例えば、ネームバリューや希少性やコラボレーションがある。製品のバリューには顧客の主観が大きく影響する。筆者が商品に対する価値観の調査から、顧客の主観とは客の評価軸のことで製品が持つ評価軸が多いほど、バリューは高まることが解った11)。例えば、図10に元の製品と野球チーム名を冠したコラボ製品と他社の製品のバリューを示す。野球チーム名を冠したコラボ製品は価格が上がる分、価格の評価は下がる。しかしコラボ製品は満足性や楽しさ・記念度が上がるため、価値の大きさを示すグラフの大きさは元の製品を上回り、結果的に販売増が期待できる。最近の製造業で主流となっているリーン生産方式は無駄を省いてコストダウンを図る。また製造業で採用されているシックスシグマは作業を平準化して、むりとむらのないマニュアル主義による製造を実現して、コストダウンと歩留まりの向上を図る。リーン生産方式では仕様に対するオーバースペックも無駄となる。しかし、オーバースペックはイノベータに対する製品の魅力の1つであり、イノベーティブな製品に必要なものである。仕様第一主義、コスト第一主義ではイノベーティブな製品は生まれない。理由は仕様第一主義、コスト第一主義では顧客の主観に響かないからである。顧客の主観を刺激するイノベーティブな製品は理想目標を掲げることによりイメージが浮かぶ、そして、アイデアが浮かんだ時に直ぐに試作に取りかかるためには「整理、整頓、清掃」が必要である。イノベーティブな製品を生みだす姿勢を表現したものが日本の「整理、整頓、清掃」と「改善」である。
図10 製品の評価軸と評価の様子 (筆者作成)
謝辞
本書の作成あたり、助言と貴重な情報を頂いた鎌倉市鎌倉歴史文化交流館殿とオーテピア高知図書館の横山 有弐氏に感謝申し上げる。
引用文献
1) 岩波国語辞典、岩波書店、2019
2)尋常小學國語讀本1918(大正7年)卷1,文部省、国立国会図書館デジタルコレクション
3) 小松寿雄,新明解語源辞典,三省堂,2011
4) 西田友広,吾妻鏡,角川文庫,2021
5) 加納喜光,漢字語源語義辞典,1940
6) 平泉澄,明治の源流,時事通信社、国立国会図書館 デジタルコレクション,1970
7) 鉢木,国立国会図書館デジタルコレクション
8) 森延哉,駒とめて袖うちはらう-謡曲「鉢木」考,(株)文芸社,2010
9) 山本大(やまもと たけし),長宗我部元親 その謎と生涯,新人物往来社,2010
10) 佐江衆,続江戸職人綺譚,新潮文庫,2003
11) 永六輔,職人,岩波書店,1996
12) 持田信治,心理的価値評価によるパッケージデザイン,第67回 日本経営システム学会 全国研究発表大会予稿集,pp148-149,2021
小学校での「整理・整頓・清掃」の教え
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状況
小学校の教室に掲げられた「整理・整頓・清掃」の額と、先生による指導。
行動
「いつでも勉強ができるように環境を整えておくこと」という教えを実践し、始業ベルと同時に作業に取りかかれる準備を習慣化した。
結果
「整理・整頓・清掃」を、単なる掃除ではなく「アイデアが浮かんだ時に直ちに作業に取りかかるための心構え」として理解する基礎となった。
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詳細コンテキスト
【分析:状況】
小学校の教室に掲げられた「整理・整頓・清掃」の額と、先生による指導。
【分析:行動】
「いつでも勉強ができるように環境を整えておくこと」という教えを実践し、始業ベルと同時に作業に取りかかれる準備を習慣化した。
【分析:結果】
「整理・整頓・清掃」を、単なる掃除ではなく「アイデアが浮かんだ時に直ちに作業に取りかかるための心構え」として理解する基礎となった。
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【本文】
整理、整頓、清掃(3S)の起源といざ鎌倉
明専会 神戸支部長 持田 信治
はじめに
2016年の夏にチェコに暫く滞在していました。この時、チェコのビンペルクにある精密機械製造工場を見学する機会があり、見学の最後に工場長さんから「リーン生産方法と改善は同じですか」と質問を受けました。当時、「リーン生産方法」と「改善」については知っていましたが、なんと答えて良いのか解らず、答えられませんでした。この時の工場さんからの質問が本書で述べる「改善」と「整理、整頓、清掃」そして「いざ鎌倉」の起源を調べるきっかけになりました。「リーン生産方法」は代表的な生産方法の一つで、仕様を満たす範囲でコストダウンを計る生産方法です。製造方法には漢字の「物つくり」とひらがなの「ものつくり」があり、漢字の「物つくり」は仕様が決まった有体物を作る方法であり、仕様を満たす範囲で安く作ることが求められます。欧米では仕様を満たす範囲で安く作るための手法として「5S」と「KAIZEN」が広がっており、「リーン生産方法」と「KAIZEN」は同じであると考えられます。一方、ひらがなの「物つくり」は辞書には「物」以外のものを作ることとあります[1]。「物つくり」は仕様が決まっていない理想製品を作ることを含み、理想目標を目指す「改善」が必要です。「改善」は職人言葉「細工は流々仕上げを御覧じろ」に代表される様に、個人の技術とアイデアを駆使して理想の「ものつくり」を目指す行動様式です。アイデア駆使するためには、アイデアが浮かべば直ぐに試行錯誤を行うことが必要です。直ぐに作業に取りかかるためには「整理、整頓、清掃」による整えられた作業環境と常に作業に取りかかれる姿勢、つまり「いざ、鎌倉」が必要です。「いざ、鎌倉」は謡曲「鉢の木」に出てくるセリフで室町時代から戦国時代を経て現代まで伝わっている言葉です。「整理、整頓、清掃」と「改善」は戦国時代から平和な江戸時代に入ると職人の精神として伝わって来ました。そこで、本書は「整理、整頓、清掃」と「いざ鎌倉」の起源を探りつつ、欧米に広がる有体物を作る「KAIZEN」と日本の理想目標を目指す「改善」の違いを述べたいと思います。そして、今後のイノベーション推進に向けた「整理、整頓、清掃」と「改善」に沿ったアプローチ方法を述べたいと思います。
整理、整頓、清掃と武士道そして改善へ
私の小学校の時の記憶では教室の正面に「整理、整頓、清掃」と書かれた額があり、先生から「整理、整頓、清掃」とは何時でも勉強が出来る様に環境を整えておくことだと説明がありました。つまり「整理、整頓、清掃」とは自分の作業道具を常に「整理、整頓」しておき、「清掃」によりワークスペースの確保しておき、何時でも勉強が出来るようにしておくとのことでした。小学校では始業のベルが鳴ったら、直ぐに机について、勉強できるようにしておくように指導されていました。何時でも作業に取りかかれる様に準備しておく「整理、整頓、清掃」の考えは「いざ、鎌倉」の精神に始まると思われます。「整理、整頓、清掃」をビジネスに当てはめると24時間いつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかれるようにという精神で、日本の創意・工夫を含むアイデアを重視する考えです。また、「源義経の鵯越の逆落し」に由来する「夜討ち、朝駆け」もビジネス好機を逃さない精神であり「いざ、鎌倉」と共に日本のビジネス精神の基礎をなしています。「整理、整頓、清掃」は侍が各自の得物を常に手入れをして「いざ」に備える姿勢で、安土桃山時代から戦国時代、江戸を経て、平和な時代になり、武士から職人精神に反映されて、現在まで続いています。大正時代の尋常小學國語讀本にも「鉢木」は登場しており[2]、常に「いざ」に備えることの必要性は語られて来ています。侍の精神である武士道の始まりは奈良時代の743年(天平15年)に「墾田永年私財法」の制定によります。専門武装集団は有力な荘園主や貴族の荘園を守るために出来ました。そして武士とは「貴人の傍らにさぶらふ人から、「侍」つまり「武士」ができたとされています[3]。平安時代に入り、源氏や平家の武将と武士団が出来、更に鎌倉時代に至って、武家政権が誕生することとなりました。そして鎌倉幕府は禅宗に傾倒して、武道、礼儀を重んじる「武士道」が確立されたと考えられます。武士道には以下の3つのポイントがあります。まず、いつでも一大事への準備ができていること。次ぎに自分で改善する、トレーニングを欠かさないこと。そしてコンディションをきちんと保つ摂生 節制 礼節を守ることです。「武士道」では常に一大事に備える準備と得物の手入れが求められました。得物の手入れについては北条重時(1198-1261)が作成した『六波羅殿御家訓』に「腰刀の錆びたる持つべからず~不断に心用心あるべしとあり[4]、得物の手入れと一大事に備えることは武士道の1つであると示されています。貞永元年(1232年)に北条泰時が「御成敗式目」(ごせいばいしきもく)を制定して武家の基本法典が定まりました。「御成敗式目」には守護の職務が「大犯三箇条」(だいぼんさんかじょう)として定められました。大犯三箇条では、守護の職務はまず鎌倉・京都での大番役(おおばんやくとは警固のこと)の招集と指揮監督を行うこと、そして謀反人の捜索と逮捕、殺害人の捜索することでした。つまり守護の職務には警察的な役割があり、日頃の鍛錬と武器の手入れが必要だったと思われます。天文年間(1532年から1555)吾川郡弘岡城主であった吉良宣経(151-1550頃室町時代)の定目(ていもく)にも武士のたしなみとして武具を整備し、武芸の修練に心がけて軍役に精励することと記載されています[4]。そして、守護大名が戦国大名に代わるにつれ、武士道に於ける武勇の必要性が高まって行ったと思われます。
図1 職人の利益の考え方
2.「ものつくり」と「物つくり」に於ける利益の考え方
江戸時代の職人の利益は図1の利益1にあたる部分です。利益1は客の視界にない商品の魅力又は所有欲から得られます。一方、現代のリーン生産システムによる利益は図1の利益2です。利益2はターゲットプライスに対して生産コストを下げることにより得られます。職人は顧客の視界にある製品は顧客が価格を決めてしまうので、利益が得にくいこと、そして自分だけの技術を発揮しにくいことを知っていました。職人言葉にある「簡単な仕事はしない」が職人の利益に対する考え方を物語っています。また、職人は顧客についても、新しいものが好きな顧客を相手にすることを知っていました。今風ですと図2に示すイノベータを相手にすると利益が得られることを職人は知っており、利益を得るために顧客の視界外の製品を作るためにアイデアと「改善」を重視していました。図2に示すM・ロジャースのイノベータ理論によると画期的な新製品、つまりイノベーティブな製品はまず、新しい物好きなイノベータが購入します。イノベータは価格を気にしませんので、売り手は自由に価格設定ができ、利益を得ることができます。いわゆる先駆者利益です。そして製品が成熟して一般化すると客層は最終的には図2の4層目にあるレイトマジョリティに変化します。レイトマジョリティは高度な機能には感心がなく、基本機能がありさえすれば、安いものを購入します。「整理、整頓、清掃」の「整」は古典に「整は正なり」とあり、ゆがんだ形を真っ直ぐにすることが「整」であり「正」とあります。「整」は真っ直ぐにする、不純物を取り除くという語源から[5]、「整理」は乱れたものを整えること、不必要なものを取り除くこととの意味で使われています[1]。一方、「改」の語源は誤りを改めて正しくすることであり、「改善」は「改良」などと同様にreformやimproveの訳語として明治時代に作られた和製漢語であると思われます[3]。「改善」はよい方向へ改めることとして使われています[1]。
図2 エベレト・M・ロジャースのイノベータ理論
3.「3S」と「改善」の広がり
世界の「3S(整理、整頓、清掃)」と「KAIZEN」は利益創出のためのコスト最適化手法であり、利益に関してはバリュー(金銭的価値)を高めることが求められています。
私が図3にあるチェコの計測機械メーカの工場を見学することがあり、見学時に工場長さんから「改善」とリーン生産方式は同じですかと聞かれたことがあります。このことからも海外では「3S」と「改善」はコスト最適化手法として知られているようです。また、チェコのPrague University of Economics and Business大学では図4や図5に示す様に5Sゲームという講義で「改善」や「無駄」を説明しており、「改善」と「無駄」どちらも生産性向上の手法として説明されていました。5Sゲームではレゴの飛行機模型を教材にして、数人でチームを組み効果的な組み立て方法を考え、どのチームが多く組み立てるかを競う講義でした。「整理、整頓、清掃」を略した「3S」は製造現場に限らず、多くの場所で言われている言葉です。一方、「5S」も良く聞く言葉です。「5S」の最後の2つの「S」は「躾」と「清潔」であり、私がHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)に代表される食品関係の仕事をしている時には「躾」とは作業着、エプロン、マスク、帽子を付けてほこりを落としてから食品工場に入ることであり、白線を踏まないなどの職場のルールを守る習慣を身に付けることが「躾」でした。食品工場の「清潔」とは手を石けんで洗い、更にアルコールで消毒すると言う、いわゆる化学的な清掃でした。「清潔」を「5S」を説明する本で調べると「5S」を維持することとあります。また、「清掃」と「清潔」の英語訳は同じ「Cleaning」であり区別がありません。「3S」はいつでも作業に取りかかるための心構えであるのに対して、「5S」は製造現場の心構えに特化しているようです。しかし、海外での「5S」の普及は苦労があるようです。例えば、チェコの友人から次の様な話を聞きました。チェコのある工場で「5S」を実践するとのことで、始業前に出社して作業準備するように指示した所、作業準備は業務の一部であり、対価が支払らわれない作業は作業者に断られたそうです。
4.「整理、整頓、清掃」といざ鎌倉
「整理、整頓、清掃」とはいつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかる心構えであり、「整理、整頓、清掃」は「いざ、鎌倉」の精神に始まると思われます。「いざ、鎌倉」は室町時代に成立した謡曲「鉢木」に出てくる言葉で、鎌倉に何かあればすぐに鎌倉に駆け付けるというものです。当時、すべての武士が鎌倉に住んでいたわけではないので、常に鎌倉での争いへの準備が必要あったことに由来しています。ただ、鎌倉に掛け着けるのは恩賞、つまり利益を得るためであり、「いざ鎌倉」は、主人公の佐野源左衛門常世が、宿を貸した旅僧(旅僧は諸国行脚中の執権北条時頼(最明寺入道)に対して語った「今にても鎌倉に一大事あらば、千切れたりとも具足を着け、錆びたりとも長刀を持ち、痩せたりとも馬に乗り、一番に馳せ参じ、合戦始らば一番に敵と討合ひて死なん覚悟なれど」のセリフが有名な謡曲で、鎌倉で何か騒動が起こったとき御家人たちがすぐに鎌倉に、はせ参じる様子を描いています[6][7][8]。「いざ、鎌倉」が出てくる「鉢木」は室町時代の観阿弥(1334~1384)作又は世阿弥の作と言われており、2度の元寇の後の作です。当時、武士は得物の手入れに余念の無い状況であったと思われます。また、太刀と槍は2度の元寇の後、めざましい性能向上がありました。名刀「正宗」が登場するのもこの時代です。
5.「鉢木」成立の時代背景
「鉢木」からわかるのは、まず鎌倉では騒動が頻発したことと、次ぎに鎌倉に一大事ありと聞けば、諸国の御家人は先を争って馳せ参じ、幕府の着到状(出席簿)に姓名を記録して恩賞を期待していたことです。このようなことは鎌倉時代特有のことで、他の時代にはあまりみられないため、「いざ鎌倉」という言葉は現在まで残ったと考えられます。一大事ありと聞いて、御家人たちが鎌倉に駆けつけたという記述は、鎌倉幕府の歴史書である『吾妻鏡』[4]に散見されます。例えば吾妻鏡の元久2年(1205)にある「畠山重忠、討たれるの」項には「軍勢が由比ヶ浜の辺りを先を争って走った」とあり、先駆けの心がけが表現されています。争いが最も多いのは、源頼朝の時代ではなく、鎌倉中期の北条時頼(1227-1263)の時代です。摂家将軍を追放した上、三浦氏を滅ぼし、北条氏専制政治への道を開いた「時頼」の時代は、いつ何が起こるかわからない不安定な社会状況でした。「時頼」と「いざ鎌倉」には深い関わりがあり、謡曲「鉢の木」は、その史実を反映しているといえます。「鎌倉幕府の歴史を記載した「吾妻鏡」には、源頼朝が挙兵した治承4年(1180)から六代将軍宗尊親王が鎌倉から京都に送還された文永3年(1266)までの歴史を記載しています。「鉢の木」は観阿弥(1334~1384)の作と言われており、「吾妻鏡」の鎌倉武士の精神を反映していると思われます。また、北条幕府に起きた2度に渡る元寇の役も、常に戦闘に備える精神が維持された理由であると思われます。2度に渡る元寇の役とは文永の役(1274)と弘安の役(1281)です。当時、北条時宗(1251-1284)は2度の元の軍を退けました[4]。元寇の役に於ける勝利は北条武士の大きな働きと神風によるものとされています。福岡市の東公園には図6に示す巨大な日蓮聖人の像があり、日蓮聖人がお題目を唱えて2回の元寇を退けた姿があり、神風についても語り継がれています。日蓮聖人は「立正安国論(1260)」を北条時頼(1227-1263)に宛てに送り、外的の襲来を警告したとされており、当時が不安な情勢であったことを示しています。山梨県身延町にある久遠寺宝物館に「立正安国論」は展示されています。2度の元寇は日本の武士の装備にも変化をもたらしました。元軍の真綿を何層も重ねた鎧を当時の軟鉄で作られた太刀では切ることが出来ませんでした。そこで、鎌倉幕府は各地から刀匠を集めて太刀作りを奨励しました。そして刀匠、五郎入道正宗が太刀の製造方法を完成させました。新しい製造方法は軟鉄の鉄に鋼鉄を巻いて、鍛えた後、焼き入れをする工程を繰り返す方法で、良く切れる太刀ができました。名刀正宗です(元寇記念館資料より)。鎌倉幕府後の武士も一大事に備える心意気であったことは土佐の「一領具足」にも見られます。「一領具足」は耕作時に槍の柄に草鞋(わらじ)と兵糧をくくりつけて田の畦(あぜ)に立てておき、有事の時には武装して直ぐさま、駆け付けるという生活でした。「一領具足」に関して土佐物語には「一領具足と申すは、僅かの田地を領して、常には守護へ動仕(きんし)もなく役もなく、己が領地に引き籠り、自らたがやし、くさぎり、諸士の交はりもせされば、礼儀もなく作法もなく、明け暮れ武勇のみを事として、田に出づるにも、鎗の柄に草桂・兵糧を括り付け、田の畔に立て置き、すはと言へば鎌鍬を投げ捨て走り行く。鎧一領にて着替への領もなく、馬一疋にて乗り替へもなく、自身走り廻りければ一領具足と名付けたり。弓・鉄胞・太刀打ちに調練して、死生知らずの野武士なり」とあり[9]、土佐武士は有事の際には戦場に馳せ向い、弓、鉄砲、大刀打に鍛錬をして、勇猛かつ命知らずの野武士であったとあります。「一領具足」は長宗我部元親(1539-1599)が安芸国虎攻めにあたり、兵力増強のために思いついたとされています。「いざ鎌倉」の「いざ」と「一領具足」の「いさ」は一大事に備える鎌倉幕府から戦国時代の武士の共通の心意気でした。
5.鎌倉幕府の「いざ鎌倉」はどこ
「いざ鎌倉」にある鎌倉幕府に始まる、武家政治については、源頼朝が1192年(建久3年)に朝廷から「征夷大将軍」に任命され、鎌倉幕府による鎌倉幕府が始まります。源頼朝は治承4年(1180年)、伊豆で反平氏の軍を挙げた頼朝を討つため京からやってきた平家軍を富士川の戦いで破った後、図7にある鎌倉の大蔵(雪ノ下)の屋敷に入り、鎌倉が武家政権の政治の中心地となりました。頼朝はまず元八幡を現在の鶴岡八幡宮の地に移して町づくりの中心にしました。また頼朝は図8の永福寺(ようふくじ)を建立して、合戦で亡くなった将兵の鎮魂のために建立しました。鎌倉幕府では禅宗が奨励され、「武士道」が成立しました。「武士道」では「鉢木」に描かれた様に常に得物を手入れして、一大事に備えることが必要となりました。
6.職人気質
アイデアが浮かんだ時に直ぐに作業に取りかかるための「整理、整頓、清掃」と理想目標を求める「改善」は日本の職人の精神です。そして、職人はオリジナルな作品を作ることを誇りにしていました。職人は自分の技術を基礎に唯一のもの作りを目指しており、製作した品は商品ではなく、作品です。一方、今日、求められるイノベーティブな商品とはお客の視界にない製品です。21世紀最大のイノベーティブな製品の一つにスマートフォンがあります。スマートフォンの始まりは2007年にスティーブジョブズ氏が発表したiPhoneです。iPhoneは画期的なインターフェースとポインティングデバイスを備えていました。当時のスマートフォンは図9に示すスマートフォンの様に下や横に小さなキーボードを備えた物で、使い勝手は良くありませんでした。また当時の多くの携帯電話は折りたたみ型の電話機であり、俗に言うガラケー電話であり、iPhoneは多くのユーザにとって見たことのない電話でした。しかし、スティーブジョブズ氏にしてみれば、1984年に発表したマッキントッシュでグラフィカルインターフェースとマウスによるポインティングデバイスに関する技術を取得しており、更に、その後のネクスト・ソフトウエアにより優れたグラフィカルインターフェース技術を所有していましたので、スティーブジョブズ氏は自分の持つ技術を用いて電話を進化させることによりiPhoneを開発しました。スティーブジョブズ氏は2007年のiPhone発表時に「電話を再発明した」と語っています。
イノベーティブな製品とはiPhoneからも解る様に自分の持つ技術と他の何かを組み合わせることにより生まれます。イノベーティブな製品開発には自分の持つ技術や道具を明確にすることが必要です。例えば、職人の道具自慢では、「腕のいい大工が道具に凝って稼ぎのほとんどを道具につぎこみ年がら年中素寒貧で..」や、「荒仕工鉋(かんな)...こちとら大工の肝玉をふるい立たせてくれなくちゃいけね」[10]にある通り、職人はいい仕事には自分の技術と良い道具が必要だと知っていました。また職人は、自分の作事の価値について「自分の仕事に自分で値段をつけて、それが売れるようになりまして」[11]とある通り、稼げる製品(作品)には技術とアイデアが必要であり、お客が求めるものだけを作っていたのでは稼げないということは、昔から「日本の職人精神」として伝わってきています。現在、イノベーションやイノベーティブな製品が求められていますが、イノベーティブな製品の創造には職人の「整理、整頓、清掃」と「いざ、鎌倉」の精神が必要です。
7. 製品の魅力の変化とイノベーション
最近、イノベーションと言うことばを良く聞きます。例えば、イノベーションセンターやイノベーション人材養成です。イノベーションとはドラッカー氏やシュンペーター氏の定義では、画期的な製品やサービスの導入により経済に新たな好況局面を創り出すこととあります。従いまして、イノベーションとは必ずしも製品を生み出すことではありません。しかし、イノベーションとはイノベーティブな製品やサービスの創造と考えることが一般的であると思われます。イノベーティブな製品とは、顧客の視界に無い製品であり、定義は次の2つと考えられます。一つは開発者が価格を設定できること、そして2つめはお客さんの財布からお金を捻出してもらうほど、魅力ある製品であることです。例えばお客さんが食費を節約してでも欲しくなるくらい魅力ある製品がイノベーティブな製品です。このカテゴリに入る例は、初期のiPhoneです。しかし、製品はだんだん一般化して、差別化することが難しくなります。製品の差別化が難しくなると価格競争になり、利益を得づらくなっていきます。製品の一般化(コモディティ化)、つまり製品の成熟度が進むに従い、客層も変化します。レイトマジョリティが製品を購入する状況になると、製品の差別化は難しく、価格競争となります。するとメーカは大量生産による薄利多売となり、大規模な生産設備の投資が必要となります。若し、設備投資の時期が失敗すると経営が大変なことになります。例えば液晶ディスプレイが成熟段階の製品だと思われます。仮に画面の精細度が4Kや8Kであって、しかも高品質なスピーカを搭載してもレイトマジョリティには製品の魅力が届かず、差別化にはなりません。最近では、自動車が成熟段階に入っていると思われます。ビジネスとはお金の流れのことであり、お金の流れとは物(もの)やサービスと対価(お金)がループを形成することです。対価とはバリューとも呼ばれ、対価は金額で評価されます。しかし、バリューとは物の機能や性能だけで決まるものではなく、感覚的な要素もあります。例えば、ネームバリューや希少性や野球チーム名を加えるコラボ等があります。「もの」や「物」のバリューは顧客の客層や顧客の主観が大きく影響します。顧客の主観とは客の評価軸のことで製品が持つ評価軸が多いほど、バリューは高まります。リーン生産方式は無駄を省き、シックスシグマは作業を平準化してむりとむらのないマニュアル主義による製造を実現するものです。リーン生産方式では仕様に対するオーバースペックも無駄となります。オーバースペックがイノベータに対する製品の魅力の1つであり、イノベーティブな製品に必要なものですので、仕様主義、コスト主義ではイノベーティブな製品は生まれません。イノベーティブな製品は理想目標を掲げることによりイメージが浮かんできます。そしてアイデアが浮かんだ時に直ぐに試作に取りかかるためには「整理、整頓、清掃」が必要です。そして、より良いものを作るには良い道具が必要です。そしてアイデアを試すためのワークスペースの確保が必要です。この精神を簡単にしたものが日本の「整理、整頓、清掃」と「改善」です。
謝辞
本書の作成あたり、助言と貴重な情報を頂いた鎌倉市鎌倉歴史文化交流館殿とオーテピア高知図書館の横山 有弐氏に感謝申し上げます。
参考文献
[1] 岩波国語辞典、岩波書店、2019
[2] 尋常小學國語讀本 卷1、文部省、1918(大正7年)国立国会図書館デジタルコレクション
[3] 新明解語源辞典、小松寿雄, 三省堂、2011
[4] 吾妻鏡 西田友広、角川文庫、2021
[5] 漢字語源語義辞典、加納喜光、1940
[6] 明治の源流, 平泉澄、時事通信社、1970 国立国会図書館 デジタルコレクション
[7] 鉢木 国立国会図書館デジタルコレクション
[8] 駒とめて袖うちはらう-謡曲「鉢木」考 森延哉 (株)文芸社 2010
[9] 長宗我部元親 その謎と生涯、山本大(やまもと たけし)、新人物往来社、2010
[10] 続江戸職人綺譚、佐江衆、新潮文庫、2003
[11]職人、永六輔、岩波書店、1996
チェコの工場における「5S」導入の苦労
ヒット: 14 開く 保存
状況
チェコの工場で「5S」を実践しようとした際、作業準備を始業前に行うよう指示した。
関連ルール: N-1: 工場
行動
作業者に対し、始業前の準備を業務の一部として求めた。
結果
対価が支払われない作業であるとして作業者に拒否され、海外での「5S」普及における文化的な難しさを認識した。
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詳細コンテキスト
【分析:状況】
チェコの工場で「5S」を実践しようとした際、作業準備を始業前に行うよう指示した。
【分析:行動】
作業者に対し、始業前の準備を業務の一部として求めた。
【分析:結果】
対価が支払われない作業であるとして作業者に拒否され、海外での「5S」普及における文化的な難しさを認識した。
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【本文】
整理、整頓、清掃(3S)の起源といざ鎌倉
明専会 神戸支部長 持田 信治
はじめに
2016年の夏にチェコに暫く滞在していました。この時、チェコのビンペルクにある精密機械製造工場を見学する機会があり、見学の最後に工場長さんから「リーン生産方法と改善は同じですか」と質問を受けました。当時、「リーン生産方法」と「改善」については知っていましたが、なんと答えて良いのか解らず、答えられませんでした。この時の工場さんからの質問が本書で述べる「改善」と「整理、整頓、清掃」そして「いざ鎌倉」の起源を調べるきっかけになりました。「リーン生産方法」は代表的な生産方法の一つで、仕様を満たす範囲でコストダウンを計る生産方法です。製造方法には漢字の「物つくり」とひらがなの「ものつくり」があり、漢字の「物つくり」は仕様が決まった有体物を作る方法であり、仕様を満たす範囲で安く作ることが求められます。欧米では仕様を満たす範囲で安く作るための手法として「5S」と「KAIZEN」が広がっており、「リーン生産方法」と「KAIZEN」は同じであると考えられます。一方、ひらがなの「物つくり」は辞書には「物」以外のものを作ることとあります[1]。「物つくり」は仕様が決まっていない理想製品を作ることを含み、理想目標を目指す「改善」が必要です。「改善」は職人言葉「細工は流々仕上げを御覧じろ」に代表される様に、個人の技術とアイデアを駆使して理想の「ものつくり」を目指す行動様式です。アイデア駆使するためには、アイデアが浮かべば直ぐに試行錯誤を行うことが必要です。直ぐに作業に取りかかるためには「整理、整頓、清掃」による整えられた作業環境と常に作業に取りかかれる姿勢、つまり「いざ、鎌倉」が必要です。「いざ、鎌倉」は謡曲「鉢の木」に出てくるセリフで室町時代から戦国時代を経て現代まで伝わっている言葉です。「整理、整頓、清掃」と「改善」は戦国時代から平和な江戸時代に入ると職人の精神として伝わって来ました。そこで、本書は「整理、整頓、清掃」と「いざ鎌倉」の起源を探りつつ、欧米に広がる有体物を作る「KAIZEN」と日本の理想目標を目指す「改善」の違いを述べたいと思います。そして、今後のイノベーション推進に向けた「整理、整頓、清掃」と「改善」に沿ったアプローチ方法を述べたいと思います。
整理、整頓、清掃と武士道そして改善へ
私の小学校の時の記憶では教室の正面に「整理、整頓、清掃」と書かれた額があり、先生から「整理、整頓、清掃」とは何時でも勉強が出来る様に環境を整えておくことだと説明がありました。つまり「整理、整頓、清掃」とは自分の作業道具を常に「整理、整頓」しておき、「清掃」によりワークスペースの確保しておき、何時でも勉強が出来るようにしておくとのことでした。小学校では始業のベルが鳴ったら、直ぐに机について、勉強できるようにしておくように指導されていました。何時でも作業に取りかかれる様に準備しておく「整理、整頓、清掃」の考えは「いざ、鎌倉」の精神に始まると思われます。「整理、整頓、清掃」をビジネスに当てはめると24時間いつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかれるようにという精神で、日本の創意・工夫を含むアイデアを重視する考えです。また、「源義経の鵯越の逆落し」に由来する「夜討ち、朝駆け」もビジネス好機を逃さない精神であり「いざ、鎌倉」と共に日本のビジネス精神の基礎をなしています。「整理、整頓、清掃」は侍が各自の得物を常に手入れをして「いざ」に備える姿勢で、安土桃山時代から戦国時代、江戸を経て、平和な時代になり、武士から職人精神に反映されて、現在まで続いています。大正時代の尋常小學國語讀本にも「鉢木」は登場しており[2]、常に「いざ」に備えることの必要性は語られて来ています。侍の精神である武士道の始まりは奈良時代の743年(天平15年)に「墾田永年私財法」の制定によります。専門武装集団は有力な荘園主や貴族の荘園を守るために出来ました。そして武士とは「貴人の傍らにさぶらふ人から、「侍」つまり「武士」ができたとされています[3]。平安時代に入り、源氏や平家の武将と武士団が出来、更に鎌倉時代に至って、武家政権が誕生することとなりました。そして鎌倉幕府は禅宗に傾倒して、武道、礼儀を重んじる「武士道」が確立されたと考えられます。武士道には以下の3つのポイントがあります。まず、いつでも一大事への準備ができていること。次ぎに自分で改善する、トレーニングを欠かさないこと。そしてコンディションをきちんと保つ摂生 節制 礼節を守ることです。「武士道」では常に一大事に備える準備と得物の手入れが求められました。得物の手入れについては北条重時(1198-1261)が作成した『六波羅殿御家訓』に「腰刀の錆びたる持つべからず~不断に心用心あるべしとあり[4]、得物の手入れと一大事に備えることは武士道の1つであると示されています。貞永元年(1232年)に北条泰時が「御成敗式目」(ごせいばいしきもく)を制定して武家の基本法典が定まりました。「御成敗式目」には守護の職務が「大犯三箇条」(だいぼんさんかじょう)として定められました。大犯三箇条では、守護の職務はまず鎌倉・京都での大番役(おおばんやくとは警固のこと)の招集と指揮監督を行うこと、そして謀反人の捜索と逮捕、殺害人の捜索することでした。つまり守護の職務には警察的な役割があり、日頃の鍛錬と武器の手入れが必要だったと思われます。天文年間(1532年から1555)吾川郡弘岡城主であった吉良宣経(151-1550頃室町時代)の定目(ていもく)にも武士のたしなみとして武具を整備し、武芸の修練に心がけて軍役に精励することと記載されています[4]。そして、守護大名が戦国大名に代わるにつれ、武士道に於ける武勇の必要性が高まって行ったと思われます。
図1 職人の利益の考え方
2.「ものつくり」と「物つくり」に於ける利益の考え方
江戸時代の職人の利益は図1の利益1にあたる部分です。利益1は客の視界にない商品の魅力又は所有欲から得られます。一方、現代のリーン生産システムによる利益は図1の利益2です。利益2はターゲットプライスに対して生産コストを下げることにより得られます。職人は顧客の視界にある製品は顧客が価格を決めてしまうので、利益が得にくいこと、そして自分だけの技術を発揮しにくいことを知っていました。職人言葉にある「簡単な仕事はしない」が職人の利益に対する考え方を物語っています。また、職人は顧客についても、新しいものが好きな顧客を相手にすることを知っていました。今風ですと図2に示すイノベータを相手にすると利益が得られることを職人は知っており、利益を得るために顧客の視界外の製品を作るためにアイデアと「改善」を重視していました。図2に示すM・ロジャースのイノベータ理論によると画期的な新製品、つまりイノベーティブな製品はまず、新しい物好きなイノベータが購入します。イノベータは価格を気にしませんので、売り手は自由に価格設定ができ、利益を得ることができます。いわゆる先駆者利益です。そして製品が成熟して一般化すると客層は最終的には図2の4層目にあるレイトマジョリティに変化します。レイトマジョリティは高度な機能には感心がなく、基本機能がありさえすれば、安いものを購入します。「整理、整頓、清掃」の「整」は古典に「整は正なり」とあり、ゆがんだ形を真っ直ぐにすることが「整」であり「正」とあります。「整」は真っ直ぐにする、不純物を取り除くという語源から[5]、「整理」は乱れたものを整えること、不必要なものを取り除くこととの意味で使われています[1]。一方、「改」の語源は誤りを改めて正しくすることであり、「改善」は「改良」などと同様にreformやimproveの訳語として明治時代に作られた和製漢語であると思われます[3]。「改善」はよい方向へ改めることとして使われています[1]。
図2 エベレト・M・ロジャースのイノベータ理論
3.「3S」と「改善」の広がり
世界の「3S(整理、整頓、清掃)」と「KAIZEN」は利益創出のためのコスト最適化手法であり、利益に関してはバリュー(金銭的価値)を高めることが求められています。
私が図3にあるチェコの計測機械メーカの工場を見学することがあり、見学時に工場長さんから「改善」とリーン生産方式は同じですかと聞かれたことがあります。このことからも海外では「3S」と「改善」はコスト最適化手法として知られているようです。また、チェコのPrague University of Economics and Business大学では図4や図5に示す様に5Sゲームという講義で「改善」や「無駄」を説明しており、「改善」と「無駄」どちらも生産性向上の手法として説明されていました。5Sゲームではレゴの飛行機模型を教材にして、数人でチームを組み効果的な組み立て方法を考え、どのチームが多く組み立てるかを競う講義でした。「整理、整頓、清掃」を略した「3S」は製造現場に限らず、多くの場所で言われている言葉です。一方、「5S」も良く聞く言葉です。「5S」の最後の2つの「S」は「躾」と「清潔」であり、私がHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)に代表される食品関係の仕事をしている時には「躾」とは作業着、エプロン、マスク、帽子を付けてほこりを落としてから食品工場に入ることであり、白線を踏まないなどの職場のルールを守る習慣を身に付けることが「躾」でした。食品工場の「清潔」とは手を石けんで洗い、更にアルコールで消毒すると言う、いわゆる化学的な清掃でした。「清潔」を「5S」を説明する本で調べると「5S」を維持することとあります。また、「清掃」と「清潔」の英語訳は同じ「Cleaning」であり区別がありません。「3S」はいつでも作業に取りかかるための心構えであるのに対して、「5S」は製造現場の心構えに特化しているようです。しかし、海外での「5S」の普及は苦労があるようです。例えば、チェコの友人から次の様な話を聞きました。チェコのある工場で「5S」を実践するとのことで、始業前に出社して作業準備するように指示した所、作業準備は業務の一部であり、対価が支払らわれない作業は作業者に断られたそうです。
4.「整理、整頓、清掃」といざ鎌倉
「整理、整頓、清掃」とはいつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかる心構えであり、「整理、整頓、清掃」は「いざ、鎌倉」の精神に始まると思われます。「いざ、鎌倉」は室町時代に成立した謡曲「鉢木」に出てくる言葉で、鎌倉に何かあればすぐに鎌倉に駆け付けるというものです。当時、すべての武士が鎌倉に住んでいたわけではないので、常に鎌倉での争いへの準備が必要あったことに由来しています。ただ、鎌倉に掛け着けるのは恩賞、つまり利益を得るためであり、「いざ鎌倉」は、主人公の佐野源左衛門常世が、宿を貸した旅僧(旅僧は諸国行脚中の執権北条時頼(最明寺入道)に対して語った「今にても鎌倉に一大事あらば、千切れたりとも具足を着け、錆びたりとも長刀を持ち、痩せたりとも馬に乗り、一番に馳せ参じ、合戦始らば一番に敵と討合ひて死なん覚悟なれど」のセリフが有名な謡曲で、鎌倉で何か騒動が起こったとき御家人たちがすぐに鎌倉に、はせ参じる様子を描いています[6][7][8]。「いざ、鎌倉」が出てくる「鉢木」は室町時代の観阿弥(1334~1384)作又は世阿弥の作と言われており、2度の元寇の後の作です。当時、武士は得物の手入れに余念の無い状況であったと思われます。また、太刀と槍は2度の元寇の後、めざましい性能向上がありました。名刀「正宗」が登場するのもこの時代です。
5.「鉢木」成立の時代背景
「鉢木」からわかるのは、まず鎌倉では騒動が頻発したことと、次ぎに鎌倉に一大事ありと聞けば、諸国の御家人は先を争って馳せ参じ、幕府の着到状(出席簿)に姓名を記録して恩賞を期待していたことです。このようなことは鎌倉時代特有のことで、他の時代にはあまりみられないため、「いざ鎌倉」という言葉は現在まで残ったと考えられます。一大事ありと聞いて、御家人たちが鎌倉に駆けつけたという記述は、鎌倉幕府の歴史書である『吾妻鏡』[4]に散見されます。例えば吾妻鏡の元久2年(1205)にある「畠山重忠、討たれるの」項には「軍勢が由比ヶ浜の辺りを先を争って走った」とあり、先駆けの心がけが表現されています。争いが最も多いのは、源頼朝の時代ではなく、鎌倉中期の北条時頼(1227-1263)の時代です。摂家将軍を追放した上、三浦氏を滅ぼし、北条氏専制政治への道を開いた「時頼」の時代は、いつ何が起こるかわからない不安定な社会状況でした。「時頼」と「いざ鎌倉」には深い関わりがあり、謡曲「鉢の木」は、その史実を反映しているといえます。「鎌倉幕府の歴史を記載した「吾妻鏡」には、源頼朝が挙兵した治承4年(1180)から六代将軍宗尊親王が鎌倉から京都に送還された文永3年(1266)までの歴史を記載しています。「鉢の木」は観阿弥(1334~1384)の作と言われており、「吾妻鏡」の鎌倉武士の精神を反映していると思われます。また、北条幕府に起きた2度に渡る元寇の役も、常に戦闘に備える精神が維持された理由であると思われます。2度に渡る元寇の役とは文永の役(1274)と弘安の役(1281)です。当時、北条時宗(1251-1284)は2度の元の軍を退けました[4]。元寇の役に於ける勝利は北条武士の大きな働きと神風によるものとされています。福岡市の東公園には図6に示す巨大な日蓮聖人の像があり、日蓮聖人がお題目を唱えて2回の元寇を退けた姿があり、神風についても語り継がれています。日蓮聖人は「立正安国論(1260)」を北条時頼(1227-1263)に宛てに送り、外的の襲来を警告したとされており、当時が不安な情勢であったことを示しています。山梨県身延町にある久遠寺宝物館に「立正安国論」は展示されています。2度の元寇は日本の武士の装備にも変化をもたらしました。元軍の真綿を何層も重ねた鎧を当時の軟鉄で作られた太刀では切ることが出来ませんでした。そこで、鎌倉幕府は各地から刀匠を集めて太刀作りを奨励しました。そして刀匠、五郎入道正宗が太刀の製造方法を完成させました。新しい製造方法は軟鉄の鉄に鋼鉄を巻いて、鍛えた後、焼き入れをする工程を繰り返す方法で、良く切れる太刀ができました。名刀正宗です(元寇記念館資料より)。鎌倉幕府後の武士も一大事に備える心意気であったことは土佐の「一領具足」にも見られます。「一領具足」は耕作時に槍の柄に草鞋(わらじ)と兵糧をくくりつけて田の畦(あぜ)に立てておき、有事の時には武装して直ぐさま、駆け付けるという生活でした。「一領具足」に関して土佐物語には「一領具足と申すは、僅かの田地を領して、常には守護へ動仕(きんし)もなく役もなく、己が領地に引き籠り、自らたがやし、くさぎり、諸士の交はりもせされば、礼儀もなく作法もなく、明け暮れ武勇のみを事として、田に出づるにも、鎗の柄に草桂・兵糧を括り付け、田の畔に立て置き、すはと言へば鎌鍬を投げ捨て走り行く。鎧一領にて着替への領もなく、馬一疋にて乗り替へもなく、自身走り廻りければ一領具足と名付けたり。弓・鉄胞・太刀打ちに調練して、死生知らずの野武士なり」とあり[9]、土佐武士は有事の際には戦場に馳せ向い、弓、鉄砲、大刀打に鍛錬をして、勇猛かつ命知らずの野武士であったとあります。「一領具足」は長宗我部元親(1539-1599)が安芸国虎攻めにあたり、兵力増強のために思いついたとされています。「いざ鎌倉」の「いざ」と「一領具足」の「いさ」は一大事に備える鎌倉幕府から戦国時代の武士の共通の心意気でした。
5.鎌倉幕府の「いざ鎌倉」はどこ
「いざ鎌倉」にある鎌倉幕府に始まる、武家政治については、源頼朝が1192年(建久3年)に朝廷から「征夷大将軍」に任命され、鎌倉幕府による鎌倉幕府が始まります。源頼朝は治承4年(1180年)、伊豆で反平氏の軍を挙げた頼朝を討つため京からやってきた平家軍を富士川の戦いで破った後、図7にある鎌倉の大蔵(雪ノ下)の屋敷に入り、鎌倉が武家政権の政治の中心地となりました。頼朝はまず元八幡を現在の鶴岡八幡宮の地に移して町づくりの中心にしました。また頼朝は図8の永福寺(ようふくじ)を建立して、合戦で亡くなった将兵の鎮魂のために建立しました。鎌倉幕府では禅宗が奨励され、「武士道」が成立しました。「武士道」では「鉢木」に描かれた様に常に得物を手入れして、一大事に備えることが必要となりました。
6.職人気質
アイデアが浮かんだ時に直ぐに作業に取りかかるための「整理、整頓、清掃」と理想目標を求める「改善」は日本の職人の精神です。そして、職人はオリジナルな作品を作ることを誇りにしていました。職人は自分の技術を基礎に唯一のもの作りを目指しており、製作した品は商品ではなく、作品です。一方、今日、求められるイノベーティブな商品とはお客の視界にない製品です。21世紀最大のイノベーティブな製品の一つにスマートフォンがあります。スマートフォンの始まりは2007年にスティーブジョブズ氏が発表したiPhoneです。iPhoneは画期的なインターフェースとポインティングデバイスを備えていました。当時のスマートフォンは図9に示すスマートフォンの様に下や横に小さなキーボードを備えた物で、使い勝手は良くありませんでした。また当時の多くの携帯電話は折りたたみ型の電話機であり、俗に言うガラケー電話であり、iPhoneは多くのユーザにとって見たことのない電話でした。しかし、スティーブジョブズ氏にしてみれば、1984年に発表したマッキントッシュでグラフィカルインターフェースとマウスによるポインティングデバイスに関する技術を取得しており、更に、その後のネクスト・ソフトウエアにより優れたグラフィカルインターフェース技術を所有していましたので、スティーブジョブズ氏は自分の持つ技術を用いて電話を進化させることによりiPhoneを開発しました。スティーブジョブズ氏は2007年のiPhone発表時に「電話を再発明した」と語っています。
イノベーティブな製品とはiPhoneからも解る様に自分の持つ技術と他の何かを組み合わせることにより生まれます。イノベーティブな製品開発には自分の持つ技術や道具を明確にすることが必要です。例えば、職人の道具自慢では、「腕のいい大工が道具に凝って稼ぎのほとんどを道具につぎこみ年がら年中素寒貧で..」や、「荒仕工鉋(かんな)...こちとら大工の肝玉をふるい立たせてくれなくちゃいけね」[10]にある通り、職人はいい仕事には自分の技術と良い道具が必要だと知っていました。また職人は、自分の作事の価値について「自分の仕事に自分で値段をつけて、それが売れるようになりまして」[11]とある通り、稼げる製品(作品)には技術とアイデアが必要であり、お客が求めるものだけを作っていたのでは稼げないということは、昔から「日本の職人精神」として伝わってきています。現在、イノベーションやイノベーティブな製品が求められていますが、イノベーティブな製品の創造には職人の「整理、整頓、清掃」と「いざ、鎌倉」の精神が必要です。
7. 製品の魅力の変化とイノベーション
最近、イノベーションと言うことばを良く聞きます。例えば、イノベーションセンターやイノベーション人材養成です。イノベーションとはドラッカー氏やシュンペーター氏の定義では、画期的な製品やサービスの導入により経済に新たな好況局面を創り出すこととあります。従いまして、イノベーションとは必ずしも製品を生み出すことではありません。しかし、イノベーションとはイノベーティブな製品やサービスの創造と考えることが一般的であると思われます。イノベーティブな製品とは、顧客の視界に無い製品であり、定義は次の2つと考えられます。一つは開発者が価格を設定できること、そして2つめはお客さんの財布からお金を捻出してもらうほど、魅力ある製品であることです。例えばお客さんが食費を節約してでも欲しくなるくらい魅力ある製品がイノベーティブな製品です。このカテゴリに入る例は、初期のiPhoneです。しかし、製品はだんだん一般化して、差別化することが難しくなります。製品の差別化が難しくなると価格競争になり、利益を得づらくなっていきます。製品の一般化(コモディティ化)、つまり製品の成熟度が進むに従い、客層も変化します。レイトマジョリティが製品を購入する状況になると、製品の差別化は難しく、価格競争となります。するとメーカは大量生産による薄利多売となり、大規模な生産設備の投資が必要となります。若し、設備投資の時期が失敗すると経営が大変なことになります。例えば液晶ディスプレイが成熟段階の製品だと思われます。仮に画面の精細度が4Kや8Kであって、しかも高品質なスピーカを搭載してもレイトマジョリティには製品の魅力が届かず、差別化にはなりません。最近では、自動車が成熟段階に入っていると思われます。ビジネスとはお金の流れのことであり、お金の流れとは物(もの)やサービスと対価(お金)がループを形成することです。対価とはバリューとも呼ばれ、対価は金額で評価されます。しかし、バリューとは物の機能や性能だけで決まるものではなく、感覚的な要素もあります。例えば、ネームバリューや希少性や野球チーム名を加えるコラボ等があります。「もの」や「物」のバリューは顧客の客層や顧客の主観が大きく影響します。顧客の主観とは客の評価軸のことで製品が持つ評価軸が多いほど、バリューは高まります。リーン生産方式は無駄を省き、シックスシグマは作業を平準化してむりとむらのないマニュアル主義による製造を実現するものです。リーン生産方式では仕様に対するオーバースペックも無駄となります。オーバースペックがイノベータに対する製品の魅力の1つであり、イノベーティブな製品に必要なものですので、仕様主義、コスト主義ではイノベーティブな製品は生まれません。イノベーティブな製品は理想目標を掲げることによりイメージが浮かんできます。そしてアイデアが浮かんだ時に直ぐに試作に取りかかるためには「整理、整頓、清掃」が必要です。そして、より良いものを作るには良い道具が必要です。そしてアイデアを試すためのワークスペースの確保が必要です。この精神を簡単にしたものが日本の「整理、整頓、清掃」と「改善」です。
謝辞
本書の作成あたり、助言と貴重な情報を頂いた鎌倉市鎌倉歴史文化交流館殿とオーテピア高知図書館の横山 有弐氏に感謝申し上げます。
参考文献
[1] 岩波国語辞典、岩波書店、2019
[2] 尋常小學國語讀本 卷1、文部省、1918(大正7年)国立国会図書館デジタルコレクション
[3] 新明解語源辞典、小松寿雄, 三省堂、2011
[4] 吾妻鏡 西田友広、角川文庫、2021
[5] 漢字語源語義辞典、加納喜光、1940
[6] 明治の源流, 平泉澄、時事通信社、1970 国立国会図書館 デジタルコレクション
[7] 鉢木 国立国会図書館デジタルコレクション
[8] 駒とめて袖うちはらう-謡曲「鉢木」考 森延哉 (株)文芸社 2010
[9] 長宗我部元親 その謎と生涯、山本大(やまもと たけし)、新人物往来社、2010
[10] 続江戸職人綺譚、佐江衆、新潮文庫、2003
[11]職人、永六輔、岩波書店、1996
土佐打刃物の発展
ヒット: 7 開く 保存
状況
江戸時代に日本刀の需要が激減し、刀工たちが生活のために農業用刃物への転業を余儀なくされた。
行動
土佐の鍛冶職人が堺で学んだ技術を導入し、林業・農業用の打ち刃物づくりに技術革新を行った。
結果
庶民の生活に根ざした「自由鋳造」の技術が確立され、高知県が日本を代表する包丁産地へと発展した。
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詳細コンテキスト
【分析:状況】
江戸時代に日本刀の需要が激減し、刀工たちが生活のために農業用刃物への転業を余儀なくされた。
【分析:行動】
土佐の鍛冶職人が堺で学んだ技術を導入し、林業・農業用の打ち刃物づくりに技術革新を行った。
【分析:結果】
庶民の生活に根ざした「自由鋳造」の技術が確立され、高知県が日本を代表する包丁産地へと発展した。
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【本文】
令和7年6月28日
戦国の世に生きる武士として軍務に精進する、が、かれらは法によって規制されており、武具を整備し、武芸の修練に心がけて軍役に精励しなけれなければならなかった。このような傾向はすでに早く、天文ころ吾川郡弘岡城主であった吉良宣経(151-1550頃:室町時代)の定目にあり。すなわち、 田地二町以上耕作する百姓には武具を与が、かれらは法によって規制されており、武具を整備し、武芸の修練に心がけて軍役に精励しなけれならかった。
山本大(やまもと たけし). 長宗我部元親 その謎と生涯
山本大. 長宗我部元親 (新人物文庫) . KADOKAWA / 中経出版. Kindle 版. (新人物文庫) . KADOKAWA / 中経出版. Kindle 版. 2014 新人物往来社 2010
室町時代(1932―1573)天文年間(1532年から1555).
令和7年6月26日
鉄と鋼の違いは、主に炭素含有量によって分類されます。 刃物に使用される鋼(ハガネ)は炭素含有量が0.08〜2.0%で、それ以下の材料は鍛鉄または軟鉄と呼ばれ、柔らかく、焼き入れしても硬化しない材料です。 鋼(ハガネ)以上に炭素(C)を含む材料は銑鉄または鋳鉄で、硬く脆いので鋳物の材料などに使用されます。
正宗は、1264年(弘長4年/文永元年)、鎌倉鍛冶の名工「藤三郎行光」(とうさぶろうゆきみつ)の子として生まれました。1280年(弘安3年)に17歳で父親と別れ、「新藤五国光」(しんとうごくにみつ)の門下に入ります。ここで作刀秘術を習得。その後、山城国(現在の京都府南部)、備前国(現在の岡山県東南部)、伯耆国(現在の鳥取県中西部)など、刀の生産地を行脚して、各地の技術を研究。ついに「相州伝」(そうしゅうでん)を完成させます。相州伝の刀は、薄いながらも強度抜群の刀身が特徴であり、これは、刀の常識を一変させる革新的な鍛法でした。
正宗による相州伝の完成は、時代背景と密接に関係しています。正宗が刀工としての道を歩み始めた時期は、いわゆる「元寇[蒙古襲来]」(げんこう[もうこしゅうらい])の時期と重なっています。外国からの侵略という未曽有の事態となった日本では、これまでになく自国の防衛意識が上昇。これを受けて武を貴ぶ気風が盛り上がり、併せて刀のあり方が問われるようになったのです。
武士達が求めたのは豪壮にして実用に耐え、武運を強くしてくれる1振でした。こうした動向の中、五郎入道正宗が相州伝を完成させるのです。相州伝は硬軟の「地鉄」(じがね)を組み合わせ、「地景」(ちけい)や「金筋」(きんすじ)など刃中の働きと、「湾れ刃」(のたれば)を基調とした大模様の刃文による「沸」(にえ)の美しさを強調する作風です。これにより、刀身の強度向上はさることながら、刃文の躍動感が一気に増しました。「山城伝」(やましろでん)の「粟田口派」(あわたぐちは)による伝統を継承した、整った「直刃」(すぐは)ではなく、荒々しい波濤(はとう:大きな波)のような刃文を刀身に表現したのです。この雄渾(ゆうこん:雄大で勢いが良いこと)さが、武運長久を希求する鎌倉武士達の琴線に触れ、正宗は、一躍著名な刀工となったのです。
以後、正宗の作風は全国に影響を及ぼし、後世に言う「正宗十哲」(まさむねじってつ)が生まれます。これは、正宗の影響を強く受けた10人の刀工のこと。正宗十哲のすべてを正宗門下と認めるのは困難ですが、「沸出来」(にえでき)を強調している点は共通しています。正宗十哲によって新しい作刀技術は日本全国に拡大し、のちに「新刀」や「新々刀」(しんしんとう)が誕生する原動力となるのです。
このように、五郎入道正宗の登場により、日本における刀の歴史は大きく転換しました。このため正宗は、「日本刀中興の祖」と位置付けられています。正宗はその後、行光に学んだ相州伝の技法をもとに、さらに品質を高めた刀を作刀するために研究を重ねます。
その動機のひとつとなったのが、1274年(文永11年)と1281年(弘安4年)の2度に亘り、「元」(げん)と称する旧モンゴル帝国から軍勢が襲来した「元寇」(げんこう)です。
このとき元軍は、その当時、一騎打ちが主流であった日本とは異なる集団戦であったり、火薬を使った武器で攻撃したりするなど、それまでの日本では見ることがなかった戦法を用いていました。元寇では最終的に、鎌倉幕府軍が勝利を収めましたが、さらなる外国からの侵攻に備えて、美しいだけでなく、より強靭である実用華美な刀が求められるようになったのです。
正宗は苦心の末、「折れず、曲がらず、良く切れる」と評される刀を作刀することに成功。地刃ともに強い相州伝の伝法を完成させました。
そこで、鎌倉幕府5代執権「北条時頼」(ほうじょうときより)が、全国から刀工達を呼び寄せます。その刀工とは、建長年間(1249~1256年)に、山城国の「粟田口国綱」(あわたぐちくにつな)、及び備前国(現在の岡山県東南部)の「備前三郎国宗」(びぜんさぶろうくにむね)の2名。
五箇伝から輩出された日本刀の名工は、数多くの名刀を鍛え上げました。しかし、江戸時代になると日本刀の需要が激減。刀工達は、「打ち刃物」(うちはもの:高温に熱した軟鉄と鋼などを打って形にする製法)と呼ばれる包丁や鎌、ノコギリ、ナタなどの農業用刃物の需要を求め、地方に広がっていきます。さらに、明治時代の「廃刀令」によって、ほとんどの刀工が日本刀から業務用、及び家庭で使われる刃物づくりに転業しました。
気候に恵まれた高知県は、県民ひとりあたりの森林占有率が日本一で、全国屈指の木材の産出地。そのため、山林伐採用の打ち刃物づくりが古くから行なわれてきました。
江戸時代に入ると、森林資源の確保や新田開発の振興政策が採られ、農業や林業用の刃物への需要がますます高まり、それに伴って「土佐打刃物」のクオリティが向上。土佐には、もともと多くの鍛冶職人が存在し、堺で学んだことをもとに技術革新に取り組んだ結果、包丁づくりが飛躍的な発展を遂げたと言われています。
林業から発展した土佐打刃物は、庶民の生活に添う機能を最優先としているため、その性能と丈夫さは折紙つき。また、野鍛冶の伝統をくみ、注文に応じて様々な刃物を作る「自由鋳造」の技術も魅力で、高知県は日本を代表する包丁産地のひとつとなっているのです。
包丁の作り方
地金(鉄)に鋼(はがね)を貼り合わせる。
令和7年6月24日
横山さん 高知図書館より
長宗我部元親 その謎と生涯
山本 大(たけし)
新人物往来社P39
令和7年5月25日
オーテピア高知 横山氏
長宗我部元親 考
 1両具足は、譜代にあらず、 山内家と関係なし。
令和7年5月12日
元寇記念館調査
1986年 長崎清国水兵事件
元寇記念館の場所は千代の松原の古戦場
中国の真綿の鎧は刀や槍は通らない
鍛刀の改革 準備が必要
昔の刀は馬上から切りつけるためにそりの入った身幅の広い平肉月猪首切先長寸の太刀
真綿の鎧に通用しない
刀匠 五郎正宗 父行光 太刀作り
高度の高い皮鉄と半鍛の硬度の低い鉄
面綿の鎧は太宰府に保管
文永の役 鹿原高地激戦
令和7年5月5日
鎌倉調査
元八幡
https://www.trip-kamakura.com/place/9.html
この社は相模守であった源頼義が奥羽(東北)での戦に勝利し京に帰る途中、1063年(康平6)に鎌倉に立ち寄り、この地に源氏の守り神である石清水八幡宮の祭神を移しまつったといわれる。源氏と鎌倉とのつながりができた初めである。その後、源頼朝が現在の鶴岡八幡宮がある場所に社殿を移してから、ここは元八幡と呼ばれるようになったといわれる。
行き方
鎌倉市材木座1-7
1.JR鎌倉駅東口バス乗り場から九品寺方面行きで「元八幡」下車徒歩1分
2.JR鎌倉駅東口から徒歩15分
2.鶴岡八幡宮
JR横須賀線 JR湘南新宿ライン
「JR鎌倉駅」東口から徒歩10分
3.大倉幕府(1180-1225)
鎌倉市雪ノ下三丁目
https://www.trip-kamakura.com/place/ookurabakufu.html
4.宇都宮辻子幕府(1225-1236)
https://www.trip-kamakura.com/place/utsunomiya.html
5.若宮大路幕府(1236-1333)
https://www.trip-kamakura.com/place/wakamiya.html
6.永福寺
https://www.city.kamakura.kanagawa.jp/treasury/yohukuji_cg.html#youhukujiato-access
令和7年5月3日
始めまして、流通科学大の持田と申します。 
お教え頂きたいことがありまして、メールをお送りしています。
私は、製造業に関する講義を担当しており、
「改善」と「3S」を正しく学生に伝えたいと考えています。
「3S」とは「整理、整頓、清掃」の頭文字を取ったもので、
「改善」と共に日本の製造業での常識となっている言葉です。
しかし、製造現場では3Sは単なる合い言葉の様に使われており、
3Sの精神が伝わっていないのではと感じています。
私は、3Sの精神は鎌倉武士に由来するもので、「整理、整頓、清掃」とは
鎌倉武士が必要な刀、槍、馬を常に整備、準備して、何時でも出撃できる
ような状態でいたことに由来すると私は思っており、関連資料を探している次第です。
私がそう考える理由は、小学生の時の社会見学にあります。
見学は福岡の東公園で、日蓮上人像の前で教員から
「整理、整頓、清掃」の精神は鎌倉幕府の「いざ、鎌倉」に由来する
もので、24時間いつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかる
精神である。一方、「夜討ち、朝駆け」はビジネスチャンスを逃さない
精神であり、「整理、整頓、清掃」と共に日本のビジネス精神の基礎をなしている。
と教わりました。そこで、「整理、整頓、清掃」といざ、鎌倉」に関する
資料をお持ちでしたら、ご紹介頂きたく存じます。
お忙しい所、誠にお手数ですが、本件、ご教授頂けますと幸いです。
今後とも宜しくお願いします。
令和7年5月1日
1937年 トヨタ自動車設立 
1938年(昭和13年) ジャストインタイム開始 
豊田喜一郎の「ジャスト・イン・タイム」の考え
豊田喜一郎は、1927年(昭和2年)に完成した月産能力300台の織機工場の組立ラインに、チェーンコンベアを用いた流れ作業を導入した。さらにその経験を生かして、1938年(昭和13年)に完成させたトヨタ自動車の挙母(ころも)工場(現 トヨタ自動車本社工場)でも流れ作業を導入した。その工場において「ジャスト・イン・タイム」の考えを提唱し、各工程の同期化を目指した。
https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/data/automotive_business/production/system/explanation02.html
よく使われる単語
アンドン(特定の問題をフロアの監督者に警告するために使用される大きな照明付きボード。英語:Signboard)
着々(英語:Load-Load)
現場(英語:On site)
現地現物(英語:Go and see for yourself)
反省(英語:Self-reflection)
平準化(英語: Production Smoothing)
自働化(英語:automation with human intelligence)
ジャストインタイム(英語:Just-in-Time)
改善(英語: Continuous Improvement)
カンバン(英語:Sign, Index Card)
Manufacturing supermarket
ムダ(英語:Waste)
ムラ(英語:Unevenness)
ムリ(無理)(英語:Overburden)
根回し(英語:building consensus)
大部屋(英語:Manager's meeting)
ポカヨケ(英語:fail-safing)
整備(英語:To Prepare)
整理(英語:Sort, removing whatever isn't necessary.)
整頓(英語: Tidy)
清掃(英語:Cleaning)
清潔(英語:Clean)
躾(英語:Discipline)
秋田県立金足農業高等
学校教育方針(校是)
「自主 勤労 感謝」
生活信条(金農三生活信条)
「時間厳守 挨拶励行 整理整頓」
2025/4/9
irst, the 3S method.  I have not find any notice on 3S, but there is a lot of them on 5S (Seiri, Seiton, Seiso, Seiketsu, Shitsuke). It is frequently presented as the typical  first step to introduce lean management. In my opinion, it came to Europe with Japanese companies and was applied in their affiliates here. But I heard stories about problems with their Czech employees. In one company, for example, they demanded that employees come half an hour early and get everything ready, but this caused a storm of resistance and a revolt by the unions. After all, it was against Czech law.  But there must be ways in which it is applied in Czech companies, there is a lot of talk about lean management. I think Josef used it in restructuring his department in Vimperk. Josef now works in Pasau, Germany, so I will ask him about it. But it will take some time, he is very busy and does not write often.
ジャストインタイムは豊田喜一郎が提唱
大野耐一
現場の人間を中心としたボトムアップの改善運動に依存した生産システムを作ろうと考えた。
日本の生産システムは現状に満足せず、創造的なアイデアや創造、工夫により常に変化に挑戦してより高い目標を実現しようとする。従って、変化に強く柔軟性のある生産システムである。(P52)
NHKヒューマニエンス「“整理整頓” それはヒトの本能なのか」を観て
持田 信治さま
鎌倉歴史文化交流館でございます。
「整理、整頓、清掃」が鎌倉武士の精神に由来するのではないか、とのことですが、
そうした考え方は初めて知りました。
中世の東国は自力救済の世界、かつ鎌倉の町は狭く、本拠地の所領経営もありますので、すべての武士が鎌倉に住んでいたわけではありません。
ゆえに、何かあればすぐに鎌倉に駆け付ける必要があります。これは恩賞を得るためです。
「整理、整頓、清掃」に関連する資料はわかりません。
当館は、市内の出土品を所蔵・展示する博物館であるため、関係する所蔵資料もございません。
「いざ鎌倉」に関する資料ですが、これはご存じの通り、室町時代に成立した謡曲「鉢の木」に由来することばです。
当館に「鉢の木」に関する資料はございませんが、以下謡曲の内容と参考文献をご紹介します。
「いざ鎌倉」は、主人公の佐野源左衛門常世が、宿を貸した旅僧(正体は諸国行脚中の執権北条時頼)に対して語った
「鎌倉におん大事出(い)で来(きた)るならば…一番に馳せ参じ着到に付き」を典拠とします。
したがって、「鉢の木」では何か騒動が起こったとき御家人たちがすぐに鎌倉にはせ参じる様子を描いています。
「鉢の木」からわかるのは、次の2点です。
すなわち、鎌倉では騒動が頻発したこと、また鎌倉に一大事ありと聞けば、諸国の御家人は先を争って馳せ参じ、
幕府の着到状(出席簿)に姓名を記録して恩賞を期待したということです。
このようなことは鎌倉時代特有のことで、他の時代にはあまりみられず、だからこそ、
「いざ鎌倉」という言葉は現在まで残ったと考えられます。
一大事ありと聞いて、御家人たちが鎌倉に駆けつけたという記述は、鎌倉幕府の歴史書
『吾妻鏡』に散見します。もっとも多いのは、源頼朝の時代ではなく、鎌倉中期の北条時頼の時代です。
摂家将軍を追放した上、三浦氏を滅ぼし、北条氏専制政治への道を開いた時頼の時代は、
いつ何が起こるかわからない不安定な社会状況でした。
ですので、時頼と「いざ鎌倉」には深い関わりがあり、謡曲「鉢の木」は、その史実を反映しているといえるでしょう。
以上の内容は、平泉澄『明治の源流』(時事通信社、1970年)を参考にしています。
武士たちが鎌倉に馳せ参じたときの『吾妻鏡』の記事も具体的に示されておりますので、よろしければご覧ください。
また、鎌倉武士については、石井進『鎌倉武士の実像』(平凡社、1987年)が参考になると思います。
「いざ鎌倉」の際に、武士たちが馬を走らせた鎌倉街道についても言及しています。
以上がご質問への回答となります。
よろしくお願いいたします。
....................................
鎌倉歴史文化交流館
〒248-0011 神奈川県鎌倉市扇ガ谷1-5-1
TEL:0467-73-8501 FAX:0467-73-8545
rekibun@city.kamakura.kanagawa.jp
....................................
----- Original Message -----
>> From: 持田 信治 <Shinji_Mochida@red.umds.ac.jp>
>> To: "rekibun@city.kamakura.kanagawa.jp" <rekibun@city.kamakura.kanagawa.jp>
>> Date: 2025-03-28 11:08:54
>> Subject: お教え頂きたいことがあります。 流通科学大の持田
>>
>> 鎌倉歴史文化交流館
>> ご担当様
>>
>> 始めまして、流通科学大の持田と申します。 
>> お教え頂きたいことがありまして、メールをお送りしています。
>>
>> 私は、製造業に関する講義を担当しており、
>> 「改善」と「3S」を正しく学生に伝えたいと考えています。
>> 「3S」とは「整理、整頓、清掃」の頭文字を取ったもので、
>> 「改善」と共に日本の製造業での常識となっている言葉です。
>> しかし、製造現場では3Sは単なる合い言葉の様に使われており、
>> 3Sの精神が伝わっていないのではと感じています。
>> 私は、3Sの精神は鎌倉武士に由来するもので、「整理、整頓、清掃」とは
>> 鎌倉武士が必要な刀、槍、馬を常に整備、準備して、何時でも出撃できる
>> ような状態でいたことに由来すると私は思っており、関連資料を探している次第です。
>>
>> 私がそう考える理由は、小学生の時の社会見学にあります。
>> 見学は福岡の東公園で、日蓮上人像の前で教員から
>> 「整理、整頓、清掃」の精神は鎌倉幕府の「いざ、鎌倉」に由来する
>> もので、24時間いつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかる
>> 精神である。一方、「夜討ち、朝駆け」はビジネスチャンスを逃さない
>> 精神であり、「整理、整頓、清掃」と共に日本のビジネス精神の基礎をなしている。
>> と教わりました。そこで、「整理、整頓、清掃」といざ、鎌倉」に関する
>> 資料をお持ちでしたら、ご紹介頂きたく存じます。
>>
>> お忙しい所、誠にお手数ですが、本件、ご教授頂けますと幸いです。
>> 今後とも宜しくお願いします。
Hi Shinji,
this is it:
* Utridit -separate (in the sense necessary from unnecessary)
* Usporadat -organize (in the meaning of organizing things e.g. in order)
* Udrzovat poradek - keep clean (keep the area clean)
* Urcit pravidla -define rules/procedures
* Upevnovat a zlepsovat - strengthen (maybe maintain) and improve
Yes, Kaizen and 5U are like one thing. If I understand it well, Kaizen
is a philosophy, 5U is how to do it - to be "Kaizen"....
V.
Dear Vaclav,
Thank you for your prompt reply so much.
Please tell me, what does 5U stand for?
Are Kaizen and 5S used in pairs?
Thank you.
Shinji Mochida
Dear Shinji,
I have never heard of it, but I am not a good person to ask. So I
asked my daughter Lada who is studying economy and she knows it very
well. Just, instead of 3S she knows 5S - in Czech it is knows as 5U -
they have 5 words beginning with U letter with the similar meaning as
you wrote.
Vaclav
Dear Vaclav,
Thank you for your prompt reply.
I have a question.
Kaizen and 3S are very famous in the manufacturing industry in Japan.
3s stands for Sort, Tify, Clearning.
Have you heard the 3S and Kaizen?
I would like to know if the 3S is known in Europe.
I am researching the origin of the 3S in manufacturing.
I believe 3S was born from the behavior of the Kamakura samurai of ancient Japan.
If you know anything about the 3S in Europe, please let me know.
Thank you.
Shinji Mochida
Dear Shinji,
That's unfortunate news, but thank you for letting me know.
Hopefully, we’ll see each other in September during the Czech-Japan
seminar. I’m also trying to secure some funding.
Enjoy your visit to Izumo Taisha Shrine!
Here in the Czech Republic, we’re finally enjoying spring ? lots of
sunshine and beautiful weather after a long winter.
In the meantime, I’m busy with grant proposals ? we’re working on two,
though the chances of success are rather low. Still, hope never dies.
:-)
See you soon!
Vaclav
Dear Vaclav,
How are you. I and my wife are fine.
In early April, I will be visiting Izumo Taisha Shrine in Shimane Prefecture.
Izumo Taisha Shrine is one of the most famous shrines in Japan.
I am sorry,
I didin't get the budget for going to your Conference.
I am not able to go to your Conference.
Best regards,
Shinji Mochida
ドラッカー  P74
企業の目的は顧客である。
マーケットの創出(コンピュータ、コピー機の登場でマーケットと顧客が造られた)。
イノベーション、信用供与、広告、販売活動により要求が創造された。
IBMのマーケティング
顧客はだれか、顧客にとっての価値とは、顧客はどのように買うか、顧客に必要なものはなにか
イノベーションには技術的、製品的なイノベーションと経済的イノベーションがある。
イヌイットに凍結防止のために冷蔵庫を売るのは経済的なイノベーションであり、技術的、製品的なイノベーションではない。農民が分割払いにより、高価な脳機械を手に入れ、農業生産物を低コストで大量生産することが可能になった。
利益とは目的ではなく、結果である。マーケティング、イノベーション、生産性向上の結果手にするのが利益である。
第51回 「一領具足」の実像
高知市広報「あかるいまち」2016年8月号より
浦戸城明け渡しを拒み、討ち取られた一領具足供養のために建立された六体地蔵(浦戸)
●浦戸城明け渡しを拒み、討ち取られた一領具足供養のために建立された六体地蔵(浦戸)。
  戦国時代の土佐を治めた大名・長宗我部氏の主たる兵力が、いわゆる「一領具足」である。軍記物語『土佐物語』には「死生知らずの野武士なり」と記されるなど、勇猛果敢な土佐武士の代名詞として聞いたこともあるだろう。彼らは平時、農民的な生活を送り、戦時には武装して駆け付ける半士半農の存在とされる。そして、一領具足の名称は、彼らが具足(よろい)を一領しか持っていないという質素さに由来すると考えられてきた。
 しかし近年、長宗我部氏の研究者の中でその由来が疑問視されつつある。最新の研究によると、古文書など歴史資料から一領具足の用例を網羅的に分析した結果、「具足を一領しか持たない武士」ではなく、「具足一領分の軍役を負担する武士」がその実態であるという(平井上総「一領具足考」(『花園史学』三十六号、二〇一六年))。軍役とは武士が主君に対して負う軍事上の負担である。つまり、戦が発生した際に一人分の兵力を負担する下級武士が一領具足の実像というのだ。
 具足一領分の軍役しか負担しない下級武士は、戦国の世においてどこの大名家でも一般的で、長宗我部氏特有のものではない。しかし、長宗我部氏の家臣にはそのような下級武士が他の大名家より圧倒的に多かったのは事実である。
 慶長五(一六〇〇)年の関ケ原合戦を経て、土佐の国主が山内氏になった江戸時代。三代藩主・山内忠豊が親類大名から受け取った書状には「土佐国之儀ハ余国ニ違、長曽我部代より一領具足とて余多有之儀ハ隠れもなき事候」(『山内家史料第三代忠豊公紀』一巻)とある。この事例からも、長宗我部氏の時代から一領具足が土佐に多くいたことは、他国でも有名な話であったことがうかがえる。
 戦国の世、下級武士は一般的だったが、長宗我部氏にとっては主な兵力であったことは間違いない。彼らのような名もなき武士の活躍があったからこそ、「土佐の出来人」長宗我部元親が大名として四国を席巻したということを忘れてはなるまい。
こうちミュージアムネットワーク 高知県立歴史民俗資料館 学芸員 石畑匡基(こくはたまさき)
福田先生
持田です。 
大変、ご無沙汰しております。
お元気でしょうか。
わたしは、現在、横浜のみなとみらい地区に住んでおりますので、
是非、先生にお会いしたく、思っています。
ところで、今、「3Sの起源といざかまくら」を調べており、
海外での「3S」の理解について、先生のお考えをお聞きしたいと
思っています。
「3S」と「改善」は共に日本の製造業での常識となっている言葉です。しかし、製造現場では「3S」はコストダウンの手法として使われており、「3S」の精神が間違って伝わっていないのではと感じています。私は、「3S」の精神は鎌倉武士の「いざ鎌倉」に由来するもので、「整理、整頓、清掃」とは鎌倉武士が必要な刀、槍、馬を常に整備、準備して、何時でも出撃できるような状態でいたことに由来すると私は考えています。そこで、特に海外での理解について調査したいと考えている次第です。「いざ鎌倉」と同様な考えは土佐武士の「一領具足」にもあり、同じく戦時には武装して直ぐさま、駆け付けるという精神です。
私が「3S」の精神は鎌倉武士に由来すると考える理由は、
小学生の時の社会見学にあります。見学は福岡の東公園でした。東公園には巨大な日蓮聖人の像があり、日蓮聖人がお題目を唱えて2回の元寇を退けた姿となっています。見学では、日蓮上人像の前で教員から「整理、整頓、清掃」の精神は鎌倉幕府の「いざ、鎌倉」に由来するもので、24時間いつでもアイデアが浮かべば、ただちに作業に取りかかる精神であり、君らは何時でも学習ができる状態になければならないと教わりました(多少脚色がありますが)。同じく、鎌倉武士に由来する「夜討ち、朝駆け」はビジネスチャンスを逃さない精神であり、「整理、整頓、清掃」と共に日本のビジネス精神の基礎をなしていると思われます。そこで、「整理、整頓、清掃」の海外での理解について先生にご教授願いたく、御願い申し上げる次第です。
余談ですが、最近は「3S」に2つの「S」を付けて「5S」として広がっているようです。しかし、2つのSは蛇足であり、全く「いざ鎌倉」の精神ではなく、何時でも働ける精神ではありません。「5S」の最後の2つの「S」は「躾」と「清潔」であり、私が食品関係の仕事をしている時には「躾」とは作業着、エプロン、マスク、帽子を付けてほこりを落としてから食品工場に入るというルールや白線を踏まないと言うルールを守ることであり、「清潔」とは手を石けんで洗い、更にアルコールで消毒すると言う、いわゆる化学的な清掃でした。実際、「清掃」と「清潔」の英語訳は同じ「Cleaning」であり区別がありません。「5S」の解説を見ると「清潔」とは職場環境の維持とあり、全くトンチンカンな理解であると思われ、「3S」の起源は「いざかまくら」であることを製造現場に示したいと思っています。そこで、是非、海外での「3S」の理解について、先生のお考えをお聞きしたいと思っています。
またまた、余談ですが、チェコの友人に「5S」の広がりを聞いた所
「5S」と「改善」はコストダウンの手法として、広がっているようです。ある企業で「5S」に基づき、始業前に準備するように従業員に指示したところ、無給の業務指示は違法であるとされたそうです。
プロジェクトリスク評価手法の提案と検証
ヒット: 1 開く 保存
状況
プロジェクトにおける要求仕様の曖昧さや不確実要因が、行程遅延や費用超過を引き起こす課題があった。
行動
要求仕様の重要度を可視化する「コストシェアレート」を提案し、ベイジアンネットワークを用いてプロジェクトの遅延確率を予測する手法を開発した。
結果
過去のプロジェクトデータやマネージャーのヒアリング結果と予測値が整合し、リスク対応費の算出根拠として有効であることが示された。
このエピソード全体の関連ルール: N-3: インストール A-34: 生産 E-1: 明
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【分析:状況】
プロジェクトにおける要求仕様の曖昧さや不確実要因が、行程遅延や費用超過を引き起こす課題があった。
【分析:行動】
要求仕様の重要度を可視化する「コストシェアレート」を提案し、ベイジアンネットワークを用いてプロジェクトの遅延確率を予測する手法を開発した。
【分析:結果】
過去のプロジェクトデータやマネージャーのヒアリング結果と予測値が整合し、リスク対応費の算出根拠として有効であることが示された。
----------------------------------------
【本文】
はじめに
今後、更に人工知能の利用を進めるためには、人と同等な行動判断が可能な人工知能が必要である。しかし、人の行動判断のメカニズムは明らかになっておらず、行動判断が可能な人工知能の実現は困難な状況にある。人の行動判断のメカニズムの解明が進まない理由の1つとして、人の行動判断は経験の有無、環境情報、行動目的等の複数の要因を考慮して行われ、メカニズムが複雑であることがある。更に、人の行動判断は時間と共に揺らぎ、必ずしも最適な行動判断を行っていないことがメカニズムの解明が進まない理由の1つである。最適な判断を行わないメカニズムをモデル化することは困難である。そこで、本論文では人の行動判断を模擬する人工知能として、3秒ルールインテリジェンスを提案する。3秒ルールインテリジェンスは人の行動を外部から観察して経験情報の登録を行い、取得した経験情報を元に行動判断の模擬を行う経験駆動型人工知能である。3秒ルールとは人の行動判断は3秒サイクルで行われているとの仮定に基づいている\cite{moc1}\cite{moc2}。人の行動には到達すべき目標があり、人は経験に従って行動を行う。経験のないことは行動出来ない。しかし、人はマニュアルや指示書に従って行動することが出来るため、マニュアルや指示書も拡張された経験であると見なすことができる。つまり、経験とは\underline{目標と環境情報を含む}、目標に向かう手順情報であると見なすことができ、経験情報の蓄積が出来れば、行動可能な人工知能の実現が期待できる。そこで、本研究は目標達成に向けて行動可能な経験駆動型人工知能の実現性を明らかにすることを目的とする。本研究に於ける課題とは新たな行動計画の立案である。
図 1プロジェクトマネジメントに於ける予算と行程
2.プロジェクト中の不確実要因
表 1に示す様にプロジェクトの計画と実行には不確実な要因が存在する。例えば、不確実な要因の1つに要求仕様の精度がある。要求仕様の精度とは仕様に内在する改定の可能性であり、仕様改定は設計変更とシステム変更となり、行程遅延や費用超過を引き起こす。そして、要求の仕様の精度は見積もり精度を左右して、リスクが発現して予算超過となる。予算超過となる理由は不適切な見積もりは無理な計画となり、リスクが発現して結果的に納期や品質を確保できないからである。加えて、新技術の導入やプロジェクトマネージャーやプログラマーのスキルもプロジェクトリスク発現要因となる。一方、開発要員の高いスキルや類似システムの開発経験はプラスリスクであり、費用低減の可能性を高める不確実要因である。プロジェクトの遂行を不確実する要因がプロジェクトリスクであり、ISO31000(International Organization for Standardization)では、リスクとはプロジェクトの実行を不確実にする要因であり、リスクにはプラスとマイナスが存在するとされている[4][5](表 1参照)。以降プロジェクトリスクを単にリスクと呼ぶ。そこで、本研究ではプロジェクトにおける不確実要因とリスクの関係を考慮した確率的プロジェクトリスク評価手法を提案する。具体的にはプロジェクト中に存在するプラスとマイナスのリスク(表 1参照)をベイジアンネットワークに表現してプロジェクトリスクを予測する手法である。
図 2 EVMによるプロジェクトマネジメントの実際
表 1プロジェクト中のリスクの種類
3. 研究背景と本研究の特徴
従来のプロジェクトマネジメントに関する研究は費用見積もりの精度向上や生産性向上に関する研究であった[6] [7]。あるいは機械設計に於ける仕様の改定回数を予測する研究であった[8]。しかし、プロジェクト中の不確実要因に着目したリスクマネジメントに関するものはない。例えば、プロジェクトに於ける不確実な要因には顧客からの要求仕様中の曖昧な点や、プロジェクトに従事するプロジェクトマネージャーやプログラマーのスキルがあり、プロジェクトの予算には不確実要因に対する予備費として10%から20%の費用を積み上げる、しかしこの予備費の内訳を科学的に分析しようとする研究はない。一方、従来のプロジェクトにおける見積もり方法としてCOCOMO法やファンクションポイント法があり、従来の手法では不確実な要因を幾つかの係数で表現する。例えば、COCOMO法では補正係数である[1]。そこで、本研究ではまず、要求仕様の精度とプロジェクト費用の関係について述べ、次にプロジェクト中の不確実要因をベイジアンネットワークで表現してプロジェクトの遅延確率を取得することを提案する。これまでに顧客要求仕様の精度を始めとするプロジェク中の不確実要因とプロジェクトリスクの関係について分析した研究は無い。
4. プロジェクトリスクと不確実要因
4.1 コストシェアレート
重要度の高い要求仕様の度重なる変更は予算超過や納期遅延を引き起こす。そこで、本研究では要求仕様の重要度を評価するためにコストシェアレートを提案する。コストシェアレートとは各要求仕様の実現に必要な費用が総費用に占める割合のことである。式(1)に費用とコストシェアレートの関係を示す。式(1)のコストシェアレート(Sri )はi番目の要求仕様実現に必費用が総費用(C)に占める割合のことであり、i番目の要求仕様実現に必要な費用がCri である。 従って大きなコストシェアレートを持つ要求仕様は大きな開発費用を必要とするため、システム開発における重要度が高いことになる。
(1)
Cri:i番目の要求仕様実現に必要な費用
C:プロジェクト構築のための総費用 
Sri:i番目の要求仕様のコストシェアレート
一般的に、プロジェクトの費用見積もりは、システム構築工数や開発の難易度に基づいて算出を行い、要求仕様別の費用は算出されないため、算出された総費用は顧客のシステムイメージと乖離しており、後の仕様変更の原因となる。例えば、複雑な画面展開は多くの費用を必要とするにも拘わらず、顧客には費用の必要性が認識されないため、多くの場合において、後に費用低減のために画面の簡易化や画面数の削減が発生して仕様変更となる。加えて、顧客にはベンダーが設定した費用分類によって費用が提示され、顧客が提示した要求仕様と費用分類が紐づけされていないため、後に仕様変更が発生する原因となる。ベンダーが設定した費用分類とは、例えば設計、開発、試験、インストール、打ち合せ、書類作成である。そこで、プロジェクトリスク低減を図るために、仕様別のコストシェアレートを算出してリスクを可視化することを提案する。リスクの可視化ができれば、リスクの低減が期待できる。コストシェアレートの大きい仕様に内在する曖昧さはプロジェクトリスクを高める。図 3に過去のプロジェクトにおける開発費用をコストシェアレート表示した例を示す。図 3の横軸は顧客からの要求仕様NO.を示し、縦軸は要求仕様のコストシェアレート(%)である。
図 3コストシェアレート(見積もり費用分類に基づく)
4.2 要求仕様中の不確実要因とリスク
プロジェクトを計画通りに終えるためには正確な見積もりが必要となる。しかしプロジェクトには表 1に示す様にマイナスとプラスのリスクがあり、リスクの正確な評価が見積もり精度を左右する。表 2のリスク値は過去のあるプロジェクトについて3人のプロジェクトスタッフから得た主観的な値であり、要求仕様が属する分類別のリスクの大きさを示している。リスクの大きさは対応費の確保割合で示されており、曖昧性や不確実性を反映している。表 2中のリスク値は当初費用に上乗せする予備費の割合であり、例えばスタッフ1は設計分類に属する仕様には20%の予備費が必要であると回答している。本論文ではプロジェクト実行に必要な費用を当初費用と呼び、リスク対応費を含めた費用を総費用又は単に費用と呼ぶ、またリスク対応費を単にリスクと呼ぶ。表 2中のリスク値の大きい要求仕様分類は精度が低い、又は実現の難易度が高い要求仕様を含む分類であることを示す。そして表 2の合計は金銭的損失に換算したリスクへの対応費であり、リスク対応費は当初費用の20%となることを示している。20%のリスク対応費は、一般的なプロジェクトにおけるリスク対策費と等しい。例えば、一般的なプロジェクトではコンテンジェンシー予備費として当初費用の10%を確保する、加えてマネジメント予備費として当初費用の数%を加えた、合計費として、当初費用の約20%をリスク対策費として計画する。つまり本結果は一般的なプロジェクトではリスク対応費として当初費用の20%をリスク対策費として確保する根拠を与える。図 4は図 3に示したコストシェアレートにリスクを追加表示している。リスクはコストシェアレートに変換されている。式(2)はi番目の要求仕様実現に必要なコストシェアレートの算出方法を示しており、要求仕様実現に必要なコストシェアレート()は各要求仕様中のアイテム別のコストシェアレート()にアイテム別の遅延確率を含む費用割合()を掛け合わせた合計である。アイテムとは設計、開発、試験、打ち合せ、インストール、書類作成であり、それぞれのアイテム別のリスクは表 2のリスク値の平均を使用している。従って、図 4が示す様に各要求仕様が持つリスクのコストシェアレートを予測できれば、正確な費用の算出が可能となる。本手法はまずプロジェクトの当初費用が与えられることが前提であり、本手法は要求仕様別のリスク分析を提供する。本手法を用いて、当初費用の見直しとリスクを含めた総費用の算出を繰り返すことにより手戻りが生じない適切なプロジェクトの計画が可能となる。仕様の変更は手戻りと遅延につながり、無駄な費用を必要とする。そこで、本手法により仕様の精度向上が達成されれば、適切な費用計画が実現する。
(2)
:i番目の要求仕様実現に必要なリスクを含む費用をコストシェアレート表示したもの
:i番目の要求仕様中のn番目のアイテムの費用をコストシェアレート表示したもの 
:i番目の要求仕様中n番目のアイテムの遅延確率を含む費用割合
表 2 要求仕様分類別のリスク対応費の確保の割合
図 4 リスク込みのコストシェアレート
4.3 要求仕様分析とコストシェアレート
表 2に示したリスク値つまり、要求仕様別のリスク対応費の確保割合はスタッフから得た値であった。しかし言語的な要求仕様分析から要求仕様別のリスク値を得ることができれば、コストシェアレートの自動計算が期待できる。更に図 4に示す様にプロジェクトの費用を要求仕様別に分析して可視化できれば精度の低い要求仕様を見直すことが可能となり、精度の高い費用算出が可能となる。そこで、要求仕様分析からコストシェアレートを算出する手法を提案する。以下に、ある過去のプロジェクトからコストシェアレートを算出する手順を示す[9]。本例ではi番目の要求仕様のリスクを含まないコストシェアレート(Cri)の予測を行う。
要求仕様からのキーワード抽出
本ステップでは要求仕様を英語に翻訳して言語解析を行い、キーワードを抽出する。図 5に例を示す。要求仕様を翻訳する理由は英語では、文が分かち書きされているため、形態素解析が正確に行えるからである。次に図 6に各要求仕様中に出現するキーワードの出現状況をカウントする様子を示す。左側のキーワードは全要求仕様から抽出したす全てのキーワードが並んでおり、各要求仕様別に出現したキーワードをカウントする。
オーバーラッピングキーワードの取得
オーバーラッピングキーワードとは2つ以上の要求仕様に出現するキーワードのことであり、オーバーラッピングキーワードの出現状況を分析することにより、要求仕様間の関係と要求仕様の重要性が分析できる。図 7に要求仕様Req01からのReq05オーバーラッピングキーワードの取得例を示す。図 8は要求仕様Req01のオーバーラッピングキーワードを示し、Req01と他の要求仕様との関係を示す。また、要求仕様の属する分野の特定もオーバーラッピングキーワードの取得と同様に用語辞書中のキーワードと各要求仕様中のキーワードを突き合わせて要求仕様の属する分野を特定する。用語辞書は仕様分類を代表するキーワードを含み、仕様分類は基本設計及び設計、画面作成、ロジックプログラムミング、その他である。
ファーストオーダの取得
ファーストオーダとは各要求仕様と他の要求仕様との関係であり、ある要求仕様と他の要求仕様間においてオーバーラッピングキーワードが存在する場合には2つの仕様間には関係があるとする。例えば図 7において要求仕様Req01と要求仕様Req02の間には6個のオーバーラッピングキーワードが存在するため、要求仕様Req01のファーストオーダを1つカウントする。同様に、要求仕様Req01は他の17個の要求仕様との間にオーバーラッピングキーワードを持つため、要求仕様Req01のファーストオーダは17である。
コストシェアレートの予測
回帰分析を用いてコストシェアレートの予測を行う。式(3)に回帰式を示す。回帰分析のパラメータはオーバーラッピングキーワード数、出現キーワード数、要求仕様の属する分野である。
= 0.19X1 + 0.023X2 + 0.47X3 -0.871 (3)
Cri: 費用予測(コストシエアレート)
X1: 各要求仕様のオーバーラッピングキーワード数
X2: 各要求仕様が持つキーワードの数
X3: 各要求仕様の分類、要求仕様の分類は基本設計、設計、画面作成、ロジックプログラムミング、その他であり、各分野のキーワードを含む用語辞書と各仕様から抽出したキーワードとの突合せで所属分野を特定する。
図 9は過去のプロジェクトについて式(3)を用いて分析したコストシェアレートと3人のスタッフから得たコストシェアレートを比較表示している。スタッフ値は3人のスタッフからの値の平均による主観値である。
図 5 キーワード抽出の例
図 6 キーワードの出現頻度の例
図 7 オーバーラッピングキーワードの例
図 8 仕様間の関係分析の例(仕様1と他の要求仕様)
図 9 コストシェアレート予測値とスタッフからの値
4.4 コストシェアレートの自動計算
 図 9は要求仕様を言語解析して特徴量を抽出して演算を行うことにより、コストシェアレートを自動取得できる可能性を示している。しかし、今後、より大規模なプロジェクト分析の場合には広範囲な専門語を含む用語辞書の準備と分類精度の向上が必要である。例えば、今回は抽出したキーワードと用語辞書中のキーワードとの突合せを行い、マッチしたキーワードが最も多く属する分野を仕様分類とした、しかし更に、要求仕様の分野分類の精度を上げるためには出現キーワードの関係を考慮する等の分類手法の更なる研究が必要である。
5.プロジェクトの遅延予測
5.1 要求仕様別の作業遅延予測
プロジェクトの遅延により費用超過が生じ、プロジェクトリスクとなる。プロジェクトが遅延するか否かは各タスクの進捗状況による。そこで本研究では各タスクの遅延確率:Pを式(4)の様に定義する。式(4)中の は計画日数と実際にタスク完了にかかった日数の割合、つまりタスクの達成度合いであり、式(4)のPiはi番目のタスクが遅延する確率である。ただし、計画日数より早くタスクが完了した場合にもPiは0より小さくならない。理由はプロジェクトマネジメントでは計画日数より早くタスクが完了した場合も単にタスク完了であり、ステータスとしてはスケジュール通りとして判断するからである。次に過去の実際のプロジェクトにおける各タスクの進捗状況(表 3参照)を(5)式に示すβ関数に適応することにより表 4に示すパラメータを得た。表 4のパラメータからプロジェクトの遅延確率を予測した結果を図 10に示す。図 10の横軸は各タスクの開始時間であり、全工期を0から1に正規化している。そして縦軸は各タスクが遅延する確率を示す。例えば開始時期が0に近いタスクである計画に属するタスクの行程が遅れる確率は0.69であり、タスク全体の遅延確率の平均は0.225である。
(4)
Pi:遅延確率 Dpi:計画日数 Di:実作業日数
i:i番目のタスク
表 3 タスクの進捗状況
     (5)
表 4 取得したβ関数のパラメータ
図 10 プロジェクト中のタスクの遅延予測
過去のあるプロジェクトのコストシェアレートに要求仕様分類別の遅延確率(図 10参照)を掛けて得た結果を表 5に示す。仕様分類は基本設計、設計、製作、試験、図書であり、コストシェアレートは3人のスタッフから得た主観値である。表 5の結果から遅延リスクを含むプロジェクトの費用予測は当初費用の約10%増しとなっており、一般的なプロジェクト計画では10%程から20%の費用をリスク対策費として計画することに適合する。また表 5の結果から主設計や設計に関する仕様の精度はプロジェクトリスクを左右することが解る。一方、製作、試験や図書作成には遅延リスクが無いことが解る。
表 5 要求仕様別遅延確率
5.2 ベイジアン推定
プロジェクトには表 1に示す様な不確実要因があり、プロジェクトの遂行を不確実にする。そこで本研究では条件付き確率とベイズ推定の式(6)を使用してプロジェクトリスクを推定する方法を提案する。
(6)
以下にベイズ推定の例を示す。本例ではプロジェクトが予定通り進む確率とスタッフからの進捗に関するレポートの信頼性に関する確率の関係を考える。プロジェクトが​計画通りに終了する確率をA、そしてスタッフからの進捗に関するレポートの信頼性の確率をBとする。そしてA=0.9、B=0.7とすると、プロジェクトが実行される世界の確率状況は図 11となる。
図 11 報告を受ける前の世界確率の図
次に機械学習システムのWeka (Waikato Environment for Knowledge Analysis) [10]を使用してプロジェクトが実行される世界の確率状況を表現した様子を図 12に示す。図 12と図 13はWeka上のProjectノードとReportノードに表 6と表 7の条件付き確率を与えている様子を示す。Wekaのベイジアンネットワーク表示では確率0.9は9000、そして確率0.7は6599と表示されている(図 12参照)。
表 6 Weka上のProjectノードの条件付き確率
表 7 Weka上のReportノードの条件付き確率
図 12プロジェクトのベイジアンネットワーク表示
図 13 ProjectとReportに条件付き確率を与えている様子
次に、スタッフがプロジェクトの進捗は計画通りと報告した後のプロジェクトの実行世界は表 8と図 14に示す様になり、Aの確率は式(7)に示す通り0.95となる。
そして図 15はWekaでの表示を示す。ベイジアン推定ではエビデンスと呼ばれる状況報告が与えられることにより、事象の確率世界が変化する。本例でのエビデンスはスタッフが報告したプロジェクトの進捗は計画通りである。
表 8 報告を受けた後の世界確率
図 14報告を受けた後の世界確率の図
(7)
図 15 報告を受けた後のベイジアンネットワーク表示
5.3 プロジェクトリスクのネットワーク表現
プロジェクトリスクが生じる主な要因として顧客からの要求仕様の精度やプロジェクトマネージャーやプログラマーのスキルと見積もり精度がある。そこで、この上記要因とプロジェクトの遅延確率の関係をベイジアンネットワークで表現した様子を図 16に示す。本ベイジアンネットワークではプロジェクトリスクはプロジェクトの遅延確率である。以降、プロジェクトリスクはプロジェクトの遅延確率とする。表 9は図 16の要因が取りうる値を示す。ベイジアンネットワークはインフルーエンスダイアグラム[11]の意思決定ノードと不確定ノードがないものであり、親ノードと子ノード間の関係を条件付き確率で表現する。図 16中の親ノードはプロジェクトの遅延確率(PPD)であり、子ノードにエビデンスが与えられると親が示す世界の確率が変化する。
図 16プロジェクトリスクのベイジアンネットワーク
表 9 ベイジアンネットワーク中の要因の内容
5.4 ベイジアンネットワークと遅延予測
表 9の要素をWeKaで表現したものを図 17に示す。図 17中のプロジェクトの遅延確率(PPD)はPro+と表現される。図 17のベイジアンネットワーク中の条件付き確率の初期値は表10の通りである。そして表10はプロジェクト中のリスク要因とプロジェクトの状態との関係を示す。状態とはプロジェクトが遅延するか計画通り進捗するかである。また表10の条件付き確率は5人のプロジェクトマネージャーからヒアリングした値の平均である。そしてプロジェクトの遅延確率(PPD)の初期値として0.5を与えた後にベイジアンネットワークにエビデンスを与える。与えるエビデンス(Case1)はAE:見積精度とSPM:プロジェクトマネージャーのスキルがStandard、STP:プログラマーのスキルがHigh、AR:要求仕様の精度がLowであり、この時プロジェクトが遅延する確率は約0.26となる(図 18参照)。一方、エビデンス(Case2)をWeKa(図 17参照)に与えた場合の遅延確率は0.125となる(図 19参照)。Case2のエビデンスはAE:見積精度、SPM:プロジェクトマネージャーのスキル、AR:要求仕様の精度がStandard、そしてSTP:プログラマーのスキルがHighである。表 11に以上のCas1とCase2のエビデンスを与えた時のプロジェクトの遅延確率を示す。
図 17 リスクのベイジアンネットワーク表現
表 10 プロジェクトの条件付き確率
図 18 リスク予測(Case1)
図 19 リスク予測(Case2)
表 11 リスク要因の状況と遅延リスク
表 11に示すCASE別の遅延リスクを、ある過去のプロジェクトに適応した場合の費用予測と実費用の対比を表 12に示す。本例では見積精度とプロジェクトマネージャーのスキルはStandardで、プログラマーのスキルがHighの条件下では、顧客の要求仕様の精度がHighからLowに代わることにより費用超過が当初費用の約10%から20%に変化することを示しており、実際のプロジェクトの実行状況に近い。実際に本プロジェクトでは仕様の変更が多発しており、実際に必要とした費用は当初費用の約20%増しである。以上から、表 12の結果は実際のプロジェクトの実行環境において費用が超過する根拠を与える。一般的なプロジェクト環境では、プログラマーの教育や、プログラムの部品化により高いスキルを持つプログラマーを準備することが可能であり、見積りとプロジェクトマネージャーのスキルは標準的である。しかし、要求仕様の精度は不確実である。また、表 12のCase1とCase2の違いも要求仕様の精度がStandardかLowかであり、顧客からの要求仕様に変更が発生するか否かがプロジェクトリスクを左右する。従って、本結果から要求仕様を言語解析してコストシェアレートの自動算出を行い、更にプロジェクト中の不確実要因の状況を観測することにより、リスク対応費込みのプロジェクト費用を予測しようとする本手法の有効性が示された。
表 12 リスク予測と実費用
6.プロジェクトリスク予測ツール
本研究ではプロジェクトリスクを予測するツールを開発した。本ツールは要求仕様別のコストシェアレートとベイジアンネットワークの条件付き確率を与えることにより、要求仕様別のリスクを含む予想費用を表示する。図 20はPPDノードに条件付き確率の初期値として遅延が0.5、計画通りが0,5を与えている様子を示す。そして図 21はSPMノードにエビデンスとしてLowを与えている様子を示す。本システムの条件付き確率データ形式はWekaのデータ形式と互換である。図 22はあるプロジェクトのリスクを含む費用を予想した例を示す。幾つかのプロジェクト環境別に本システムを使用して得た遅延確率を表 13に示す。一般的にスキルの高いプログラマーを準備することは可能である。しかしスキルの高いプロジェクトマネージャーは限られており、全てのプロジェクトにスキルの高いプロジェクトマネージャーを配置することは難しく、プロジェクトリスクは顧客からの要求仕様の精度次第である。従って表 13の示す結果は実際のプロジェクトの実行環境に近い。要求仕様の精度とは仕様の変更が発生するか否かである。従ってプロジェクトの遅延リスクを下げるためには要求仕様の精度を上げることが必要である。そこで要求仕様の精度を上げるために本ツールを使用して、要求仕様別のリスクを可視化して、リスクの高い要求仕様が明らかにすることができれば、要求仕様の精度向上が可能となり、結果的にプロジェクトリスクの低減が期待できる。
図 20 条件付き確率データ(一部)
図 21 エビデンスデータの例(一部)
図 22 要求仕様別の予想費用表示
表 13 リスク要因の条件別のプロジェクトリスク
7. 結論
本論文では確実なプロジェクトマネジメントの実現を目指して、顧客が提示する要求仕様の曖昧さ、やプロジェクト中の不確実要因を考慮したプロジェクトの確率的リスク評価方法を提案した。プロジェクトの遅延は費用増となるため、プロジェクトリスクは費用で示すことが可能である[12]。そこで本研究は顧客が提示する要求仕様の重要性を可視化するためにコストシェアレートを提案した。コストシェアレートとはある要求仕様を実現するために、必要な費用がシステム全体の開発費用に占める費用割合のことであり、コストシェアレートは要求仕様の重要性を反映する。要求仕様中の不確実要因はプロジェクトリスクを左右する。そして本研究はプロジェクトリスクを含む費用予想を行うためにベイジアンネットワーク利用した手法提案して、コストシェアレートとベイジアンネットワークを用いたプロジェクトリスク予測ツールを開発した。そして幾つかのプロジェクト環境におけるプロジェクトリスクを予測した。その結果、本プロジェクトリスク予測ツールの予測結果は現場のプロジェクトマネージャーからのヒアリング結果や実際のプロジェクトの実行状況に合うことが示され、本手法の有効性が示された。今後、本ツールを発展させることにより、プロジェクトリスクの可視化が可能となり、要求仕様の精度向上と確実なプロジェクトマネジメントが期待できる。
8.考察
 本研究で提案したコストシェアレートの算出は言語解析と回帰分析を用いた。しかし、実際のプロジェクトではプロジェクトが進むに従い、要求仕様間の関係も変化する。一方、筆者は時間軸に沿った人の主観の変化を模擬する方法として3秒ルールインテリジェンスを提案しており、3秒ルールインテリジェンスは人の価値観が周囲の状況や目的の変化により常に変化して人の判断と行動に揺らぎを与える様子を模擬しようとする考えである。3秒ルールインテリジェンスは人と同様に3秒未来まで価値観の揺らぎに従い、物事の順位付けと行動判断を行うことを目指している[13]。本研究で示した要求仕様が時間軸に沿って変化する背景には構築しようとしているシステムの機能に対するユーザの価値観の変化が存在する。そこで今後の要求仕様精度予測と精度向上に3秒ルールインテリジェンスの適応を検討することが期待できる。
謝辞
本研究はJSPS科研費 17K00354の助成を受けた。
本研究のデータ分析に助言を頂いた横浜国立大学の満行泰河准教授に感謝申し上げる。また、データ提供を頂いたインターリンク(株)の森 尚久氏と(株)テクノソリューションズの坂口憲一氏に感謝申し上げる。
参考文献
[1] 金子則彦, プロジェクトマネージャー完全教本, 日本経済新聞出版社, 2010
[2] 持田 信治,プロジェクト管理にための知識検索機能実現に向けて,バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 Vol.14,No2、15-22, 2012
[3] A Guide to the Project Management Body of Knowledge(日本語訳),Project Management Inst,2009
[4] 対訳ISO 31000:2009(JIS Q 31000:2010)リスクマネジメントの国際規格,日本規格協会,2010
[5] ISO31000:2009リスクマネジメント解説と適用ガイド, 日本規格協会,2010
[6] 満行泰河、大和裕幸、稗方和夫,モーザー ブライアン,磯沼 大,岡田伊策,笈田佳彰,システム開発プロジェクトにおける手戻りリスクを考慮したタスク優先ルール設計に関する研究,日本機械学会論文集 Vol.82,2016
[7] Shinji Mochida,A Study on Method of Measuring Performance for Project Management, 20th ISPE International Conference on Concurrent Engineering IOS Press Ebooks, US, pp.264-273,2013
[8] Beshoy Morkos,James Mathieson,Joshua D. Summers”Comparative analysis of requirements change prediction models: manual, linguistic, and neural network”, Research in Engineering Design Vol.25, Springer,US, 2014,139-156,2014
[9] Shinji Mochida,James Righter,Joshua D. Summers,A Study of Project Cost Management Based on Requirements Analysis, International Journal of BMFSA Vol. 21, No. 1, pp.21-27, 2016
[10] 藤田一弥,見えないものをさぐる,オーム社,2015
[11]Ronald A. Howard and James E. Matheson, Influence Diagrams ,Decision Analysis Vol. 2, No. 3, September 2005, pp. 127-143,2005
[12] 最新リスクマネジメントがよーくわかる本, 東京海上日動リスクコンサルティング,2012
[13] 持田 信治,3秒ルールAI実現に関する研究,日本経営システム学会第62回全国研究発表大会講演論文集、138-139, 2019
著者氏名(ふりがな)
現職○○大学○○学部○○科
略歴

コストシェアレートの自動算出
ヒット: 1 開く 保存
状況
要求仕様別のリスク分析には手動での評価が必要であり、効率化が求められていた。
行動
要求仕様を英語に翻訳してキーワードを抽出し、オーバーラッピングキーワード数や分野分類を用いた回帰分析による自動算出手法を構築した。
結果
言語解析と回帰分析によりコストシェアレートを自動取得できる可能性が示された。
このエピソード全体の関連ルール: N-3: インストール A-34: 生産 E-1: 明
詳細 (BODY) を表示
詳細コンテキスト
【分析:状況】
要求仕様別のリスク分析には手動での評価が必要であり、効率化が求められていた。
【分析:行動】
要求仕様を英語に翻訳してキーワードを抽出し、オーバーラッピングキーワード数や分野分類を用いた回帰分析による自動算出手法を構築した。
【分析:結果】
言語解析と回帰分析によりコストシェアレートを自動取得できる可能性が示された。
----------------------------------------
【本文】
はじめに
今後、更に人工知能の利用を進めるためには、人と同等な行動判断が可能な人工知能が必要である。しかし、人の行動判断のメカニズムは明らかになっておらず、行動判断が可能な人工知能の実現は困難な状況にある。人の行動判断のメカニズムの解明が進まない理由の1つとして、人の行動判断は経験の有無、環境情報、行動目的等の複数の要因を考慮して行われ、メカニズムが複雑であることがある。更に、人の行動判断は時間と共に揺らぎ、必ずしも最適な行動判断を行っていないことがメカニズムの解明が進まない理由の1つである。最適な判断を行わないメカニズムをモデル化することは困難である。そこで、本論文では人の行動判断を模擬する人工知能として、3秒ルールインテリジェンスを提案する。3秒ルールインテリジェンスは人の行動を外部から観察して経験情報の登録を行い、取得した経験情報を元に行動判断の模擬を行う経験駆動型人工知能である。3秒ルールとは人の行動判断は3秒サイクルで行われているとの仮定に基づいている\cite{moc1}\cite{moc2}。人の行動には到達すべき目標があり、人は経験に従って行動を行う。経験のないことは行動出来ない。しかし、人はマニュアルや指示書に従って行動することが出来るため、マニュアルや指示書も拡張された経験であると見なすことができる。つまり、経験とは\underline{目標と環境情報を含む}、目標に向かう手順情報であると見なすことができ、経験情報の蓄積が出来れば、行動可能な人工知能の実現が期待できる。そこで、本研究は目標達成に向けて行動可能な経験駆動型人工知能の実現性を明らかにすることを目的とする。本研究に於ける課題とは新たな行動計画の立案である。
図 1プロジェクトマネジメントに於ける予算と行程
2.プロジェクト中の不確実要因
表 1に示す様にプロジェクトの計画と実行には不確実な要因が存在する。例えば、不確実な要因の1つに要求仕様の精度がある。要求仕様の精度とは仕様に内在する改定の可能性であり、仕様改定は設計変更とシステム変更となり、行程遅延や費用超過を引き起こす。そして、要求の仕様の精度は見積もり精度を左右して、リスクが発現して予算超過となる。予算超過となる理由は不適切な見積もりは無理な計画となり、リスクが発現して結果的に納期や品質を確保できないからである。加えて、新技術の導入やプロジェクトマネージャーやプログラマーのスキルもプロジェクトリスク発現要因となる。一方、開発要員の高いスキルや類似システムの開発経験はプラスリスクであり、費用低減の可能性を高める不確実要因である。プロジェクトの遂行を不確実する要因がプロジェクトリスクであり、ISO31000(International Organization for Standardization)では、リスクとはプロジェクトの実行を不確実にする要因であり、リスクにはプラスとマイナスが存在するとされている[4][5](表 1参照)。以降プロジェクトリスクを単にリスクと呼ぶ。そこで、本研究ではプロジェクトにおける不確実要因とリスクの関係を考慮した確率的プロジェクトリスク評価手法を提案する。具体的にはプロジェクト中に存在するプラスとマイナスのリスク(表 1参照)をベイジアンネットワークに表現してプロジェクトリスクを予測する手法である。
図 2 EVMによるプロジェクトマネジメントの実際
表 1プロジェクト中のリスクの種類
3. 研究背景と本研究の特徴
従来のプロジェクトマネジメントに関する研究は費用見積もりの精度向上や生産性向上に関する研究であった[6] [7]。あるいは機械設計に於ける仕様の改定回数を予測する研究であった[8]。しかし、プロジェクト中の不確実要因に着目したリスクマネジメントに関するものはない。例えば、プロジェクトに於ける不確実な要因には顧客からの要求仕様中の曖昧な点や、プロジェクトに従事するプロジェクトマネージャーやプログラマーのスキルがあり、プロジェクトの予算には不確実要因に対する予備費として10%から20%の費用を積み上げる、しかしこの予備費の内訳を科学的に分析しようとする研究はない。一方、従来のプロジェクトにおける見積もり方法としてCOCOMO法やファンクションポイント法があり、従来の手法では不確実な要因を幾つかの係数で表現する。例えば、COCOMO法では補正係数である[1]。そこで、本研究ではまず、要求仕様の精度とプロジェクト費用の関係について述べ、次にプロジェクト中の不確実要因をベイジアンネットワークで表現してプロジェクトの遅延確率を取得することを提案する。これまでに顧客要求仕様の精度を始めとするプロジェク中の不確実要因とプロジェクトリスクの関係について分析した研究は無い。
4. プロジェクトリスクと不確実要因
4.1 コストシェアレート
重要度の高い要求仕様の度重なる変更は予算超過や納期遅延を引き起こす。そこで、本研究では要求仕様の重要度を評価するためにコストシェアレートを提案する。コストシェアレートとは各要求仕様の実現に必要な費用が総費用に占める割合のことである。式(1)に費用とコストシェアレートの関係を示す。式(1)のコストシェアレート(Sri )はi番目の要求仕様実現に必費用が総費用(C)に占める割合のことであり、i番目の要求仕様実現に必要な費用がCri である。 従って大きなコストシェアレートを持つ要求仕様は大きな開発費用を必要とするため、システム開発における重要度が高いことになる。
(1)
Cri:i番目の要求仕様実現に必要な費用
C:プロジェクト構築のための総費用 
Sri:i番目の要求仕様のコストシェアレート
一般的に、プロジェクトの費用見積もりは、システム構築工数や開発の難易度に基づいて算出を行い、要求仕様別の費用は算出されないため、算出された総費用は顧客のシステムイメージと乖離しており、後の仕様変更の原因となる。例えば、複雑な画面展開は多くの費用を必要とするにも拘わらず、顧客には費用の必要性が認識されないため、多くの場合において、後に費用低減のために画面の簡易化や画面数の削減が発生して仕様変更となる。加えて、顧客にはベンダーが設定した費用分類によって費用が提示され、顧客が提示した要求仕様と費用分類が紐づけされていないため、後に仕様変更が発生する原因となる。ベンダーが設定した費用分類とは、例えば設計、開発、試験、インストール、打ち合せ、書類作成である。そこで、プロジェクトリスク低減を図るために、仕様別のコストシェアレートを算出してリスクを可視化することを提案する。リスクの可視化ができれば、リスクの低減が期待できる。コストシェアレートの大きい仕様に内在する曖昧さはプロジェクトリスクを高める。図 3に過去のプロジェクトにおける開発費用をコストシェアレート表示した例を示す。図 3の横軸は顧客からの要求仕様NO.を示し、縦軸は要求仕様のコストシェアレート(%)である。
図 3コストシェアレート(見積もり費用分類に基づく)
4.2 要求仕様中の不確実要因とリスク
プロジェクトを計画通りに終えるためには正確な見積もりが必要となる。しかしプロジェクトには表 1に示す様にマイナスとプラスのリスクがあり、リスクの正確な評価が見積もり精度を左右する。表 2のリスク値は過去のあるプロジェクトについて3人のプロジェクトスタッフから得た主観的な値であり、要求仕様が属する分類別のリスクの大きさを示している。リスクの大きさは対応費の確保割合で示されており、曖昧性や不確実性を反映している。表 2中のリスク値は当初費用に上乗せする予備費の割合であり、例えばスタッフ1は設計分類に属する仕様には20%の予備費が必要であると回答している。本論文ではプロジェクト実行に必要な費用を当初費用と呼び、リスク対応費を含めた費用を総費用又は単に費用と呼ぶ、またリスク対応費を単にリスクと呼ぶ。表 2中のリスク値の大きい要求仕様分類は精度が低い、又は実現の難易度が高い要求仕様を含む分類であることを示す。そして表 2の合計は金銭的損失に換算したリスクへの対応費であり、リスク対応費は当初費用の20%となることを示している。20%のリスク対応費は、一般的なプロジェクトにおけるリスク対策費と等しい。例えば、一般的なプロジェクトではコンテンジェンシー予備費として当初費用の10%を確保する、加えてマネジメント予備費として当初費用の数%を加えた、合計費として、当初費用の約20%をリスク対策費として計画する。つまり本結果は一般的なプロジェクトではリスク対応費として当初費用の20%をリスク対策費として確保する根拠を与える。図 4は図 3に示したコストシェアレートにリスクを追加表示している。リスクはコストシェアレートに変換されている。式(2)はi番目の要求仕様実現に必要なコストシェアレートの算出方法を示しており、要求仕様実現に必要なコストシェアレート()は各要求仕様中のアイテム別のコストシェアレート()にアイテム別の遅延確率を含む費用割合()を掛け合わせた合計である。アイテムとは設計、開発、試験、打ち合せ、インストール、書類作成であり、それぞれのアイテム別のリスクは表 2のリスク値の平均を使用している。従って、図 4が示す様に各要求仕様が持つリスクのコストシェアレートを予測できれば、正確な費用の算出が可能となる。本手法はまずプロジェクトの当初費用が与えられることが前提であり、本手法は要求仕様別のリスク分析を提供する。本手法を用いて、当初費用の見直しとリスクを含めた総費用の算出を繰り返すことにより手戻りが生じない適切なプロジェクトの計画が可能となる。仕様の変更は手戻りと遅延につながり、無駄な費用を必要とする。そこで、本手法により仕様の精度向上が達成されれば、適切な費用計画が実現する。
(2)
:i番目の要求仕様実現に必要なリスクを含む費用をコストシェアレート表示したもの
:i番目の要求仕様中のn番目のアイテムの費用をコストシェアレート表示したもの 
:i番目の要求仕様中n番目のアイテムの遅延確率を含む費用割合
表 2 要求仕様分類別のリスク対応費の確保の割合
図 4 リスク込みのコストシェアレート
4.3 要求仕様分析とコストシェアレート
表 2に示したリスク値つまり、要求仕様別のリスク対応費の確保割合はスタッフから得た値であった。しかし言語的な要求仕様分析から要求仕様別のリスク値を得ることができれば、コストシェアレートの自動計算が期待できる。更に図 4に示す様にプロジェクトの費用を要求仕様別に分析して可視化できれば精度の低い要求仕様を見直すことが可能となり、精度の高い費用算出が可能となる。そこで、要求仕様分析からコストシェアレートを算出する手法を提案する。以下に、ある過去のプロジェクトからコストシェアレートを算出する手順を示す[9]。本例ではi番目の要求仕様のリスクを含まないコストシェアレート(Cri)の予測を行う。
要求仕様からのキーワード抽出
本ステップでは要求仕様を英語に翻訳して言語解析を行い、キーワードを抽出する。図 5に例を示す。要求仕様を翻訳する理由は英語では、文が分かち書きされているため、形態素解析が正確に行えるからである。次に図 6に各要求仕様中に出現するキーワードの出現状況をカウントする様子を示す。左側のキーワードは全要求仕様から抽出したす全てのキーワードが並んでおり、各要求仕様別に出現したキーワードをカウントする。
オーバーラッピングキーワードの取得
オーバーラッピングキーワードとは2つ以上の要求仕様に出現するキーワードのことであり、オーバーラッピングキーワードの出現状況を分析することにより、要求仕様間の関係と要求仕様の重要性が分析できる。図 7に要求仕様Req01からのReq05オーバーラッピングキーワードの取得例を示す。図 8は要求仕様Req01のオーバーラッピングキーワードを示し、Req01と他の要求仕様との関係を示す。また、要求仕様の属する分野の特定もオーバーラッピングキーワードの取得と同様に用語辞書中のキーワードと各要求仕様中のキーワードを突き合わせて要求仕様の属する分野を特定する。用語辞書は仕様分類を代表するキーワードを含み、仕様分類は基本設計及び設計、画面作成、ロジックプログラムミング、その他である。
ファーストオーダの取得
ファーストオーダとは各要求仕様と他の要求仕様との関係であり、ある要求仕様と他の要求仕様間においてオーバーラッピングキーワードが存在する場合には2つの仕様間には関係があるとする。例えば図 7において要求仕様Req01と要求仕様Req02の間には6個のオーバーラッピングキーワードが存在するため、要求仕様Req01のファーストオーダを1つカウントする。同様に、要求仕様Req01は他の17個の要求仕様との間にオーバーラッピングキーワードを持つため、要求仕様Req01のファーストオーダは17である。
コストシェアレートの予測
回帰分析を用いてコストシェアレートの予測を行う。式(3)に回帰式を示す。回帰分析のパラメータはオーバーラッピングキーワード数、出現キーワード数、要求仕様の属する分野である。
= 0.19X1 + 0.023X2 + 0.47X3 -0.871 (3)
Cri: 費用予測(コストシエアレート)
X1: 各要求仕様のオーバーラッピングキーワード数
X2: 各要求仕様が持つキーワードの数
X3: 各要求仕様の分類、要求仕様の分類は基本設計、設計、画面作成、ロジックプログラムミング、その他であり、各分野のキーワードを含む用語辞書と各仕様から抽出したキーワードとの突合せで所属分野を特定する。
図 9は過去のプロジェクトについて式(3)を用いて分析したコストシェアレートと3人のスタッフから得たコストシェアレートを比較表示している。スタッフ値は3人のスタッフからの値の平均による主観値である。
図 5 キーワード抽出の例
図 6 キーワードの出現頻度の例
図 7 オーバーラッピングキーワードの例
図 8 仕様間の関係分析の例(仕様1と他の要求仕様)
図 9 コストシェアレート予測値とスタッフからの値
4.4 コストシェアレートの自動計算
 図 9は要求仕様を言語解析して特徴量を抽出して演算を行うことにより、コストシェアレートを自動取得できる可能性を示している。しかし、今後、より大規模なプロジェクト分析の場合には広範囲な専門語を含む用語辞書の準備と分類精度の向上が必要である。例えば、今回は抽出したキーワードと用語辞書中のキーワードとの突合せを行い、マッチしたキーワードが最も多く属する分野を仕様分類とした、しかし更に、要求仕様の分野分類の精度を上げるためには出現キーワードの関係を考慮する等の分類手法の更なる研究が必要である。
5.プロジェクトの遅延予測
5.1 要求仕様別の作業遅延予測
プロジェクトの遅延により費用超過が生じ、プロジェクトリスクとなる。プロジェクトが遅延するか否かは各タスクの進捗状況による。そこで本研究では各タスクの遅延確率:Pを式(4)の様に定義する。式(4)中の は計画日数と実際にタスク完了にかかった日数の割合、つまりタスクの達成度合いであり、式(4)のPiはi番目のタスクが遅延する確率である。ただし、計画日数より早くタスクが完了した場合にもPiは0より小さくならない。理由はプロジェクトマネジメントでは計画日数より早くタスクが完了した場合も単にタスク完了であり、ステータスとしてはスケジュール通りとして判断するからである。次に過去の実際のプロジェクトにおける各タスクの進捗状況(表 3参照)を(5)式に示すβ関数に適応することにより表 4に示すパラメータを得た。表 4のパラメータからプロジェクトの遅延確率を予測した結果を図 10に示す。図 10の横軸は各タスクの開始時間であり、全工期を0から1に正規化している。そして縦軸は各タスクが遅延する確率を示す。例えば開始時期が0に近いタスクである計画に属するタスクの行程が遅れる確率は0.69であり、タスク全体の遅延確率の平均は0.225である。
(4)
Pi:遅延確率 Dpi:計画日数 Di:実作業日数
i:i番目のタスク
表 3 タスクの進捗状況
     (5)
表 4 取得したβ関数のパラメータ
図 10 プロジェクト中のタスクの遅延予測
過去のあるプロジェクトのコストシェアレートに要求仕様分類別の遅延確率(図 10参照)を掛けて得た結果を表 5に示す。仕様分類は基本設計、設計、製作、試験、図書であり、コストシェアレートは3人のスタッフから得た主観値である。表 5の結果から遅延リスクを含むプロジェクトの費用予測は当初費用の約10%増しとなっており、一般的なプロジェクト計画では10%程から20%の費用をリスク対策費として計画することに適合する。また表 5の結果から主設計や設計に関する仕様の精度はプロジェクトリスクを左右することが解る。一方、製作、試験や図書作成には遅延リスクが無いことが解る。
表 5 要求仕様別遅延確率
5.2 ベイジアン推定
プロジェクトには表 1に示す様な不確実要因があり、プロジェクトの遂行を不確実にする。そこで本研究では条件付き確率とベイズ推定の式(6)を使用してプロジェクトリスクを推定する方法を提案する。
(6)
以下にベイズ推定の例を示す。本例ではプロジェクトが予定通り進む確率とスタッフからの進捗に関するレポートの信頼性に関する確率の関係を考える。プロジェクトが​計画通りに終了する確率をA、そしてスタッフからの進捗に関するレポートの信頼性の確率をBとする。そしてA=0.9、B=0.7とすると、プロジェクトが実行される世界の確率状況は図 11となる。
図 11 報告を受ける前の世界確率の図
次に機械学習システムのWeka (Waikato Environment for Knowledge Analysis) [10]を使用してプロジェクトが実行される世界の確率状況を表現した様子を図 12に示す。図 12と図 13はWeka上のProjectノードとReportノードに表 6と表 7の条件付き確率を与えている様子を示す。Wekaのベイジアンネットワーク表示では確率0.9は9000、そして確率0.7は6599と表示されている(図 12参照)。
表 6 Weka上のProjectノードの条件付き確率
表 7 Weka上のReportノードの条件付き確率
図 12プロジェクトのベイジアンネットワーク表示
図 13 ProjectとReportに条件付き確率を与えている様子
次に、スタッフがプロジェクトの進捗は計画通りと報告した後のプロジェクトの実行世界は表 8と図 14に示す様になり、Aの確率は式(7)に示す通り0.95となる。
そして図 15はWekaでの表示を示す。ベイジアン推定ではエビデンスと呼ばれる状況報告が与えられることにより、事象の確率世界が変化する。本例でのエビデンスはスタッフが報告したプロジェクトの進捗は計画通りである。
表 8 報告を受けた後の世界確率
図 14報告を受けた後の世界確率の図
(7)
図 15 報告を受けた後のベイジアンネットワーク表示
5.3 プロジェクトリスクのネットワーク表現
プロジェクトリスクが生じる主な要因として顧客からの要求仕様の精度やプロジェクトマネージャーやプログラマーのスキルと見積もり精度がある。そこで、この上記要因とプロジェクトの遅延確率の関係をベイジアンネットワークで表現した様子を図 16に示す。本ベイジアンネットワークではプロジェクトリスクはプロジェクトの遅延確率である。以降、プロジェクトリスクはプロジェクトの遅延確率とする。表 9は図 16の要因が取りうる値を示す。ベイジアンネットワークはインフルーエンスダイアグラム[11]の意思決定ノードと不確定ノードがないものであり、親ノードと子ノード間の関係を条件付き確率で表現する。図 16中の親ノードはプロジェクトの遅延確率(PPD)であり、子ノードにエビデンスが与えられると親が示す世界の確率が変化する。
図 16プロジェクトリスクのベイジアンネットワーク
表 9 ベイジアンネットワーク中の要因の内容
5.4 ベイジアンネットワークと遅延予測
表 9の要素をWeKaで表現したものを図 17に示す。図 17中のプロジェクトの遅延確率(PPD)はPro+と表現される。図 17のベイジアンネットワーク中の条件付き確率の初期値は表10の通りである。そして表10はプロジェクト中のリスク要因とプロジェクトの状態との関係を示す。状態とはプロジェクトが遅延するか計画通り進捗するかである。また表10の条件付き確率は5人のプロジェクトマネージャーからヒアリングした値の平均である。そしてプロジェクトの遅延確率(PPD)の初期値として0.5を与えた後にベイジアンネットワークにエビデンスを与える。与えるエビデンス(Case1)はAE:見積精度とSPM:プロジェクトマネージャーのスキルがStandard、STP:プログラマーのスキルがHigh、AR:要求仕様の精度がLowであり、この時プロジェクトが遅延する確率は約0.26となる(図 18参照)。一方、エビデンス(Case2)をWeKa(図 17参照)に与えた場合の遅延確率は0.125となる(図 19参照)。Case2のエビデンスはAE:見積精度、SPM:プロジェクトマネージャーのスキル、AR:要求仕様の精度がStandard、そしてSTP:プログラマーのスキルがHighである。表 11に以上のCas1とCase2のエビデンスを与えた時のプロジェクトの遅延確率を示す。
図 17 リスクのベイジアンネットワーク表現
表 10 プロジェクトの条件付き確率
図 18 リスク予測(Case1)
図 19 リスク予測(Case2)
表 11 リスク要因の状況と遅延リスク
表 11に示すCASE別の遅延リスクを、ある過去のプロジェクトに適応した場合の費用予測と実費用の対比を表 12に示す。本例では見積精度とプロジェクトマネージャーのスキルはStandardで、プログラマーのスキルがHighの条件下では、顧客の要求仕様の精度がHighからLowに代わることにより費用超過が当初費用の約10%から20%に変化することを示しており、実際のプロジェクトの実行状況に近い。実際に本プロジェクトでは仕様の変更が多発しており、実際に必要とした費用は当初費用の約20%増しである。以上から、表 12の結果は実際のプロジェクトの実行環境において費用が超過する根拠を与える。一般的なプロジェクト環境では、プログラマーの教育や、プログラムの部品化により高いスキルを持つプログラマーを準備することが可能であり、見積りとプロジェクトマネージャーのスキルは標準的である。しかし、要求仕様の精度は不確実である。また、表 12のCase1とCase2の違いも要求仕様の精度がStandardかLowかであり、顧客からの要求仕様に変更が発生するか否かがプロジェクトリスクを左右する。従って、本結果から要求仕様を言語解析してコストシェアレートの自動算出を行い、更にプロジェクト中の不確実要因の状況を観測することにより、リスク対応費込みのプロジェクト費用を予測しようとする本手法の有効性が示された。
表 12 リスク予測と実費用
6.プロジェクトリスク予測ツール
本研究ではプロジェクトリスクを予測するツールを開発した。本ツールは要求仕様別のコストシェアレートとベイジアンネットワークの条件付き確率を与えることにより、要求仕様別のリスクを含む予想費用を表示する。図 20はPPDノードに条件付き確率の初期値として遅延が0.5、計画通りが0,5を与えている様子を示す。そして図 21はSPMノードにエビデンスとしてLowを与えている様子を示す。本システムの条件付き確率データ形式はWekaのデータ形式と互換である。図 22はあるプロジェクトのリスクを含む費用を予想した例を示す。幾つかのプロジェクト環境別に本システムを使用して得た遅延確率を表 13に示す。一般的にスキルの高いプログラマーを準備することは可能である。しかしスキルの高いプロジェクトマネージャーは限られており、全てのプロジェクトにスキルの高いプロジェクトマネージャーを配置することは難しく、プロジェクトリスクは顧客からの要求仕様の精度次第である。従って表 13の示す結果は実際のプロジェクトの実行環境に近い。要求仕様の精度とは仕様の変更が発生するか否かである。従ってプロジェクトの遅延リスクを下げるためには要求仕様の精度を上げることが必要である。そこで要求仕様の精度を上げるために本ツールを使用して、要求仕様別のリスクを可視化して、リスクの高い要求仕様が明らかにすることができれば、要求仕様の精度向上が可能となり、結果的にプロジェクトリスクの低減が期待できる。
図 20 条件付き確率データ(一部)
図 21 エビデンスデータの例(一部)
図 22 要求仕様別の予想費用表示
表 13 リスク要因の条件別のプロジェクトリスク
7. 結論
本論文では確実なプロジェクトマネジメントの実現を目指して、顧客が提示する要求仕様の曖昧さ、やプロジェクト中の不確実要因を考慮したプロジェクトの確率的リスク評価方法を提案した。プロジェクトの遅延は費用増となるため、プロジェクトリスクは費用で示すことが可能である[12]。そこで本研究は顧客が提示する要求仕様の重要性を可視化するためにコストシェアレートを提案した。コストシェアレートとはある要求仕様を実現するために、必要な費用がシステム全体の開発費用に占める費用割合のことであり、コストシェアレートは要求仕様の重要性を反映する。要求仕様中の不確実要因はプロジェクトリスクを左右する。そして本研究はプロジェクトリスクを含む費用予想を行うためにベイジアンネットワーク利用した手法提案して、コストシェアレートとベイジアンネットワークを用いたプロジェクトリスク予測ツールを開発した。そして幾つかのプロジェクト環境におけるプロジェクトリスクを予測した。その結果、本プロジェクトリスク予測ツールの予測結果は現場のプロジェクトマネージャーからのヒアリング結果や実際のプロジェクトの実行状況に合うことが示され、本手法の有効性が示された。今後、本ツールを発展させることにより、プロジェクトリスクの可視化が可能となり、要求仕様の精度向上と確実なプロジェクトマネジメントが期待できる。
8.考察
 本研究で提案したコストシェアレートの算出は言語解析と回帰分析を用いた。しかし、実際のプロジェクトではプロジェクトが進むに従い、要求仕様間の関係も変化する。一方、筆者は時間軸に沿った人の主観の変化を模擬する方法として3秒ルールインテリジェンスを提案しており、3秒ルールインテリジェンスは人の価値観が周囲の状況や目的の変化により常に変化して人の判断と行動に揺らぎを与える様子を模擬しようとする考えである。3秒ルールインテリジェンスは人と同様に3秒未来まで価値観の揺らぎに従い、物事の順位付けと行動判断を行うことを目指している[13]。本研究で示した要求仕様が時間軸に沿って変化する背景には構築しようとしているシステムの機能に対するユーザの価値観の変化が存在する。そこで今後の要求仕様精度予測と精度向上に3秒ルールインテリジェンスの適応を検討することが期待できる。
謝辞
本研究はJSPS科研費 17K00354の助成を受けた。
本研究のデータ分析に助言を頂いた横浜国立大学の満行泰河准教授に感謝申し上げる。また、データ提供を頂いたインターリンク(株)の森 尚久氏と(株)テクノソリューションズの坂口憲一氏に感謝申し上げる。
参考文献
[1] 金子則彦, プロジェクトマネージャー完全教本, 日本経済新聞出版社, 2010
[2] 持田 信治,プロジェクト管理にための知識検索機能実現に向けて,バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 Vol.14,No2、15-22, 2012
[3] A Guide to the Project Management Body of Knowledge(日本語訳),Project Management Inst,2009
[4] 対訳ISO 31000:2009(JIS Q 31000:2010)リスクマネジメントの国際規格,日本規格協会,2010
[5] ISO31000:2009リスクマネジメント解説と適用ガイド, 日本規格協会,2010
[6] 満行泰河、大和裕幸、稗方和夫,モーザー ブライアン,磯沼 大,岡田伊策,笈田佳彰,システム開発プロジェクトにおける手戻りリスクを考慮したタスク優先ルール設計に関する研究,日本機械学会論文集 Vol.82,2016
[7] Shinji Mochida,A Study on Method of Measuring Performance for Project Management, 20th ISPE International Conference on Concurrent Engineering IOS Press Ebooks, US, pp.264-273,2013
[8] Beshoy Morkos,James Mathieson,Joshua D. Summers”Comparative analysis of requirements change prediction models: manual, linguistic, and neural network”, Research in Engineering Design Vol.25, Springer,US, 2014,139-156,2014
[9] Shinji Mochida,James Righter,Joshua D. Summers,A Study of Project Cost Management Based on Requirements Analysis, International Journal of BMFSA Vol. 21, No. 1, pp.21-27, 2016
[10] 藤田一弥,見えないものをさぐる,オーム社,2015
[11]Ronald A. Howard and James E. Matheson, Influence Diagrams ,Decision Analysis Vol. 2, No. 3, September 2005, pp. 127-143,2005
[12] 最新リスクマネジメントがよーくわかる本, 東京海上日動リスクコンサルティング,2012
[13] 持田 信治,3秒ルールAI実現に関する研究,日本経営システム学会第62回全国研究発表大会講演論文集、138-139, 2019
著者氏名(ふりがな)
現職○○大学○○学部○○科
略歴

プロジェクトリスク予測ツールの開発
ヒット: 1 開く 保存
状況
プロジェクトマネジメントにおいて、不確実な要因を考慮した科学的な費用予測ツールが必要とされていた。
行動
コストシェアレートとベイジアンネットワークを統合し、条件付き確率を入力することでリスク込みの予想費用を表示するツールを開発した。
結果
実際のプロジェクト環境に近い予測が可能となり、リスクの高い要求仕様を可視化することで精度向上とリスク低減への寄与が期待できるようになった。
このエピソード全体の関連ルール: N-3: インストール A-34: 生産 E-1: 明
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詳細コンテキスト
【分析:状況】
プロジェクトマネジメントにおいて、不確実な要因を考慮した科学的な費用予測ツールが必要とされていた。
【分析:行動】
コストシェアレートとベイジアンネットワークを統合し、条件付き確率を入力することでリスク込みの予想費用を表示するツールを開発した。
【分析:結果】
実際のプロジェクト環境に近い予測が可能となり、リスクの高い要求仕様を可視化することで精度向上とリスク低減への寄与が期待できるようになった。
----------------------------------------
【本文】
はじめに
今後、更に人工知能の利用を進めるためには、人と同等な行動判断が可能な人工知能が必要である。しかし、人の行動判断のメカニズムは明らかになっておらず、行動判断が可能な人工知能の実現は困難な状況にある。人の行動判断のメカニズムの解明が進まない理由の1つとして、人の行動判断は経験の有無、環境情報、行動目的等の複数の要因を考慮して行われ、メカニズムが複雑であることがある。更に、人の行動判断は時間と共に揺らぎ、必ずしも最適な行動判断を行っていないことがメカニズムの解明が進まない理由の1つである。最適な判断を行わないメカニズムをモデル化することは困難である。そこで、本論文では人の行動判断を模擬する人工知能として、3秒ルールインテリジェンスを提案する。3秒ルールインテリジェンスは人の行動を外部から観察して経験情報の登録を行い、取得した経験情報を元に行動判断の模擬を行う経験駆動型人工知能である。3秒ルールとは人の行動判断は3秒サイクルで行われているとの仮定に基づいている\cite{moc1}\cite{moc2}。人の行動には到達すべき目標があり、人は経験に従って行動を行う。経験のないことは行動出来ない。しかし、人はマニュアルや指示書に従って行動することが出来るため、マニュアルや指示書も拡張された経験であると見なすことができる。つまり、経験とは\underline{目標と環境情報を含む}、目標に向かう手順情報であると見なすことができ、経験情報の蓄積が出来れば、行動可能な人工知能の実現が期待できる。そこで、本研究は目標達成に向けて行動可能な経験駆動型人工知能の実現性を明らかにすることを目的とする。本研究に於ける課題とは新たな行動計画の立案である。
図 1プロジェクトマネジメントに於ける予算と行程
2.プロジェクト中の不確実要因
表 1に示す様にプロジェクトの計画と実行には不確実な要因が存在する。例えば、不確実な要因の1つに要求仕様の精度がある。要求仕様の精度とは仕様に内在する改定の可能性であり、仕様改定は設計変更とシステム変更となり、行程遅延や費用超過を引き起こす。そして、要求の仕様の精度は見積もり精度を左右して、リスクが発現して予算超過となる。予算超過となる理由は不適切な見積もりは無理な計画となり、リスクが発現して結果的に納期や品質を確保できないからである。加えて、新技術の導入やプロジェクトマネージャーやプログラマーのスキルもプロジェクトリスク発現要因となる。一方、開発要員の高いスキルや類似システムの開発経験はプラスリスクであり、費用低減の可能性を高める不確実要因である。プロジェクトの遂行を不確実する要因がプロジェクトリスクであり、ISO31000(International Organization for Standardization)では、リスクとはプロジェクトの実行を不確実にする要因であり、リスクにはプラスとマイナスが存在するとされている[4][5](表 1参照)。以降プロジェクトリスクを単にリスクと呼ぶ。そこで、本研究ではプロジェクトにおける不確実要因とリスクの関係を考慮した確率的プロジェクトリスク評価手法を提案する。具体的にはプロジェクト中に存在するプラスとマイナスのリスク(表 1参照)をベイジアンネットワークに表現してプロジェクトリスクを予測する手法である。
図 2 EVMによるプロジェクトマネジメントの実際
表 1プロジェクト中のリスクの種類
3. 研究背景と本研究の特徴
従来のプロジェクトマネジメントに関する研究は費用見積もりの精度向上や生産性向上に関する研究であった[6] [7]。あるいは機械設計に於ける仕様の改定回数を予測する研究であった[8]。しかし、プロジェクト中の不確実要因に着目したリスクマネジメントに関するものはない。例えば、プロジェクトに於ける不確実な要因には顧客からの要求仕様中の曖昧な点や、プロジェクトに従事するプロジェクトマネージャーやプログラマーのスキルがあり、プロジェクトの予算には不確実要因に対する予備費として10%から20%の費用を積み上げる、しかしこの予備費の内訳を科学的に分析しようとする研究はない。一方、従来のプロジェクトにおける見積もり方法としてCOCOMO法やファンクションポイント法があり、従来の手法では不確実な要因を幾つかの係数で表現する。例えば、COCOMO法では補正係数である[1]。そこで、本研究ではまず、要求仕様の精度とプロジェクト費用の関係について述べ、次にプロジェクト中の不確実要因をベイジアンネットワークで表現してプロジェクトの遅延確率を取得することを提案する。これまでに顧客要求仕様の精度を始めとするプロジェク中の不確実要因とプロジェクトリスクの関係について分析した研究は無い。
4. プロジェクトリスクと不確実要因
4.1 コストシェアレート
重要度の高い要求仕様の度重なる変更は予算超過や納期遅延を引き起こす。そこで、本研究では要求仕様の重要度を評価するためにコストシェアレートを提案する。コストシェアレートとは各要求仕様の実現に必要な費用が総費用に占める割合のことである。式(1)に費用とコストシェアレートの関係を示す。式(1)のコストシェアレート(Sri )はi番目の要求仕様実現に必費用が総費用(C)に占める割合のことであり、i番目の要求仕様実現に必要な費用がCri である。 従って大きなコストシェアレートを持つ要求仕様は大きな開発費用を必要とするため、システム開発における重要度が高いことになる。
(1)
Cri:i番目の要求仕様実現に必要な費用
C:プロジェクト構築のための総費用 
Sri:i番目の要求仕様のコストシェアレート
一般的に、プロジェクトの費用見積もりは、システム構築工数や開発の難易度に基づいて算出を行い、要求仕様別の費用は算出されないため、算出された総費用は顧客のシステムイメージと乖離しており、後の仕様変更の原因となる。例えば、複雑な画面展開は多くの費用を必要とするにも拘わらず、顧客には費用の必要性が認識されないため、多くの場合において、後に費用低減のために画面の簡易化や画面数の削減が発生して仕様変更となる。加えて、顧客にはベンダーが設定した費用分類によって費用が提示され、顧客が提示した要求仕様と費用分類が紐づけされていないため、後に仕様変更が発生する原因となる。ベンダーが設定した費用分類とは、例えば設計、開発、試験、インストール、打ち合せ、書類作成である。そこで、プロジェクトリスク低減を図るために、仕様別のコストシェアレートを算出してリスクを可視化することを提案する。リスクの可視化ができれば、リスクの低減が期待できる。コストシェアレートの大きい仕様に内在する曖昧さはプロジェクトリスクを高める。図 3に過去のプロジェクトにおける開発費用をコストシェアレート表示した例を示す。図 3の横軸は顧客からの要求仕様NO.を示し、縦軸は要求仕様のコストシェアレート(%)である。
図 3コストシェアレート(見積もり費用分類に基づく)
4.2 要求仕様中の不確実要因とリスク
プロジェクトを計画通りに終えるためには正確な見積もりが必要となる。しかしプロジェクトには表 1に示す様にマイナスとプラスのリスクがあり、リスクの正確な評価が見積もり精度を左右する。表 2のリスク値は過去のあるプロジェクトについて3人のプロジェクトスタッフから得た主観的な値であり、要求仕様が属する分類別のリスクの大きさを示している。リスクの大きさは対応費の確保割合で示されており、曖昧性や不確実性を反映している。表 2中のリスク値は当初費用に上乗せする予備費の割合であり、例えばスタッフ1は設計分類に属する仕様には20%の予備費が必要であると回答している。本論文ではプロジェクト実行に必要な費用を当初費用と呼び、リスク対応費を含めた費用を総費用又は単に費用と呼ぶ、またリスク対応費を単にリスクと呼ぶ。表 2中のリスク値の大きい要求仕様分類は精度が低い、又は実現の難易度が高い要求仕様を含む分類であることを示す。そして表 2の合計は金銭的損失に換算したリスクへの対応費であり、リスク対応費は当初費用の20%となることを示している。20%のリスク対応費は、一般的なプロジェクトにおけるリスク対策費と等しい。例えば、一般的なプロジェクトではコンテンジェンシー予備費として当初費用の10%を確保する、加えてマネジメント予備費として当初費用の数%を加えた、合計費として、当初費用の約20%をリスク対策費として計画する。つまり本結果は一般的なプロジェクトではリスク対応費として当初費用の20%をリスク対策費として確保する根拠を与える。図 4は図 3に示したコストシェアレートにリスクを追加表示している。リスクはコストシェアレートに変換されている。式(2)はi番目の要求仕様実現に必要なコストシェアレートの算出方法を示しており、要求仕様実現に必要なコストシェアレート()は各要求仕様中のアイテム別のコストシェアレート()にアイテム別の遅延確率を含む費用割合()を掛け合わせた合計である。アイテムとは設計、開発、試験、打ち合せ、インストール、書類作成であり、それぞれのアイテム別のリスクは表 2のリスク値の平均を使用している。従って、図 4が示す様に各要求仕様が持つリスクのコストシェアレートを予測できれば、正確な費用の算出が可能となる。本手法はまずプロジェクトの当初費用が与えられることが前提であり、本手法は要求仕様別のリスク分析を提供する。本手法を用いて、当初費用の見直しとリスクを含めた総費用の算出を繰り返すことにより手戻りが生じない適切なプロジェクトの計画が可能となる。仕様の変更は手戻りと遅延につながり、無駄な費用を必要とする。そこで、本手法により仕様の精度向上が達成されれば、適切な費用計画が実現する。
(2)
:i番目の要求仕様実現に必要なリスクを含む費用をコストシェアレート表示したもの
:i番目の要求仕様中のn番目のアイテムの費用をコストシェアレート表示したもの 
:i番目の要求仕様中n番目のアイテムの遅延確率を含む費用割合
表 2 要求仕様分類別のリスク対応費の確保の割合
図 4 リスク込みのコストシェアレート
4.3 要求仕様分析とコストシェアレート
表 2に示したリスク値つまり、要求仕様別のリスク対応費の確保割合はスタッフから得た値であった。しかし言語的な要求仕様分析から要求仕様別のリスク値を得ることができれば、コストシェアレートの自動計算が期待できる。更に図 4に示す様にプロジェクトの費用を要求仕様別に分析して可視化できれば精度の低い要求仕様を見直すことが可能となり、精度の高い費用算出が可能となる。そこで、要求仕様分析からコストシェアレートを算出する手法を提案する。以下に、ある過去のプロジェクトからコストシェアレートを算出する手順を示す[9]。本例ではi番目の要求仕様のリスクを含まないコストシェアレート(Cri)の予測を行う。
要求仕様からのキーワード抽出
本ステップでは要求仕様を英語に翻訳して言語解析を行い、キーワードを抽出する。図 5に例を示す。要求仕様を翻訳する理由は英語では、文が分かち書きされているため、形態素解析が正確に行えるからである。次に図 6に各要求仕様中に出現するキーワードの出現状況をカウントする様子を示す。左側のキーワードは全要求仕様から抽出したす全てのキーワードが並んでおり、各要求仕様別に出現したキーワードをカウントする。
オーバーラッピングキーワードの取得
オーバーラッピングキーワードとは2つ以上の要求仕様に出現するキーワードのことであり、オーバーラッピングキーワードの出現状況を分析することにより、要求仕様間の関係と要求仕様の重要性が分析できる。図 7に要求仕様Req01からのReq05オーバーラッピングキーワードの取得例を示す。図 8は要求仕様Req01のオーバーラッピングキーワードを示し、Req01と他の要求仕様との関係を示す。また、要求仕様の属する分野の特定もオーバーラッピングキーワードの取得と同様に用語辞書中のキーワードと各要求仕様中のキーワードを突き合わせて要求仕様の属する分野を特定する。用語辞書は仕様分類を代表するキーワードを含み、仕様分類は基本設計及び設計、画面作成、ロジックプログラムミング、その他である。
ファーストオーダの取得
ファーストオーダとは各要求仕様と他の要求仕様との関係であり、ある要求仕様と他の要求仕様間においてオーバーラッピングキーワードが存在する場合には2つの仕様間には関係があるとする。例えば図 7において要求仕様Req01と要求仕様Req02の間には6個のオーバーラッピングキーワードが存在するため、要求仕様Req01のファーストオーダを1つカウントする。同様に、要求仕様Req01は他の17個の要求仕様との間にオーバーラッピングキーワードを持つため、要求仕様Req01のファーストオーダは17である。
コストシェアレートの予測
回帰分析を用いてコストシェアレートの予測を行う。式(3)に回帰式を示す。回帰分析のパラメータはオーバーラッピングキーワード数、出現キーワード数、要求仕様の属する分野である。
= 0.19X1 + 0.023X2 + 0.47X3 -0.871 (3)
Cri: 費用予測(コストシエアレート)
X1: 各要求仕様のオーバーラッピングキーワード数
X2: 各要求仕様が持つキーワードの数
X3: 各要求仕様の分類、要求仕様の分類は基本設計、設計、画面作成、ロジックプログラムミング、その他であり、各分野のキーワードを含む用語辞書と各仕様から抽出したキーワードとの突合せで所属分野を特定する。
図 9は過去のプロジェクトについて式(3)を用いて分析したコストシェアレートと3人のスタッフから得たコストシェアレートを比較表示している。スタッフ値は3人のスタッフからの値の平均による主観値である。
図 5 キーワード抽出の例
図 6 キーワードの出現頻度の例
図 7 オーバーラッピングキーワードの例
図 8 仕様間の関係分析の例(仕様1と他の要求仕様)
図 9 コストシェアレート予測値とスタッフからの値
4.4 コストシェアレートの自動計算
 図 9は要求仕様を言語解析して特徴量を抽出して演算を行うことにより、コストシェアレートを自動取得できる可能性を示している。しかし、今後、より大規模なプロジェクト分析の場合には広範囲な専門語を含む用語辞書の準備と分類精度の向上が必要である。例えば、今回は抽出したキーワードと用語辞書中のキーワードとの突合せを行い、マッチしたキーワードが最も多く属する分野を仕様分類とした、しかし更に、要求仕様の分野分類の精度を上げるためには出現キーワードの関係を考慮する等の分類手法の更なる研究が必要である。
5.プロジェクトの遅延予測
5.1 要求仕様別の作業遅延予測
プロジェクトの遅延により費用超過が生じ、プロジェクトリスクとなる。プロジェクトが遅延するか否かは各タスクの進捗状況による。そこで本研究では各タスクの遅延確率:Pを式(4)の様に定義する。式(4)中の は計画日数と実際にタスク完了にかかった日数の割合、つまりタスクの達成度合いであり、式(4)のPiはi番目のタスクが遅延する確率である。ただし、計画日数より早くタスクが完了した場合にもPiは0より小さくならない。理由はプロジェクトマネジメントでは計画日数より早くタスクが完了した場合も単にタスク完了であり、ステータスとしてはスケジュール通りとして判断するからである。次に過去の実際のプロジェクトにおける各タスクの進捗状況(表 3参照)を(5)式に示すβ関数に適応することにより表 4に示すパラメータを得た。表 4のパラメータからプロジェクトの遅延確率を予測した結果を図 10に示す。図 10の横軸は各タスクの開始時間であり、全工期を0から1に正規化している。そして縦軸は各タスクが遅延する確率を示す。例えば開始時期が0に近いタスクである計画に属するタスクの行程が遅れる確率は0.69であり、タスク全体の遅延確率の平均は0.225である。
(4)
Pi:遅延確率 Dpi:計画日数 Di:実作業日数
i:i番目のタスク
表 3 タスクの進捗状況
     (5)
表 4 取得したβ関数のパラメータ
図 10 プロジェクト中のタスクの遅延予測
過去のあるプロジェクトのコストシェアレートに要求仕様分類別の遅延確率(図 10参照)を掛けて得た結果を表 5に示す。仕様分類は基本設計、設計、製作、試験、図書であり、コストシェアレートは3人のスタッフから得た主観値である。表 5の結果から遅延リスクを含むプロジェクトの費用予測は当初費用の約10%増しとなっており、一般的なプロジェクト計画では10%程から20%の費用をリスク対策費として計画することに適合する。また表 5の結果から主設計や設計に関する仕様の精度はプロジェクトリスクを左右することが解る。一方、製作、試験や図書作成には遅延リスクが無いことが解る。
表 5 要求仕様別遅延確率
5.2 ベイジアン推定
プロジェクトには表 1に示す様な不確実要因があり、プロジェクトの遂行を不確実にする。そこで本研究では条件付き確率とベイズ推定の式(6)を使用してプロジェクトリスクを推定する方法を提案する。
(6)
以下にベイズ推定の例を示す。本例ではプロジェクトが予定通り進む確率とスタッフからの進捗に関するレポートの信頼性に関する確率の関係を考える。プロジェクトが​計画通りに終了する確率をA、そしてスタッフからの進捗に関するレポートの信頼性の確率をBとする。そしてA=0.9、B=0.7とすると、プロジェクトが実行される世界の確率状況は図 11となる。
図 11 報告を受ける前の世界確率の図
次に機械学習システムのWeka (Waikato Environment for Knowledge Analysis) [10]を使用してプロジェクトが実行される世界の確率状況を表現した様子を図 12に示す。図 12と図 13はWeka上のProjectノードとReportノードに表 6と表 7の条件付き確率を与えている様子を示す。Wekaのベイジアンネットワーク表示では確率0.9は9000、そして確率0.7は6599と表示されている(図 12参照)。
表 6 Weka上のProjectノードの条件付き確率
表 7 Weka上のReportノードの条件付き確率
図 12プロジェクトのベイジアンネットワーク表示
図 13 ProjectとReportに条件付き確率を与えている様子
次に、スタッフがプロジェクトの進捗は計画通りと報告した後のプロジェクトの実行世界は表 8と図 14に示す様になり、Aの確率は式(7)に示す通り0.95となる。
そして図 15はWekaでの表示を示す。ベイジアン推定ではエビデンスと呼ばれる状況報告が与えられることにより、事象の確率世界が変化する。本例でのエビデンスはスタッフが報告したプロジェクトの進捗は計画通りである。
表 8 報告を受けた後の世界確率
図 14報告を受けた後の世界確率の図
(7)
図 15 報告を受けた後のベイジアンネットワーク表示
5.3 プロジェクトリスクのネットワーク表現
プロジェクトリスクが生じる主な要因として顧客からの要求仕様の精度やプロジェクトマネージャーやプログラマーのスキルと見積もり精度がある。そこで、この上記要因とプロジェクトの遅延確率の関係をベイジアンネットワークで表現した様子を図 16に示す。本ベイジアンネットワークではプロジェクトリスクはプロジェクトの遅延確率である。以降、プロジェクトリスクはプロジェクトの遅延確率とする。表 9は図 16の要因が取りうる値を示す。ベイジアンネットワークはインフルーエンスダイアグラム[11]の意思決定ノードと不確定ノードがないものであり、親ノードと子ノード間の関係を条件付き確率で表現する。図 16中の親ノードはプロジェクトの遅延確率(PPD)であり、子ノードにエビデンスが与えられると親が示す世界の確率が変化する。
図 16プロジェクトリスクのベイジアンネットワーク
表 9 ベイジアンネットワーク中の要因の内容
5.4 ベイジアンネットワークと遅延予測
表 9の要素をWeKaで表現したものを図 17に示す。図 17中のプロジェクトの遅延確率(PPD)はPro+と表現される。図 17のベイジアンネットワーク中の条件付き確率の初期値は表10の通りである。そして表10はプロジェクト中のリスク要因とプロジェクトの状態との関係を示す。状態とはプロジェクトが遅延するか計画通り進捗するかである。また表10の条件付き確率は5人のプロジェクトマネージャーからヒアリングした値の平均である。そしてプロジェクトの遅延確率(PPD)の初期値として0.5を与えた後にベイジアンネットワークにエビデンスを与える。与えるエビデンス(Case1)はAE:見積精度とSPM:プロジェクトマネージャーのスキルがStandard、STP:プログラマーのスキルがHigh、AR:要求仕様の精度がLowであり、この時プロジェクトが遅延する確率は約0.26となる(図 18参照)。一方、エビデンス(Case2)をWeKa(図 17参照)に与えた場合の遅延確率は0.125となる(図 19参照)。Case2のエビデンスはAE:見積精度、SPM:プロジェクトマネージャーのスキル、AR:要求仕様の精度がStandard、そしてSTP:プログラマーのスキルがHighである。表 11に以上のCas1とCase2のエビデンスを与えた時のプロジェクトの遅延確率を示す。
図 17 リスクのベイジアンネットワーク表現
表 10 プロジェクトの条件付き確率
図 18 リスク予測(Case1)
図 19 リスク予測(Case2)
表 11 リスク要因の状況と遅延リスク
表 11に示すCASE別の遅延リスクを、ある過去のプロジェクトに適応した場合の費用予測と実費用の対比を表 12に示す。本例では見積精度とプロジェクトマネージャーのスキルはStandardで、プログラマーのスキルがHighの条件下では、顧客の要求仕様の精度がHighからLowに代わることにより費用超過が当初費用の約10%から20%に変化することを示しており、実際のプロジェクトの実行状況に近い。実際に本プロジェクトでは仕様の変更が多発しており、実際に必要とした費用は当初費用の約20%増しである。以上から、表 12の結果は実際のプロジェクトの実行環境において費用が超過する根拠を与える。一般的なプロジェクト環境では、プログラマーの教育や、プログラムの部品化により高いスキルを持つプログラマーを準備することが可能であり、見積りとプロジェクトマネージャーのスキルは標準的である。しかし、要求仕様の精度は不確実である。また、表 12のCase1とCase2の違いも要求仕様の精度がStandardかLowかであり、顧客からの要求仕様に変更が発生するか否かがプロジェクトリスクを左右する。従って、本結果から要求仕様を言語解析してコストシェアレートの自動算出を行い、更にプロジェクト中の不確実要因の状況を観測することにより、リスク対応費込みのプロジェクト費用を予測しようとする本手法の有効性が示された。
表 12 リスク予測と実費用
6.プロジェクトリスク予測ツール
本研究ではプロジェクトリスクを予測するツールを開発した。本ツールは要求仕様別のコストシェアレートとベイジアンネットワークの条件付き確率を与えることにより、要求仕様別のリスクを含む予想費用を表示する。図 20はPPDノードに条件付き確率の初期値として遅延が0.5、計画通りが0,5を与えている様子を示す。そして図 21はSPMノードにエビデンスとしてLowを与えている様子を示す。本システムの条件付き確率データ形式はWekaのデータ形式と互換である。図 22はあるプロジェクトのリスクを含む費用を予想した例を示す。幾つかのプロジェクト環境別に本システムを使用して得た遅延確率を表 13に示す。一般的にスキルの高いプログラマーを準備することは可能である。しかしスキルの高いプロジェクトマネージャーは限られており、全てのプロジェクトにスキルの高いプロジェクトマネージャーを配置することは難しく、プロジェクトリスクは顧客からの要求仕様の精度次第である。従って表 13の示す結果は実際のプロジェクトの実行環境に近い。要求仕様の精度とは仕様の変更が発生するか否かである。従ってプロジェクトの遅延リスクを下げるためには要求仕様の精度を上げることが必要である。そこで要求仕様の精度を上げるために本ツールを使用して、要求仕様別のリスクを可視化して、リスクの高い要求仕様が明らかにすることができれば、要求仕様の精度向上が可能となり、結果的にプロジェクトリスクの低減が期待できる。
図 20 条件付き確率データ(一部)
図 21 エビデンスデータの例(一部)
図 22 要求仕様別の予想費用表示
表 13 リスク要因の条件別のプロジェクトリスク
7. 結論
本論文では確実なプロジェクトマネジメントの実現を目指して、顧客が提示する要求仕様の曖昧さ、やプロジェクト中の不確実要因を考慮したプロジェクトの確率的リスク評価方法を提案した。プロジェクトの遅延は費用増となるため、プロジェクトリスクは費用で示すことが可能である[12]。そこで本研究は顧客が提示する要求仕様の重要性を可視化するためにコストシェアレートを提案した。コストシェアレートとはある要求仕様を実現するために、必要な費用がシステム全体の開発費用に占める費用割合のことであり、コストシェアレートは要求仕様の重要性を反映する。要求仕様中の不確実要因はプロジェクトリスクを左右する。そして本研究はプロジェクトリスクを含む費用予想を行うためにベイジアンネットワーク利用した手法提案して、コストシェアレートとベイジアンネットワークを用いたプロジェクトリスク予測ツールを開発した。そして幾つかのプロジェクト環境におけるプロジェクトリスクを予測した。その結果、本プロジェクトリスク予測ツールの予測結果は現場のプロジェクトマネージャーからのヒアリング結果や実際のプロジェクトの実行状況に合うことが示され、本手法の有効性が示された。今後、本ツールを発展させることにより、プロジェクトリスクの可視化が可能となり、要求仕様の精度向上と確実なプロジェクトマネジメントが期待できる。
8.考察
 本研究で提案したコストシェアレートの算出は言語解析と回帰分析を用いた。しかし、実際のプロジェクトではプロジェクトが進むに従い、要求仕様間の関係も変化する。一方、筆者は時間軸に沿った人の主観の変化を模擬する方法として3秒ルールインテリジェンスを提案しており、3秒ルールインテリジェンスは人の価値観が周囲の状況や目的の変化により常に変化して人の判断と行動に揺らぎを与える様子を模擬しようとする考えである。3秒ルールインテリジェンスは人と同様に3秒未来まで価値観の揺らぎに従い、物事の順位付けと行動判断を行うことを目指している[13]。本研究で示した要求仕様が時間軸に沿って変化する背景には構築しようとしているシステムの機能に対するユーザの価値観の変化が存在する。そこで今後の要求仕様精度予測と精度向上に3秒ルールインテリジェンスの適応を検討することが期待できる。
謝辞
本研究はJSPS科研費 17K00354の助成を受けた。
本研究のデータ分析に助言を頂いた横浜国立大学の満行泰河准教授に感謝申し上げる。また、データ提供を頂いたインターリンク(株)の森 尚久氏と(株)テクノソリューションズの坂口憲一氏に感謝申し上げる。
参考文献
[1] 金子則彦, プロジェクトマネージャー完全教本, 日本経済新聞出版社, 2010
[2] 持田 信治,プロジェクト管理にための知識検索機能実現に向けて,バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 Vol.14,No2、15-22, 2012
[3] A Guide to the Project Management Body of Knowledge(日本語訳),Project Management Inst,2009
[4] 対訳ISO 31000:2009(JIS Q 31000:2010)リスクマネジメントの国際規格,日本規格協会,2010
[5] ISO31000:2009リスクマネジメント解説と適用ガイド, 日本規格協会,2010
[6] 満行泰河、大和裕幸、稗方和夫,モーザー ブライアン,磯沼 大,岡田伊策,笈田佳彰,システム開発プロジェクトにおける手戻りリスクを考慮したタスク優先ルール設計に関する研究,日本機械学会論文集 Vol.82,2016
[7] Shinji Mochida,A Study on Method of Measuring Performance for Project Management, 20th ISPE International Conference on Concurrent Engineering IOS Press Ebooks, US, pp.264-273,2013
[8] Beshoy Morkos,James Mathieson,Joshua D. Summers”Comparative analysis of requirements change prediction models: manual, linguistic, and neural network”, Research in Engineering Design Vol.25, Springer,US, 2014,139-156,2014
[9] Shinji Mochida,James Righter,Joshua D. Summers,A Study of Project Cost Management Based on Requirements Analysis, International Journal of BMFSA Vol. 21, No. 1, pp.21-27, 2016
[10] 藤田一弥,見えないものをさぐる,オーム社,2015
[11]Ronald A. Howard and James E. Matheson, Influence Diagrams ,Decision Analysis Vol. 2, No. 3, September 2005, pp. 127-143,2005
[12] 最新リスクマネジメントがよーくわかる本, 東京海上日動リスクコンサルティング,2012
[13] 持田 信治,3秒ルールAI実現に関する研究,日本経営システム学会第62回全国研究発表大会講演論文集、138-139, 2019
著者氏名(ふりがな)
現職○○大学○○学部○○科
略歴